それからカナデは通常通り冒険者活動をしていると、タルタリヤから冒険者協会を通して手紙を貰ったり、部下の人を通して呼び出されたりした。
その度に連れ回され、店だけでなく秘境や討伐に付き合わされたりするようになり、カナデは困惑しながらも、その誘いに仕方なく毎回付き合う。
そうしなければ後が面倒になるからだ。
そんな生活がしばらく続いたその日、カナデはいい加減振り回す頻度を減らして欲しいと思う様になっていた。
※※※
「ナナくーん!」
「……やかましい。というか変なあだ名を付けるな」
人が見えない草原。
その真ん中にある人工的に作られた砂が見える歩道を歩いていた笠を頭に付けた整った顔立ちの少年はカナデが抱きつくと、心底嫌そうな態度を取る。
その態度はいつもの事なのでカナデは構わず彼に声をかけた。
「お姉ちゃんに冷たくしないでよ!」
「誰が姉だ。それに変なあだ名を付けないでくれないかい?」
「えー、仕方ないでしょ、『散兵』とか『スカラマシュ』ってなんかあんまり馴染まないと言うか。だから『名無し』と『この世界では七人の神がいるから』、『ナナ』で。ほら、こっちの方が可愛いよ」
「……」
「……あ!また気難しそうな顔をしてる!ほら、ちゃんと笑いなよ」
カナデが楽しそうにそう話すと、スカラマシュは眉を寄せて不機嫌そうな顔をする。それから彼は盛大にため息を吐き出した。
かと思えば繕った笑みを浮かべられる。
「ほーら笑ってやったよ。これで充分かい?ならとっととどっか行ってくれる?」
「酷いよ!あ、でもそういう所生意気な弟ポイントが高いね!お姉ちゃんは好き!」
「……だから変なあだ名で呼ぶなと言っているだろう。ああもう、面倒くさいな君は」
カナデが目を輝かせる様子を見てスカラマシュは耳を塞ぎながら嫌そうに視線を逸らす。
そしてそのまま何も言わずに離れていこうとしたのだが、カナデは彼の笠についている透明な布地の部分を引っ張る。
「あ、こら逃げない」
「……はぁ。あのさ、君みたいな馬鹿でも分かるように説明してあげるけど、僕の方が君より何百年も生きているんだ。分かるかい?」
「うん。でも君は『弟』にしたいと私は認定したから『弟』だよ?」
「何それ。僕には理解できない話なんだけど」
スカラマシュが迷惑そうな顔でそう言うが、カナデは気にせず笑顔を浮かべている。
「面倒だ。……それより、君、最近『公子』とよく一緒にいるみたいじゃないか。どんな風の吹き回しだい?」
「え、何でその事を知ってるの?」
まさかここでその名前が出てくるとは思わずカナデは呆気に取られた表情になる。
それを見た散兵はじっと、睨んだ様な呆れた様な表情を浮かべながら肩をすくめてみせた。
「は。君、まさか僕が何も知らないとでも思っているのかい?」
「え……っと、ハッ!大丈夫だよ、確かにアイツにも中々弟力はあるけど、どちらかと言うとアイツは兄力の方が強いから、ナナくんには叶わないよ!」
「……人の話を聞け、この馬鹿女」
「あたっ」
スカラマシュがそう言ってカナデの頭を軽く叩く。その衝撃に頭を押さえながら顔を上げると、彼は呆れた様にカナデを見ていた。
「はぁ、君って本当に人の話を聞かないよね。僕が言いたいのはその事じゃない。あの脳筋も一応は僕と同じ「執行官」だ。その事はちゃんと分かっているだろう?」
「うん。それで?」
「……ここまで言っても分からないのかい?馬鹿もここまで来るといっそ清々しいな」
「?」
スカラマシュがため息を吐いて呆れた様に言う。しかし、カナデにはその言葉の意味が分からず首を傾げていた。
その様子にスカラマシュは舌打ちをしたくなりつつも、もう一度説明しようと口を開く。
「僕は君がアイツに何されようがどうでもいい。けれど、仮にもファデュイの執行官という立場にある僕らと親しくするのは良い事じゃない。だから、僕らにあまり構うなと言っているんだ」
「……へ?」
スカラマシュの言葉にカナデは目を丸くして驚いている。しかし、彼は構わず話を続けた。
「いいか?分かったらもう僕に構うな」
「えーヤダー。私はナナくんを構いたい」
「だからその変なあだ名は止めろと何度言えば分かるんだい?……はぁ。アイツは『精神が子供のまま大人になった』みたいな奴だ。それに周りの迷惑も考えない。だから僕たちが尻拭いをすることが多い。いい加減、手を焼いている」
「なるほど。問題児なんだね。……私だって『公子』とはかかわり合いたくないんだけどなぁ。上手く乗せられて手合わせとか、お出かけさせられてるだけだよ」
「手合わせ……やっぱり脳筋だな。まぁ、よかったね。『公子』は今日から強敵と戦うから数日来ないはずだ」
散兵が皮肉げにそう言えば、カナデは瞬きを何度かした後、何故か不機嫌に思う気持ちが浮かんできてそれをスカラマシュにぶつけた。
「何それ聞いてないんだけど。はぁ。私はいつ解放されるの?……ね、その強敵って凄く強いの?」
