白星の君へ   作:F1さん

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探索する者達

 

 

「『陰陽道』かぁ。ふむ。私も聞いた事あるけれど、占いとか、悪しき『モノ』を祓う感じだっけ?古代からあるっていう。」

 

カナデは辺りを警戒しつつも、場を和ませるために明るく話を切り出した。

無言で恐らく長いであろう道を進むのは気が滅入るので、せめて雰囲気を明るくしようと考えたのだ。

 

「ああ、そうだ! 「陰陽術」は邪悪を祓うもの。心して使えば、武人も活用できるようになるんだ!カナデさんは物知りだね。」

 

式大将は嬉しそうな声音でカナデの周りをふよふよ浮きながら、話をする。

 

「ああ、カナデは物知りなんだ!それに舞台にも上がるんだよな?オイラは見た事はないけど、雲菫もそう言ってたな!な!辛炎!辛炎も見た事あるのか?舞台」

「うん、アタイも見た事があるぜ。それにカナデは親切で、アタイが璃月港とかでライブをする時に専用スペースに建てる必要があるんだが、事前申請が凄い大変で……でも、カナデが簡単なやり方を纏めてくれたからいつもそれを見ながらやってるんだ!」

 

パイモンが興味深げにカナデに尋ねると、辛炎はそれに答えつつ、ライブの話題になり、その話で辛炎が音楽をやっているのだと分かる。

 

「なるほど。もしかしてお嬢さんはそれがきっかけでカナデと知り合ったのかな?それとも推察するに、君は音楽をやっているから、それがきっかけ、なんじゃないかい?」

「な、なんで分かったんだ!?」

 

辛炎の話に相槌を打ちながら、話に入ってきたのは後ろから話を聞いていたタルタリヤだった。

先頭にはカナデと式大将がおり、その後ろに辛炎、パイモン、蛍、タルタリヤの順で秘境を一同は進んでいた。

 

最初はタルタリヤが先頭に行こうとしたのだが、カナデが『君はやりすぎそうだから歩く時はとりあえず後方。弓だけ基本使って。後は……真ん中に辛炎と蛍がいればパイモンが安心するし、3人は真ん中。ギミックに慣れてる私が先頭。式大将は道案内しつつ臨機応変に移動で』と提案し、最終的に今の形になる。

 

カナデはこの中だと戦闘が得意なのはタルタリヤと蛍だと理解している。

そして集団に命令するのに慣れているのはタルタリヤだ。

辛炎は戦闘にはある程度慣れはあるが、ギタリストだ。

だが、彼女の火元素は、水元素使いのタルタリヤと組めば蒸発、今は雷元素の蛍と組めば過負荷、カナデは全体的に拡散反応になる。

それに彼女の戦い方は物理ダメージを中心に戦い、物理バフやデバフのバリアーを貼るものがある為、サポートに向いていた。

勿論、この陣形は何かあれば崩れる事はあるだろうが。

 

(ただ、秘境だからいいけど、辛炎の場合燃やしすぎる可能性あるから気をつけないと……)

 

そう考えながら前を向きつつ、カナデが考えていると、『あとアタイの事は普通に呼び捨てで呼んでくれ、お嬢さんはその……ちょっと、お、落ち着かなくてな!』と後ろから聞こえてくる微笑ましい会話に小さくカナデが笑うと、小さな小部屋の様な場所に出た。

すると、部屋の中から突然現れた魔物…鎧武者や機械達は突然乱入して来たカナデたちに驚いた様な動きをするも、直ぐに臨戦体制に入る。

 

「おわっ!?な、なんか沢山でたぞ!しかもなんか強そうだ!」

「確かに、先程よりは強そうに見えるね。」

 

パイモンは驚いた様に辺りを見回すが、蛍は冷静に呟くように言うと、細剣を構えながら、魔物を見据えている。

 

「大丈夫だ!アタイの炎で焼き尽くしてやる!」

 

パイモンの言葉を聞いて、辛炎は大剣を構えると、戦闘態勢に入った。

 

「はぁ。折角さっきより強そうなのに……カナデは厳しいね、でもまぁ、『縛り』だっけ?それを守るって約束したしね。それに、旅人達の実力も知りたいし。」

 

