白星の君へ   作:F1さん

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問題なければ基本0時更新です。
璃月編終わりましたら、そろそろ番外編も乗せていきます。


仕組まれた出会い

 

──数日後。

 

「ふむ。なるほど…」

 

この時期は『七星迎仙儀式』の話題で璃月港は持ちきりだ。

彼らは『岩王帝君』が毎年神託を下し、このさき一年の璃月の経営方針を導くこの日を楽しみにしている。

カナデは情報収集をしつつも、開催される現場である儀式の場に向かった。

既に人が何人も集まっており、その中心には『凝光』の姿もあった。

だが、話しかけず辺りを観察する。

璃月人らしき、カナデから言えば『中華服』に似ている様な服を着ている人や、明らかに違う国から着ている人々の姿もチラホラ見られる。

遠くから観察していると、見覚えのある姿もチラホラある。

折角だし見たい、と言う気持ちと…恐らく例の『旅人』もこれを見に来るだろうという予想をカナデは立てて、高い場所から『玉京台』を見下ろす。

すると、金髪に花飾りを付けた白いドレスの様なワンピースを着た少女と、白く小さなふわふわと浮いた少女がその中に混ざる。

 

(あれが『旅人』。小さな子は分からないけれど、見る限り確かに実力者に見える。)

 

すると、『天権』でもある凝光の指示の元、儀式は予定通りに始まった。

それはいつも通り、に見えたが…ー。

突然空に浮いていた茶色の龍の様な存在が、急激に落下した。

 

「帝君が殺害された! この場を封鎖しろ!」

 

凝光が突然そう叫ぶと、璃月を守る組織である千岩軍が一気に辺りを囲む。

そして、突然煙が湧き出し『旅人』と少女は慌てた様に逃げ出した。

恐らくまだ安定した立場では無い為、捕まるとマズいと判断したのだろう。

それを見ていたカナデだったが、その旅人の後ろを走る身に覚えのある影を確認したが、静かに隠れながら追いかけた。

※※※

 

千岩軍に追われた『旅人』と小さな少女は赤い仮面を右頭に装着している美青年に助けられた。

どうやら何かを話をしているらしい。

だが、カナデはその時点では近付かない。

その青年こそ彼女の恋人でもあるファデュイの執行官『公子』タルタリヤだからだ。

見つかったら面倒は避けられない。

けれど、今はどうしても彼が何を話しているのかが気になり……そっと聞き耳を立てた。

内容からとりあえず『北国銀行』に来て欲しいと言い、彼は近くの赤い階段を上がっていく。

カナデはその場で『旅人』の動きを観察する。

どうやら指示に従い、階段を上がり、上にある北国銀行の前に待つタルタリヤと話をし始めた。

 

(多分『旅人』を使って情報収集しようとしているんだろうなぁ)

 

ふむ、と頷きながらカナデは思う。

長年付き合いがある彼女は彼をよく理解している。

何故それを部下にさせないのか、と思われるが恐らく既にしている。

そして大きな目的の一つとして、タルタリヤは『旅人』を見極めたいのだ。

 

───自分を退屈させない程の実力があるのか。

 

その点、まず試すに辺り、あの『旅人』は十分に合格点に達している。

直ぐに判断し、逃げ出す考えに至る思考。その逃げ足の速さ。

しかもモンドを救い『栄誉騎士』として認められた実力。

どれを取っても申し分無い、とカナデは一人納得し頷く。

タルタリヤにとって重要なのは『強い』かだ。

 

(目をつけられて可哀想…絶対戦う羽目になるんだろうなぁ)

 

――と、カナデは静かに同情する。

 

「あ、帰ってきた」

 

どうやら話が終わった様で『旅人』は階段を降り、何処かに向かう様だ。

カナデは距離を取りつつ、こっそりと後を付ける。

とりあえずこの場で声をかけるのは違うと感じ、後をついて行くと……璃月港を出る様だ。

それから街を出て、辺りに誰もいない事を確認してからカナデは話しかける。

 

「えっと……君は『栄誉騎士』で合ってる?」

 

カナデがそう尋ねると、振り返った少女は驚いた様に目を見開きながらも答えた。

 

「え?うん。そうだけどあなたは一体……」

「……『ボク』は……『ラン』。冒険者だよ。はじめまして」

 

