白星の君へ   作:F1さん

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仙境

 

 

「『公子』様。例の旅人の様子を確認致しましたが、どうやら見知らぬ少年が一緒にいるようです。」

「へぇ?その少年は何者なんだい?」

「不明です。髪色は金髪。見た目は十代くらいに見えました。」

「ふぅーん?きょうだいかな?」

「……話によるとその前には一緒に行動してはいなかった様でして、璃月港でその少年と共に行動しているのを確認致しました。しかし、どうやら戦闘慣れをしている様には思えませんでした。」

「なるほどね……」

 

報告を聞いて『公子』であるタルタリヤは腕を組みながら小さく頷くと、ニヤリと口角を上げる。

そして、それはいい知らせを聞いたとばかりの笑みを浮かべた。

 

 

「……戦闘慣れ、か。」

 

その呟きを聞いて、報告していた部下の男性はタルタリヤが何を期待しているのかを理解した。

その為、静かに口を開いた。

 

「……公子様。戦いたいのは分かりますが、お役目を最優先にお願いします。」

 

部下がそう進言すると、タルタリヤはククッと喉を鳴らして笑う。

その笑みは、まさに捕食者のモノであり、先程までの優しげな雰囲気は嘘の様に消え去っている。

 

「分かってるよ。でも……任務の進行上たまたま戦闘が避けられないケースだってあるだろ?それに、久しぶりに戦えるチャンスなんだ。逃す訳にはいかないね」

 

そう告げるタルタリヤの瞳は、妖しく光り輝いていた。

「戦闘狂」という言葉に相応しい血に飢えたその瞳を見て、部下は諦めた様な表情を浮かべる。

こうなったタルタリヤを止める事は出来ない。それは良く分かっている事だ。

だからこそタルタリヤは本国から様々な地域に派遣されたのだから。

部下は深く溜め息を吐くと、自分の上司である青年に向かって小さく呟く。

 

「……まあ、そうなる可能性は否定しきれないですね。……しかし、ある程度加減して下さいね」

「はははっ!分かってるって!」

 

そう笑いながら言うと、部屋の外へと歩いて行った。

その様子を見届けた部下は苦笑しながらもゆっくりと後を追うのであった……。

 

※※※

 

カナデ達は、『絶雲の間』に入り、牡鹿の姿をした『削月築陽真君』に出会うと、彼は『禁忌滅却の札』を持って、理水畳山真君、留雲借風真君に会う事を推奨された。

 

それと、『降魔大聖』と呼ばれる護法夜叉が『望舒旅館』にいるので、合わせて会うと良いとも言っていた。

 

「誰と会うのが一番いいんだろう?」

 

「確か…『理水畳山真君』は男性で、『琥牢山』。『留雲借風真君』は女性で、『奥蔵山』に居るはずだよ。」

「……ラン、詳しいんだね」

「鳥の姿をしている生物には興味があってね。……それで、どうする?」

「ランは3人のなかの誰かに会った事があるのか?」

「あるよ。そうだね、『ボク』は『理水畳山真君』とはあまり話した事は無いけれど、『留雲借風真君』や『降魔大聖』……魈とはよく璃月に来たら会いに行ってるかな」

「…仙人ってあんまり会えないって聞いたけど、会えてるんだね」

「まぁ、うん。色々あってね。まあ、『ボク』は運がいいんだよね。……ここからだと留雲さんのいる山の方が近いかな。大変な事は先に終わらせて、『望舒旅館』は「旅館」だから、用事終わらすついでにゆっくり休憩するのはどうかな?」

「おぉ!そうしよう、そうしよう!」

 

その言葉にパイモンが元気よく返事をする。カナデはそんなパイモンの様子に苦笑しながらも、蛍に向かって「どうかな?」と尋ねた。

蛍は少しだけ考え込んだ後、小さく頷く。

 

「そうだね。いいと思う」

「じゃあ決まりだね。行こう!」

 

蛍の承諾を得たカナデは嬉しそうに明るい声でそう言うと、早速歩き出した。

 

※※※

 

璃月はモンドと比べて山がかなり多い。

モンドにも勿論あるが、璃月は鉱石資源が豊富だ。

そんな山道を登ったりするが、少し休憩をする事にしてカナデ達はその間に話をしていた。

 