タルタリヤはそう言うと、弓を構える。

本来鎧武者の様な硬い魔物に弓はあまり効かないが、彼の場合は別だ。

カナデは呆れた表情をしたが、直ぐにパイモンを下がらせ、刀を構えた。

そして、魔物が襲いかかって来たのを合図として、戦闘が始まったのだった。

※※※

 

 

戦闘が終わり、それぞれが何か手がかりなどがないか部屋を調べていた。

 

「実に悪くない。これほどまでにスリルな戦い…かつて、あの場所で経験したもののようだ。」

 

そんな中、タルタリヤが武器をしまいながら、思わずと言った様子で呟く。

その呟きは、戦闘で昂った感情を発散させている様子だった。

カナデはそれを見て、ため息を吐いている。

 

「なんか興奮してるみたいだな?そんなにケンカが好きなのか?」

「もちろん!俺は終わらない戦いを楽しんでいる。命をかけて全力を尽くし、すべてを賭ける…」

「おう…ま、まぁ……『公子』を連れてきたのは、たしかに正解だったかもな。魔物をやっつけるスピードがかなり速くなったぞ!」

 

パイモンがタルタリヤに尋ねると、彼は興奮したように返すと、パイモンは引き気味になりつつ、そう返すと、嬉しげにくるり、と空中を漂っていた。

その様子を見ながら、蛍がパイモンに寄ろうとした時、『足元に気をつけろ!おい、あれなんだ?地面の上に小さな紙人形が、「式大将」にそっくりだ!』と辛炎の声が部屋に響く。

その言葉に一同が注目し、彼女の指さした方向を見た。真っ先にカナデが式大将に尋ねる。

 

「『式大将』、これは?」

「……僕はこれが何なのか知っている。これは僕の「拓本」、僕を原型にして量産した「式神」で、僕の力を有している。もしかすると、記憶も幾分か持っているかもしれない…これは回収しよう。」

 

『式大将』はそう言いながら、『拓本』に手を伸ばして触れた瞬間。

彼はふよふよと浮いていたが、途端に床に沈んだ。

 

「な、なんだ?」

「『式大将』!大丈夫?」

 

パイモンが驚いて叫ぶと、蛍が慌てて駆け寄り、彼の様子を伺う。

すると、式大将はゆっくりと起き上がり、困惑した様子で自分の手を見つめる。

その様子を見た蛍とパイモンが顔を見合わせると、辛炎が『どうだ?何か思い出したか?』と柔らかな声音で尋ねる。

 

「晴之介…」

「晴之介?」

「惟神晴之介……僕の主だ。彼は稲妻最初の「陰陽師」であり、符術を熟知していた。彼は僕とこの秘境を作り、ここに長く隠居していたんだ。」

「ふむ。君の主は、やはりここの創造者だったんだね。」

 

知らぬ名前にパイモンが尋ねると、紙の手を頭にやった状態で、式大将は思い出しながらそう話すと、タルタリヤが腕を組みながら、納得したように頷く。

 

「でも、そいつがあんたと秘境を作った目的はなんなんだ?」

「……すまない…今はまだ分からない。」

「ただの「陰陽術」マニアなんじゃないか?自分の陰陽術がすごいって知って、この場所を作った。それで、もっと強くなるために、ここに閉じこもって修行してたとか…」

 

辛炎がそう尋ねると、式大将は申し訳なさそうな声音で答える。

それを見たパイモンは思いついた!と手を叩いて、自分の考えを話すが、その会話を聞いていたカナデが『でも……一人でこんな秘境を作るのは大変じゃない?もし何かトラブルがあったら一人で対処しなきゃいけないんだし……名前からして男性だよね?恐らく、成人はしてると思うの。やっぱりただの『陰陽術マニア』じゃ無理じゃない?』と疑問を口にする。

 

「確かに、それもそうだな。」

 

パイモンは納得した様子で頷くが、タルタリヤが『でも、パイモンの考えも可能性としては捨てきれないよ。学術に執着する人は、いつも驚くようなことをしでかす。例えばその惟神晴之介という人、彼は『陰陽術』に酔いしれ、自分を鍛えるためにわざわざこの秘境を作った。しかし秘境に異常が起き、『陰陽術』が暴走し、式神を魔物にしてしまった。』と、眉を寄せ、少し神妙な声音で話す。

 

彼は同じファデュイの執行官である『博士』を思い浮かべながら、そう解釈を述べると、蛍は『マッドサイエンティスト的な人だって話?』と、言いながら首を傾げる。

 

