警戒しながら二人で奥へ進んでいくと、カナデは冒険者として慣れた様子でギミックを解除しながら道を切り開いていく。
そもそもスカラマシュが面倒そうなので自分が動いていたようだ。
途中、邪魔する敵もいたがカナデやスカラマシュの敵ではなかった。
(この先……?)
どうやらこの先に例の『公子』がいるのだろう。カナデの勘がここが最後の部屋だと告げている。
緊張した様子で、カナデは扉に手をかける。
何故わざわざ自分が彼に会いに行っているのか、自分でもよく分からない。
ただ、もしかしたら何かが変わるかもしれない。
……そんな期待を込めてカナデは扉を開けた。
──ドンッ、キン!
すると、激しい戦闘音のようなものが聞こえてきた。
カナデが唖然としながらその光景を見た。
中型くらいの竜と、全身鎧を着た人物が戦っている。
体格からして男性なのだろう。
紫系統の鎧に、宇宙の様に煌めいたマントが特徴的で、顔は仮面に覆われている。
辛うじて人だと分かるのはオールバックになったオレンジに見える髪だ。
カナデはその髪色と、形状は少し変わっていたが赤い仮面に身に覚えがあった。
だが、それよりも。カナデは。
「――カッコイイ」
なんというか。
カナデが前世に憧れた戦隊のヒーローの様だ。
孤独に、それでも仮面で涙や感情を隠すヒト。
完全に無意識の呟きだ。
けれど、それを聞いたスカラマシュは不機嫌そうに顔を歪めるとカナデの頭を軽く小突いた。
「痛っ!何するの!?」
「そんな声を出して、こっちに飛び火したらどうする。」
「え?あ!ごめん」
カナデは慌てて小声で謝る。
判断材料から、恐らくは『公子』なのだろう。
そしてあれは『邪眼』を使って身体を強化しているように見える。
タルタリヤは水元素使いのはずだが、槍を使う今の彼は雷元素を使用している。
ディルックに聞いたが、ディルックの父、クリプスも『邪眼』関係で亡くなったと聞く。
嫌な事を思い出して、カナデは眉を顰めた。
そんなカナデの様子をスカラマシュは特に気に留めず、黙って見ていたが、少し考えた素振りを見せると、口を開く。
「……お前はあんな姿を褒めるのか?どう見ても今のアイツはヒトには見えない。化け物だろ」
「あ、うん。そうだよね……あれ明らかに無理してそうだし、ちょっと軽率だったかも」
「……お前は」
すると、スカラマシュは何か言いかけようとしたが、言葉を切って舌打ちをした。
「なんでもない」
そんなスカラマシュを見て、何となくカナデは自分は人間では無いと知っているだろうに、何故自分に構うのか、と言いたそうに見えた。
だから、カナデはスカラマシュを安心させる様に微笑みかける。
「勿論、ナナくんがどんな存在でも私は君を「弟にしたい」って言うよ。……たとえ、どんな姿でも」
「……うるさい。黙れ。」
スカラマシュは舌打ちをすると、不機嫌そうに顔を歪めてまた黙り込んでしまう。
しかし、カナデは気にせず微笑んだ。
あまり追求すると、また怒りそうなので口を閉じると、タルタリヤらしき人物と竜の戦いを傍観する事にした。
ここで自分が加わっても邪魔にしかならないだろうと判断したからだ。
※※※
しばらくして。
過酷な戦いの後、竜の巨体が倒れた。どうやら戦闘は終了したらしい。
「……ほら、とっとと行け。僕はアイツに関わりたくない。色々面倒になる前に逃げたいんだ。」
「あ、うん。分かったよ。ありがとう!」
カナデはスカラマシュに手を振って見送ると、タルタリヤの方を見る。
先程の換装の様な物を解除し、膝をついている様子から疲労困憊なのは間違い無いだろう。
だが、カナデは覚悟を決めて、ゆっくりと彼に近づいた。
「あ、あのー?大丈夫?」
「ん……?」
カナデの声に反応し、ゆっくりと青年は顔を上げ──目が合う。
暗く青いぱっちりとした瞳は、やはりタルタリヤに間違え無かった。カナデの姿を見て、驚いたように目を見開く。
「何でここに…。いつも自分から来ないのに。」
「あ、いや、ちょっとね!あはは」
カナデは誤魔化す様に笑った後、彼の前にしゃがみ込んだ。
