白星の君へ   作:F1さん

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間章2 伝説任務 異郷鳥の章(謎境一騎)
稲妻での出会い


 

「ここの月っていつも丸いよね」

 

カナデは唐突に、庭ににて、暗い空を眺めながら、隣に座っているテラコッタ色の髪の青年に話しかけた。

今の彼はジャケットや仮面等をカナデの部屋のに置いてあり、今はラフな格好をしている。

庭には様々な花々や樹木が植えられており、穏やかな時間が流れるような場所だ。

カナデは洞天内に小さな庭を作っており、その中には小さな白いガーデンテーブルと揃いの椅子があり、2人はそこに座っていた。

2人は普段からよくその場所で雑談をしたり、お茶を飲んだりしている。

大抵の花は暗い夜に紛れているが、イグサだけが青く光りながら、2人を照らしている。

 

「丸くない月があるのかい?」

 

テラコッタ色の髪の青年──タルタリヤはカナデの言葉に疑問を投げかけた。

その口調は心底不思議そうに聞こえる。

テイワットの空は丸く、それは大抵の人は当たり前だと考えているが──カナデは異世界で暮らしていた記憶がある。

だから、その疑問はごく当たり前のものだった。

 

「うん。日ごとに月が欠けたり、満ちたりするんだよ。私のいた国の人達は風情っていうのかな、その変化を愛でるの」

 

カナデはタルタリヤの疑問に目を細め、懐かしむ様な表情で返しながら、視線を宙に泳がせる。

 

「へぇ……興味深いな」

 

空を見上げるその少し儚げな横顔を、チラリと横目で見ながらタルタリヤは口元を緩めた。

その瞳の奥には好奇心が宿っている。

カナデは彼に『前世の記憶がある』と前に話しており、たまに2人きりになると、その話題を何気なく出すことがあった。

タルタリヤはそれを楽しそうに聞いてくれる。

カナデはそれが嬉しかったし、その時間がとても心地良いものだった。

たまに振り回されたりもするし、彼のペースに流されて翻弄されてしまう事もあるが、静かに、だけれど子供の様な瞳で話を聞いてくれる時もある。

そんな彼だから、カナデも思い出話がしたくなるのだ。

 

「うん。まあ、でもこっちの空も私は好きだよ」

 

カナデは追慕の瞳を浮かべていたが、視線を空から外し、タルタリヤに目を向けて微笑した。

それは花がほころぶような、純粋な微笑みで、その笑顔は幼さを感じさせるもので、彼女の心からの本心が篭っている。

それを向けられたタルタリヤは僅かに目を見開く。

だが、直ぐにいつもの笑顔に戻り、彼も優しく微笑んで見せた。

暗がりで、僅かなランプしかないため、2人の表情はよく見えないが、その雰囲気はとても穏やかである。

2人の間には沈黙が流れた。

しかし、その静寂さえも心地よく感じられてしまうほど、カナデはこの時間が好きだった。

 

※※※

 

 

 

▽前提任務

伝説任務 空鯨の章

伝説任務 仙狐の章

▽魔神任務 第二章 四幕

 

以下の依頼は上記の依頼をこなしていなければ引き受けられません。

 

また、▽伝説任務:謎境一騎の要素もございます。

引き受けますか?

 

伝説任務 異郷鳥の章

 

▽はい いいえ

 

 

※※※

 

「あれ?あそこにいるのはカナデじゃないか?」

 

ひらり、とサクラの淡い花びらは風で地面を飛び回っている。

 

蛍とパイモンが稲妻城を歩いてる時、とある建物の前で見慣れた人影が何かを言われ、困惑している姿を見つけた。

 

どうやら困ってる様子なので、蛍とパイモンはそこに駆け寄っていくことにする。

今の稲妻は鎖国令が解除され、開国したばかりだ。

なので、異国から来た人もそれなりに見かける様になっていた。

なので様々な地域を旅しているカナデが稲妻にいても、そこまで目立つことはない。

また、カナデの容姿はほぼ稲妻人にしか見えないので、彼女が異邦人だと気づく人も少ない。

 

「どうしたの?」

 

蛍は困り顔をしているカナデに近づき、声をかけると──そこが八重堂であり、カナデの向かい側にいるのは、編集を管理している黒田と言う男だと気が付いた。

 

「え?あ、蛍とパイモン。な、なんでもないよ?ね、黒田さん」

 