「うぇっ!「式神」が魔物になるのか!?」

「う、うそだろ!ろくでもねぇ話じゃんか!」

 

パイモンと辛炎が驚いた様子で叫ぶ。

どうやらこの中では2人が最も純粋らしく、カナデと蛍は顔を見合わせると肩を竦めた。

 

「ただの想像だよ、だってここには『式神』も紙札以外の媒体もないんだから。こんな大事が起こったら、稲妻当局はきっと気付くはずだよね?それで人員を手配してここを封印したところ、『式大将』は眠りについた…」

「いや。僕はまだ晴之介の面影や、彼といた感覚を思い出せはしないが…唯一確信を持ってることがある――」

 

 

タルタリヤのどちらかと言えば、『悪い考え』である言葉にカナデは内心、首を軽く傾げる。

違和感を少し抱いたのだ。

『みんなが言い出しにくいなら、俺が言ってあげる』とでも言わんばかりに、切り出していたからだ。

だが、その間にも、式大将は首を横に振ると、また話し出す。

 

「彼の才覚からして、「陰陽術」の領域でこれほどまでの過ちを犯すことはないだろう。それに、彼が責任感のない人ではないと、僕は思うんだ…」

「そうかい?そうなると、あとはあまり良くない推測しか残ってないよ。仮に惟神晴之介が悪人で、この秘境を創造したのが「陰陽術」を強化することで、戦う道具となる魔物を創造するためだったら…そうなれば彼は正真正銘、迷惑極まりない人間だ。そして君は、惟神晴之介の共犯者ということになる。」

「悪人の…共犯者?魔物を…戦う道具に?」

「ああ。」

 

タルタリヤは腕を組み、『式大将』にそう告げると、彼は言葉の一部をオウム返しで呟く。

その発言に辛炎は苦笑しつつ、手を軽く振る。

 

「おいおい兄ちゃん、いま結論を下すのは少し早いんじゃねぇか?『式大将』はアタイの』試験』に合格した、アタイにとって信頼できる相手だ。そう言われるのは少し聞き捨てならねぇな。」

「ん?ただ『式大将』の記憶から推測しただけだよ。確かに、今はまだ決定的な証拠はない。俺もわざと彼を疑っているわけじゃないんだ、みんなのために現状を整理しているだけさ。それに…兵器にされることも、別に悪いことじゃないだろ?」

 

カナデはその言葉に、もしやタルタリヤがこの秘境に来たのには何か理由があったのでは、という考えを頭に過ぎらせる。

彼は『ファデュイの執行官』だ。

もしや、自分を気まぐれに秘境に連れてきたのではなく。

何か目的があったのではないか、と。

しかし、カナデは直ぐにその考えを振り払うように頭を振ると、まだ話は続いてる様だった。

 

「……兎に角。あの扉をくぐり抜ければ、次の部屋に到達できるはずだ。「式大将」の拓本を探してみよう、あれは記憶を取り戻す手助けになる。もしかしたら、最深部で惟神晴之介本人に会えるかもしれないね?そいつの実力がどの程度のものかは分からないけど、ぜひ会ってみたい。」

「 …引き続き進もう。」

 

カナデは考えるのをひとまず後回しにし、式大将がそう話すのを聞くと、彼らはその扉を潜り抜けていこうとしたが──……。

先程の並びになる前にカナデをタルタリヤが引っ張った。

 

「カナデ。ちょっといい?」

「なに?あ、さっきの話?」

 

カナデは何か言われるのだろうと予測し、そう彼に返すと『悪いけど先に皆は扉の先に進んでて。話があるから』と伝えると、パイモンは首を傾げつつも頷き、蛍達は『何かあればすぐ呼んでね』と言い、扉の向こうに進んでいった。

 

 

……のだが、扉が消えてしまい、カナデは『あ……やば』と顔を引きつらせる。

 

「……もしかして、閉じ込められた?出口だったの、あの扉!?ってうわっ!?な、なんか揺れてきたんだけど!」

 

突然、扉が消えると同時に地面が揺れ始め、カナデは慌てながら足元が揺れないように慣れた様に頭を手で隠し、しゃがんでバランスを取る。

 

「あははっ!これは面白いね。」

「笑ってる場合じゃないよ……震度は3くらい?かな、この程度なら平気だけど。と、とりあえずタルタリヤももしかしたら何か降ってくるかもしれないから、頭を守った方がいいよ!」

