アンケートありがとうございます。
後ほどこの章の初めに設定纏めます。
それから適当な店に入ると、食事を注文後、二階の食事スペースに二人は移動した。
ちなみに今いるのはスネージナヤの首都部。
寒さはあるが、暖房はちゃんとあるので気になるほどの寒さではない。
店内には楽しそうに話す人々や、楽しげに食事を楽しむ客達がいる。
「ここ、気になってたんだ!……デザートが美味しいらしいって聞いて」
「ふーん?」
カナデが楽しげに話すと、向かい側の席に座ったタルタリヤはテーブルに肘を着けながら、興味深げに眺めてくる。
その視線を感じながらもカナデは気にしないことにして
少しして料理が運ばれてくると、二人は会話を中断し、食事を始める。
「いただきます!」
カナデが手を合わせると、向かい側に座った彼はそれを見ながら笑う。
そして、二人は料理を食べ始めた。
「美味しい!」
カナデが幸せそうに声を上げると、タルタリヤは微笑んで言った。
「確かに美味しいね」
「うん。ここにしてよかった!また来ようっと」
カナデは満足気に言うと、パクパクと料理を口に運んでいく。
そんな様子に彼はクスッと笑うと、自分の料理を食べながらカナデに話しかける。
「カナデって本当に美味しそうに食べるよね」
「そう?でも、そういう君もいつも美味しそうに食べてない?」
「そうかな?普通だと思うけど」
「いやいや、絶対そうだって」
そんな会話を交わしながら二人は食事を続けていく。
暫くして食後のデザートが運ばれてくると、カナデは嬉しそうに目を輝かせる。
そして、早速口に運ぶと幸せそうに顔を綻ばせた。
「うんうん。絶妙な甘さ……美味しい」
カナデの様子を見ていた彼はクスッと笑う。
そして、そのままカナデの口元に手を伸ばし、指で彼女の口元を拭う。
「クリームついてるよ」
そう言って指についたクリームを見せると、カナデは恥ずかしそうに頬を赤く染める。
そして、慌てて紙ナプキンを取ると口元を拭いた。
「……ありがとう。でも普通に口で言ってくれないかな?恥ずかしいから」
「ごめん。つい、ね?」
そう言って彼は悪びれる様子もなく笑うと、カナデは、またか、と呆れながらも笑みを浮かべた。
それから二人は食後のデザートを食べ終えると、支払いを済ませて店を出る。
外は相変わらず寒く、カナデはぶるりと身を震わせた。
「急激な温度差……まあ、仕方ないけど」
「確かにそうだね」
そう言って彼はカナデの手を握る。
突然の事に驚いたカナデは目を丸くして彼を見たが、彼は気にした様子もなく笑っている。
「こうすれば暖かいだろ?」
「まあ……うん。確かに。でも……ちょっと恥ずかしいからいいかな……」
カナデがそう言って手を離そうとすると、彼は握る手に力を込めて、引き止めてくる。
「駄目。離さないよ」
そう言って彼は妖しげに微笑むと、カナデの手を引いて歩き出した。
「ちょ、ちょっと!」
「ほら、行くよ」
そう言ってカナデの抗議の声を無視して歩き続ける彼に対して、カナデは諦めたように溜息をついて、彼についていく事にするしかない。
「全く……君はいつも強引だね!?……まあ、いいけど」
カナデが諦めたように言うと、彼は嬉しそうに笑う。
「はは。でも、嫌いじゃないだろ?そういう強引なところ」
「自信満々に言うね……そんな態度取ってて私に嫌われても知らないよ」
カナデが呆れたように言うが、彼は気にすることなく「大丈夫」と自信ありげに答える。
「俺は君に嫌われることは無いから」
「何その自信……どこから出てくるんだか。」
呆れたように呟くカナデだったが、その顔は満更でもなさそうな表情をしていた。
その様子を見たタルタリヤは嬉しそうに微笑むと、カナデの手を少しだけ強く握りしめる。
カナデは訝しげに「何?」と彼に視線を向けるが、タルタリヤはこう答えた。
「なんでもないよ」
「………あっ、そ。……あ。あそこに美味しそうなクレープがある……」
カナデが指さした先には、確かにクレープ屋があった。
「食べたいの?買ってあげるよ」
「いや、でもさっき食べたばっかりだし……太るかもしれない。」
「少しくらい太っても大丈夫だよ。むしろもっと肉を付けた方がいいんじゃないかな?」
