白星の君へ   作:F1さん

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水面下の出来事 (フォンテーヌ魔神任務)
そして、また出会う


 

 

「……どうして私がここにいるんだろうなぁ

 

 メロピデ要塞内でカナデはポツリと呟く。

 

 ───メロピデ要塞。

 

 それはフォンテーヌ人が罪を犯した時に収監される場所であり、監獄でもある。

 

 昔は治安が悪かった様だが、今は看守長であるリオセスリのおかげでかなり改善された。

 メロピデ要塞の人々は特別許可券で仕事を免除したり、通貨代わりにしたりしている様だ。

 

 カナデがメロピデ要塞にいるのは、とある依頼を引き受けたからだ。

 

 その依頼主はヌヴィレット。フォンテーヌでは知らない者が居ない『最高審判官』。

 彼は忙しく──フォンテーヌ人に頼めない依頼だからと、一切フォンテーヌ人の血が流れないカナデに白羽の矢が立ったのだ。

 

 そしてその依頼内容は『ロシ』について調べる事である。

 最近メロピデ要塞ではソレについて売買に使用されている疑惑があり、それは麻薬の様なものなのだ。

 

 ヌヴィレットはリオセスリに協力し、その組織をカナデに探って欲しいと依頼をしてきた。

 本来は罪人として入り込む──という案もあったのだが、カナデは商人の手伝い。もとい、運び屋としてメロピデ要塞に入る事にした。

 

 看守長であるリオセスリは意外にも親切だった。

 

 見た目は狼やサメのような鋭い雰囲気だが、普段の振る舞いは紳士的だが、時折お茶目さも持つ。

 

 それと、紅茶を飲むのが好きらしく、前に緊張しながら部屋に呼び出された時、出されたお茶の種類をカナデが当てれば、話が盛り上がった。

 

「──っと、そうじゃない」

 

 カナデは外では夜の時間である要塞内を歩いていた。

 

 この時間は見張りの看守達しかいないが、カナデは許可により歩く事を許されていた。

 そして、今はこのメロピデ要塞の看護師長であるシグウィンに包帯などを届ける為歩いている。

 

 シグウィンはメロピデ要塞の看護師として働いており、よく病気にかかったり、怪我をした囚人が彼女の元に運び込まれてくる。

 

 彼女自体は人ではなく、『メリュジーヌ』という生物だ。

 しかし、容姿は完全に人で。

 

 でも、メロピデ要塞の人々はシグウィンの人種を気にしないし、シグウィンも昔は気にしていた様だが、周りに受け入れられてからは気にしないようだった。

 

 勿論、カナデも気にしなかった。むしろ見た目は可愛らしく、小さな少女の様な容姿だし、美容関係に詳しいので、たまにメイクのアドバイスを聞いている。

 

 カナデは自身が強いとは思っていない。

 

 それに雑務の方が得意だと自覚をしているし───冒険者として仕事をする時に、潜入捜査をしたり、舞台に立つ事もあるからだ。

 

「あら? こんばんは、こんな時間に何か用かしら?」

「こんばんは。シグウィンちゃん。頼まれていた物資を届けに来ました」

「あら! それは助かるのよ! ありがとう、カナデさん」

「いえ、仕事なので気にしないで下さい。これ何処に起きますか?」

「じゃあ、そこの机に置いて欲しいのよ」

「はい。了解です」

 

 カナデは言われた様に物資を机の上に置いた。それから少し考えた素振りの後、口を開く。

 

「シグウィンちゃんは、長生きなんですよね? あの、ちょっと、とある症状についてついでに聞きたいんですが、いいですか?」

「症状? 別に良いわよ? ウチの知ってることなら答えるわ」

「あの、体の内に何かの力がうずくような、時折、気が沈むような、現象って聞いた事ありますか

その、内緒にしておいて欲しいんですが、私には水元素使いの婚約者がいて。

前にそんな事がたまにあるって手紙を貰ったんですよね」

「へぇ……聞いた事ないのよ。他に聞いた事はある? ほら、良かったら座って? 今は病人はここにいないから、ゆっくりお話できるのよ」

 