「このくらい平気だけど。ま、カナデがそう言うならそうしようか」

 

楽しそうに笑いながら、そう話す彼にカナデは呆れながらも『このくらい平気』という発言は、鍛えられた彼が言うと説得力があり、なんとも言えない表情を浮かべていた。

しかし、しばらくすると揺れが収まり、カナデは安心した様に息を吐くと、『あーびっくりした』と言いながら額や腕についていた土埃を手で払いながら立ち上がる。

 

「……もしかして、しばらく私、君と2人きり?………で、出口探そう!このまま前みたいに数日2人きりとか、流石に嫌!」

 

カナデはふと考えた素振りをしたかと思えば、慌ててそう話し出す、くるり、と踵を返すと、『あ、そうだ。「式大将」の拓本探さないといけないんだっけ!?なら、探さないと!』とわざとらしく大声で言いながら進み始めた。

その様子を後ろから眺めていた彼は、くつりと笑う。

 

「俺と一緒なのが嫌みたいな言い方だね?傷つくなぁ。恋人なのに。」

「いや、その……だって、2人きりだと何されるかわかんないし……」

 

カナデは少し気まずそうにしながら、そう話すとタルタリヤは目を細め、ゆっくりとカナデに後ろから近づく。

 

「へぇ?何されると思ったの?」

「な、なに……って」

 

そのまま低い声で問いかけられ、カナデは顔を赤くし、答えに戸惑いながら目を泳がせた。

その反応を見て、タルタリヤは楽しそうに笑うと耳元に近づき、囁くように口を開く。

 

「例えば……こうやって耳元で話されたりとか」

「ひゃ!」

 

首筋にかかる吐息に、カナデはビクッと反応し身体を震わせると、思わず声を上げる。

だが、直ぐに我に返ると、慌てて距離を取りながら耳を抑え、顔を更に赤く染める。

 

「やめい!……ほら、遊んでる暇はないからね、そういうのは後!」

「へー。後ならいいんだ?じゃあ楽しみにしてるね」

「っ……君ねぇ……」

 

カナデは振り返り、文句の一つでも言おうと思ったが、タルタリヤの無邪気な笑みを浮かべる様子に何も言えず、言葉を詰まらせる。

そして、ため息を吐きながら前に向き直り、道を戻るため、歩き始めた。

カナデは先程よりも早歩きで進んで行く。その速度は心なしか、早くなっている気がするのは気のせいではないだろう。その背中をゆっくりと追うように歩く彼は、ふと思い出したように口を開く。

 

「ああ、そうだ。さっき、話があるって言ったよね?」

「ん?ああ、そうだったね」

 

タルタリヤが横に並んだのを横目で確認した後、カナデは前を向きながら軽く返答した。

 

「それで?話ってなに?」

「その事なんだけど……秘境から出れたら、ちょっと時間もらえないかな?2人きりで話したいことがいくつかあってね」

「ん?うん、わかった。いいよ」

 

カナデは頷きながら了承し、彼ら2人は戻った部屋の地形が変わり、魔物も再度出現しているのを見て、戦闘態勢に入る。

しかし、魔物たちはさほど強くなく、特に問題もなく退治することができた。

 

「……これ、建物作り変わってない?いや、なんか、仕掛けみたいに上下が変わってるというか。まるでカラクリ屋敷みたいになってる。でも、まだ終わってない感じだね、揺れは収まったけど、音はそこかしこでしてる。魔物も一緒に移動し始めてるみたい……。こんなの一人で作れないし、暮らせるような施設じゃないよ。まるで『鍛錬場』や『研究所』みたい。」

 

カナデはそう話すと、辺りを見渡して腕を組みながらそう話す。

その言葉に、タルタリヤも同意を示すように首を縦に振った。

 

「そうだね、カナデの言う通りだ。これは個人で作り出したというよりは、複数の人間で作り上げたんだろう。トレーニング施設、というべきかな?」

「うん。問題はこの施設がいつ出来たか、だね。……だけれどそうしたら作り上げた本人はここで死んでいるか、外に出ているかのどちらかの可能性がある、ね。どちらにせよこの施設は危ない。とりあえずは蛍達が戻ってくるか、幕府側が来るか分からないけれど……先に進まないと。」

「そうだね、行こうか。」

 

2人は頷き合うと、先へ進むべく歩き出したのだった。

 

20240911 編集

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