終盤に入っていきます
「・・・ふむ」
『不安の象徴』を四ツ橋力也に見せることで、暴走することは想定していたが、その余波で我が依代が動かせなくなるとは完全に想定外としか言えん
四ツ橋力也程度の力が暴走した所で、我が依代に異常が発生するなど、あり得んことだ
「すなわち、子触の心に掛けられた我に関する枷が緩んでいる」
しかも想定より早い、我の方から枷に干渉していないことから、子触が無意識に枷を解いているということになる
「しかし困ったな、依代が壊れるのはどうでもいいが、依代の手に『不安の象徴』が残っている」
あの場にいたのは依代を除けば、『不安の象徴』を視認した四ツ橋力也と近属友保と義爛、それと接近していた死柄木弔だな、我の介入がなくなった依代は四ツ橋力也の一撃で、どこか遠くへ吹き飛んだ可能性が高そうだが
「考えても仕方ないか、今我がするべきは、枷がどこまで外れたかを把握しなければならない」
今まで子触は我の力を一部引き出し、片割れ達を分離することが出来るまでになった、今回の枷の緩み方次第では
「・・・誰?」
「むっ、想定していたが、もう接触してきたか、子触」
どうやら、子触が我に接触できるまで枷が緩んでしまったようだな
「まぁそこに座れ子触、なに、危害を加える気はない・・・前にも言ったな」
目の前に、人が立ってる
確か・・・見たことある
「もしかして、夢で会った人?」
「どうやら、精神世界に来たことで朧気だった記憶が呼び起こされたようだな、であれば、名乗りは不要だろう、我が名を言ってみるがいい」
前見たときと違って、全身が発光してない、金と銀の目で私を見つめてる
この目は、前にも見たことがある、文化祭の時に、いや、それよりも前に・・・そうだ、理壊達が私の中に生まれる前、ずっと話してた
「・・・万事お兄ちゃん?」
「フハハハ!そこまで思い出すとは、奥底に眠っていた記憶すら呼び起こされたようだな!」
「えっと、久しぶり・・・であってるよね?」
「子触の認識からすればそれで問題ない、しかしこうも短期間で枷が外れる出来事が起き続けるとはな、世界が変化を求めているということか」
「相変わらず、よくわからないことを言うんだね」
「フハハ、それは理解していることだろう?して現在の時刻は昼なわけだが、どうやって我に接触してきた?まさか居眠りではなかろう」
「えーっと・・・わかんない」
「わからんか、とすると現実の方では意識を失いその場に倒れ込んだ可能性が高いだろう
な」『現視』
万事の金色の右目が輝き、子触から視線をずらす
「どうやら、教室から食堂に向かう最中にここに来たようだな、廊下で倒れ込んでいるぞ」
「え」
「ちなみに、ここから現実に即座に帰ることは出来んぞ」
「ええ!?」
「当たり前だろう、心の枷が外れた、そこまでは想定外でも発生して問題はないものだ、だが、こうして我と接触するのは問題だ」
万事が子触に近づく
「枷が外れたとて、我に対して接触することはほぼ不可能だ、そういう『約束事』を制定したのだから」
「あれ、前普通に話さなかったっけ?」
「『約束事』の条件は、子触の精神が乱れないこと、世界に見限りをつけないことだ、以前接触した時は父の顔が抉れる場面を見たせいで精神が乱れ、ヴィランが存在しない世界を望んだだろう」
万事は両目で子触を見つめる
「だがあの時は枷があった為に夢で終わった、しかし今は枷が外れ、以前と同じく『約束事』の条件も満たしているがために我と接触した、さて質問だ子触」
「急に何!?」
「『約束事』の条件を満たした場合、どうすると決めていた?」
「えっと・・・」
「そこは思い出せぬか、ならば『約束事』を決めたときの子触の言葉を復唱してやろう」
万事の口が開き、言葉を発していく
「『この約束事が破れたら、私がこの世界をどうでもいいと思ったってこと、だからその時は』」
「『お兄ちゃんが私の体を使って、世界を作り変えて』・・・」
「思い出したか」
子触は口元に手を当て俯き、万事は表情を変えずに子触を見つめる
「思い出せたなら何よりだ、我としても何もわからぬまま主導権を奪うのは憚られたからな」
「そうだった、そういう約束をお兄ちゃんとはしてたんだ」
「して、だ」
万事がゆっくりと子触に近づく
「これから我が主導権を取るわけだが、意識はどうする?世界が変わる様子を見届けたければ残すが、世界が変わる様子を見たくないならば、全てが終わるまで封じておくが」
「・・・」
「ふむ、相当迷っているな、であれば、我が勝手に判断しよう」
子触の体を白い光が覆い始める
「ではな子触、次に会う時は世界が変わっている時か、もしくは・・・そのようなことを話しても意味はないな」
そのまま光に包まれ、子触が消える
「では・・・ゆくか」
side雄英高校保健室
廊下で倒れていた心を保健室に運んだ、緑谷、麗日、飯田が話している
「それにしても、何故心くんは廊下で倒れていたんだろうか、疲労が溜まっていたのか?」
「んー、でも心ちゃん授業中元気だったし、休み時間に話してもいつもと変わらんかったよ」
「背中に生えてるはずの触手が全部無かったから、空想さんとかが変わりに動かすって事もできなかったんだろうけど、心さんって寮とか特訓以外で分離することってあったかな」
「三人とも、子触ちゃんが目を覚ましたぞ」
治礼がしきりとなっているカーテンを開き、三人に告げる
「軽く検査した所、傷もないし個性を受けた形跡もないから、健康面に問題はない、少々違和感というか、不気味に感じてしまうが」ビュンッ
治礼の隣を通り抜け、保健室の入口に心の体が立つ
「「「!?」」」
「・・・子触ちゃんだと思ってたが、中身は別人だったか、誰だ?」
「我が何者か?」
体が四人に向けられ、金と銀の目が輝く
「この姿で会うのは初めてだが、緑谷出久ならばわかるだろう」
「っ!お前は!」
「我は行くとしよう、何、この体を死なせるようなことはせん、少々世界が変わるだけだ」『身移』
子触の姿が消え、四人は呆然としていた