 シグウィンは椅子に座ると、向かい側の席を手のひらで指す。

 カナデはその言葉に頷き、座った後、聞いた話をシグウィンに話す。

 するとシグウィンは顎に手を当て、考える素振りをする。

 そして少しして口を開いた。

 

「うーん……やっぱり覚えがないわ。でも、そうね。ウチも一応調べてみるわ」

「ありがとうございます。その、しばらくここに出入りする予定なので、なにか進展があれば教えて欲しいです」

「ええ、もちろんよ。あ。そう言えば聞いたのよ〜。カナデさん、またやんちゃしたって。キミはやんちゃなのね〜? 前にここに初めて来た時、キミに絡んできた子達を皆気絶させてきたのはおどろいたけれど……正当防衛も程々にね?」

「あはは……その話、まだ根に持ってるんですね。あの時はカッとなって……でも、その後『仲直り』したのは知っているでしょう? 不思議な事に、人はそうやらないと『分かり合えない』時があるんですよ」

「もう。そういう事じゃないのよ。キミが怪我したらどうするの? ちゃんと自分を可愛がらないと駄目よ!? カナデさんは可愛いんだから!」

「はぁ。……善処します」

 

「もう。……あ、そろそろ遅い時間だから、お開きにしましょう。気を付けて帰るのよ」

「はい。シグウィンちゃんも体にお気を付けて」

「ええ、カナデさんこそね。また今度お話しましょう?」

「そうですね。では、失礼します」

 

 カナデは軽くお辞儀をすると、医務室から退室する。

 少し歩いていると、前から見知った顔が歩いてくるのを見つけた。

 カナデがこのメロピデ要塞で知り合った囚人の一人だ。

 

「……姐さん、こんな時間に危ないですよ!」

「私は大丈夫だけど、そっちこそ見つかったらヤバいんじゃない? ……場所、移動しよう。この時間、丁度見張りの交代時間だから」

「わ、分かりました! こっちです!」

 

※※※

 

 カナデは囚人の男に先導されながら移動すると、暗い小部屋の様な場所に着く。

 

 カナデはこの囚人達にメロピデ要塞を探る手伝いをして貰っていた。

 

 ───メロピデ要塞は普通の監獄とは違う。

 

 その単語を聞けば普通、檻に閉じ込められるイメージが強いが、規定時間以外は基本自由に歩いても咎められない。

 怪しい行動等をすれば勿論、罰則は存在するが。

 

「──で、調子はどうだった? 怪しそうな人はいる?」

「はい! 大体目星はついたんですが……──」

「そう。最近変な研究してる人がいるって噂をチラホラ聞くの。今はまだ大きな被害は内容だけれど……。何か動きがあったら教えて」

「うっす。あ。そういや姐さん、また新しい囚人が来るって知ってるっすか?」

「新しい囚人? 別に珍しい事じゃないでしょ? このメロピデ要塞には囚人が沢山来るんだから」

「それが、なんかちょっと訳アリみたいで……俺もまだ詳しく知らないんすよね……なんか、大物だって聞きました」

「大物ね……。なんか嫌な予感」

 

 カナデは顎に手を当て、考える素振りをする。

 囚人という物は大体訳アリだ。

 国の法律を破っている訳だし、当たり前なのだが。しかし、その訳アリが大物と聞くと嫌な予感がする。

 カナデは考えるのを止め、囚人の男に向き直る。

 

「まぁ、そっちについても何かあれば教えて。私はもう帰るから。はい、活動資金の特別許可券」

「了解っす!」

 

 カナデは特別許可券を囚人の男に渡すと、退室しようとドアに手をかける。

 その時、首元にかけている指輪の位置に違和感があり、ついでにカナデは直した。

 

「姐さん」

「ん? 何?」

 

 カナデのその姿を見て、囚人の男が呼びかけた。

 振り返ると囚人の男は何か言いたげな表情をしている。

 しかし、中々言い出せず……。

 

「あー……いや、何でもないっす! 気を付けて帰ってください!」

「うん? 分かったよ。じゃあね」

 