そして、ジッと彼を見つめた後「迷惑だった……かな?」と不安げに聞いた。
すると、タルタリヤは一瞬驚いたように目を見開いた後、優しく微笑んだ。
「まさか。嬉しいよ。……でも、危ない……って、一人で来たの?部下がいたはずだけどどうやって……」
「んー……あ。企業秘密的な?」
「それを俺が信じるとでも?」
「……だよね〜」
カナデは誤魔化す様に笑って頬をかいた。
その様子を見ていたタルタリヤは静かに笑みを浮かべる。それは苦笑いに近いものだったが、何処か優しく見えてカナデは安心した様な笑みを見せる。
「いつからここに?……さっきの姿、もしかして見てた?」
タルタリヤは少し気まずそうに視線を逸らしながら、小さな声で問いかけた。
先程の姿と言うのは恐らく『邪眼』を使用した姿だろう。
この世界の普通の女性ならば、悲鳴をあげて逃げ出したり…つまり恐怖や困惑をしても可笑しくは無い姿だ。
だが、カナデは首を横に振った後、少し思案した様子を見せた。
「……うーん。あの姿って多分めちゃくちゃ疲れるよね?だから、こう、ちょっと言うのは引けるんだけど……」
「何?」
「……めちゃくちゃカッコ良くない?何あれ、なんか、こうふわーって浮いてたし!こう!物語の主人公とか、主要メンバーみたい」
カナデはキラキラとした目で興奮気味にそう言った。
そのあまりにも予想外の反応に、タルタリヤが目を丸くし、困惑している。
「え……それだけ?」
「?うん。何が?変身みたいでかっこよかった!私も変身してみたい……取り入れようかな、戦闘スタイルに。……いや、邪眼は勘弁だけど!」
カナデはうんうんと頷きながら、ぶつぶつと考え込んでいる。
そんな様子を見ていた彼は呆気に取られた様に呆然としていたが、すぐに笑い始めた。
「は、ははっ……あはははっ……!」
「な、何笑ってるの!だってカッコイイじゃん……というかさ、こういう事してるなら先に言ってもらわなきゃ困るんだけど。やっぱり私に対して好きとか言ってるの、あれ挨拶的な奴なの?だから言わなかった感じ?」
カナデは少し拗ねた様な様子を見せる。そんな彼女の様子を見て、更に笑いを零したあと、目尻に溜まった涙を拭った。
「はー……ごめん、久々に笑った気がするよ」
「物凄く失礼なヤツだよね、君って。……ちょっと触りたかったなぁ、あの装備。でも負担になるし、駄目か。」
カナデが残念そうに言うと、不意に手を掴まれた。驚いて見上げると、タルタリヤがじっとこちらを見つめているのでカナデは少し困惑する。
「な、何?どうしたの?」
「いや…相変わらず優しいね。……うん、でも少しくらいなら大丈夫だけど、怖がらない?」
「?うん」
カナデは首を傾げながらも、特に深く考えず返事をした。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
彼はそう言うと目を閉じ深呼吸をする。そして次に目を開けた瞬間、先程までとは全く違う雰囲気になったかと思えば紫色の神の目に似た宝石のようなもの…「邪眼」を手に取ると、姿が一気に変わる。
全身鎧のような姿に、赤の仮面。先程までの彼とは違い、静かな威圧感を感じさせる。
「どう?平気かな?」
「……おお。声も違うんだね。触っていい?」
「うん、良いよ」
恐る恐ると言った様子でカナデは手を伸ばす。ひんやりとした鎧独特の手触りが感じられた。カナデは目を輝かせながらペタペタと色々触っている。
「おおー、凄い。硬い。このマント凄い!宇宙みたいにキラキラしてる!……これ私見えてる?なんかいつもよりデカイね、体型。」
「あはは、あんまり触られるとくすぐったいよ。それにしても本当に驚かないんだね?」
「うん?驚きはしたよ。ビームとか出せそう。ロマンってやつだね。」
カナデは無邪気に笑いながら、今度は片手でペタペタと触りながら空いている方の手で大きなマントを触る。
その様子を見て、タルタリヤは微笑みながら言った。
「ねぇカナデ」
「……なに?」
