白星の君へ   作:F1さん

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「君」だけが

 

 

 ─────何かの、鳴き声が聞こえる。

 

 遠い昔、聞いたような、不思議な音だ。

 

それは幻聴……───ではない。

 

 苦しい。息が、上手く出来ない。

 

 自然と目を開けば、そこにあるのは一面の水。

 

水の中でぼんやりと目を開けば───一匹の鯨

 

 頭には角があり、防具のような物を付けている。

 

 その鯨は優雅に泳いで、何にも目もくれない。

 

 それはまるで自分なんて大それた存在では無い、と言われているようだ。

 

 大きな鯨はどんな船よりも大きく見える。

 

 様々なものを見てきたはずなのに、やはりその存在は、あの日の様に目に焼き付いて、仕方がない。

 

 

────待て。

 

 

 もう、あの頃の無力で無知な『子供』なんかじゃ、ない。

 

 

 何も知らない、籠の中の鳥。井戸の中の蛙。そんな存在では────ない! 

 

俺は、お前に『分からせる』ために、自分という存在を、示すために───! 

 

 手を、伸ばした。届かないかもしれない。

 

 でも、それでも────俺は! 

 

 俺は──────!! 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 [T(A)side]

 

「……はぁ。やっと起きた?」

 

 突然、声が耳に届く。何度も聞いた声には呆れと怒りが混じっている。

 

 自然と瞼が開き──その視線の先には1人の女が居る。

 

 長い髪が揺れ、困った様に微笑むその姿は、とても記憶に残る、懐かしい姿だ。

 

「───……カナデ?」

「そうだけど。また無茶したみたいだね。全く、君はナタの『懸木の民』より危険知らずなのかな? 

 何度も言っているけど、本当に死ぬよ? 死ぬつもりは無い、っていつも言うけど。なら適度な無茶にして欲しいな」

 

 カナデはいつもと変わらない表情と口調で、しかし少しの怒りを滲ませて言う。

 

「……いや、でも……俺は……」

「──君は強い。それは私もよく知ってる。でもそうやって、傷ついて私が平気だと思う? 心配をかけまいとしているのに、自分の考えを優先させる。……それってどうなの?」

「……」

「確かにね、私は君が納得いくように戦えばいいと思うし、それに君の無茶を止めようとは思わない。それは『君』の魅力だから。……はぁ。そうだね。私、ようやく思い出したんだよ──『スカーク』さんに会って」

「───は?」

 

 一瞬、何を言っているのか分からなかった。

 スカーク、とは俺の師匠だが、不思議な空間におり、今は行方不明の筈だ。

 倒れていたが、慌てて上半身を起こしカナデに掴みかかる。

 

「ちょっと……急に何!?」

「……カナデが変な事を言うから、悪い」

「変な事って──まだ気がついてないの? 

 

 ここは前に私と君が初めて会った場所。あの不思議な空間。……だから、『スカーク』さんは居るよ」

 

 そう言われ、辺りを見回す。確かにそこの空間は普通では無い。暗い闇か広がっていて──様々な場所から何かの気配を感じ取る。

 

 ────俺とカナデが初めて出会った場所?

 

 ……そうだ、思い出した。俺は先程までメロピデ要塞から出ようとして……。

 

「私、スカークさんに連れてこられて今まで生活してたんだけど、戦い方とか教えてもらったし、色々なこと出来るようになったんだよね。

 で、なんかスカークさんの師匠の後始末してるらしい……って、そうそう。タルタリヤ、きみ、原始胎海の水飲んでるはずだよ、君はスネージナヤ人だから大丈夫だと思うけど……具合はどう? 治癒術使ったし……後遺症は多分無いと思うけど」

 

 カナデはそう言うと、心配そうに眉を寄せながら、俺の顔を覗き込んで来た。

 確かにここに来てから奇妙な感覚があったのは事実だ。ただ単に頭で処理しきれて無かっただけだが……。

 確かに前よりは体調は良い。

 