「『留雲借風真君』ってどんなヤツなんだ?」

 

パイモンが不思議そうにカナデに尋ねる。

その言葉を聞いてカナデは少し思考したように腕を組んだが、直ぐに話を始めた。

 

「彼女は絡繰を作るのが得意でね。多分料理をお供えしたら話くらいは聞いてくれるはずだ。」

「料理……なら、わたしが作るよ。パイモンは食べるの専門だし」

「料理!蛍の料理はどれも美味しいからオイラは楽しみなんだぞ!」

 

蛍の提案にパイモンが嬉しそうに頷く。

よく見ればパイモンの口元には僅かに涎が見えた。パイモンは食いしん坊らしく、慌てて涎を腕で拭った。

そんなパイモンを見て、蛍は苦笑を浮かべた。

 

「パイモン…ついでに作って欲しいとか言わないよね?」

「ギクッ!そ、そんな事はないぞ!た、ただ蛍の料理は美味しいからなぁ……つい食べたいなぁ〜と思っただけで……」

「はぁ。仕方ないなぁ。多めに作って余った分を食べさせてあげる」

「本当か!?流石蛍は、太っ腹だな!オイラは嬉しいぞ〜!」

 

喜ぶパイモンに蛍は小さく笑うと歩き出す。

それを追って、浮きながらパイモンははしゃいだ様子を見せた。

 

そんな姿を後ろで見ながら、カナデは姉妹の様だと思いながら、柔らかく微笑む。

 

(やっぱりこの子達は悪い様には見えない。凝光さんには問題ないと伝えよう。…だけれど、やっぱり心配だな。やっぱり暫く一緒について行ってあげた方が良いかもしれない。)

 

蛍の見た目は未成年に見えるが、実は違うようにも見える。

 

テイワットでは幼く見えて成人していたり、何百、何千才の生物が沢山いる。

 

あそこまでの腕があるのならば、もしかしたら見た目よりも遥かに年上かもしれない。

 

――しかし、カナデには関係ない。

 

彼女は自分が『庇護すべき』だと思える存在は守るだけだ。

 

それを伝えたら蛍が困るだろうという事も分かっているから、口出しするつもりはない。

 

(この子達が自身で決める事を尊重しよう。そして、選択肢を間違えれば、この子達が危機的状況に陥った時、『私』が助ければ良い。)

 

カナデにとっての『愛情』は『選ばせる事』である。

 

どんな人間にも色々な選択肢がある。

その中で自らが選ぶものこそが『答え』だ。

間違っていようが、後悔しようが、選択するのは自分自身だ。

 

自分が選んだ道が間違っていたと思うなら、成長すれば良い。

道を誤ったと思ったなら、戻れば良い。

生物は過ちを犯し、学んで生きる。

 

――故に『成長』するのだ。

 

「どうしたの、ラン」

 

カナデがそんな事を考えていると、急に黙り込んだ事に気付いて蛍が心配そうな眼差しを向けながら声を掛けてきた。

カナデはそれに「何でもないよ、それより『ボク』も食べたいかも。」と返事をした。

それを聞いて蛍は安心したように微笑むと、パイモンが「それより、早く行くぞ!早く食べたい!」と言うのを聞いて、歩き出すのだった。

 

※※※

 

 

奥蔵山にある池の真ん中には食器と酒壺が沢山ある石のテーブルがある。

 

椅子には字が刻んであり『此処に留雲が居る』『此処に帰終が座る』『此処を帝君が借りた』とそれぞれの席に記載してある。

 

「『帝君』って、もしかして『岩王帝君』のことか?『帰終』は…ちょっと分からないな」

 

パイモンが興味深そうにふよふよテーブルを眺めながらそう言うと、パイモンの言葉に蛍は頷く。

 

それを見ながら、思案した様子のカナデは口を開く。

 

「『帰終』は『帰離原を統治していた塵の魔神』の女性の筈だよ。もう亡くなっているけれど。ほら、そんな名称の土地があるよね?」

「確かに帰離原はあるな!なるほど、つまりここが指定席って事か?」

「うん。土地に詳しいんだね、パイモンは」

「ふふん!オイラは蛍の『ナビゲーター』でもあるんだぞ!」

 

