「おーい!」
カナデが手を振れば、それに気づいた蛍とパイモンが急いで駆け寄ってきた。
「ここにいたのか!全く、探したぞ!」
「あー……うん、ごめんね」
カナデが謝罪すると、ふわり、と浮いたままパイモンは魈の方向を向いた。
「そうだ!オイラ達、おまえに話があるんだ!ちゃんと料理も作ってきたんだぞ!な!食べながらでいいから、話を聞いてくれ!」
パイモンがふわふわ浮きながら魈に声をかけると、彼は眉を顰めた。
「我は食べずとも……」
だが、そこでふと良い香りが鼻をくすぐる。
──『杏仁豆腐』である。
食事に拘りがない魈だが、一部の料理は別だ。特に『杏仁豆腐』は思い出の物である。
「ほら!蛍が『満足サラダ』も作ったんだ!いいだろ〜!な?」
「……はぁ。分かった」
ため息をつくと、「いいだろう」と言わんばかりに魈が頷けばパイモンと蛍は嬉しそうに笑みを浮かべた。
カナデは静かにそれを見ながら、横にいた蛍に「上手くやったね」と小声で言うと、彼女は照れ臭そうにはにかんだ。
――それから、魈はとりあえず仙人達三人に会って相談すると聞いた。
※※※
その為、とりあえずカナデ達は璃月港に戻る事にする。
――のだが、カナデは『蛍達が『公子』に会うなら、前言った通り『公子』には会いたくない。こちらも用事があるから別行動を少ししたい』と璃月港の前につくと、別れた。
「……本当に『ラン』は公子が嫌いなんだな……」
それを聞いてパイモンは真っ先にそう言うと、蛍はそんなパイモンを視線で宥めながらカナデを見る。
「まあ、うん……『ボク』は『公子』が苦手というか……。彼は争い事が大好きなんだ。彼は『トラブルメーカー』なんだよね……」
カナデは遠い目をしながら思い出した様子を見せると、蛍とパイモンは「?」と首を傾げていた。
「前に会った時に無理やり秘境に連れていかれて、暫くは解放してくれなかったんだ。だから、ちょっとね……『ボク』もこう見えて割と忙しいんだよ」
そう言ってカナデがため息をつくと、蛍は「大変だね……」と苦笑して、二人は納得してくれた。
「……とにかく。『ボク』は用事を済ませたら『万文集舎』という本屋さんにいるから、そこで待ち合わせよう。場所は分かるかな?赤い柱のある西側の階段を上がった所だよ。分からない場合は誰かに近くの人に聞けば教えてくれるはずだよ。もしくは『キャサリン』か『嵐姉』とかね」
カナデは『じゃあ、また後でね』と言って歩いて行く。
そんなカナデを見て、蛍とパイモンは頷き合い、カナデとは別の行動をするのだった。
※※※
「……普通に生きてるよねぇ」
カナデは凝光の部下に蛍たちは問題ないと凝光に伝達して欲しいと伝言をした後、『往生堂』に行くと、何食わぬ顔で往生堂にいる鍾離に会い、呆れた顔を浮かべた。
従業員に儀式などについて教える仕事をいつも通りしていた様だ。
「ああ、そろそろ来る頃かとは思っていた。どうだったのだ、仙人達の様子は」
そんなカナデの心境を気にせず、鍾離は普通に話し掛ける。
「……普通服装とかツッコむべきなんじゃ。まあ、うん、君の事だし何も言わないよ」
カナデは何故いつもと全く違う服装なのに何も指摘しないんだ、という考えと『コイツ、やっぱり変な計画立ててるんじゃ?』と考えつつも、多分魈達の様子を知りたいのだろうと、仙人達の様子を話す。
──『みんな驚いてはいたが、とりあえず魈が他の三人に会いに行って今後どうするか話し合っている最中だ』と。
それを聞いて鍾離は納得した表情を見せた。
「ふむ、なるほど。」
「それより、君さ……―」
カナデが話をしようとするが、少し小走りでドアを開けて入ってきた往生堂の従業員の女性が鍾離に近寄る。
「鍾離先生。お客様がお見えですが……如何致しましょうか?」
その従業員の女性は困った表情をして鍾離にそう言いながら、チラリとカナデの方を見た。
「……客か。構わない、通してくれ」
鍾離は従業員にそう言って頷くと、従業員の女性は頭を下げて往生堂から出て行く。