彼はそう言ってカナデのお腹周りを触りながら言う。
カナデは慌てて彼の手を払うと、ジトッとした目を向ける。
「こら、勝手に触るな!セクハラだよ、それ!……もう、君ってそういうところあるよね。言っちゃ悪いけど、無神経と言うか、デリカシーが無いというか……。私に対する気遣いが足りなくない?」
「そうかな?俺はただ思ったことを口にしただけなんだけど」
タルタリヤは不思議そうな表情をしており、その様子を見たカナデは大きな溜息を吐いた。
「そういうところだよ……もう。そもそもそんな人とやっぱり深く仲良くはなりたくないかも。」
カナデはそう言いながらそっと空いている手で彼の手を外し、さり気なく離れると、先程の方向に歩き出す。
やはりカナデとしては、タルタリヤのこういう部分が苦手なのだ。
もし付き合うなら人前で接触はあまりしたくない。目立つのは嫌だし、恥ずかしい。
だが、それをタルタリヤに訴えたところで理解する筈がない。
彼はそういう性格の人間なので「別に気にする事?」なんて言うに違いない。
だから、カナデは諦めて放置するしかないのだ。
だが、それでも不満がない訳ではないので指摘をしたりもするが、聞き入れる様子が無い。
それどころか逆に開き直ってしまう始末なので、結局いつもカナデが折れることになるのだ。
「ねえ、どこに行くの?」
カナデが歩いていると、背後からそんな言葉を投げ掛けられた。
振り返れば、そこにはタルタリヤが追い付いてきていた。しかもニコニコと満面の笑みを浮かべている。
そんな様子にカナデは疲れてしまう。
(コイツに何を言っても無駄な気がする……頑張って言っても無駄無駄無駄。逃げても追いかけてくるし、なのに態度を雑にしても嫌がらないし。私は頑張って理解しようと歩み寄っても、そっちは変わる気がない。……もう、どうしたらいいのか)
「無視は酷いと思うよ?いつもそうやって直ぐ人前で考え込むのは悪い癖だよ」
そう言って彼はカナデの額を軽く突っついた。
「痛っ……!?」
「あはは、ごめん。でも、本当に考えすぎだよ」
「………誰のせいだと思ってるの。君が脳直な態度するから私がいつもいつも苦労してるんだよ」
カナデは柔らかな口調で言うが、明らかに僅かに怒りを含ませた声色で言い返す。
「うーん?そうかな?」
「そうだよ」
カナデはそう言って自分の額をさすりながら不機嫌そうに彼を見た。しかし、彼は全く気にしていないようで、飄々とした態度を崩さない。
そんな態度に更に苛立ちを覚えるカナデだったが、なんとか堪えつつ歩き出す。
時間の無駄だし、人がいる場所でそんな態度は常識的にありえないからだ。
だが、それを分かっている筈の彼は構わずに話し掛けてくる。
「何をそんなに悩んでるの?」
「……君の、言動、全て、癪に障るんだよ、もう」
「あはは、それは悪かったね」
全く悪びれた様子もない言い方にカナデは呆れながら溜息を吐く。
一体この人と接する様になって何度ため息をついただろうか。
数えるのも億劫になるくらい、カナデはタルタリヤと出会ってから溜息ばかりついている気がする。
そもそも一々感情的になってしまうのが悪いのか?と心の中で自問するが、きっと答えは出ないのだろう。
だとしたらいっそ受け入れてしまおうか……と考えてじっ、とカナデはタルタリヤを見上げる。
カナデは自分のマナーとして、基本的に人の目を見て話す様にしている。
──それは相手が誰であってもだ。
それは彼女なりの礼儀だと思っているからだ。
そんなカナデの態度を見て何を思ったのか、彼は笑顔を浮かべたまま問いかける。
「どうかした?俺の顔に何かついてる?」
そう言って顔を近づけてくるので、カナデは咄嗟に距離を取った。
「ムカつく顔がついてる。」
「はは、酷い言われようだ。」
彼は怒るでもなく、ただ笑ったまま言った。それもカナデは少し腹立つのだ。
心が広いのか、それとも余裕なのか。
恐らく両方だろうとは思うが、カナデとしては複雑な気分だ。
いつもこの人はそうだ。
前に彼の立場を知る一般人におざなりな態度をされても、何も感じていない様子だった。
──なら、こうして自分が言っても、本当はそれはどうでもいい、と感じているのか?
どうして酷い態度をされても気にしないのか?
