白星の君へ   作:F1さん

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デート 後半

暫く歩くと、彼が立ち止まった場所は裏通りの奥にある路地裏。

薄暗く、人気がない場所だった。

 

「ここで何をするの?」とカナデが問いかけても彼は何も答えず、ただ笑みを浮かべて立っている。

だが、次の瞬間には無表情に変わり、武器を取り出しカナデに襲いかかって来た。

 

「ちょ……っ!」

 

カナデは驚きつつも咄嵯に剣を構え、攻撃を受け止める。すると、タルタリヤは足で彼女に蹴りを入れた。

 

「っ!」

 

カナデは避けることが出来ずに壁に激突し、そのまま壁に背を付いて倒れ込む。

 

「い、ったぁ……」

 

痛みで顔を歪めながら体を起こそうとすると、目の前には剣を振りかざしている彼の姿があった。

その切っ先はカナデの顔の横スレスレで止められており、少しでも動けば斬られてしまうだろう。

カナデは冷や汗を流しながら目の前の彼を睨みつけるが、彼は無表情のまま口を開く。

 

「──いい加減下手な演技はやめたらどうだい?「俺の」カナデは何処にいるんだ?」

「……なんのことかな」

 

カナデは目を逸らしながら答えるが、その態度を見て彼は

「あんたが「春」?もしそうなら……散々カナデに迷惑を掛けた、その落とし前はつけて貰う」と静かに告げ、武器を構える。

 

「さて、もう一度言おう。本物のカナデはどこだ?」

「さぁね」

 

カナデは素っ気ない態度で答えるが、彼は気にせずに続ける。

 

「カナデなら、先程の迷子がいたら俺なんて無視して、率先して探そうとするだろう。なのに君はそうしなかった」

「それは……」

「そもそも最初に会った時からおかしいと思っていたんだよ。それに、カナデは律儀だし、先程この服を買う時だって乗り気じゃなかった。そんな彼女がお気に入りのアクセサリーショップに行きたいと言うのは「おかしい」」

「っ!」

 

カナデは図星だったのか何も言い返せない。それを確認した彼は更に追い打ちをかける様に言葉を続ける。

 

「それに、そもそもカナデはようやく少し俺に気を許してくれるようになったんだ。──リサーチ不足だったね。目的は何か知らないけれど、このまますっとぼけるなら考えがある」

「わ、分かった……降参!答えるから……」

 

カナデ──女がそう言うと、彼は武器を下ろしてにこやかな笑みを浮かべる。

 

「そう、良かった」

「……確かにあたしは春だ。北国銀行には借金がある。だが、あんたを騙してモラを騙し取るか、指定の場所に連れて行ったら、モラをくれるという契約になっている」

「ふうん?なら、その指定の場所まで連れてって貰おうかな」

 

そう言うと彼はカナデ──否、春の腕を掴む。

 

「ちょっと、痛い!離せよ!」

「はいはい、大人しくしてくれないか?俺はこういう時、気が短いんだ」

 

そして、2人はその場から離れる。

※※※

 

その後、2人が向かったのは街から離れた森に近い雪原にある小さな小屋だった。

 

「ここだよ」と春が言うと、彼は中に入り辺りを見渡す。

そして、誰もいないことを確認すると「ふーん、誰も居ないみたいだね」と言いながらドアを閉めた。

 

「早くモラを寄越せ!例の男は連れて来た!約束通りモラを──」

 

しかし、その言葉は途中で遮られる。春が言葉を言い終えようとした時──地下から剣を持った影が飛び出したからだ。

その影は春に向かって剣を振り上げると、そのまま振り下ろした。

 

春は、(自分が軽率だった、自分には相応しい最後──)と思った瞬間、剣同士がぶつかる様な音がしたかと思えば、顔に水のようなものがかかった感触があり、目を瞑った。

恐る恐る目を開けると、そこには──。

 

「な──」

「それは困る。色々返して貰っていないんだよね、この女には」

 