 カナデは首を傾げながら、退室した。

 

「はぁ……」

 

 囚人の男はカナデが去った後、一人ため息を吐く。

 

「また言えなかった……。あの指輪絶対、高そうだし、わざわざあんなの買う人じゃないよな」

 

 囚人の男はカナデはがメロピデ要塞に来た時、商品を運んでいたカナデに絡み、素早く投げ飛ばされた。

 それから、カナデの強さに驚き、彼女と会話をする様になって、囚人の男はカナデに好意を持つようになった。

 

「恋人からの贈り物か? って、聞く勇気さえあればなぁ……。はぁ……いつになったら、この思いはカナデさんに言えるんだろう……」

 

 囚人の男はそう呟きながら、自室に戻った。

 

※※※

 

 メロピデ要塞には『隠しルール』が存在する。

 その1つはシグウィンの手料理だったり、様々な物資に関係するのでそれを冒険者協会に頼んで他の冒険者から貰ったり、カナデが出向いて素材を入手したりする。

 あとは、外からメロピデ要塞内の家族への預かり物を渡したり、とカナデの業務は様々あった。

 しかし長年似たような仕事をしている彼女には簡単な事である。

 

 外の世界では、今大きな裁判があり、ギャング『 棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)』の現会長ナヴィアの今は亡き無罪の父親を犯人にした事に関わる黒幕が捕まったらしい。

 

 ナヴィアはカナデの友人だ。

 

 それに彼女は長年父親の死に疑問を抱き、真相を探っていたのでそれは喜ばしい。

 

棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)』はギャングではあるが、やっている事はどちらかと言えば善行だ。

 基本的に法を犯す事は無く有事には政府とも協力する、良い意味で任侠の精神を体現した民間互助組織である。

 しかも、ナヴィアの父親は『決闘裁判』に参加した。

 

 最強の決闘代理人。──常勝不敗の『 クロリンデ』。

 

 そのクロリンデが戦う相手で勝てるはずがない。それでも、ナヴィアの父親は戦った。

 

「───そこは問題じゃない」

 

 そう。その裁判の容疑者として最初、裁判所に連れられてきた男がいる。

 無論、真犯人は捕まった。その男も解放されるべきだ。

 しかしながら、フォンテーヌの裁判は特殊だ。

 

 最高審判官と『諭示裁定カーディナル(諭示機)』は原告と被告の双方の発言に耳を傾ける。

 

 双方の発言が終わった後、最高審判官が判決を下し───『 諭示機』が自らの判決を提示する。

 規則によれば『諭示機』の判決は「正義」の意志であり、審判の最終判決となる。

 

 その諭示機がその男を『有罪』と判断したらしいのだ。

 

 公の前で行われる判決。

 前例がない、明らかに罪を犯していない者への判決。

 ひとまずはその男はメロピデ要塞に送られる手筈となった。

 

 ──それだけを聞けば、カナデだって、そのシステムに疑問を感じるだけである。

 

 しかし、その男はカナデにとってここに居るとバレたらマズイ人物である。

 

その話を、文通をしている天才マジシャン。ファデュイの『召使』の家族でもあるリネから聞いてしまった。

 

※※※

 

「姐さん、そんなに頭抱えて……そんなにやばいんすか、その、来る奴。多分前俺が言ってた『大物』ですよね?」

 

「うん、大物……なんだけどさ」

 

 囚人の男が不安そうにカナデに問いかける。

今日はカナデ達は、別の場所で待ち合わせをしていた。

 カナデは頭を抱えながらそれに答えるが、その後、顔を歪める。

 

「見つかったら絶対説教される。『こんなところにどうしているの?』 って」

「あー……姐さん、その人と仲いいんすか?」

「うん、まぁね」

 

 カナデは囚人の男にその体制のまま答える。

 カナデは頭を抱え、その体制でずっと考え事をしていた。

 

「……仕方ない。予定を早める。今日の夜に決行するから、何かあったら……」

 

 カナデはそう言うと、決意したように立ち上がる。

 そして鞄を取り出し、中から封筒を取りだして、囚人の男に渡す。

 