そして、しばらくするとまたドアが開き、身に覚えがある人物の姿が見えて、カナデは一瞬見開くが『『ボク』は胡桃の部屋に行く。話は後でいいよ、待っているから』と言うと、その場から離れようとする。
「待て───『ラン』」
──だが鍾離に呼び止められて立ち止まると、不機嫌そうな顔で鍾離を見ると『バレたらまずいんだよ』と強めに返した。
「……いつもの場所に。あそこなら会話は聞こえる。礼だ」
それを聞いてカナデは深く息を吐く。
何なんだ、とカナデは思いながら、鍾離を見る。
どうやらその客人の話を隠れて聞いてもいいらしい。カナデは仕方なくその提案に乗って、『分かった』と返事すると、慣れたように死角になるだろう衝立の裏に隠れる。
それを鍾離は満足そうに見ると、客人である青年はブーツをカツカツさせながら鍾離に近付いてくる。
「やあ、鍾離先生。ご機嫌いかがかな?」
その青年――カナデの恋人である『公子』タルタリヤはにこやかに笑みを向けながら、鍾離に近付いて行く。
「まずまずだな。何の用だ、公子殿」
「ああ、そうだな……最近モンドを救った『英雄』である『栄誉騎士』を知っているかい?」
「話くらいは聞いている」
「なら話は早い。どうやら彼女は『七星迎仙儀式』で『岩王帝君』が暗殺した容疑がかけられるかもしれなくてね。仙人の祖である『岩王帝君』が亡くなったら『仙人を送る送仙儀式』が必要だよね?その複雑怪奇な儀式内容を理解しているのは、先生しかいない、そうだよね?」
タルタリヤは腕を組み、柔らかな笑顔を称えながら鍾離に問いかける。
「……そうかもしれないな。だが、何故俺に頼む?何が目的だ?」
「……『岩神の仙体』を確認したい。俺ではなく、『旅人の少女』がだよ?彼女は『風神の友人』らしい。それは『淑女』が言ってた事だ。それに、『カナデ』も『璃月港で最も璃月について知識があるのは鍾離だ』と前に言っていた事を思い出してね。だから来たんだよ。」
それを聞いて鍾離は顔色一つ変えないが、隠れているカナデは正直ツッコミたい事があるがごちゃ混ぜすぎて訳が分からない状態だった。
(───……こ、このバカ!『仙人を送る送仙儀式』の高難易度音ゲーくらいの複雑怪奇な儀式内容を理解しているのなんて、普通学者とかじゃないとありえない!でもそんな仕事して無さそうなら……この人が『岩王帝君』である可能性が高いと分かんないのかなぁ〜!?だから!いつもツメが甘くて心配なんだよ!!)
カナデがタルタリヤの発言に対して心で叫ぶ中、鍾離は尚も表情を変えず口を開く。
──カナデは知っている。
「ふむ。いいだろう」
「流石、話が分かる。だけれど生憎、直ぐに紹介は難しいんだよね。俺にも用事があるから、何処かで待ち合わせしたいんだけれど……『琉璃亭』はどう?あそこには個室がある。ああ、知っているだろうけど、予約制でも俺が頼めば簡単だ」
「いいだろう。では『琉璃亭』で待ち合わせよう」
「よかった!じゃあ、そういう事で。また後でね、先生!」
そう言って、軽く片手を振りつつ、その場を後にするタルタリヤを確認すると、カナデは隠れていた衝立から出て、深い息を吐く。
「はあ~……バレるかと思ってヒヤヒヤした。気配消す練習して本当に良かった。」
カナデは頭を軽くガシガシ掻きながらそう呟くと、そんなカナデの様子を見て、鍾離は声を掛ける。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。ああもう、あの子が動いていたら動きにくい。勘がいつも鋭いから。……はぁ。でもリスクがあっても、頼まれた依頼はこさないといけないしなぁ」
カナデは眼鏡を押し上げながら、ため息をつく。
「断れば良かったのではないか?」
「……きみさぁ、凝光が頼んできて簡単に断れると思う?しかも明らかにタル……『
カナデは軽く睨むと、鍾離の胸元を軽くトンッと叩く。