もし、自分だったら無理だ。許せる筈がない。
それがとても、カナデには腹ただしいのだ。
心理学の世界では、怒りは第二感情であると言われていると聞いた事がある。
その前に別の感情があって、ほとんどの場合それは怒りの裏に隠れて自覚されない、と。
ならば、とカナデは考える。
──本当に自分がこの人に対して感じている感情は何なのだろうか?……と。
嫌いではない、とは思う。
どうでもいい人間なら、きっとこんな風に悩む事もないし。
それに彼が他の人間と違うというのは分かっているつもりだ。
だからこそ、余計に苛々してしまうのだ。
自分が悩んでる事すら彼にとっては大した事ではないのでは無いか?と思ってしまうから。
カナデはそこまで考えて、また溜息を吐いた。
「はぁ。やっぱりムカつく」
「俺はカナデが困ってる姿も可愛いと思うけど」
「……人が真剣に悩んでるのによくもそんな事言えるね。まあいいや、とりあえずじゃあこっちついて来て。」
「え、どこにいくんだい?」
「いいから!」
カナデは半ば強引に彼の手を掴みながら歩き出す。
辺りをたまにキョロキョロと見回しながら、誰もいなさそうな場所を探す。
しかし、人が多いこの場所でそんな都合の良い場所などあるわけが無い……。
「チッ、じゃあ外行こう、外」
カナデはそう言うと、そのまま町の外側のフィールドを歩き出す。
すると、ある場所を見つけ立ち止まった。そこには何も、誰も居らず、ただ広い雪原だけが広がっていた。
※※※
「ここならいいか。」
とりあえず暫くは誰も来ないだろう。
そう判断したカナデは、雪原の中ほどまで歩きそこで立ち止まった。
そしてくるりと後ろを振り返り、手を引いて連れてきたタルタリヤと向き合う。
「君って分かりにくい!本当にムカつく!」
そう言い放ったカナデの顔は真っ赤に染まっていた。そして、僅かに瞳も潤んでいるように見える。
それを見た彼は、一瞬驚いた表情を見せたが直ぐにいつもの笑顔に戻った。
「はは、それはごめん」
彼はそう言いつつも、やはり嬉しそうに笑っていて。それが尚更腹立たしいのか、カナデは彼を睨み付けながら続ける。
「確かに君も表情出したりする事はいつもあるけれど、いつもいつも基本的にはなんか、希薄!戦う事以外で強い感情出してるの見たことないし。何考えてるのか、本当にわかんない!」
カナデが叫ぶように言い切ると、彼は少し困ったように眉を下げながら「あー……」と呟く。
そして何かを考えるような仕草をして、またカナデに視線を向けた。
「そうだね……確かに俺はあまり感情を出したりする事は少ないかもね」
そう話す彼の表情は先程までの笑顔とは違い、真剣なものだった。
それを見てカナデは少し驚くが、まだ怒りは収まらない。
「それがムカつくって言ってるの。そういう態度ばかりだと私に対して何考えてるのか分かりにくい。言葉に重みを感じない」
カナデは強い口調でそう言いながら、彼の目を見た。
すると彼は、「あはは」と乾いた笑い声をあげる。
「はは……それは、ごめん。でもさ……」
彼はそこで言葉を区切るとカナデに一歩近づく。
そして、彼女の頬に手を添えると真っ直ぐカナデの目を見つめたまま言った。
「「君」への想いはちゃんと込めてるつもりだよ」
その真剣な表情と声色に、カナデは思わず固まってしまう。そんな彼の様子にカナデは混乱しながらも何とか口を開いた。
「そ、そんな事言われても……わかんないものはわからないし……」
「本当に?」
その問いにカナデは上手く答えることができず、口をつぐんでしまう。
しばらく沈黙が続いた後、タルタリヤはカナデから手を離すと一歩後ろに下がって答えた。
「少し意地悪が過ぎたかな……ごめん」
そして、そう謝ると、カナデは首を横に振る。そして、少し間を置いてから口を開いた。
「いや……私の方こそ、ごめん。酷いのは私の方だと思う。………自覚は、本当はあるけれど。……だから、その。これ以上君に酷い態度は取りたくない。私がいつも曖昧だし、どうしてか君といるのが悪くない、と思っている節もあるし、人間である以上、他人に嫌われたくないって考えが働いていて……。はぁ。確かに悪い癖だね、考え過ぎるのは」
カナデは自分の考えを吐露した後、大きく溜息を吐く。