──目の前で背中を向けて春の盾となる青年がいた。

青年──タルタリヤは剣で男の攻撃を防いだ後に、そのまま押し返した。

男は体勢を崩し、そのまま後方へ飛び退くと剣を構え直す。

 

「さて。吐いてもらおうか。カナデの居場所を。」

 

※※※

 

暫くして。

そこにいた人間達を丸ごと都市部で暇そうにしていた部下に任せると、タルタリヤは聞き出したカナデが居るらしい場所に向かう。

どうやら別の拠点らしき小屋に連れていき、閉じ込めたらしい。

その場所に到着すると、見張りを一瞬で倒す。

中は薄暗く、生活感もない簡素な部屋だった。何か触られたり、暴力などを受けていないか。と、心配に思った瞬間──「ピピピ!」と鳴きながら思い切りぶつかってくる小さな何かが視界に入る。

 

「おっと……あぶなっ……」

 

よろけつつも受け止めてやると、その生き物は警戒した様にジタバタと暴れ出した。

 

「ピィ!ピィ!」

 

どうやらソレは鳥の形をした生き物の様だ。見た事がない種類にも見えるが、何故こんな場所に──とタルタリヤが思った瞬間、部屋の奥から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「え、何!?まだいたの……って、何だ「公子」か。シュヴァルツ、攻撃しなくていいよ。」

 

そこには、見慣れた姿のカナデの姿があった。

彼女はタルタリヤへと近づいてくると、シュヴァルツと呼ばれた小鳥はカナデの方向を見る。

どうやら怪我ひとつないらしい。

そのことに安堵した瞬間、シュヴァルツは嘴でタルタリヤの手をつつく。どうやら退けろという事らしい。

仕方なく手を離すと、シュヴァルツはカナデの元へ戻ると彼女の肩へと乗った。

 

「ピピ!ピピピ!」

「え?それはそれとしてムカつくって言いたいの?何で?確かにあの人は胡散臭いけど私に害は与えてはこない……「ピ!」って痛い痛い。分かったって。警戒心がないって言いたいのね。後でザイトゥン桃あげるから、帰りなって。疲れてるでしょ、無茶したから。」

「ピ……」

 

シュヴァルツは渋々といった様子でカナデから離れると、カナデが手を上げると、そのまま空中に現れた壺の中に入って行く。

手を下がれば壺は消えた。

カナデは違う簡素な服を着ている。「春」が変装をするのに持っていって、とりあえず着せたのだろう。

 

「あ。ごめんね、心配かけた?大丈夫。怪我はないよ」

「なら良いけど……。で、あの鳥は?」

「シュヴァルツの事?私の家族だよ。捕まった時にあの子が助けてくれたの」

 

そういえばカナデの腕とあの鳥の首には同じ材質のリボンがついていた、と思い出しながらタルタリヤは「へぇ……」と返す。

 

「それより!聞いてよ私の服取られたんだけど!気に入っていたのに!しかも勝手に着せられて最悪だったよ!なんなのこの服!動きにくいし仕方ないんだけど!」

「えー?でも似合ってるよ?」

「嬉しくない!」

 

カナデは不満そうに声を荒らげ、言うと、ブツブツと文句を言い始めている。

それを見て「そんなに言うなら取り返しとこうか?」と軽くタルタリヤが言うと、カナデは目を輝かせながら「本当!?」と嬉しそうな表情をした。

 

それから、うんうんと小さく頷きながら「あれには拘りがあってね。デザイナーの人と話しをして……」と話し始めたので、タルタリヤは適当に相槌を打ちながら聞いていた。

その間のカナデの表情は何処か自慢げで子供っぽさが見え隠れしている。

そんな彼女の表情を見ながらほぼ話は聞いておらず「やっぱり、可愛いなぁ……」と思いながら、タルタリヤは彼女の話に付き合っていた。

 

※※※

 

「おっと、ごめん、話がズレた。とりあえず。ほら、私に何かしようとした奴は縄でグルグル巻にして地下に置いといたよ。フン。小娘だと思って慢心するからこうなるんだよ、馬鹿め。」

