「フハハ、面白い」
自由気ままに様々な場所を見て回っているだけなのだが、それで妙にトラブルを目にするとは
「このまま事が進むのを見るのもいいが・・・現状の我がどの程度まで力を使えるか、確認するのに最適な場でもある」『無空盧創造
ここ泥花市に最も集まっている感情は、不安、最初は数の差、これまで個性に注ぎ込んできた時間、頼もしい幹部達の存在で忘れ去っていたようだが、敵連合が予想以上に強力で、幹部が既に二人戦闘不能になっていることから、思い出してしまったようだな
「故に、このような物が仕上がったというわけだが」
見ているだけでありもしない最悪の結末を幻視してしまうほどの力が秘められている、そういえば異能解放戦線の先導者、四ツ橋力也は個性『ストレス』だったな・・・
「・・・ふ、ハハハ、これはいい、正直今の連合は一人一人が強者だ、現状の異能解放戦線は誰も障害にならないほどの」
だが、四ツ橋力也は違う、彼の個性には厳密な際限がない、ストレスを溜め込めば溜め込むだけ強さが増す
「これを見て、彼の心が砕けずにストレスとして溜め込んだとしたら、フフフ」
どのタイミングで彼に見せるか、死柄木弔が姿を表した瞬間、四ツ橋力也に見せればよいか!
「であれば、用意せねばな、四ツ橋力也と死柄木弔の邂逅の前に、接触しておかねばな」
泥花市の上空で、万事の笑い声が響いていた
side死柄木
さっき突然地面から氷が飛び出してきやがった、増えたトゥワイス達が俺を突き飛ばしてくれたおかげで特に怪我もなかったが
「さっきから数が多いな」
タワーに近づいていくほど、襲ってくるやつが増えてる
あの政治家が言ってた通り、義爛が捕まってんのか、そうじゃなくても重要な場所って事だ
「おおおお!」
「さっきから」ガッ
死柄木が転がってる瓦礫を掴み、正面から迫ってくる人の波に狙いを定める
「うるせぇんだよ!」ブォンッ!
投げられた瓦礫は人の波に命中すると、ヒビが走り、それが周囲の人々に伝染していく
「なっ!?」
「あ?なんで伝染した?」
そこらに転がってるもん投げるだけで殺せると思ったから投げたんだが、俺の個性はそんな特性だったか?
そういや、個性は鍛えてると思わぬ所で変化するってトガが言ってたな、つまり、今その変化が起きたってことか
「伝染するってんなら、一掃できるな!」
死柄木が地面に触れると、ヒビが正面に広がっていき、再び集まった人々が崩壊していく
「このままタワーまで通らせてもらうぜ、解放軍!」
タワー最上階
「フハハ、いい警戒心だな近属友保、突如現れた我に『人形』を突撃させたのは間違っていない、最もそれに力が伴っていたらの話だったがな」グシャッ
足元に転がる人形を万事が踏み砕き、笑みを浮かべる
「物音を立てずに現れたこともそうだが、スケプティックの人形をいとも簡単に壊すとは、君は一体何者だい?」
「心中がどうあれ、焦りすら見せんか、その辺りはさすがデトラネット社の社長だな」
「質問に答えたまえ、君を殺すことになる」ボッ
リ・デストロの腕が黒く、巨大化する
「ほう?つまり貴様、四ツ橋力也は我を殺す事は造作もないと・・・本気で言っているのか?」ゴォッ!
「!?」
ピシッ!