そして「……あのね」と呟くように話し出した。
「ずっと考えてた事があるんだけど、君に話すべきか迷ってて」
「何?」
カナデが真面目な顔で話すので、彼も表情を引き締めて聞き入る体勢になる。
「君は私が好きだと言ってくれるけど、それってつまり、恋人とか、深い関係になってもいいと、そう思ってるんだよね?」
カナデの質問に彼は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻り頷いて答えた。
「うん、勿論そうだよ」
「……その先の事って考えてる?君の立場上、大っぴらに恋人やそれ以上になっても公言する訳にもいかないのは理解しているよね?」
「それは……分かってるよ」
彼はそう言って、困ったような表情を浮かべた。そして小さく溜息を吐くと再び口を開く。
「……でも、俺はカナデを誰にも渡したくない」
その言葉には強い意志が込められていて。それは彼の本気度を表しているようだった。
カナデはそんな姿を見て、思わずドキリとしてしまう。
普段の優しそうな態度とも、少し意地悪な態度とは違う表情と声色に、思わずドギマギしてしまったのだ。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、彼は言葉を続けた。
「本当は「君」が一人で旅をしてる事がとても不安なんだ。勿論、それが君の望む事だし、止めるつもりは一切ないよ。だけど……」
そこで言葉を切ると、彼はカナデにゆっくりと近づき手を握った。
その手は寒さの中ではじんわりと、何かを溶かすような熱さがある。
それが彼の体温なのか、それとも別の何かなのかは不明だが……カナデはその温度に安心感を覚えた。
「少し目を離せば、また……いなくなってしまうんじゃないか。その時に探して、直ぐにまた見つかるのか?また……置いて行かれないと言えるのか?俺はそれがとても不安で仕方がない。……俺には夢があるし、家族もいるけれど「君」への感情も本気だ。「君」が望むなら、今の立場を捨てても構わないんだよ。」
そう語る彼の目は真剣そのものだった。真っ直ぐに見つめてくる眼差しに、カナデは一瞬どきりとする。
(この人、本気なんだ。)
その瞳の力強さと真摯さに、カナデは目が離せなくなる。
彼の言葉の一つ一つが、自分に向けられているものだと実感すると、鼓動が早くなっていくのを感じた。
これまで自分に感情を向けてくれた人はいた。
だけれど、これほど自分を尊重して、そして繋ぎ止めようとしてくれた人はいただろうか。
カナデ/キャロルは臆病だ。
それは大切な人が本当に自分が好きなのか?自分が愛されているのか? 自分から離れてしまうのではないか? そんな不安を抱えているからだ。
それに、自由を縛られてしまうのも、怖い。だから、旅をすることを選んだ。
それでも諦められない何かがあったから。
人は探求する生き物だ。産まれてきた意味を知りたくて日々を生きている。
カナデはそう考えていて──カナデ/キャロルも例外無く……そうだ、と思っている。
だけど。
本当は世界はそんなに小難しくない。衝動が何かを解決する事だってある。カナデはそれを思い出して、目の前にいる青年に視線を向ける。
彼は真剣な表情でこちらを見ていたけれど、その目の奥には僅かに不安が見え隠れしている気がした。
カナデはそんな様子を見ながら考える。
(本当に私の事が好きなんだ……)
そう思うと、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。そして同時に、不思議と、愛おしくも思えてくるのだ。
(でも、だからこそ私は……)
カナデは決心を固めると彼の目を見つめ返す。そして自分の想いを正直に告げることにした。
「私は……」
カナデはそこで言葉に詰まる。
しかし、気が付く。
これまでに目の前の人は言葉だけじゃなく、態度で示してくれた。
なのに「変わってほしい」なんて理想の押しつけは傲慢だ。
寄り添っている、なんて考えていたけれど。
思い返せば、むしろ、自分が支えられていたように思う。
それを自覚した瞬間、カナデは自分の鼓動が早くなるのを感じた。
(……自分が思っている以上に私は……!)