 

先程までの子供っぽい表情から一転し、冷たい目で地下室があるだろう下を見下ろすカナデ。

そんな彼女の横で「ふーん?」とタルタリヤは呟くが、彼女は気にした様子はない。

少し心配はしたが、特に被害は無いようで良かった、と胸を撫で下ろす。

 

「あ。そうだ、じゃあ、私の服は頼んだとして…」

「うん。……でもその前に俺は君が捕まっている間に色々な事をしてきた訳なんだけれど」

 

「え?そうなの?」と首を傾げるカナデ。それを見て「そうだよ」と微笑みながら返すと、彼女に向かって先程までの話をタルタリヤは説明する。

 

「ああ!言ってた人!…あの、もしやその人私の姿でなんか……君にしたのかな?」

「ん?うん、ちょっとね」

 

にこりと笑いながら答えると、カナデは頭を抱え「何したの!?」と唸り声をあげる。

 

「うーん、想像に任せようかな。」

「不安しかないんだけど!?」

「……あはは、嘘だよ。何もされてないよ、ちょっと話をしただけだ。カナデが何処にいるかを聞いただけだよ」

 

すると「ほんと?」と疑わしげにこちらを見上げてくる彼女を見て、タルタリヤには少しからかってみようかという悪戯心が湧き上がってくる。

 

「ああ、腕を組まれたりとか色々されたかな……」

「色々!?何されたの!?」

「え?ん〜、内緒かな♪」

「はあ!?ちょっと!ねえ!キスとかしてないよね!?してないって言って!!」

 

カナデは泣きそうな顔をしながら必死に掴みかかってくる。それを見て、タルタリヤは口元に手を当てると笑い出す。

 

「ははっ!冗談だよ、本当にされてないから。そもそも俺が君を別のやつと間違える訳ないだろ?直ぐに分かったよ」

「え……?」

 

その言葉を聞いて、カナデはぽかんとした表情をしながらタルタリヤを見上げたかと思うと──複雑そうな表情に変わる。

 

「どうかした?」

「……いや、何でもない」

 

誤魔化すようにカナデはそう言いつつ、目を逸らすが、その顔は僅かに赤く染まっていた。

それを見逃さなかったが、タルタリヤは敢えて触れることなく、そのまま話を続ける。

 

「それより……このまま君を返してもいいけれど「お礼」くらいあってもいいんじゃない?」

「お礼?そう言われても「ありがとう」とは言ったよね?あれ?言ってなかったっけ。ありがとう」

「うーん、俺がそれで満足すると思う?大変だったなぁ〜。もう少し労って欲しいよ」

「……なんか恩着せがましい言い方するなぁ。君。」

 

カナデはじっと睨むようにタルタリヤを見る。だが、やはり迷惑をかけたのは本当なので悩んだ様に腕を組んだ後、小さく溜息をつく。

 

「はぁ……。じゃあ、とりあえずそこにいて。この格好で歩くの寒いし……あ、そうだ、その紙袋返して貰えるかな?」

 

その言葉を聞き、タルタリヤは「はい、どうぞ」と差し出す。

受け取ったカナデは扉を指さし、外に行くように刺し示す。

 

「はいはい、外だね。了解。じゃあ待ってるよ」

 

そう言ってタルタリヤが手を振ると、扉の外に向かうのを見て、カナデは疲れた様な表情のまま中に入っている服に着替え始めた。

 

※※※

 

やがて着替え終わったカナデが出てきたのを確認すると、タルタリヤは直ぐに彼女に歩み寄る。

 

「終わった?」

 

と、尋ねられと、彼女は呆れた様に溜息をつきながらタルタリヤを見上げた。

 

「……終わったよ。えーとお礼だっけ。うーん」

 

カナデが悩んでいる様子を静かにタルタリヤは眺めている。

特にその視線はカナデの服に向けられていた。その視線に気づいたカナデは、首を傾げながら聞く。

 