「……うん、平気だよ。ほら、何ともない」

 

 腕を軽く回しながら言うと、カナデはホッと安堵した表情になった。

 前よりは少しやつれている様にも、疲れているようにも見える。

 

「そう、それは良かった。……うん。本当に無事でよかった。はぁ。とりあえずは休んで。今スカークさんを呼んでくるから」

 

 そう言ってカナデは俺の頰に手を添えた。そして目を細めて優しく撫でると、師匠を呼びに行こうと立ち上がる。

 

 その手があまりにも優しくて、懐かしかったせいか、俺は思わずカナデのその手を掴んでしまった。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、ごめん。何でも──」

 

「…………はぁ。何でもないような顔してないよ? 仕方がないなぁ。もう少し傍にいるよ。1人だと寂しいだろうし……。で、どうしたの?」

「……」

 

 

 思わず、カナデを無言で抱きしめてしまった。

 

 我慢していたのに、抑えられない感情が溢れて止まらない。

 

 柔らかな肌の感触、ふわりと香る花の様な甘い香り。

 

 髪が揺れ、僅かに俺の体にかかる。

 

 

 ───確かにカナデはここにいる。触れられる。

 

 

 逃げもせずに、俺だけを見てくれる。

 

 そうだ。俺は、ただ─────……

 

 

「会いたかった……」

 

「……はいはい」

 

 カナデはそれだけを返す。

 だが、それだけで十分だった。その返事は『俺』を肯定してくれる言葉だと知っているからだ。

 そのまま暫く抱きしめるが、カナデは嫌がる素振りも見せない。ただ、俺の背中を優しく撫でるだけだ。

 

 その優しさに甘えてしまうのは悪い事だとは分かっている。

 

 だが、どうしても自分の腕の中から離したくないと思うのは仕方がない。

 

 義理や人情といったものがよく分からない。恐らく俺は欠けているのかもしれない。

 

 他人といれば『おかしい』と思われているのは知っている。

 

 でも、それはどうでもいい。

 

 例え『おかしい』と言われようが、俺には関係ないからだ。

 

 それよりも戦いたい。湧き出る何かを、俺は抑えきれない。

 

 それを知りながらもカナデは俺を受け入れてくれる。

 

 それがとても心地よく、同時に酷く渇望してしまう。

 

 ───……今はこの温もりを、離したくない。いつかまた見送らないと行けない日が来る。

 

 それは、分かっている。

 

 彼女は鳥籠の鳥よりも自由で、籠の中にずっと居させると苦しんでしまうだろう。

 

 どこかそれが俺に似ていた。

 

 それでも───今は、もう少し。

 

 何かを埋めるように、ただ、抱きしめる。

 

 その体温を忘れない様に。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 [Kside]

 

 

 ────少し、前。

 

 

 カナデはスカークに連れられ、不思議な空間にて生活していた。

 

 塵歌壺で基本寝泊まりをしながら、動ける時間帯にはスカークと魔獣を狩ったり、稽古を付けてもらったりしていた。

 

 カナデがスカークに話を聞くと、彼女の師匠のペット的な鯨を探している、との事だ。

 

 その鯨の特徴を何気なく聞けば、タルタリヤが追っている『空鯨』や『呑星の鯨』と呼ばれる存在だと気がつく。

 

(タルタリヤが憧れに似た感情を持っている生物がスカークさんの師匠……『極悪騎』スルトロッチさんのペットって……)

 

 カナデは少し哀れみと、複雑な感情を抱く。

 まあ、前世でも外世界の神は桁違い、みたいな創作話はよくあった。

 

(なんとなくは察していたけど──思っているよりも世界は広いんだなぁ)

 

 と、思いつつも暮らしていたのだが、ある日──鳥の世話後、シュヴァルツと戯れていれば、スカークが声をかけてきた。

 

 相変わらず全身は白いが角度で紫にも見える、妖精のような服を着ており、手足は水晶の様なもので覆われており、頭には蝶の様な髪飾りをしている。

 