カナデの言葉にパイモンが反応し、カナデに褒められた為、胸をはりながら自慢そうに言う。そんなパイモンを見て、カナデは小さく笑いながらも言葉を続ける。

 

「そうなんだ。それは頼もしいね。『ボク』は歴史を調べたり、綺麗な景色を見るのが好きだよ。あと、機械とかも好きだね、戦うのは嫌だけど。」

 

カナデの言葉に蛍は「そうなんだ」と興味深そうに相槌を打つ。

 

「先人の知恵は役に立つからね。あと、悪いけど『ボク』のツテを使って『留雲借風真君』を呼び出すのは遠慮してもいいかな?あの方の力はきっと役に立つ。だから君達が君達なりに気に入られないとね。」

「分かったぞ!」

「うん、頑張ってみるよ。」

 

蛍とパイモンはカナデの言葉に素直に頷いた。

その様子を見て、カナデは嬉しそうに微笑むと、とりあえずその一つの席に座る。

 

「多分好物を作るといいよ。この辺りにはいつも鍋があるからその辺りを調べてごらん?分からなければヒントをあげるから頑張ってね」

「ありがとう、助かるよ。」

 

蛍はお礼を言うと、早速パイモンと一緒に三つの鍋がある辺りをウロウロし始めた。

その様子をカナデは目を細めて見守っていると、材料とレシピが置いてあったらしい。

『松茸の肉巻き』『真珠翡翠白玉湯』『モラミート』のレシピだ。

それを見ながら、蛍は料理をし始めた。暫くすると良い匂いが漂ってくる。

美味しそうな匂いに釣られて、蛍の後ろから覗き込んでいたパイモンが涎を垂らした。

蛍は苦笑しつつも、パイモンの分の料理も作ると皿に盛り付けていく。

パイモンは嬉しそうな顔をして蛍から皿を受け取ると、早速食べ始めた。

 

「ん!美味しいぞ!蛍、ありがとな!」

「どういたしまして。ほら、先にランも食べよう」

 

蛍がそう言いながらカナデの分の料理も取り分けてくれる。

カナデはそれを見て、小さく微笑むと「ありがとう」と言いながら、蛍から皿を受け取った。そして、それを一口食べる。

 

「うん。美味しいね」

 

そう言いながら、カナデは微笑んだ。その表情を見て、蛍も嬉しそうな表情をする。

 

「これなら留雲さん、気に入ってくれると思うよ」

 

カナデの言葉に蛍も微笑みながら、「うん」と返事をする。

──それから後片付け後、指定の位置に新しい料理を並べていく。

すると、大きな護符で封印されていた場所の扉が開き、光が差した。

 

 

※※※

 

カナデ達が扉に近づき、開くと、中は秘境になっていた。

 

「ああ…『禁忌滅却の札』の匂いがする。お前達。何しにここへ来たかは知らないが、その敬虔な心に免じて機会を与えよう! 妾に会いたくば、妾が仕掛けた洞窟を通ってくるがよい。」

 

すると、どうやら奥にいるらしい女性の声がその場に響き渡る。

 

その声に答えるように、カナデはパイモンと蛍に言う。

 

「『留雲借風真君』で間違えないね。…ふむ。また新しい仕掛けを作ったみたい。彼女は凄い発明家でもあるんだよ。……ふふ、ちょっとワクワクするね」

 

カナデはそう言いながら、パイモンと蛍にウインクをした。

それから興味深そうに仕掛けを眺める。蛍はそんなカナデを見て、呆れた顔をした。

 

「ランって、変わってるね」

「そうかな?でも、それが『ボク』だよ。……うん、これはこうして。それに『ボク』は彼女が危険すぎる物を作る人ではないと知っているし、何となく仕掛けは分かるから。…ほら、今こうしたら橋が出来た。これを渡るスイッチを押しながら、ゴールを目指すだけだ。」

 

そう言いながらカナデがスイッチ押すと、目の前に橋がかかり、真ん中の足場の先にも橋がかかった。

 

「わぁ……やるな!これで先に進めるな!」

「うん……凄いね……」

 

感心したように蛍とパイモンが呟く中、カナデは微笑み返す。

そして『じゃあ行こうか』と言うと、橋を渡り始めた。

もちろん、その後を蛍とパイモンが追った。

 

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

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