カナデは蛍に声をかけられて、驚いた様子を見せたが、すぐにいつもの調子に戻り、目の前の黒田に同意を求める。

黒田は蛍とカナデの顔を見比べ、それから黒縁の眼鏡のブリッジを指で押し上げながらも口を開いた。

 

「いや、困りますよ。カナデさん。ちゃんと締切は守って頂かないと」

 

黒田は眼鏡をキラリと光らせ、カナデに厳しい視線を向ける。

『締切』と言う単語にカナデはビクリと肩を揺らし、目を逸らした。

 

「え?締切って……何?」

 

蛍の頭の中には、疑問符が浮かぶ。

何となく蛍とパイモンにも『八重堂』と『締切』から結び付けられるものは『本』だとは分かる。

この八重堂はその名の通り八重神子が花見坂の一角に興した、稲妻唯一の出版社だからだ。

 

「いや、えっと……その……」

 

カナデはダラダラと汗を垂らして、慌てて視線を泳がせる。

だが、直ぐ様に黒田をカナデは腕を組みながら、睨みつけた。

 

「そんなこと言っても、今回はイベントがあるから間に合わないかもしれないって事前に言ってたじゃないですか!なのに、こんな急に……」

 

カナデの口調は強く、少し怒っている様に見える。

どうやらとりあえず蛍達には説明をせずに黒田に抗議をし始めたようだ。

だが、黒田はカナデの抗議に動じた様子もなく淡々と返す。

 

「それはそうですが、でもカナデさんがいないと話が進められないんですよ」

「……う……」

 

黒田の正論にカナデは言葉に詰まってしまった。

 

「おーい、カナデ。話が見えないぞ?」

 

パイモンはその2人の様子を黙って見ていたが、話に割って入り、カナデの前でふよふよと浮きながら疑問を投げかける。

 

「……あ。はぁ、仕方ないか。私はこの『八重堂』でとある小説を連載しているの」

 

蛍とパイモンの顔を見て、カナデは観念した様子でため息をついた。

そして、頭を緩く掻きながらゆっくりと話し出す。

一応蛍達も八重神子に誘われ、小説を書いたことはあるが、自分達の冒険を元に書いた事はあるが、八重神子や、八重堂の人々の力を借りて何とか1冊の本を完成させただけで、連載などはしたことがない。

それに、カナデは忙しくたまに会える方が珍しいほどで、連載の小説を連載していたなんて初耳だ。

その為、蛍とパイモンが驚いていると、カナデは口を開こうとした。

だが、その前に黒田がカナデの話に割って入る。

 

「実は今、カナデさんが連載している小説『天穹のフリージア』は八重堂での売り上げが好調なんです。ですが、カナデさんはまだアイディアが浮かばないらしく、連載が止まってしまっているんです」

「ちょ、ちょっと!黒田さん。何勝手に言ってるんですか?」

 

カナデは顔を真っ赤にして、黒田に異議を唱えるが、彼はどこ吹く風と言った様子で肩を竦めた。

 

「事実でしょう?」

「……確かにそう、ですけど……」

 

黒田の言葉にカナデは言葉を詰まらせる。

どうやら本当の事らしい。

カナデは消え入りそうな声で呟き、肩を落とした。

そんな様子を見て、蛍とパイモンは顔を見合わせる。

2人にとってカナデは友人であり、彼女が困っているなら助けてあげたいと考え、2人は頷いた。

 

「なあ、カナデ!困ってるならオイラ達が助けてやろうか?な、蛍!」

 

パイモンは目を輝かせながら、カナデに提案をする。蛍もその意見には賛成であり、首を縦に振った。

 

「うん。困っているなら力になるよ?」

 

蛍は真っ直ぐカナデを見つめる。その瞳には純粋な優しさが込められており、真摯さを感じさせるものであった。その言葉にカナデは僅かに目を見張る。そして、少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

 

「じゃあ、ちょっとだけ手伝って貰おうかな」

 

カナデは少し照れた様子を見せながら、柔らかく微笑む。どうやら2人の言葉に心を動かされたらしい。

 

「おう!任せてくれよな!」

 

パイモンは元気よく答え、胸を張ると、トントンと自分の胸を軽く叩く。

その仕草はどこか誇らしげだ。

そんなパイモンの様子を見たカナデは楽しげな雰囲気で笑い、パイモンの頭に手を伸ばした。

 

「ふふ、頼もしいね」

 