 人形の様に無機質な雰囲気は人外めいた美しさを醸し出していた。

 

「その鳥は……普通の存在では無いな。『 レインドット』の創作物に似た気配を感じる」

 

 スカークはまじまじとカナデのそばにいる『シュヴァルツ』を見つめている。

 

 レインドット───『黄金』とも呼ばれるカーンルイアの錬金術師。

 

 魔女会の『コードR』にして、曰くその精神は狂気に飲まれており、残忍な面と理知的な面が混濁した二重人格に近い状態となっている……とされている。

 

 未だに謎が多い人物だが、ホムンクルスの……現在は少年の姿でホムンクルスの、今はアルベドと名乗るモンドの西風騎士団の首席錬金術師兼調査小隊隊長である彼を初め、様々な『生物』を産み出している様だ。

 

 魔女会には様々な優れた女性達がいるが、あまり姿を現さない。

 

 ───その組織の名前を知るのもごく一部の人間だけだ。

 

 カナデは、ウェンティにその存在を教えてもらい、身近な人間で言えば西風騎士団の花火騎士であるクレーの母、有名な冒険者(悪い意味で。娘は彼女に似たようで、爆発をして切り抜けようとするらしい

アリスも魔女会の一員であり、モンドで占星術師をしているモナ─……アストローギスト・モナ・メギストスの師匠も魔女会に入っているらしい。

 

 そして、シュヴァルツは可愛らしい鳥の姿をしているが、確かにレインドットの産み出した生物の一人──ドラゴンスパインに封印されている魔龍の一部である。

 

 今は掌くらいのサイズだが、本来のサイズはかなり大きい。

 

「……でも、シュヴァルツは害はなさないです。出す血も毒じゃない。だから大丈夫です」

「……だが、ソレは本来の姿では無いだろう? 本体がテイワットに害を与えたら……どうするつもりだ?」

 

 スカークは真剣な表情でカナデに問う。カナデもとっくに考えている。

 アルベドやウェンティと話し合ったりもした。

 カナデの旅の目的の1つは、ドゥリンを無害な存在として復活させる事。

 そのために危険な旅をしてきた。

 

「……」

 

「自分がなんとかする、と思っているのか? それは絵空事だ。カナデ、お前はまだ分かっていない。ソレは災害を招く」

 

 スカークはピシャリと、断言する様に言う。

 間違えでは無い。このままでは『ドゥリン』は危険な生物だ。しかし、カナデは1つの方法を知っている。

 

「……でも、世の中にはとても不思議で、説明がつかない事が沢山あります。シュヴァルツは私の家族なんです。彼を諦めたくないんです」

 

 昔、カナデが聞いた声。

 

 ───苦しんで、一匹、孤独で苦しむ、声。

 

 あれはドゥリンが悲しんでいた声なのだろうとカナデは思っている。

 事実、カナデはシュヴァルツと長年傍にいるが、彼が何かに害を与えようとする素振りはない。

 イタズラはするが、純粋な子供のようであり、悪意はない。

 すると、カナデの手に止まっていたシュヴァルツが、カナデの頬に頭を擦り付けた。まるで慰める様に。

 

(……ありがとう、シュヴァルツ)

 

 ふわふわとした毛並みはカナデや壺の精霊が丁寧に手入れをしていた成果だろう。

 カナデはシュヴァルツの頭を指の腹で撫でると、スカークに向き直る。

 すると、能面の様なスカークの表情が動く。

 

「……ふむ」

 

 スカークは滑らかに滑らせ、無駄のない動きで顎に指を添えて考える素振りを見せた。

 

「……なら、鍛えてやろう。お前とシュヴァルツとやらは契約のような物を結んで見える。お前のエネルギーを定期的に与えてやれば、少しはマシになるかもしれない。だが、お前はそのやり方を知らないようだ。私が教えよう」

「! ありがとうございます。スカークさん」

「……大した事じゃない」

「そうですか?」

「……あぁ、そうだ」

 