突然名前を呼ばれた事に驚いた様子でカナデは彼を見る。すると、彼は真剣な表情で問いかけてきた。
「今の俺ってカッコいい?」
「?うん。カッコイイよ。というか普段もイケメンじゃん。」
「そっか。良かった」
当たり前に言う、変わりないカナデの言葉を聞いて、彼は安心した様に微笑むと再び元の姿へと戻る。
「あ、もう終わり?」
「うん、あまり負担かけたくないからね」
「そっかー……じゃあついでに今も触っとこ。ペタペタ〜比較だね。」
カナデは楽しそうに言いながら、ぺたぺたとタルタリヤを触り始めた。その様子を見て、彼は困った様な表情を浮かべる。
「こら、あまり触らない」
「えー……触っていいんじゃないの?そもそも君だって私引き止める時ハグしたりするから良くない?私ばっかり不公平でしょ!」
「それは君が……まあ、今はいいや。とにかく駄目なものは駄目だよ」
「あ。実は割としんどいの?ならやめようかな」
カナデが手を離すと、彼はホッとした様子を見せる。その様子を見て、カナデは首を傾げたがそれ以上追求する事はしなかった。
「それで……ここには何の用で来たんだい?」
「用……?あっ、忘れてた!……でも、ま、いいや。えっと……。ちなみに今大丈夫?疲れてるよね?肩かそうか?」
カナデは思い出したように聞いてきた。それに対して彼は困った様な笑みを浮かべると首を横に振る。「平気だよ、ありがとう」と言ってから小さく笑った。
その様子にカナデはホッとした様子で微笑む。
「良かった。でも無理はしないでね」
「うん、分かってるよ」
「そっか、えっと。私は先に帰ろうかな」
「え」
カナデはそう言うと埃を払い、背を向ける。
すると、彼は驚いた様に目を見開いた後、慌てて彼女の手を掴んだ。
「ちょ、ちょっと!なんで!?」
「え?いや、だって疲れてるでしょ?そんな時に私いたら邪魔じゃん」
カナデはキョトンとした様子で答える。彼女は一応タルタリヤも男性だしプライド的なものもあるよね……と言う気遣いからの発言だった。
しかし、その発言を聞いた瞬間。彼は目を見開いた後、呆れたような表情を見せる。そして大きく溜息を吐き出した。
「君、そういう所あるよね……。まったく」
「え?今の何処に呆れられる要素あったの?解せぬ」
カナデは眉をひそめながら首を傾げる。本気で訳が分からない様子だ。その様子を見て、彼は再び大きな溜息をついた後──。
「ねぇ、カナデ」
「ん?」
「君のそういう所、本当に悪い癖だと思うよ。前にも言ったけど、もう少し俺の気持ちも考えて欲しいかな」
「気持ち……?でもここに長居しても仕方ないし、私のわがままに付き合わせるのも申し訳ないし。」
カナデは真剣な表情で言う。それは本心であり、事実だった。しかし、それを聞いて彼は再度呆れたような溜息をつく。そしてカナデの手を引き寄せると顔を近づけてきた。
「じゃあ君は俺の気持ちを無視するわけだ」
「そういうわけじゃ……。でも、私がいても意味無いでしょ?」
カナデが戸惑った様子を見せると、タルタリヤは静かに微笑む。そしてそのまま彼女の頬へ手を伸ばし優しく触れた。
その行動に驚いたのか、カナデはビクリと身体を震わせる。
「意味はあるよ」
「え?……あの、なんで触ってるの?」
「君に触れたいから」
淡々とした口調ながらも、熱を帯びた眼差しで見つめられてカナデは思わず頬を赤らめる。しかしすぐに我に返ると、慌てて手を払い除けた。
「はいはい。そういうのはいいです。」
「つれないな。まあ、そういうところも好きなんだけどね。」
彼はクスクスと笑いながら再び手を伸ばすが、カナデはそれを避ける様に数歩後ろに下がる。
その様子を見て、彼は楽しげに笑った。
「あはは」
「全く、油断も隙もない。私で遊ばないでもらおうかな!」
カナデは腕を組みながら、仁王立ちでタルタリヤを睨む。その堂々とした態度と言葉に彼はクスクスと笑った後、降参したかのように両手を軽く上げてみせた。
「分かったよ、今日はこれ以上触れない」
「あれ?素直だね。……それはそれでなんか変な感じ」
カナデは怪訝そうな表情をしながら首を傾げる。その様子を見て、タルタリヤは苦笑した。
