白星の君へ   作:F1さん

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タルタリヤ 弓 修正 姿勢よくなるの巻


永遠を求める神の国

 

それから数日。

 

カナデは冒険者として様々な依頼を引き受けたのだが──今回の依頼の鉱石を確保中に、見知らぬ人間を倒した所──どうやらそれがたまたま社奉行に何かをしようとしていた人間らしく、カナデはお礼がしたいと言われ、何故か神里家に来ていた。

 

大きな屋敷は瓦屋根で何人かの使用人が忙しなく働いているのが見える。

 

門番らしき人達に挨拶をすると、金髪の青年が出迎えてくれた。

 

「ああ、綾人様が言っていたカナデさん、でいいですか?」

「あ、はい。そうです」

「俺はトーマ、神里家に仕えている者です。……この時間だと恐らく部屋にいるはずなので、着いてきて下さい」

 

そうしてトーマと名乗った青年についていく。髪色からして、明らかに純粋な稲妻人では無さそうだ。

 

そんな人間が歴代続くような家に使えている事に疑問を覚え、つい、カナデはじっとトーマを目で追ってしまう。

 

トーマはそんなカナデの視線に気づいたのだろう、少し困った様に笑った。

 

「あ、気になります?俺は数年前から神里家に仕えてるんですけど、俺自身は稲妻人ではなくて──」

「モンド人?」

 

カナデは迷いなくそう答えると、トーマは感心した様に笑った。

 

「よくわかりましたね?」

「まあ、その色だとスメールか、フォンテーヌかモンドのイメージしかないけれど……なんというか、スメールの人は神経質な人が多いのと、フォンテーヌの人は私が知る限り芸術系が多いけど──貴方の服、自分で改造してる感じするし。だったら、穏やかな気質が多いモンドかなって。まぁ、私もほぼモンド人だからそうだったらいいな、って気持ちもありましたけど」

 

カナデの言葉に、トーマは目を瞬かせた。

 

「なるほど、貴方は鋭い人だ。ええ、俺はモンド人です。ちょっと訳あって──この家に仕えると決めてからは、ずっと神里家にお世話になってます」

「へぇ……そうですか。あ。敬語じゃなくていいですよ。私すごい人じゃなく、ただの冒険者なので。別に名前が馳せている訳でもないし」

「はは、そうか。じゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

軽くモンドの話をしながら二人は奥にある一室の前に辿り着く。

 

「綾人様、お客様をお連れしました」

 

トーマの言葉に、中から「入って下さい」と返事があった。

カナデはそれに頷くと、扉を開けてトーマと共に室内に入った。

 

「──先日はご迷惑をおかけしたようで。私は神里綾人と申します」

 

その奥には1人の涼やかな印象の青年がいた。

和服を着ており、その和室は大体綺麗だが、机の上はごちゃごちゃしていて、様々な字のメモの様なものがあったりする。

忙しいため、その部分だけは放置してあるのだろう。

高そうな巻物や着物が部屋には飾られている。

 

恐らく神里綾人と名乗ったこの青年が、神里家の当主なのだろう。

彼は温和そうな笑みを浮かべているが、その目は確実にこちらの内心を探る様な鋭さがあった。

 

「えっと、はじめまして。いえ、たまたま居合わせただけですし、そんな事は無いです。私はそれより、お庭番?の人に呼ばれたので、何か余計な事をしたかな、と焦りました」

 

先日カナデの元に来た貉の様な被り物をした少女は「早柚」と名乗っていた。

彼女の組織は実質神里家の手足のようなものらしい。

その早柚に呼ばれたから、カナデは神里家にやってきたのだ。

 

「ああ、それなら違いますよ。それに緊張もされなくて大丈夫です。私はお礼を言いたく呼んだだけであって、貴女を咎めるつもりも、害するつもりもありません」

「は、はあ……」

 

別に怒られる心配はしていなかったが、明らかに由緒正しい家に呼ばれると緊張してしまう。

しかし、ここで動揺するのは良くないだろう、とカナデは表情を引き締めた。

 

「えっと、お礼って……何でしょうか」

「貴方が倒したあの者は我が家に危害を与えるつもりでした──無論、どの様に対処するかは考えてはいたのですが、貴方の協力により、比較的速やかに解決しました」

 

綾人の言葉に、カナデは内心なるほど、と頷いた。

巷の噂では神里綾人よりも妹の綾華の方が表舞台に出るため、彼女が目立ってしまい兄である綾人の印象は薄いらしい。

なので詳細までは分からないが、優れた手腕の持ち主だというのは確かなようだ。

 

「ああ、なるほど。でも私がいたのはたまたまですし、そんなに気にしないで下さい」

 

──カナデは何となく察していた。

 

そんな人が自分を呼ぶ理由は、繋がりを作っておきたいからだろう。

 