 スカークはくるりと背を向けて去って行く。カナデは少し慌ててついていく事にした。

 

※※※

 

 

 

 時は戻り───。

 

 

 

「……そもそもソイツって、龍だったんだ。やけに長生きだし強いとは思っていたけど。ふぅん、龍か……」

 

 

 客室として使っている部屋のベッドに座ったまま、タルタリヤはカナデの肩に止まるシュヴァルツを見て小さく呟いた。

 他人の家だと言うのに堂々と遠慮した様子はないまま。

 無言でシュヴァルツを見つめる、その姿に嫌な予感がし、慌ててカナデはシュヴァルツを手で覆う。

 

「もしシュヴァルツが元に戻ってもぜっっっったい、戦わせないからね!」

 

 カナデは大きめの声で威嚇する様にタルタリヤを睨みつつ、言う。

 

「はは、それは残念」

 

 しかし、そんなカナデの威嚇をものともせず、むしろ楽しげにタルタリヤは笑い返した。

 

 だが、カナデは知っている。タルタリヤは戦闘狂。戦う為ならどんな手段でも使うと。

 

 そして強ければ強いほど、戦いたがる事も。

 

「大丈夫だよ? カナデ。俺だって流石にいきなり戦いは挑まないよ」

 

 と、言いながらも立ち上がりかけているのを見ると、全く信用ならない。

 

 カナデは腕を組み、眉を吊り上げて怒ったような表情を作った。

 

「きみはいいけど、シュヴァルツは違うの! 繊細ないい子なんだからね」

 

 カナデはシュヴァルツを擁護するように言い、プンプンと擬音が付きそうな仕草をして見せる。

 

「繊細? でも割とコイツ食いしん坊だし、パイモンといい勝負じゃないかい? それによく俺に食べ物たかるし……」

「そういう事じゃない〜! ダメだよ! 絶っ対にダメなんだからね!」

「はいはい。それにソイツ、俺とカナデとイチャついてたらよくつついて来るよ?」

「え?賢いでしょ! 私に危害を加えようとする人間の事はすぐ分かるんだよね。ね〜シュヴァルツ」

 

 と、カナデがシュヴァルツに同意を求めるように首を傾げる。するとシュヴァルツはカナデの肩の上でピィ? と不思議そうに鳴いた。

 

 その仕草がなんとも可愛らしく、カナデは思わずニコニコと機嫌が良さそうに笑みを浮かべる。

 

 すると、その様子を見たタルタリヤが少し不機嫌そうな顔をした。

 

「カナデ、ソイツには甘いよね。俺には普段素っ気ないのに」

 

 それから、拗ねたように言い、カナデの頬に手を添えた。

 手袋越しでも体温は暖かく感じ、カナデは少しドキリとしてしまう。

 

「は?だって……でも、それはきみが…………」

 

 カナデは言葉に詰まり、恥ずかしげに目を逸らした。

頬に熱が集まるのを感じつつ、とぎれとぎれに口を開くが上手く言葉を紡げない。

 しかし、そんな様子も可愛らしく見えたのか、ますます顔を近づいてくる。鼻と鼻が触れ合う程の距離だ。

 

「俺が? なに?」

 

 至近距離で見つめられてカナデの心臓は早鐘を打つ。

わざとらしい程の艶のある声色だ。

 カナデは目を逸らし続けようとするが、それを阻止するように顎を掴まれてしまう。

 

「あ、の……近い……」

 

 カナデはたどたどしく言ったが、それを気にした様子はなく更に顔を近づけてきた。

 

「ごめん、よく聞こえない。

ほら、ハッキリ言わないと分からないよ」

 

「……っ!」

 

 そして、耳元で囁かれ、カナデはびくりと身体を震わせる。

緊張からなのか、それとも恥ずかしさからなのかは分からなかった。

 しかし、そんなカナデの反応に気を良くしたのか、タルタリヤは更に追い討ちをかける様に言葉を紡いでいく。

 

「ね、言ってごらん? カナデ」

 