「あはは、酷いな。まるで俺がいつも君を困らせているみたいじゃないか」
「みたい、じゃなく困らせてるの、君は!自覚がないの?」
カナデは腕を組み、眉を下げながら言う。
そんなカナデに、彼は笑いながら答えた。
「無いかな」
「無いんだ……じゃあ覚えといて。私の考えも尊重するように。」
「はいはい、分かったよ」
やれやれと言わんばかりに肩を竦めながら返事をするタルタリヤを見て、カナデは「絶対理解していない!」と思いつつもこれ以上追求しても無駄だと思い諦めた。
「……じゃあ、今日は帰る。また邪魔したら、擽るから」
「またそれかい?君って案外子供っぽい所あるよね。」
「うるさい!なら私に構わずもっといい人と仲良くしなさい!綺麗な女性とか!」
カナデはムッとした表情で言い返すと、そのまま背を向け歩き出す。その様子を見て、彼はカナデを呼び止めた。
「待って」
呼び止められてカナデは振り向かずにそのまま無言で立ち止まる。そんな彼女にタルタリヤは優しく声をかけた。
「ねぇ、カナデ」
「なに?」
カナデの声は少し不機嫌そうだ。その様子に苦笑しながらも、彼は言葉を続ける。
「君に一つ言っておきたいことがあるんだけど」
「……」
「俺は誰彼構わずこんな事はしないし、君以外には触れたくない」
「……」
カナデは無言のまま動かない。だが、次の瞬間には何かを思い出した様子で目を小さく動かし、手を口元へ持っていった。
「……あのさ。例えば、だけど」
そして、そう切り出しながら振り返る。その瞳には様々な感情の色が浮かんでおり、一言では表せない複雑な心境を表していた。
「君がもし、なにかに復讐したいとして、その時に私が「一緒にいて」と言ったら──連れていってくれる?」
「……え?」
予想外の質問に、思わず聞き返す。するとカナデは罰が悪そうに視線を逸らした。
「……ああ、ごめん。下らない質問だった。忘れて。」
そう言って、再び背を向ける。タルタリヤはその背中には微かに拒絶のようなものを感じた気がした。
───だからだろうか、気がつくと自然と手を伸ばしていた。
「っ!?」
突然腕を捕まれカナデは驚いたように振り返る。
その表情には焦りと戸惑い、そして怯えが浮かんでいるように見えた。
しかし、次の瞬間には表情を取り繕ったかのように笑みを浮かべ直す。
「何、どうしたの?」
彼女は平静を装おうとしているが、僅かに声が震えていた。
それが虚勢である事は一目瞭然だ。
だが、それを指摘したところでカナデが素直に答える筈もなく、それどころか余計に意固地になる事は分かりきっていた。だから敢えてタルタリヤはそれには触れず、言葉を続ける事にした。
「さっきの質問の答えなんだけど」
「……うん?」
カナデは不思議そうに首を傾げる。
その仕草が普段よりも幼く見えて、なんだか可愛らしいなと思いながら彼は言葉を続ける。
「勿論、連れていくよ。だって──」
そう言いながら、腕を掴んだ手に少しだけ力を込めた。
カナデは一瞬だけ眉を寄せるが、少し期待を込めた眼差しをタルタリヤに向ける。
その言葉を聞いた瞬間、カナデの瞳から涙が溢れた。
「あ、あれ?ごめん……なんでだろ。急に涙が出てきて……。」
自分でもよく分からないという様子でカナデは戸惑いの表情を浮かべる。だが、その涙は止まることを知らないようで次々に流れ落ちていく。
「大丈夫だよ、カナデ。落ち着いて」
そんなカナデを安心させるかのように優しい声色で彼は言う。そしてゆっくりと彼女の身体を抱き寄せた。
「っ…!」
「大丈夫、俺が側にいる。君が望む限り、ずっとだ」
「……君は、私を尊重……してくれるんだね」
カナデは涙を拭いながら呟くように言った。その言葉を聞いた瞬間、彼は怪訝そうな表情を浮かべた。
「当たり前じゃないか。そんなの当然だろう?君の事を大切に思っているんだから」
カナデは驚いたように目を見開くと、少し恥ずかしそうに俯く。そして小さな声で「ありがとう」と言った。
そして、恐る恐る手をタルタリヤの背中に回す。
