カナデは基本的に旅をしており、その時にモラと、人助けを両立出来るため、彼女は基本的には冒険者活動ばかりしている。
しかし、ずっと働いていれば流石に疲れるため、1週間に2日位は基本的に休んでいる。
まあ、長い間秘境に行かなければならない日などがあったらなど、状況によって変わるが。
──そして、その日はカナデはスメールにて、旅に必要な物を買う日だったのだが、たまたま訪れた服屋の店長がたまたま知り合いで、前に忙しい時に手伝った時の事を覚えていたらしく、試着をした服を貰ってしまった。
「いや、この前は本当に助かったよ。君のおかげで何とかなったし、それに、これはほんのお礼だよ、ありがとう」
「え…いや、大丈夫ですよ。私はたまたま通りかかって手伝っただけですし」
「いいから、ほら。受け取ってくれ」
そう言われてしまうと、前世の人種の気質からつい断れないカナデは、仕方なく受け取ってしまった。
「……えっと、ありがとうございます」
まあ、今日は冒険したりするつもりは無いので、まあいいか、とカナデは思い、そのまま服屋を後にして歩き始める。
眩しい日差しが地上を照らし、草木は風に揺れる。
鳥達の声や人々の明るい声が、カナデの心を癒す。
今のカナデは間違えなく、いい気分だった。
──邪魔が入るまでは。
それはエルマイト旅団の男らしく、体格がいい露出過多な格好をしている男で、気さくに話しかけてきた。
しかし、カナデには興味はない。
先程から自分がどんなに強いか武勇伝らしきことを喋り続けている。
「でな、俺がその魔物を退治してやったんだよ!凄いだろ?」
「……そうですね」
カナデは適当に相槌を打ちつつも、一刻も早くこの状況から抜け出したかった。
しかし、男はそれを気にせずに話を続けてくる。
(……もう、本当に面倒くさいな)
カナデは心の中で悪態をつくが、それでも笑顔で対応している。
カナデは愛想笑いや、大人としての対応などはそこそこ出来る方だからだ。
まあ、話を聞くだけなら何とか我慢出来る。しかし、そろそろ我慢の限界だった。
カナデは早くこの場から離れたかった。
「それでな、俺は──」
しかし、男はカナデのそんな思いに気が付かないのか、話を続ける。
カナデはいい加減、苛立ちを覚え始めていた。
(……ああもう、本当に面倒くさい)
カナデがそう思った時、突然男がカナデの腕を掴んできた。
「なあ、いいだろ?これから俺と遊ぼうぜ?」
カナデはその手を振り払おうとするが、意外と男の力が強く、振り払えない。
そして、男はそのまま強引に連れ去ろうとしたその時─……突然現れたその男の腕を掴む者がいた。
私服姿ではあるが、前に手紙を届けてくれたタルタリヤの部下らしきファデュイの男だ。
何度か会って、話すようになったので違う服装や仮面をしていなくても分かる。
彼はカナデと男の間に入ると、男を冷たい目で見下ろした。
「おいお前、何してる?」
男は突然現れたファデュイの男に怯み、たじろぎながらも反論する。
「な、なんだよ、お前には関係ないだろ!」
だが、ファデュイの男はカナデの腕を掴んだ男の手をさらに強く掴みながら答える。
「関係がある。この人は俺の上司の大切な取引先の方だ。お前が触れていいような人じゃない」
ファデュイの男は怒りを込めて告げると、今度はカナデの腕を掴んでいた男の腕を掴む。
「それに、女に無理矢理迫ろうとするなんて最低だ。これ以上恥を晒す前にさっさと失せろ」
男はそう言われると怒りに顔を真っ赤にさせ、ファデュイの男を殴ろうと拳を振り上げ─────だが、それよりも早くカナデは動くと、ファデュイの男を庇って前に立ち、その拳を体に受けた。
「っ……痛っ」
カナデが声を漏らしながらその拳を手で受け止めると、ファデュイの男と、殴りかかった男は、カナデの予想外の行動に驚く。
「なっ……!?」
「な、何やってるんだ!?」
男は慌ててカナデから離れ、ファデュイの男も慌ててカナデから男を引き剝がす。
そして、ファデュイの男は呆然としている男の胸ぐらを掴み、投げ飛ばした。
「うわああ!?」
男は投げ飛ばされると、そのまま地面に激突する。
ファデュイの男はそのまま男を拘束すると、カナデに声をかけた。
「大丈夫ですか?お怪我は?」
ファデュイの男の問いかけに、カナデは少し慌てながら答える。
「えっと、まあ、痛いけど大丈夫だよ。正当防衛って事になるし、たまにあるから」
カナデは手を殴られた頬に起きながら、そう言ったものの、少しカナデはため息を吐く。
「ごめん、その人は任せ……ん?もしかして君がいるって事は……もしかしてあの人もいたり……?」
カナデが嫌な予感を覚えて辺りをきょろきょろと見渡すと、僅かに殺気を感じ、その方向を見ると、そこにはカナデの予想通りの人物がいた。
笑顔を浮かべてはいるものの、目が全く笑っておらず、怒っているのが見て取れる。
その怒りのオーラを感じ取ると、カナデは思わず後ずさる。
「あ、あのー……」
カナデは何とか言い訳をしようとするが、その前にその人物──ファデュイの執行官である青年、タルタリヤが近づいてくる。
「やあ、こんにちは、カナデ」