「何?変?この服」

「いや、似合っているから見惚れていただけだよ。」

「な……」

 

カナデは驚いたように目を見開く。そして、少し照れた様に顔を背けると、小さく呟いた。

 

「褒めても何も出ないよ。……まぁ、褒められるのは悪い気はしないけど。」

「……照れてる?可愛いね」

「うるさい!もう、黙ってて!」

 

カナデはその言葉に顔を真っ赤にしながら怒ると、そのまま早足で歩き始める。

 

「あ、ちょっと待ってよ」

 

そう言ってタルタリヤが直ぐにカナデを追いかけると、急に立ち止まった。

 

───それからテクテク、と彼の目の前に来ると、彼の手を取った。

 

「えっ」と思わず声を上げ、動揺を隠せない彼を他所にカナデは手を握ったまま歩き始める。

それから、振り向かずに口を開く。

 

「お礼!その、まだ途中でしょ。だから、もう少しデートとやらに付き合ってあげる!それで良いでしょ?何か不満でもある?」

「…いや。無いよ。……でも、いいの?このままで。あんなに手を繋ぐの嫌がっていたのに。」

「……いいから!ほら行くよ!」

 

カナデは顔を真っ赤にしながら、それでも手は離さないまま歩き続ける。

そんな様子に思わず口元が緩むと同時に、タルタリヤは何となく彼女に尋ねてみる事にした。

 

「──カナデはもし、デート中に子供が迷子になっていたらどうする?放っておく?それとも探す?」

「……え?」

 

カナデは突然の質問に戸惑ったのか、ピタリと足を止めるとキョトンとした表情を浮かべると、振り返った。

そして、暫くの間考え込むようにしていたがやがて口を開く。

 

「悪いけど、探させて貰うかな。だって物騒だしね、どこも。それに、君は私がそう言い出しても、怒りはしないだろうし」

 

カナデは少しだけ不安そうな表情をしていた。

だが、その言葉には確信めいたものがあり、しっかりとした芯があった。

そんな彼女の言葉を聞いて、少し驚いた様に目を丸くした後──。

「はははっ!」と心底おかしそうに笑った。

そんな様子を見たカナデは眉を寄せた。「こら、人が真面目に答えてあげたのに何笑ってるの?失礼じゃない?」

 

「ごめんごめん、君の回答があまりにも面白くてさ。流石カナデだね」

「それ褒めてる?」

「褒めてるよ、当然」と答えながら、カナデの手を引き始める。

そのまま歩き出そうとするので、少しバランスを崩しかけながらカナデは文句を言った。

 

「ちょっと、こけたら危ないでしょ、こういう時は何か言ってくれないと…!」

「あぁ、ごめんごめん。ところでさ…」

 

するとそこでタルタリヤは言葉を切ると、彼はカナデの耳元に口を近づけると囁いた。

 

「───うん、やっぱり俺は君が好きだよ、カナデ」

 

それを聞いた瞬間、カナデは顔を赤くさせ、空いている手でバッと耳を抑えると、無言で睨みつけた。

 

「おや、どうかしたの?顔が赤いけど?」

 

すると、嬉しそうにニコニコと笑いながらタルタリヤが顔を覗き込もうとしてくるのでカナデは「……急に変な事を言うな」と低い声で返した。

 

「えー?別に普通じゃないかな?」

 

わざとらしく惚ける様な口調で返すタルタリヤに、カナデは更に顔を赤らめると、やがて諦めた様に溜息をつく。

 

「全くもう……本当、君は……。」

「何?そんなに嫌だったの?」

「……いや、そういう言葉ってもっとこうムードとかある場所で言うものだと思うよ。」

 

カナデは誤魔化す様に目を伏せると、先に進むように促した。

 

「いいから、ほら、進む。夜になるでしょ、前に進めッ!」

「はいはい。」

 

そんな会話を交わした後、二人は手を繋いだまま歩き始めたのだった。

 

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

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