カナデは咄嗟に『ラン』と偽名を名乗る。姿も服装も変えているのだ。問題はないだろうと判断し、そう名乗る事にした。

『旅人』は少し警戒しながらも話を聞く事にする様だ。

 

「冒険者…?わたしに何の用?」

「おまえも冒険者なのか?オイラはパイモン。こっちは『旅人』の『蛍』だ!」

 

パイモンがそう尋ねると、カナデは頷く。そしてにこやかに口を開いた。

 

「みる限りキミたちはこの国は初めてだよね?『ボク』は情報に詳しいんだ。…それに申し訳ないけどさっきの騒動は見たよ。もしかしたらキミ達に容疑がかけられるかもしれない!『冒険者』の先輩としてよかったら容疑を晴らすのを手伝わせてくれない?」

 

カナデは笑顔でそう言いながら、警戒している『旅人』……蛍に問いかける。

蛍は不思議そうに首を傾げながらカナデを見た。

 

「え?いいの?」

 

そう聞き返す蛍に、カナデは頷く。そして安心させる様に微笑みかけた。

 

「いきなり話しかけて驚かせちゃったよね、ごめんね?でも『ボク』はモンドのジンとも知り合いだし……それとそうだな、アンバーとは『飛行チャンピオンの先輩』として仲がいいんだ。だからキミの事を手紙で聞いて、知っていたんだよ!」

 

そう言いながらカナデは何処か懐かしそうに、空を見る。

蛍も釣られて空を見上げた。

 

「今日はいい天気だよね。洗濯物も乾きそうだ。……で、どうかな、『ボク』は基本的に一人旅をしているんだけど…『ボク』をキミ達の少し役に立てさせてくれないかな?ちゃんと自分の分の宿代とかは支払うよ」

 

そう提案すると、カナデは真っ直ぐと蛍を見る。

すると、彼女は少し考える素振りを見せる。

そして小さく頷きながら口を開いた。

 

「ありがとう、ならお願いしよう……かな」

 

「蛍!?いいのか!?すごく怪しいぞ?」

 

パイモンが驚いたように声を上げる。

だが、蛍は苦笑しながらも口を開いた。

 

「確かにそうだね。でも……悪い人には見えないし」

「うん。ありがとう。何なら昔のエピソードを話してもいいよ?モンドは『ボク』の故郷だからね。助けてくれたキミの力になりたいんだ。これは嘘じゃないよ。それに人を見る目はあるからね」

 

そう言って、カナデは得意げに胸を張る。

その様子を見た蛍とパイモンは顔を見合わせて笑った。

 

「そっか。じゃあ、頼もうかな」

「おう!よろしく頼むぞ!」

「……うん、任せてよ!」

 

カナデは笑顔を浮かべながら頷いた。

確かに姿と名前は違うが話していることは本心だ。

本当にいい子たちならば役に立ちたい。

そういう気持ちである。

 

「じゃあ、まずは目的地を教えてほしいな。『ボク』が何処まで力になれるかはわからないけど……できる限り、案内するよ」

 

カナデはそれに対して、そう明るく笑いながら尋ねたのだった――……。

こうして、カナデはしばらくの間『旅人』である『蛍』とその仲間『パイモン』共に行動することになったのだ。

 

※※※

 

──正直、蛍との旅はやりやすかった。

 

彼女が元々旅に慣れているのか、容姿はまだ未成年に見えるが、彼女の戦闘能力は確かに高かった。

 

前にエルマイト旅団…つまり傭兵であるディシアなどと旅を一時的にした事があるが、彼女よりも実力は上かもしれない。

 

旅をしながら、変装をしているカナデは蛍から話をきいたが、どうやらタルタリヤに仙人達が住むと言われる『絶雲の間』に向かう様に言われた様だ。

 

「仙人か…。蛍は『仙人』について知っている?」

 

「何となくは。それにパイモンもちょっと教えてくれたし」

「ふむ。じゃあ良かったらまだ着くまで時間がかかるし、『仙人』について説明してもいいかな?」

 

そう言うとカナデは口を開く。

 

──璃月港の人間にとって『仙人』は『英雄』の様な者達である。

 