カナデはパイモンの頭を優しく撫でる。その優しい手つきにパイモンも嬉しそうだ。その様子を見た蛍も自然と頬が緩み、笑顔になる。

 

「……黒田さん、期限どのくらい貰えますか?」

「2週間くらいですね。それ以上伸ばすのは無理ですよ」

 

黒田はカナデのその問いに少し厳しい口調で答えた。

 

「分かりました」

 

カナデは、だが、頷き、了承する。そして、蛍達の方に向き直り、口元に指を当てながら口を開く。

 

「とりあえず、場所を移そう。そこで色々説明したいから」

 

カナデの提案に蛍達は賛成の意を示し、首を縦に振る。それを確認したカナデは目的地の方向へ歩き始めた。

 

「それで、『天穹のフリージア』ってどんな話なんだ?」

「それはね──」

 

カナデは歩きながらパイモンの質問に答えていく。

フリージアという少女が様々な場所を旅する冒険物語であり、不思議な青年に恋をする話だ。

それだけだとありきたりだが、カナデの話の場合不思議な異世界要素があり、それがリアリティが高いと評判らしい。

 

「へぇー、面白そうだな」

 

パイモンは目をキラキラと輝かせながら、カナデの話に聞き入っていた。

 

「うん、私も読んでみたいな」

 

そんなパイモンの様子を見てか蛍もカナデの話に興味を持ったようだ。

 

「ふふ、じゃあ今度貸してあげるね」

 

そんな2人の反応にカナデは嬉しそうに笑い、そう返した。

 

※※※

 

そんな話をしているうちに目的地に着いたようだ。そこは稲妻城から少し離れた草原だった。

近くには櫻の木が沢山植えてあり、花弁が風に吹かれ、ひらひらと舞い、風情を感じさせる場所だった。

 

「それで、何からすれば良いんだ?」

 

パイモンが辺りを見回しながら、カナデに質問すると彼女はにっこりと微笑むと、人差し指を立てた。

 

「実はね、ちょっと構想自体はあるんだ。でもね、私は『イリデッセンスツアー』に呼ばれてしまっていて……。音楽イベントなんだけれど……。最近頑張って運営のお手伝いもしたんだけれど、中止になってしまったの。それはいいんだけど。どうやら知り合いの子と待ち合わせしていたんだけれど、見つからなくて。大丈夫だとは思うんだ。でも、申し訳ないないんだけれど、探すのを手伝ってくれないかな?『辛炎』って言う璃月人の子なんだけど」

「辛炎!?あの、辛炎か?」

「え?うん。そうだけど……。知ってるの?」

 

カナデがパイモンに質問すると、パイモンは驚いた様子で目を見開く。

 

「勿論知ってるぜ!あいつはオイラ達の友達なんだ」

 

パイモンがそう言うと、カナデは僅かに目を見張りながらも微笑む。

 

「そう……。なら、話は早いかな?一緒に探してくれる?あの子、優しいから心配なんだよね。それが気になって、手が付かなかったんだ。あ。そうだ、この鳥、伝言用に渡して置くね。それとは別に『約束』もあって……。はぁ」

 

カナデは手を伸ばすと、その空間から口笛を吹き、鳥を呼び出す。

その鳥はカナデの手の上に止まると、首を傾げながらカナデを見つめた。

 

「この子は『留雲借風真君』が作ってくれた絡繰の一つなの。ほら、よく見ると普通の鳥じゃなくて……木材でできてるでしょ?」

 

カナデは鳥を優しく撫でながら、蛍達に説明をする。

確かによく見ると羽根等は全て木材で出来ている。

 

「あ、本当だ!凄いぞ!これ」

「うん、でしょう?」

 

パイモンが驚きの声を上げるとカナデは嬉しそうに笑った。

そして、その鳥を空へと放つと「お願いね」と声をかける。

すると、その鳥は翼を広げ、蛍の肩に止まり、留まった。

 

「この鳥に伝言を頼めば、私の所まで飛んでいってくれるから。何かあったり、手助け必要だったら使って」

「うん、ありがとう。カナデ」

「ありがとな!」

 

蛍とパイモンはお礼を言い、頭を下げる。

そんな2人にカナデはにっこりと微笑むと「どういたしまして」と言った。

そして、蛍達に手を振りながら去っていくカナデを見送っていた蛍は隣にいるパイモンに話しかける。

 

「じゃあ、探そっか」

「おう!」

 

蛍の言葉に元気よく返事をするパイモン。

こうして2人は辛炎を探す事になったのだった。

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

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