 タルタリヤの声は、まるで子どもを甘やかす様な音で、しかし有無を言わせない力があった。

 カナデは、その雰囲気に逆らう事ができず、ゆっくりと口を開いた。

 

「だって……きみが…」

 

 だが、そこまで言ったところでシュヴァルツの嘴がタルタリヤの手をつつく。

 

「痛っ! ……ほら、こうやって邪魔してくるじゃないか! 全く。俺はカナデの恋人なのに」

 

 その姿にタルタリヤは不満そうに言うがシュヴァルツは素知らぬ顔でカナデの肩の上にいた。

 

「私に意地悪してるようにみえたんじゃない? シュヴァルツは賢いから」

 

 そう言ってカナデは優しくシュヴァルツの頭を撫でると、シュヴァルツもご機嫌そうに「ピイッ」と鳴き声を上げながら目を細めた。

 その様子を見て、更にタルタリヤはまた拗ねた様な表情になる。

 

「カナデはソイツの味方な訳?」

「そんなつもりは無いけど……」

 

 カナデは困ったような表情で目を伏せる。

しかし、そんな様子も気に食わなかったようでタルタリヤはカナデの腰に、空いてる手を回してきた。

 

「俺はカナデの恋人だよね?」

「う、うん」

「じゃあ……もっと俺を構って欲しいな」

 

 そう言って、腰にあった手がそこを優しく撫でた。

その仕草にカナデはドキリとしてしまう。

 

「……あ、の」

「だめかな?」

 

 首を傾げて、タルタリヤはあざとく尋ねてくる。

だけどその目は獲物を狙う獣のようにギラギラとしていて目が離せない。

 カナデの頬は赤く染まり、その瞳には困惑と羞恥の色が浮かぶ。

 

「……こ、今度ね。今は……ほら、用事があるし」

 

 カナデはどうにか逃れようと、言葉を濁しながら答えた。しかし、それは逆効果のようで、タルタリヤは目を細めて笑う。

 

「……へぇ?」

 

 その姿が妖艶で、カナデの心臓がまた、高鳴った。

 しかし、カナデはなんとか平静を装いながら言葉を探す。

──だが、上手い言い訳が見つからない。

 

 そんなカナデの様子をクスリと笑う声と共に、腰に回っていた手は移動し、カナデの頭を軽く撫でた。

 

「冗談だよ。流石に今そんな無粋な事はしないよ。……でも、今度2人っきりになれる時があったら……覚悟しててね?」

 

 その声色は甘く、カナデの心臓を高鳴らせた。

まるで毒のようにカナデの思考回路を奪う。

 カナデの髪を一房手にとり、それに口付けをする仕草を見せたかと思えば、ウィンクをして微笑んだ。

その仕草の一つ一つが様になっていて、カナデは目が離せない。

 

「ひゃ、い」

 

 カナデは顔を赤くしながら、なんとか返事をする。

その様子を見て満足したのか、タルタリヤは立ち上がり、扉の方へと向かった。

 

「師匠はあっちにいるんだよね? 話してくるよ。色々話したい事もあるしね」

「あ、うん。いってらっしゃい。気をつけてね?」

 

 カナデは慌てて笑顔を作って手を振ると、それに答えるように手を振り返すと部屋を出ていく。

 

 バタンと扉が閉まると同時にカナデは胸を撫で下ろした。

 

「はぁ……心臓に悪いなぁ。もう。いつもあんな……色気を振りまいて……。狡いよ」

 

 カナデはぽつりと独り言を漏らす。その顔は少し赤らんでいた。

 それから深呼吸をして、気持ちを落ち着かせようとする。しかし、心臓は依然として早鐘を打ち続けていた。

 

「うう……」

 

 情けない声を漏らしつつ、カナデは両手を頬に当てる。

無駄だとは分かっているが、どうか火照りが冷めますようにと願いを込めて。

 

 そんな姿をシュヴァルツは不思議そうに見つめ、首を傾げていた。

 

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

  • タルタリヤ 番外編
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