悟りを開いた、または悟りに達することができる動物・獣である彼、もしくは彼女らは光り輝く獣であり、モラクスに従う者は、「賢人」とも「賢衆」とも呼ばれる。

 

そして基本的には獣…例えば鹿や鳥などの形態を好む者と、人間の姿を好む者がいる。

 

彼らは名前の末尾に『真君』…『完成された主』という敬称がつくものが多い。

 

ちなみに何故基本的に人前に姿を現さないのかと言うと、通常の人間にとって、仙人との長時間の交流は危険だからだ。

 

人間の魂はそれほど強固ではなく、しばらく共にいると仙人のエネルギーに圧倒されるからである。

 

「それに『強大な力』って言うのは人間を狂わせるからね。あまり関わらない方がいいかもしれない。」

「つまり、仙人ってパイモンが言ってた『魔神』みたいなもの?」

 

蛍に言われてカナデは少し悩んだ様子を見せる。

 

「『ボク』は学者じゃないから詳しくは説明出来ないけれど…『仙人は神の眷属』と聞いた事があるような?うーん。モンドで言う『トワリン』みたいな感じ、だと思えばいいんじゃないかな。つまり『璃月』ではモラクスがトップで、その下に『仙人』や『璃月七星』がいて、民がいる…って思えばいいかもね」

 

「なるほど。ありがとう、ラン」

 

蛍がお礼を言うと、カナデは小さく柔らかく微笑むと返事をした。

 

「どういたしまして。」

 

すると、次に話を聞きながらも考え込んでいた様子のパイモンが元気よく手を挙げて口を開いた。

 

「なぁなぁ!ランはさっき執行官の話をした時どうしてあんまり驚かなかったんだ?『執行官』がオイラ達を助けて、誤解を解くために『絶雲の間』に行って仙人と話さないとダメだって話はしたけど、普通そんな話をしたら他の人はびっくりすると思うぞ!」

 

パイモンの言う通り、確かに普通はファデュイの執行官の情報なんて安々と手に入るものでは無い。

 

そもそも『執行官』は基本的に暗躍するものだ。その情報は隠されている事が多い。

 

カナデはパイモンの言葉に一瞬、ピタリと動きを止めて考え込んだ様子を見せた。

だが、すぐにいつもの微笑みを浮かべる。

 

「『ボク』は長年冒険者として過ごしているから、色々な『コネ』を持っていてね、特殊な情報網があるんだ。……だけどね、『ボク』にとって『公子』は天敵なんだよ。」

「天敵?」

 

蛍は首を傾げる。

カナデが何故そこまで警戒しているのか分からなかった様だ。だが、蛍が疑問を口に出す前にカナデは先に答えを告げた。

「うん……なんと言うかね……。『公子』はどちらかと言えば知将と言うよりは武人なんだよ。『執行官』は自分の神に忠誠は誓うけれど、それ以上に自分の欲望に素直なヒト?が多い。『公子』も勿論例外じゃない。彼は『戦闘狂』なんだよ」

カナデは普段よりも早口でそう答えると、「自分から言い出して申し訳ないけど、もうこの話は終わりにしよう」と強引に話を切った。

どうやらカナデにとって『公子』の話は禁忌だったらしい。

蛍はそれ以上何も聞かずにただ「分かった」とだけ返事をして、口を閉ざす。

 

「まあ、という訳で。悪いけれど『公子』がいる時には『ボク』は席を外させてもらうよ。」

 

カナデの話を聞いてパイモンは「分かったぞ!」と元気よく手を挙げて返事をする。

そんなパイモンの様子を蛍が苦笑しつつ見つめると、小さく笑って「私もわかった」と返事をした。

 

「ありがとう、二人とも。なるべく迷惑を掛けないようにするから、よろしくね。」

 

カナデは、そう言いながら、嬉しそうに微笑んだ。

その表情を見て、パイモンも蛍も自然と笑顔になる。

 

「よし!じゃあ、出発するぞ!」

 

とパイモンは元気よく言うと、いつもより空に向かって飛び上がった。

 

三人は言葉を交わしながら、様々な話をし、魔物がいたらカナデと蛍が仕留め、順調に進んでいくのであった。

 

──そんな三人を遠くから見つめる存在がいる事に気付かずに……。

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

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