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「〜♪」
カナデはその日上機嫌だった。
軽はずみで受けたが、長い期間がかかる依頼が終わり、スッキリしたのと、大量のモラを報酬で貰えたからだ。
なので今日は久しぶりに買い物でもしようかな、と考え、かなり気分が良かったのだ。
鼻歌が出るくらいには。
カナデはスキップでもしそうな足取りで歩いていたが、その時──野良猫を見つけた。
猫は路地裏へと歩いていく。
それを少し考えた様子で見ていたが、その時のカナデは自分に無敵感を感じていた。
なので、その猫を追い──今、彼女は猫を撫でていた。
人馴れをしているが首輪は無いので地域猫かもしれない、なんてカナデは考えながらヨシヨシ、と猫の首の下を撫でる。
すると、猫は気持ちよさそうに目を細めた。
「ふふ」と思わず笑みが溢れてしまうカナデは「えらいねーいい子だにゃー」なんて言いながらしゃがみつつ、猫の顎の下を撫でる。
猫は「ニャア」と鳴いて、スリスリと体を腕に擦り付けている。
完全にカナデはリラックスしていた。
──後ろからする僅かな足音が聞こえないくらいには。
そして、カナデがその足音に気づいた時には、もう遅かった。
「何してるの?カナデ」
「え?」
聞き覚えのある声と言葉に座ったまま振り返ると、そこにはファデュイの執行官である「タルタリヤ」の姿があった。
彼の姿を目に捉えた瞬間──カナデは一瞬固まった。
まさか猫に対して甘い声で撫で回している姿を見られるとは思っていなかったからだ。
カナデは冷や汗をかきながら、どう誤魔化そうかと思考を巡らす。
すると、そんなカナデの心境に気づいていない猫は気にせず「ニャア」と鳴いて擦り寄っている。
「えっと……」
「うん」
何を言っていいか分からず、言葉に詰まるカナデ。
そんなカナデにニコニコと笑みを浮かべたまま返事を待つタルタリヤ。
明らかに先程までの様子を見ているにも関わらずカナデに言わせようとしている辺り性格は悪いだろう。
「その、猫が可愛くて……」
「うん?」
「つい撫でちゃった……みたいな?」
少しの沈黙の後、わざとらしく
そんなカナデを見ながらタルタリヤはニコニコと笑みを絶やすことなく「へぇ」と相槌を打つ。
カナデはそれを見ると、いきなり立ち上がり、ジリ……と後退りしながら「じゃあ、私はこれで……」なんて言って立ち去ろうとする。
しかし、そんなカナデの手を摑むと「待って」と言いながら無理矢理引き戻す。
すると、カナデはまたか、と言いたげな表情を見せながら仕方なく立ち止まる。
「えっと……何?」
「いや?別に?」
そう言いながらタルタリヤはカナデに顔を近づけ、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる。
それはどこか悪戯っぽいもので、カナデは「嫌な予感」を感じとった。
タルタリヤと暫く行動を共にすることが増え、何となくカナデも彼の性格が分かり始めたのである。
そして、この笑みは大抵良くないことを考えている時だということを。
なので、こういう時は変な雰囲気になる前に誤魔化すのが一番だ。
カナデは空いている手を伸ばし、あえて彼の頭を撫でてみる事にした。
「お〜、よしよし〜かわいいね〜」
「は?ちょっと……」
「君も撫でてあげようね〜よしよし〜」
そう言いながら、カナデはわしゃわしゃと頭を撫でる。
すると、彼は一瞬ポカンとした後、眉を顰めて複雑そうな表情を見せた。
どうやら不意打ちだったようで、カナデにはタルタリヤにしては珍しく狼狽えているように見えた。
そんな珍しい様子に気を良くしたカナデは、ニコニコと笑顔を浮かべながら彼を撫で続ける。
すると、彼は諦めたように溜息をつき、カナデの好きなようにさせてくれた。
(寛容的な所あるなー、やっぱり。)
そんな事を思いながら暫く撫で続けると、満足したのか「よしっ」と言って頭から手を離す。
すると、それを合図にしたかのように、彼もカナデの手を解放した。
「満足?」
「うん!ありがと」
「うん、良かったね、どういたしまして」
カナデがそう返すと、彼はにこやかな笑みを返してくる。
それを気にせず、カナデはどうやってこの場を切り抜けるか考えていた。
しかし、良い案は浮かばない。
(どうしよう……)
カナデが悩んでいると、突然「ニャア」と鳴く声が聞こえて来た。
鳴き声の方を向けば、先程の猫がカナデの足元に擦り寄っている。
「おお、猫ちゃん、逃げてなかったの?