万事から殺気と共に圧が発され、窓にヒビが入る
「我が力を抑えすぎて、その一端を感じ取れなかったというのならすまないが、それ程鈍いわけでは無いだろう、異能解放の先導者、デストロの末裔であるリ・デストロ」
「っ!何故、私がデストロの末裔だと知っている!」
「我はこの世に存在する全ての生命、個性、事象について知っている、無論、かつて存在した偉人の末裔やその繋がりもな」
万事の髪に隠された目が僅かに輝く
「さて、関係のない話もそこそこに、我が何故ここに姿を表したのか、それすら話していなかったな」
万事から発されていた殺気等が消え去るが、義爛、スケプティック、リ・デストロは警戒を解かない
「我がここに姿を表した理由、このままではいとも簡単に異能解放戦線が消え去るから、だ」
「何故、ここに来たばかりの君がそんなことを」
「現在、解放軍の戦士達は勇敢に連合に立ち向かっているが、その心に迷い、どうしようもない不安が纏わりついている、理由は何故か?幹部に等しい立ち位置の戦士が既に二人戦闘不能、片や死体も残らずに殺され、戦場で氷を振るう幹部は連合の二人に足止めされ、残る連合に同胞が簡単に散らされていく」
万事は窓際に立ち、戦場を見下ろす
「どれだけ自らの所属する陣営の勝利を信じていようと、足止めを食らう幹部、既に頼れない屍となった同胞、それらを見続けていれば、感情が元から欠如でもしていなければ、恐怖心とまではいかずとも、不安は込み上げてくる」
足音を立てずに、ゆっくりと万事はリ・デストロに近づく
「事実、貴様はそう感じている筈だ、その額に浮かび上がる黒い斑点、それが貴様がストレスを感じている証拠だ」
リ・デストロは開きかけた口を閉じ、スケプティックも沈黙する
その光景を見ながら、義爛は万事に恐怖を感じていた
(なんだ、あれは、さっきの圧もそうだが、それ以外に)
「我の事が気になるようだな臆田か・・・いや、ここでそう呼ぶのはよそうか、義爛」
「っ!今、何を」
「なに、貴様を本名で呼びかけただけだ、だが何に記録されるかわからんここで言ってしまうのは、流石に悪いと思っただけだ義爛よ」
(勘違いじゃなかった、こいつは俺の本名を知ってる、調べりゃ出てくるだろうが、それでも相当労力はかかる、一体こいつは)
「フハハ、そう考え込むな、どれ程考えようと我を理解することは出来ぬ、仮に理解した所で脳が理解を拒否するだろう、さて」
万事が義爛から目を離し、リ・デストロに向ける
「先に述べた通り、このままでは簡単に異能解放戦線というものが消え去る、しかしそう簡単に消えては面白くない、そこで我はこれを作り出し、見せに来たのだよ」
万事は手に不安象徴を出そうとし、スケプティックの方を向いた
「早速見せようかと思ったが、こうしてからが良いと思ってな」
「何だおまえ、私に何を」
「見るがいい」『不安象徴』
万事の手に青く輝くナニカが出現し、スケプティックの視界を染める
すると
「アアアアア!失敗していない失敗していない失敗していないぃぃぃ!私は断じて失敗などしていない!一度だけだ!私が、私が失敗したのはアアアア!」
スケプティックが頭を抱え、叫びだす
「ふむ、やはりこうなったか」
「今、何したんだ?」
「なに、視認するだけで確証もない膨大な不安を得る物体を見せただけだ、想定通り、不安に耐えきれず発狂してしまったわけだが」
万事の目がリ・デストロを捉える
「不安というのは抱え込むだけでストレスとなる、これを視認すれば貴様は今までにない程の力を得られるだろう、だが貴様の精神が脆ければ、あのように発狂し、元には戻らんだろうな」
万事の目に見つめられ、リ・デストロは思案する
「国への反発、真の自由、それらを背負い私はデストロの本懐を遂げる、歴史のない愚連隊ではない、デストロが異能解放の先導者でなければならないのだ!」
「つまり、見る、ということだな」
万事の手から不安象徴が現れ、リ・デストロが視認する
それと同時に部屋の入口が蹴破られ、死柄木が姿を表す
「お、義爛がいた、タワー壊さなくてよかったぜ」
「死柄木!離れろ!」
「あ?何いってんだよ義爛、俺達はお前を助けるために」
瞬間、死柄木の視界が黒く染まり、全身に衝撃が走った
不安象徴
見たものに漠然とした、確証のない不安を与える物体
青い輝きを放っているが決まった形は無く、触れると金属のような質感を持っている
人によっては、視界の端に写してしまうだけで発狂してしまう