「まぁ、そうだろうね。『博士』が邪眼の研究に使えると目を付けているみたいだから、間違いなく強敵には間違いないだろうな」
「……邪眼」
カナデは小さく呟く。
『邪眼』は神の目の様なものだが、装着者にかなり負担をかける代わりに『神の目』を超える力を発揮できるものだ。
そして『博士』とは執行官の一人で、一言で言えば『マッドサイエンティスト』。
人の痛みを理解せず、寧ろ道具の様に捉えている節がある。
カナデが『ナナくん』と呼ぶ『散兵』は人形の様に綺麗な容姿をしている……というか『人形』だ。
寒い場所でも平気だし、食事を必要としない。
そして彼は『博士』に敵と戦って壊れても改造されて生きている。
人形に『生きている』という表現は正しいとは言い難いが、カナデはそう考えてはいる。
そして、カナデには『博士』は嫌悪する人間の一人だ。
彼女は『苦手』と言う事があっても『嫌い』と言う事は少ない。
基本的にカナデは他者に友好的であり、特別嫌う事はあまりないのだ。
それ程『博士』という人間が嫌いなのだ。
「……ナナくんさ、今、暇?」
「は?何言って……」
カナデが尋ねると、スカラマシュは彼女の様子がおかしい事に気がついた。
普段の楽しそうな笑顔ではなく、真剣な表情をしている。明らかに遊びに誘うような態度では無い。
「……」
「暇ならさ、ちょっとその『公子』がいる場所まで連れてって」
「……なんで僕がそんなことしないといけないんだ?」
「そこにファデュイがいたら面倒な事になるでしょ。でも『執行官』ならほら、何にも言われないよね?お願い!おーねーがーい!」
カナデが両手を合わせてお願いすると、スカラマシュは目を細めて眉間に皺をよせた後、ぷいっとそっぽを向いて歩き出す。
「え!?どっちなの!?いいのかい!?ダメなのかい!?どっちなんだい!」
「…喧しい。ついて来い」
そう言い捨ててスカラマシュは歩き出した。
カナデはその後を追いかけながら嬉しそうに笑う。
「ありがとう!」
「……ふん」
カナデは早足でスカラマシュの隣へ並ぶ。散兵は鬱陶しそうにため息をついて彼女の視線を無視すると、そのまま前を歩き続けた。
※※※
それからしばらく歩いた後、二人が到着した場所は廃墟のような場所だった。
その手前にはファデュイの制服を着た男達が数名見える。
その内の一人がスカラマシュとカナデに気づくと、慌てた様子で駆け寄って来た。
「「散兵」様!?何故ここに?」
「お前如きが僕に理由を聞くのか?その耳は飾りか何かか?」
「はっ!大変失礼致しました!」
部下らしき男は冷や汗をかきながらその場で頭を下げた。
それを一瞥した散兵はカナデの手を引っ張るとそのまま廃墟の中へと進んでいく。
「わぉ、積極的〜♪」
「黙って歩いてろ」
「はーい!」
カナデは機嫌良さげに答えると、そのままスカラマシュに手を引かれながら廃墟の中を進んでいく。
廃墟の奥には秘境の入り口があった。
この先にタルタリヤがいるらしいと判断できる。
「ここに『公子』がいるんだよね」
「……いなかったら職務怠慢にも程があるだろ。はぁ。この先は一人で行け。僕はもう行く」
「え、ついてきてくれないの?ヤダ!一緒に来て!おーねーがーい!」
そう言うとカナデはスカラマシュにベタベタとくっつくと子供の様に駄々をこね始めた。
それに対してスカラマシュは鬱陶しそうに引き剥がそうとする。しかしカナデも簡単に離れようとはせず、むしろより強く抱きついて離れない。
「引っ付くな!離せ!」
「いーやーだー!このカナデ、一緒に行くって言うまで離す事をやめないッ!」
「はぁ、本当にうるさい女だ。……あー分かった!ついていけばいいんだろう!だから離せ!」
「本当に!?やったー!ありがとう!」
カナデは満面の笑みを浮かべるとスカラマシュから離れ、そのまま先に行ってしまう。
スカラマシュはその様子を見てまたため息を吐き出した後、その後に着いて行った。
※※※
主人公、『七七』とはまだあっていないです。
どんな話がみたいですか? 参考にいたします!
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タルタリヤ 番外編
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ディルックルート
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ディルックルート 番外編
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他キャラとの絡み
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過去話
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タルタリヤ if