明らかに何故わざと殴られたのか、という事と、カナデに殴った男に対して怒っているのが嫌でも伝わってくる。
「う、うん……こんにちは……」
カナデが苦笑いを浮かべながら返事をすると、そのままどう言い訳をするべきかを考える。
しかし、言い訳をしても無駄だと分かっているため、カナデは素直に謝る事にした。
「ごめんなさい……つい反射的に体が動いて……」
カナデは素直に謝ると、今度はファデュイの男がタルタリヤに声をかける。
「すいません!『公子』様!自分が不甲斐ないばかりに!」
ファデュイの男が焦ってそう謝罪すると、彼が捕らえている男が話しかけてきた。
「おい、お前ら一体なんなんだよ!?いきなり出てきて邪魔しやがって!俺を誰だと思ってるんだ!?」
男は怒りで身体を震わせながら叫ぶ。
しかし、それを聞いた瞬間、ファデュイの男は呆れながらため息を吐いた。
「……いや、お前こそ何言ってんだよ?この状況でそんな事言ったら……どうなるか分かるよな?」
ファデュイの男はそう言うと、男に向かって鋭い視線を向けた。
だが、それでも男は怯まない。
「はぁ?知るかよ!」
男がそう叫ぶと、タルタリヤはカナデに向けていた視線を男の方へと向け、一気に殺気を放った。
「ひいっ!?」
男の情けない悲鳴と共に、周りの空気が一瞬で凍りつく。
それをカナデは冷静に見ながら、心の中でため息を吐いた。
(こうなると分かってたけど……やっぱりこうなったか。まあ、仕方ないけど)
この流れはカナデにとっては予想通りの展開である。
タルタリヤがカナデに傷つける人間を、許すはずがない。絶対にボコボコにするだろう。
ファデュイの男もそれを分かっているのか、半ば諦めたような表情を浮かべている。
仕方なくカナデはため息を小さくついた後、タルタリヤの方に向き直る。
「気にしないでいいって。自分が何言われてもあまり気にしないのに、私の事になるとすぐ怒るんだから……」
カナデがそう言うと、ファデュイの男は苦笑した。
だが、タルタリヤは気にせずに、カナデを殴った男へと近づいていく。
「さて、覚悟はできてるよね?」
「ひっ……!?」
男は恐怖の表情を浮かべるが、それでも気丈に振る舞う。
「な、なんだよ!?文句あるのか!?」
男がそう叫ぶと、タルタリヤは冷たい視線を男に向けながら殺気を放つ。
「文句あるに決まってるだろ?俺の大切な人に手を出すなんて。死にたいのかな?」
「ひいっ……!?」
男は情けない悲鳴を上げると、慌ててカナデに向かって叫ぶ。
「く、くそぉ!お前のせいだぞ!?責任取れよ!?」
男はそう言いながらカナデに向かって殴りかかるが、カナデは避けない。
むしろ、どうなるか分かっていたからこそ目を閉じていた。
それは痛みに耐えるためでは無い。
──信じていたからだ。
刹那、何かがぶつかり合うような鈍い音が辺りに響く。
カナデが目を開けると、そこに風に靡く赤色が目に入る。
先程怒りを露にしていた青年──タルタリヤの赤い装飾されたサッシュの色だった。
そして、目の前には先程までカナデに殴りかかろうとしてきた男が地面に倒れ伏している。
「……責任を取れ?それはこっちのセリフだよ。お前がカナデに危害を加えたんだから、責任を取ってもらうに決まってるだろう?」
男は何が起こったのか理解できないのか、呆然とした様子で地面に倒れ伏したまま動かない。
そんな男を見下しながら、タルタリヤはにっこりと笑って見せた。
「さて、君にはどうやって責任を取ってもらおうかな?とりあえず、しばらく動けない程度に痛めつけようか?」
その言葉を聞き、男は顔を真っ青にする。
「ひっ……!?や、やめ──」
「ストーップ!!大丈夫だから!その人はそこの部下の人に任せて!」
カナデは慌てて止めに入り、ファデュイの男に声をかける。
「えっと……その人を拘束して、然るべき対応をして!私はこの人と話するから!お願い!」
カナデが必死に言うと、ファデュイの男はハッとした表情を浮かべて動き始めた。
そして、地面に倒れた男を引っ張り上げ、拘束すると何処かに連れていく。
それを見送りながらカナデはため息を吐いた。
(……ああもう、面倒な事にならなければいいけど)
そう願いながらカナデはタルタリヤに話しかける。
「あんなヤツの為に手を痛める必要は無いよ。無駄。……と、とりあえず目立つから行こう」
先程の騒動で周囲の視線を集めていた為、カナデはすぐさまその場を離れようと、タルタリヤの手を取り、引っ張り出す。
「ほら、早く」
カナデがそう言うと、先程まで怒りに満ちていたタルタリヤの瞳が一瞬にして優しいものへと変わる。
そして、カナデの手を握り返すと「うん」と言って笑顔を浮かべた。
しかし、カナデは気恥ずかしさもあり、彼の表情は見ずに手を引いて移動する事にした。
どんな話がみたいですか? 参考にいたします!
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ディルックルート
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