カナデは、昔、そう言って欲しかった。
──幼馴染のディルックは「キャロル」を大切にしてくれたけれど、置いていった。
でも、本当は手を取って欲しかった。
一緒に連れて行って欲しかった。
ずっと、それだけを思っていた。
比較を無意識にしてしまうのは、悪い事だとは思うけれど、それでも……。
期待をしてしまうのが人間だ。
カナデは自嘲するように、力なく笑う。
そんな様子に気がつきながらも、タルタリヤはあえて何も言わずに黙って彼女が落ち着くのを待っていてくれた。
単純かもしれないが、彼女には、それが何よりも嬉しかった。
カナデは深呼吸をすると、ゆっくりと顔を上げる。
そして真っ直ぐに彼を見つめた後、静かに口を開いた。
「ごめんね……でも、ありがとう」
「どういたしまして。……落ち着いた?」
カナデはこくりと頷く。そしてそのまま腕の中から離れると、バツが悪そうな表情を浮かべながら目を逸らした。
「ごめん……急に泣いたりして。いい大人なのに。昔から涙腺弱いから、嫌になっちゃう」
「そんな事無いさ。それに、泣く事は悪い事じゃないと思うよ」
「そう?」
不思議そうに首を傾げるカナデに、タルタリヤは優しく微笑む。
その表情を見て、彼女はドキッと心臓が高鳴るのを感じ──じわじわと色々思い出していき、頬が紅潮していく。
今まで酷い言動をしたり、冷たい態度を取ってきた事を後悔して……カナデは困ったように視線を彷徨わせた。
その様子に気が付き、タルタリヤはククッと喉の奥で笑う。
「なに?そんなに照れなくてもいいのに」
「……一々言わないで。もう、こうしてやる……!」
カナデはそう言うと、タルタリヤの両頬を両手で挟み込むとムニムニと動かした。
「あはは、くすぐったいな」
「うわ、柔らかい。肌白いし……羨ましい」
カナデはそう言うと、今度は両手でペタペタと彼の頬に触れる。そして感心したように声を上げた。
「無駄に顔良くてムカつくなぁ。……目も綺麗だし」
そう言って彼女はマジマジと見ながら顔を近づける。
──すると突然、彼がカナデの腕を掴んだ。
そしてそのままグイッと引っ張る。その勢いで二人の距離が一気に縮まった。
「わっ!?」
カナデは驚きの声を上げると、慌てて離れようとするが逆に引き寄せられてしまう。そしてそのまま唇を重ねられた。
「んっ……!?」
突然の事に頭が真っ白になる。何が起こったのか理解できず、カナデは硬直した状態で固まってしまった。
暫くして唇が離れると、カナデはハッと我に返り慌てて距離を取る。
そして困惑した表情で彼を睨みつけた。
「な、何するの!?」
「ごめん、つい」
「ついで済むか!ばか!」
カナデはそう叫ぶと、慌てて口元を拭う。その顔は真っ赤に染まっており、耳まで真っ赤だった。そんな様子を見て、彼は悪戯っぽく笑う。
「あはは、ごめんって。でも、まさかそんな初心な反応するなんて思わなかったよ」
「……自分は沢山経験したって言いたいわけ?」
カナデは不機嫌そうにじっ、と恨みがましい目で見ると、フンッと鼻を鳴らした。そんな彼女を見て、タルタリヤは楽しそうに笑う。
「まさか、そんなわけないだろう?」
彼はそう言って肩を竦める。しかしその表情には余裕があり、カナデは「絶対嘘だな、コイツ」と考えながらも口には出さなかった。
そして同時に一瞬絆されかけた事を後悔し、小さく舌打ちをする。
「……もういい。やっぱり気の迷いだった。ぜっっったい君とは友人以上になりません。バルバトスに誓って!」
カナデはそう言うと、早足で歩いて行ってしまう。その後ろ姿を見送りながら、タルタリヤはクスクスと笑った。
「うーん、これは前途多難だなぁ。まあでも──」
そう言いながら、彼は楽しげに目を細めて呟いた。
「時間はたっぷりあるから、ゆっくりと口説かせてもらおうか」
さて、どうするかな。そう思いながら彼は楽しそうに笑みを浮かべつつ歩き出したのだった。
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