そう言いながら猫を抱き上げ、顎の下を撫でるカナデ。
すると、猫は「ゴロゴロ」と喉を鳴らし始めたので、カナデは嬉しそうに笑う。
「あははっ、人懐っこい〜」
そう言いながら猫と戯れるカナデ。
しかし、そんな様子を隣で見ていた彼は不満そうな声で問いかける。
「ねぇ」
「ん?なーに?」
「俺も触っていい?」
「へ?あ、うん」
カナデはキョトンとした顔をしながら返事をし、猫を渡そうと腕を伸ばす。
しかし、何故か彼は猫ではなく、カナデの頭に手を伸ばし──撫で始めた。
「そっちかい!?」
「え?うん」
驚いて思わず叫んでしまうカナデだったが、彼は特に何も感じていないのか平然とした顔をしている。
猫はカナデの声に驚いたのか、それとも居心地が悪いと思ったのか「ミャア」と鳴いてカナデの腕から逃げていってしまった。
「あー……」
それを見て残念そうにしているカナデをよそに、彼は満足そうな表情で撫で続けていた。
暫くすると満足したのか「ありがとう」と素直に礼を言って、頭を撫でていた手を離した。
そんな彼に対し、カナデは複雑な心境で「どういたしまして」と返す事しか出来なかった。
すると、彼は何事も無かったかのようにカナデに向き合う。
「で?猫と戯れて満足した?」
「む。君のせいで逃げたんだよ?よくもまぁ、ぬけぬけと……」
カナデはムッと、浮かべながら彼に物言いたげな表情を向ける。
しかし、タルタリヤは悪びれる様子もなく「ごめんごめん」と言いながら笑うだけだ。
そんな様子に溜息をついてからカナデはペシッ、と彼を軽く叩いた。
「ていうか、なんでここにいるの?仕事?」
「いや。ただ単に散歩だよ」
「暇なの?君の立場って偉いんじゃないの?」
カナデが呆れたように言うと、彼は肩を竦めながら「まぁね」と簡単に肯定した。
そんな様子を見て、カナデは信じられないと言いたげな表情で彼を見る
。
「仕事しなよ……」
「してるさ。優秀な部下達が」
そう言ってニヤリと笑う彼を見て、カナデはあからさまに顔を顰めた。
だが、これ以上言っても無駄だと思い、それ以上は何も言うことなく、ため息をついた後、歩き出す。
付き合ってられない、と言いたげに。
しかし、何故か隣に並ぶように彼も歩き出す。
「ちょ……なんでついてくるの……」
カナデは嫌そうにタルタリヤに問いかけるが、彼は「なんとなく」と言って曖昧に返す。
その後も結局ついてくるので、仕方なくカナデはそのまま居ないものとして考えよう、と切りかえて歩く事にした。
※※※
暫くして。
二人は表通りの並んでいる店を何気なく眺めながら歩いていた。
その時、不意にカナデが何かに気付いたように「あ」と呟くと、足を止める。
それに釣られるようにして、隣を歩く彼も足を止めた。
カナデはそんな様子に気付かず、ある店に並べられている小物をじっと眺めている。
それは、鳥が彫られたオルゴールだった。
それを見て目を輝かせるカナデに、彼は不思議そうに問いかける。
「欲しいの?」
「え?いや、可愛いなって……」
そう答えながらもカナデの視線はオルゴールに向けられたままだ。
そんな様子に苦笑しながら彼はカナデに提案する。
「買ってあげようか?」
「え?いや、君にはいつも色々買って貰ってばかりだし。……あ、そういえばこの髪飾りも君が買ってくれたんだったよね」
そう言ってカナデは自分の髪につけている髪留めを触る。それは、先日彼がプレゼントとして贈った物だった。
「それつけてくれてるんだね」
彼は嬉しそうに微笑みつつ、カナデの手にある髪飾りに触れる。
カナデはその彼の表情に戸惑いながらもコクリと頷き返す。
「たまにだけどね。無くしたら嫌だし」
「また買ってあげるよ?」
「そういう問題じゃないから!もう。君は私の事甘やかしすぎ。」
そう言って不満そうな顔をみせるカナデだったが、本当は彼が贈ってくれる物を結構気に入っていた。
髪飾りだったり、服だったり、食べ物だったり。
どれもセンスが良くて素敵なものばかりだ。とはいえ、高級そうな物も渡してくるし、カナデはその度に申し訳なさを感じていた。
彼は「気にしなくていいよ」と言ってはいるが、それに甘えるわけにはいかないと思っている。でも、本当は嬉しかったりもするので……結局断れずにいたりする。
そんな複雑な心境のカナデに対して、以前、彼は涼しい顔で言った。
───「だって、俺お金には困ってないし」
そんな様子にカナデは呆れてしまう。
確かにモラを沢山銀行に貯蓄していると前に聞いた事はあるが、だからといってこんな高価な物ばかり貰うわけにはいかない。
というかそもそもプレゼントを買うお金があるなら自分の為に使えば良いのでは?