カナデの祖父は稲妻で昔、雷電将軍の下で働いた事があり、恐らく親戚はまだ稲妻にいる。

祖父がたまに親戚と手紙でやり取りをしている事は知っていたが、いざこざに巻き込まれるのを嫌がっている事を前に祖母に話している所を見た事がある。

 

──だが、カナデは祖父の考えを尊重し、これから親戚に会おうと言う気持ちは一切無い。

 

その情報を掴んでいるか、掴んでいないか知りはしないが、遠巻きに「私は別に大したことないので関わる気はないですよ」と態度で示しているのだ。

 

しかし、それを表に出すと面倒な事になりそうだった為、あえて口には出さないが。

 

カナデの言葉を聞いた綾人は、少し驚いた様に目を大きくした後、ふっと笑った。

 

「なるほど……貴方は本当に興味深い方だ」

「……そうですか。ええと、別に私は礼などいりませんので。それでは」

 

これ以上会話するとボロが出そうだと思ったカナデは、早々に切り上げる事にした。

流石にこの会話を切り上げる事にしたカナデを見て、トーマが「あ」と声を上げた。

 

「ちょっと待ってくれ、もしかしてもう帰るつもりなのか?」

「まあ、うん。……ここ、なんか落ち着かないし……。悪いけれど、忙しいから……おいとまさせて頂こうかと」

 

そう言ってカナデは綾人に頭を下げた。

そんなカナデの様子に、トーマが「ええ……」と困惑した様に呟く。

 

「いや、でも若はカナデともう少し話したい様だけど──」

「いや……明らかに忙しそうでしょ。それを邪魔をするのは、ちょっと……ねぇ。それに、私が礼を言われる様な事はしてないので」

 

そう言ってカナデは綾人の方を見る。

 

「では。……失礼致します」

 

そして、カナデはさっさと部屋から出て行った。

 

「あ、ちょっと!待って!」

 

そんな声が聞こえても、カナデは振り向かずに廊下を歩いた。

そうして無事に屋敷から出る事が出来た。

カナデは神里家の敷地を出るや否や、大きく息を吐き出す。

 

(はー……緊張した。いや、本当に)

 

神里綾人は悪い人ではないのだろうが、何となく苦手なタイプだ。

ああいう人間は本の中の登場人物にいたら好きなタイプかもしれないが、実際だとちょっと疲れる。

カナデはそれから少し歩いて、稲妻城の城下町へと戻った。

 

※※※

 

「ふー……」

 

息を吐きながらゆっくりと歩く。

先程の事で少し疲れていた。

すると、泣きながら歩いている小さな少年が見えた。

だが、何故かその子供に誰も声をかけない。周りは少年をちらりと見ると、何故か「またか……」と言いたげな呆れた様な

顔をして、そのまま通り過ぎていく。

 

「……うーん」

 

カナデはつい足を止めると、不思議に思い、少年に声をかけた。

 

「どうしたの?何かあったの?」

「ふ……うう………お菓子、取られた……鬼に」

「鬼?」

 

カナデは少年の言葉に首を傾げる。確かに稲妻には鬼はいるらしいが、希少な存在だと聞いている。

少なくとも、そこら辺を闊歩しているモノでは無い筈だが……。

 

とりあえず少年に話を聞くと、先程「鬼がいた」らしい場所を教えてもらい、近くの店で買った団子を代わりにあげると、様子を見に行ってみる事にした。

 

※※※

 

それから少し歩くと、お菓子を食べて闊歩する鬼の角が生えた青年がいた。

体格はいいが、見せている笑顔は何故か子供っぽかった。

恐らく手にあるのが先程の少年のお菓子だろう。カナデは声をかけるかどうか迷ったが、一応声をかける事にした。

 

「ねぇ、君」

 

そう声をかけると、青年がこちらを向いた。

 

「ん?何だ?俺様に用事か!?……って、お前、見かけない格好してるな?」

 

青年はカナデの服装を見ると、少し不思議そうな顔をした。

 

「そりゃ別の国から来たからね。えーと、君、さっき男の子からお菓子取り上げたでしょ。返してあげて」

 

カナデはそう声をかけたが、青年は首を傾げて不思議そうな顔をした。

 

「ん?俺様は虫相撲で勝ったから、お菓子を貰っただけだぜ」

「むしずもう?」

 

聞いた事のない遊びだ。とカナデは考えたが──「奏」の知識ではカブトムシ等が対決する光景が浮かんでくる。

 

「ああ……なるほど」

 

カナデが納得していると、青年は「そうだ!」と声を上げた。

 

「お前も一緒に虫相撲するか?」

「……いや、虫持ってないし。というか、まず何で虫相撲するの」

「おもしろいからだ!!……ん?ああ、お前が持ってないなら、俺様が貸してやる!ほら!」

 

青年はそう言いながら虫相撲で使うのであろうオニカブトムシをカナデに手渡した。

 

「……ええ……」

 

足をウゴウゴしているのを見て嫌そうにするカナデに、青年は首を傾げる。

 