すると、一瞬目を見張るが、直ぐにフッと笑ってみせた。
「本当に変わらないな、お前は」
「まあ、そう簡単に変われるわけもないよ。……こんな事してるの魈に見られたら怒られそうだね、ふふ。でも私達は『友人』だから、別に良いよね」
「ああ、構わない。『友人』だからな」
カナデはやれやれといった様子で『とりあえず私は他にも用事あるから。多分後で合流するかも』と鍾離に告げると、軽く手を振り、何処かに向かって歩いて行く。
「じゃあまたね『鍾離』」
カナデはいつも通りの明るい笑顔を浮かべると、鍾離に手を振って『用事』に向かった。
そんな後ろ姿を見ながら、鍾離はそっと小さく呟く。
「……確実に怒られるだろうが、仕方ないな」
その声は誰の耳にも届かない。
そして、鍾離も『用事』の為に移動する事にした。
※※
───少し前。
蛍達がタルタリヤの元に行くと、早速仙人達との話をした。
どうやらファデュイでも仙人の名前を把握しきれていない様だった。
タルタリヤは璃月七星が『真犯人が捕まらない限り『仙祖の亡骸』を目にすることは許さない』と公言したらしいと蛍達に代わりに伝える。
タルタリヤが語る内容からは『明らかに璃月七星が怪しい』と蛍達は察した。
しかし、タルタリヤも『ファデュイの執行官』だ。
完全に信用できる訳では無い。
その事を彼女らも理解しているし、あの優しげなカナデ……『ラン』も『公子』に対して明らかに嫌そうな態度だったのもある。
「――……まぁ、どうにかして『仙祖の亡骸』を見る方法は俺が探すよ。一人可能性がある男を知っているんだ。……で、そういえば噂で、君たちがもう1人金髪の少年と歩いていた、らしいけど、その少年はいないのかな?」
蛍とパイモンは『『ラン』の事だ!』と思いあたるが、ランは彼(彼女)が『公子にはあまり関わりたくない』と言っていた事を思い出す。
パイモンが蛍に目配せをし、『どうする?』とあわあわ、とした様子で合図をしつつ尋ねる。
――しかし、蛍は真っ直ぐな瞳で答えた。
「『ラン』の事?さっきまで一緒だったけどもう別れたよ。用事があるから後で合流するつもり」
……――と。
「お、おい、蛍!いいのか話して!」
「『ラン』?へぇ。独特な響きの名前だね。君の名前も変わっているけれど。それで、用事って何?」
「……そこまで知らない。知っていても話す必要がある?」
「あははっ。……そうだね、君の言う通りだ。警戒する事は悪くない。俺は『ファデュイ』だからね」
蛍の言葉を聞いて楽しそうに笑うタルタリヤを見て、蛍は何となく嫌な感じを感じ取る。
それはパイモンも同じだったらしく、咄嗟に『あ!オイラお腹すいたぞー!』と声を上げた。
「とりあえず公子は頼りになれそうなやつを探すんだよな!ならオイラ達はそれまで食事をしたり、買い物するぞ!いいよな?」
「ふむ。確かに君たちは直ぐに璃月港から離れたみたいだしね。いいよ。準備が出来たら『北国銀行』の受付の女性に話してくれ。『公子と待ち合わせしている』件で話があると伝えれば話が通じるようにしておくよ。」
「分かった!ありがとうな、公子!」
パイモンは軽く手をあげると、蛍の服を掴みつつ『ほら、行くぞ!』と声をかけて、浮いたまま、ふよふよと進み出す。
「蛍!早く!」
「あっ、パイモン。待ってよ!そんなに急がなくてもご馳走は逃げないよ!」
そうして二人は急ぎ足でその場を後にした。
それを静かに眺めていたタルタリヤだったが、『やれやれ』とため息混じりに呟く。
「やっぱり警戒されちゃったか……まあ、仕方ないけど」
そんな事を言いつつも表情は変わらず、真剣な眼差しをしたまま『さて』と呟く。
「とりあえず俺も動き始めるか。」
そう呟いて踵を返した。
その後、すぐに蛍達二人は食事と買い物を済ませると北国銀行へ向かった。
どんな話がみたいですか? 参考にいたします!
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