カナデは心臓の鼓動を抑えながら、ゆっくりと「自分」に従って手を伸ばし──その身体に抱きついた。
「……カナデ?」
「彼」は少し驚いたように目を見開いた後、戸惑ったように彼女の名を呼ぶ。しかし、カナデは構わずに彼の胸に顔を埋めると、背中に手を回した。
そしてそのままぎゅっと力を込めて抱き締める。
「……」
静寂が、しばらくその場を支配する。
聞こえるのはお互いの心臓の音と呼吸音だけだ。
でも、この時に大事なのは小難しい言葉なんかじゃない。
誰かが紡いだ知識や「言葉」でもない。
──伝わってほしい。
それは我儘な感情だ。
だから、なるべく分かりやすく何度も言葉で他人に話すように心がけた。
だけれど、我儘になっても、いいような気がした。
──この人にだけは。
そんな想いが湧き上がるのを感じると、カナデは回していた腕をほどき顔を上げる。
緊張している。
カナデがこんな行動を取るのは初めてだった。
心臓が飛び出そうだ。身体が熱い。熱が自分を支配するかの様だ。
それでも、カナデは呼吸を整えて─その手をタルタリヤ/アヤックスの頬に当てる。
そして、その瞳をじっと見つめた。
その途端、「彼」の瞳から動揺の色が見えた。
それを気にする余裕もなく、カナデはゆっくりと自分の唇を彼の唇へと近づける。
触れるだけの軽いキス。
それはほんの一瞬の出来事だった。
だが、熱かった。
──寒い雪原の中で歩く夢を思い出す。
──行方も分からなく、どこに行けばいいのか分からない、極寒の寒さ。
でも──道標の様なものがあった気がする。
カナデ/キャロルは気が付く。
それは「彼」だったのかもしれない。
カナデはそれに気が付くと、心が弾んだ気がした。
ずっと、ずっと探し求めていた答えを、ようやく見つけたような。
カナデは飛び上がりそうな気持ちを抑えて、「彼」を真っ直ぐに見つめる。
そして、照れくさそうな笑みを浮かべて言った。
「……うん、私も君が好きだよ」
カナデのその言葉を聞いた瞬間、タルタリヤは驚いた表情を浮かべると、カナデを引き寄せ抱き締める。
その力は強く、少し苦しいくらいだった。
だが、カナデはそれを受け入れるように抱きしめ返すと彼の背に手を回した。
「カナデ……!本当?本当に?」
耳元で囁かれる声。少し掠れたようなその声は、歓喜の感情が伝わってくる。
カナデはこくりと小さく首を縦に振った後、抱きしめている手に力を込めた。
「ここで嘘ついてどうするの、あはは」
冗談めかして笑いながらそう言うカナデだったが、その頬は赤く染まっていた。
しかし、そんな事には気が付かない様子でタルタリヤは嬉しそうな笑顔を見せると、今度はカナデの頬に口付けた。
その瞬間、カナデの心臓は大きく跳ね上がり、一気に体温が上がる。
しかし、不思議と嫌な気分ではなかった。ただ、恥ずかしさと嬉しさが入り混じったような不思議な感覚に包まれる。
そんなカナデの様子を感じ取ったのか、彼は少し意地の悪い笑みを浮かべながら、彼女に口付けた。
「んっ……!?」
今度は先程よりも長く深いキスで、カナデは思わず身体がピクリと反応してしまう。その反応を楽しむように、彼の舌はカナデの唇を割り開き侵入してきた。
息の仕方がよく分からないので、カナデは僅かに酸素を求めて口を開く。
その隙を逃すまいと、更に深く舌が侵入してきた。
思考回路が麻痺していき、ただ目の前の「彼」の事しか考えられなくなっていく。
気が付けば、カナデは彼の身体にしがみつくように手に力を入れていた。
そんな様子を見て、彼はゆっくりと口を離す。
「……はぁ、はぁ、もう……」
カナデは息を切らしながら恨めしげな視線を向けるが、タルタリヤはただ微笑みを浮かべるだけだ。
実は前にも何度かされた事があるが、未だに慣れない。
カナデは呼吸を整えながら、彼の方をじっと見つめた。
「ん?どうかしたの?」
彼は相変わらず余裕のある笑みを浮かべていて、それが少し腹立たしい。
だが、今は、それと同時に愛おしさのようなものも込み上げてきた。
「別に、何でもないよ」
カナデはそう言って視線を逸らす。しかし、顔は火が出そうなほど熱いままだし、心臓の鼓動も早いままだ。
そんな彼女の様子を見て、目を細めながらニヤリと笑うとタルタリヤは再び顔を近づけてきた。
「そう?何でもないなら、もう一回してもいいよね」
「えっ……ちょっと……」
慌てて制止しようとするが間に合わず、再び口を塞がれ、カナデはその後、散々タルタリヤに弄ばれた。
だが、少しだけ──ほんの少しだけ、悪くないと思ったのは秘密である。
どんな話がみたいですか? 参考にいたします!
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