「これは?」

「彼がもし、私に気がついたら渡して。気が付かなさそうだったら処分していいから」

「え? 姐さん?」

 

 囚人の男がカナデに問いかけるが、カナデはそれに答えず。

 そのまま部屋を出ていく。

 

 今日は『パイプ清浄日』。この日しか、チャンスは無い。

 

 カナデは深夜になると、監視の目を盗み、とあるパイプの前にたどり着いた。そのパイプはメロピデ要塞のとある一室と繋がっている。

 

「姐さん、やっぱり俺も……──」

 

 そんな時、囚人の男……アルフィオもどうやらバレない様にこっそりついて来たようだ。

 カナデはアルフィオの姿を見つけると、首を横に振る。

 

「駄目」

 

「でも姐さん……」

 

 アルフィオは泣きそうな顔をするが、カナデはまた首を横に振った。

 

「君にまたここに留まる日が増える可能性がある。それに、危険かもしれない。今、話によるとフォンテーヌ人が溶けるって液体があるらしいでしょ? 私はモンド人と稲妻人の血しか流れてないけど、アルフィオはフォンテーヌ人」

「それは、そうっすけど……姐さんは大丈夫なんすか? その……やばいやつが居たら」

「私は平気。それに私が何かあった……──」

 

 その時、目の前から空間の歪みのような穴が現れ、明らかに人ではなく、機械のような、鎧のような生物が現れた。

 

 そしてそれはカナデとアルフィオを認識すると、そのまま攻撃してくる。

 

「っ! アビスの詠唱者! こんな場所に出てくるなんて……──! いいから、早く! 行って!」

 

「く……!姐さん……! 絶対、無事でいてくださいね」

 

※※※

 

 アルフィオはカナデの言葉に押されるように道を戻っていく。

 

 それを見送った後、カナデは刀を取り出し戦闘態勢に入った。

 

 ───しばらく戦闘は続く。

 

 アルフィオを逃がして正解だった。

 このアビスの詠唱者はかなり強い。

 

「はぁ……っ、はー……っ」

 

 しかしカナデはそんなアビスの詠唱者を圧倒していた。

 だがその時に風元素をかなり使い、息が荒くなっていた。疲れが出ている。

 

「はー……はぁ……っ」

 

 しかし、後には引けない。長い戦闘の後、ようやくアビスの詠唱者を倒した。

 カナデはその場に倒れるように座り込むと、そこから少女が現れた。

 一瞬。カナデは構えるが、何故か『懐かしい』という感情が込み上げる。

 

「───む? ああ、久しいな、キャロル」

「え?」

 

 キャロルはカナデの本名だ。昔は普通にそう名乗っていたが、今でもそう呼ぶ人間は少ない。

 

 少女は冷たい雰囲気をしていた。

 

 白く長い髪に赤のようにも見える、ハイライトの無いピンクの瞳。紫を基調とした服に、水晶に侵食されたような手足。そして、ただならぬ雰囲気。

 

「大分イメチェン? をしたみたいだが、やはり魂は変わってない様にだな」

「え、えっと……?」

 

 少女は意味深な発言をした後、カナデの方に近付き、手を伸ばす。

 

「悪いが、手伝って欲しい事がある。……もしや、覚えてないか? ならば、また名乗ろう。私は『スカーク』。お前の友人だ」

「え? スカーク……?」

 

 カナデはその名前に聞き覚えがある。

 

『スカーク』とは、タルタリヤの師匠だと前に教えて貰った。

 

 そして、昔にタルタリヤはアヤックスと呼ばれていた時、スカークと訓練中に、カナデと出会ったと。

 カナデは覚えてないし、その話は信じていいのか分からず、とりあえず流して、そのまま忘れていた。

 

「えっと……その」

「……人が来る。早くしなければ、この穴が塞がれる。悪いが、連れてくぞ」

「へっ!?」

 

 スカークはカナデを担ぐと、そのまま穴の中に入る。

 

 ───そして、そのまま穴は閉じてしまった。

 

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

  • タルタリヤ 番外編
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