さて、我だ、万事だ
なにやら子触が困っていたから、我が出て緑谷出久の心に介入した
無理矢理の介入だったから、現実では子触も緑谷出久も気絶しているだろうな
「しかし、不思議な精神世界をしているじゃないか緑谷出久」
「あの、平然と話さないで少し状況を説明してもらってもいいですか?」
「なんだ我のことがそんなに気になるか?」
「というより、ここがどこで、っていうところから知りたいんですけど」
ふむ、考えてみれば説明もないというのは不適切だったな
「では説明してやろう、ここは緑谷出久、お前の精神世界だ、お前以外が踏み入ることは基本的にあり得ないであろう空間だ」
「じゃあ、あなたは」
「なんだ、理壊から聞いていないか?子触の持つ本来の個性の話を」
「っ!まさか!」
「改めて、はじめましてだな緑谷出久、我は子触の持つ個性、万事だ」
一気に警戒したな、間違っていない判断だが、ここは現実ではない
「迎撃する準備をするのはいいが、ここは精神世界だぞ?我に干渉できると思っているのか?」
「くっ!何で僕の精神世界に!」
「とりあえず拳を解け、そうだな、我がここにいるのはお前の個性、OFAを制御するためだな、なに、盗るわけじゃない」
万事が手を光らせる
「人から人へ紡がれた、個性の根底を見せてもらう」
「何を」
「お前にとっても悪い話ではない、少々、困惑はあるだろうがな」
少々無理矢理だが、こうした方が良いだろう
「OFAを繋いだもの達にとっても、な」『万事 壁壊』
黒い風が渦巻いていた周囲が晴れ、一つの部屋のような空間へ変貌する
そこには8つの椅子が存在し、人が座っていた
「・・・」
「フハハ、そう睨んでくれるなOFAの継承者達」
「まるで僕達のことを知っているように話すね、万事だったかな」
「当然だろう、我は万事、全ての存在の名を把握している、故に個性についてもな、子触が緑谷出久と接触、正しくは力を継承した時点で、気づいていた」
ここにいるのは残留思念と言っても違えない者たちだ、だが、姿を形成し、意志のある瞳で我を見る様子からは、とても今は亡き者には思えん
「して、我のことはあまり気にするな、ここにいる時点で意識するのは仕方がないが、今のうちに緑谷出久に説明したほうが良いことも多いだろう」
「お前、何がしたいのさ」
「何がしたい、か、面白いことを聞くな万縄大五郎」
「「「「!」」」」
「言っただろう、我は全ての存在の名を把握していると、話が逸れたが、我がこうして緑谷出久の心に介入し、壁を壊したのは、全て子触の為だ」
万事が部屋の隅に移動していく
「我がすることは全て、子触の利になると判断した事だ、今回の事もな」
隅に立ち、万事は目を閉じる
「さぁ話すが良い、我は見もしないし聞きもしない」『聴消』
と言っても、振動から何を話しているのか分かってしまうんだがな
しかし、つくづく不思議な精神世界をしている、風の流れがあり、振動を感知できる
通常、精神世界というものはその存在の心のあり方を再現する、子触が荒廃した都市なのは我を含めると8つの人格が心に在中しているから、それぞれのあり方が反発、融合し、荒廃した物になっている
それでもここのように風などは存在しない、何故ならば精神世界にまで現実の事象を持ち込む必要はない
OFAに蓄積された経験から、勝手に再現されているのだろうがな
さて、今回緑谷出久が黒鞭を発動して暴走してしまった原因だが、恐らく物間寧人の煽りだろう、温厚な緑谷出久を激昂させるとは、中々やる
で、緑谷出久は物間寧人を捉えようとイメージした、それに呼応し、止めることも出来ぬまま自由に黒鞭が伸び続けたのだろう
そして、一つ目覚めたのなら、残りの個性が目覚めるのも時間の問題だろう、変速、発勁、危機回避、煙幕、浮遊、これらの新たな力が目覚めた時、どう説明するのだろうな
まぁ、我には、子触には関係ない
振動が消えた、どうやら話は終わったようだな、子触はまだ眠っているか
「さて、話が終わったようじゃないか」『聴再』
「きみ、聞いてないんじゃ」
「ああ、しっかり瞳は閉じ、聴覚も消し去った、だが空気の振動で会話を行っているかどうかは把握できる、して、終わったんだろう?」
相変わらずの警戒心だな、間違っていない判断であるがな
「では、緑谷出久の身体を目覚めさせるぞ、暴走するようなことが無いはずだからな」
「目覚めさせるって、勝手に覚めるんじゃ」
「我が介入して眠らせたのだから、我がせねば目覚めんぞ?」
「だからずっと隅で待ってたのか」
「そういうことだ、それから緑谷出久」
「な、何」
「お前は現実で我の目の色を認識しただろう?」
「認識って、金色と銀色の目してるって分かったけど」
「お前の認識に我が介入することは不可能になった、これから我が全てに介入する度に少々ズレが生じるかもしれん」
「え!?それってどういう」
『万事 心離』