「なんだ?お前、虫が嫌いなのか?」

 

そう問われて、カナデは苦笑いを浮かべる。

 

「触るのはちょっと……。あと、何で私が参加する事になってるの?」

「せっかく会ったんだし、俺様と勝負しようぜ!そうだ!俺様は荒瀧派の親分!「荒瀧・唯我独尊・一斗」、「荒瀧・土俵鬼王・一斗」、「荒瀧・鬼族の誇り・一斗」、「荒瀧・オニカブトムシ剣闘士・一斗」、「荒瀧・札遊びの王・一斗」、「荒瀧・負けてもいいが負けを認めぬ漢の中の漢・一斗」…俺様の通り名だ!どれか好きなのを選んで呼んでくれて構わねぇぜ。ハッハッハッハッ。

「長いわ!!全く。何?つまり名前は一斗でいいわけ?というか、他のも呼び名凄い長いな……しかも荒瀧派って何?」

 

カナデは溜息を吐く。すると、一斗があからさまにショックを受けた様な顔をした。

 

荒瀧派を知らねぇのか!?クッ、俺様もまだまだだな……」

「えーと、なんかチームみたいなやつ?まあ、一応私も名乗るか……私は「カナデ」だよ。」

「そうか!じゃあ、カナデ!勝負だ!俺様に着いてこい!ガハハ!

 

一斗は豪快に笑いながら歩き出す。

そんな一斗の背中を見ながら、カナデは少し考えた後、後に着いていく事にした。

なんというか、一斗は悪い人では無い気がする。

まあ、子供から勝負に勝ったからとお菓子を取り上げるのはどうかと思うが、カナデと遊びたい、と言うのは本当なのだろう。

このまま帰ったら一斗に申し訳ない気がしたのだ。

 

※※※

しばらく歩くと少し開けた場所に出た。一斗はそこで止まると、振り返ってカナデを見た。

 

「よし!ここが俺様のお気に入りの場所だぜ!」

 

特に何かある訳では無い。

強いて言うなら土俵代わりらしい木の幹があり、数人の子供達と、カナデより少ししたくらいの手下らしい男たちも何人かいた。

 

「あ、親分!ドコに行ってたんだよ!」

「そうそう、一斗遅いぞ!もう始めてるぞ」

「お?悪いな!少し遅れちまったか……。だが、主役は遅れて来る!ってな!」

 

一斗は笑顔を見せながらそう言うと、カナデの方を向いた。

 

「と言う訳だ!カナデ、勝負だ!俺様とお前、どっちが強いか白黒付けようぜ!」

「まあ……勝負するのは良いけど。はぁ。仕方ないな。──やるなら、負けたくないし。」

 

カナデがそう言うと、一斗は「やっぱり面白ぇ!」と言って笑い声を上げた。

それから土俵の真ん中にオニカブトムシをセットする。

 

「じゃあ、俺様が使うのはコイツだ!行くぜ!」

 

一斗はそう言いながらカナデに貸したオニカブトムシより大きな個体を出してきた。

カナデは少し呆れつつも、仕方なく一斗達と遊ぶ事にするのだった。

 

※※※

 

 

しばらくして。

荒瀧派の人や、街の子供達とも一緒に遊び、夕方くらいになった頃には、一斗はカナデと打ち解けていた。

 

ハッハッハ!カナデ、お前強いな!」

「一斗もね。久しぶりにこんなに遊んだかも。最近仕事ばっかりで、こんな風に遊ぶ事なんて無かったから。」

 

カナデがそう言うと、一斗はご機嫌そうに笑った。

 

「そうなのか!じゃあ、また遊びに来てもいいぜ!それに、女で俺様と遊ぼうとする奴は中々いないからな!まあ、お前は少し変わってるぜ。」

 

一斗はそう言ってケラケラと笑う。一斗は快活で裏表が無さそうな鬼だった。

だからなのか、カナデもいつの間にか普通に話をしていた。

異性として感じず、大きな弟の様に思えてしまったのも理由の一つかもしれない。

まあ、カナデは何となくその理由を察していた。

鬼であるから差別されているのだろう。

先程は初対面のカナデを連れてくる時には手を繋がずに、先に歩いて見せた。

一見すると雑に見えるが、その実、カナデを守る様な行動をとっていたのだろう。

そして、それは彼の「優しさ」だ。

カナデはそれに気づいて、やっぱり憎めないな、と苦笑する。

 

「まあ……次があればね。」

 

カナデがそう言うと、一斗は嬉しそうに笑った。

 

「おお!絶対だぜ!約束だからな!」

 

その後、カナデは一斗に別れを告げると、自宅へと戻った。

一斗は「またな!」と手をぶんぶん振って、カナデを見送ってくれた。

 

「ふー……。久しぶりにいっぱい遊んだな。シュヴァルツに教えてあげようっと」

 

カナデは伸びをすると、楽しげな様子で家へと入るのだった。

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

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