とも思うのだが、タルタリヤが自分の物に対して、食事以外に使ってるイメージがない。
家族の為になら財布は緩めるが、収集癖など、執着的な物はあまりないようだ。
カナデは本をちまちま買ったり、可愛い物をついつい購入してしまうと言うのに。
だから、お返しにいつも悩むのだ。
当然貰ってそのままではいられないので、カナデはお返しに大抵手作りお菓子や料理を作るのだが、彼はそれらの方が好きらしい……。
「君って……こう、ほら、欲しいものとか無いの?」
「無いね」
カナデが苦笑しながら問いかけるも、彼はキッパリと言い切る。
その態度にカナデは「ふーん」と言いながら彼の方を見る。
彼の態度に呆れつつも、何となく興味本位で質問してみたくなったカナデは彼に問いかける。
「じゃあ、例えば何をプレゼントすれば嬉しかったりするの?」
そう聞くとタルタリヤは少し考え込んだ後、カナデの方を見ると、軽く微笑む。
「君がくれる物なら何でも嬉しいよ」
そして、そう言って微笑む彼の顔は憎たらしい程優しい表情だった。
そんな彼にカナデは何とも言えない気持ちになる。
「……何か、そういうの狡いよね、君って」
「そうかな?別にそういうつもりは無いけど。ただ本当にそう思っているだけだよ」
彼はカナデの言葉に不思議そうな顔をしつつも、素直に答えているように見える。
そんな様子を見て、カナデは「そういう所だよ」と言いたげな表情を見せた。
すると、それを見ていた店員が「お嬢ちゃん達、イチャイチャするのはいいけど、買うのか?それとも買わないのか?」と話しかけてくる。
「……イチャイチャはしてないですけど、じゃあ──そのオルゴール下さい。……あ。あとそのピアスも」
カナデが指をさしながら言うと、男の店員は「はいよ」と返事をして、会計をする。
そして、その分のモラを置けばそのままオルゴールが入った小箱の入った袋とシンプルなデザインのピアスの入った袋をカナデに渡してくる。
それをタルタリヤは無言で見ていたが、カナデはピアスは開けていないので不思議そうにしていた。
カナデは受け取ると、オルゴールは空間から取り出した鞄の中に入れるがピアスはタルタリヤに差し出した。
「はい、君の分」
「……俺に?」
「うん。いつも買って貰ってばかりで悪いし……だからお礼」
カナデはハッキリと言うと「さっき何でもいいって言ったでしょ」と付け足す。
その言葉に、タルタリヤは一瞬驚いた顔をするが直ぐにいつもの笑顔に戻った。
「ありがとう」
そして、そう言ってピアスを受け取ると、懐にしまう。
その様子を見たカナデは満足気に笑うと、「行こっか」と今度は自分から誘って歩き始める。
「何処へ行くつもり?」
「えっと、暇なんでしょ?買い物に付き合って。今日は依頼料沢山貰ったから私が奢ってあげる」
そう言いながらカナデはニッと自慢げな笑みを浮かべる。それを見た彼は「へぇ」と呟きつつ、カナデの後をついて行く。
「じゃあ、ありがたく奢って貰うとするよ」
「うんうん。そうしなよ。「断るのは失礼」だもんね?」
そう言って悪戯っぽく笑うと、彼は前にそんな事をカナデに言った事を思い出す。
覚えてくれていた事が嬉しかったのか、彼は嬉しそうに微笑むと「そうだね」と言って歩き出した。
どんな話がみたいですか? 参考にいたします!
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タルタリヤ if