白星の君へ   作:F1さん

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甘めです。




 

不思議なおもちゃの世界に行く、数日前の日。

 

「……なんで着いてきてるの?」

 

 カナデは不思議に思いながら、隣を当然の様に歩くタルタリヤに尋ねる。

 騒動の後、スネージナヤに行き、タルタリヤの故郷の町に向かえば、彼の家族がいつものように歓迎してくれた。

 何度か訪れたことがあるが、その時には毎回干し肉等様々な荷物を持たされる。

 それからタルタリヤの弟達や妹と遊ぶ。

 弟達は明るく賑やかで、妹は内気で大人しい。

 雪合戦をしたり、本を読み聞かせたりする事はカナデにとっても楽しい時間だった。

 それに、カナデと出会ってからは前よりは落ち着いたらしい。

 あの不思議な空間では無くした記憶……正確には別の場所では記憶は封印されているようだが、スカークに訓練を受けたカナデはソレを思い出す事が出来た。

 それを思えば、やはり幼いタルタリヤのきょうだいは彼によく似ている、と分かった。

 

 ───ともかく。

 

 今はカナデは久しぶりにモンドに帰っていた。理由は簡単。祖母の命日が近いのと、そろそろモンドに放置している祖父母と暮らしていた家をそろそろ定期的に掃除する時期なので、それも兼ねて里帰りだ。

 カナデが道を歩きながら問えば、タルタリヤは当然の様に答えた。

 

「え? だって長い休みだと暇だしね。あのままテウセル達といるのもいいけれど……それに家にいてもすること無いからつまらないじゃないか!」

 

 いい笑顔で言うな。とカナデは感想を抱いた。

 まあ、確かにそれはそうだ。タルタリヤの故郷は田舎の小さな町。娯楽もあまりないだろう。

 それに目の前の男は黙って大人しくしている様な質ではない。

 常に危険を求めて戦わずにはいられない性分だし、波乱やスリルが好きな男が長い休暇を持て余すのは、確かにつまらないだろう。

 

「別に何も対した用事ないんだけどなぁ……。まあいいや」

 

 カナデは諦めて肩の力を抜いた。

 それからちらりと横目で隣を歩く男を見上げる。

 前を向いて、ただ歩くだけでも様になる男だ。

 ただたまに芝居がかった様な言動をするが、カナデはそれは普通のフリをするためなんだろうな、と思う。

 ──タルタリヤは異常だ。

 この男は人生を楽しんで生きている。子供の様に。

 

「ん?」

 

 タルタリヤは無言で見つめるカナデの視線に気付き、顔を向ける。

 不思議そうな表情に、カナデは苦笑した。

 

「いや……なんでもない。あ。じゃあモンド城に行く前にちょっと行きたい場所があって……付き合ってくれる?」

「良いよ? 何処だい?」

「ちょっとね。あ。こっちにセシリアの花が咲く場所があるから、花をその前に取りに行きたいんだ」

「へぇ? 花?」

 

 カナデは道から逸れ、高い崖の上にある端に向かう。

 すると崖の上の所々に白いセシリアが咲いている場所が見える。

 

「ここ割とたまにカップルいるんだけど、今日はいないみたい。ラッキー。……あ、この花だよ」

 

 カナデは崖の上のセシリアの花を数本摘みながら言う。

 

「へぇ……これがセシリアの花か」

「うん。野生の花はあまり見ないよね。高いとこ……清凉かつ風が強いところにしか咲かないんだ。別に育てられない訳じゃないんだけど、育て方が難しいんだよね。……これくらいかな。じゃ、花はいいから次こっちね」

 

 セシリアの花がそこそこ集まったところで、カナデは立ち上がると、崖を下っていく。

 

「ん? 崖の下に用事?」

 

「うん。こっち」

 

 カナデは頷き、すぐに道を外れると近くの茂みに入っていく。その先に墓石が並べられた墓地が見える。

 

「あ、ちょっと待って」

「……」

 

 そう言ってタルタリヤが止めるが、カナデは構わず進んでいく。その足取りに迷いはない。

 墓地を歩き、お目当ての墓石の前に辿り着けば、その前に花を置く。

 モンドでは死後、墓を作る人と、風に飛ばす人のどちらかが基本だ。

 カナデの家は前者だ。カナデの祖父が稲妻人だからでもあるが。

 そして、その墓の前の石に彫られた名前を見て、目を細めると、墓石の前で手を合わせる。

 

「……お墓参り?」

 

 後ろから声がして、振り返れば少し距離の離れた場所にタルタリヤが立っている。

 

「うん。両親と祖父母のね。……でもなんか、こう。言い出しにくいから……来なくてもいいって言ったんだよね」

 

 カナデは苦笑しながら、墓石を撫でた。

 それから目を細めると、口を開く。

 

「……私以外にも家族が居ない人なんて沢山いるんだけど。気にするな、って言われても気になるんだよね。私、おばあちゃんが亡くなって直ぐに旅に出て。目的は果たしたけど、その後に戻ったらおじいちゃんは死んでて。でも、記憶って保つために引き出しみたいにしまうものだけど──いつか、忘れてしまうものだから。何かをきっかけにしなきゃ、覚えてられない。だから、たまに墓に来たり、家に掃除したりに戻ってたんだけど──墓はともかく。家はそろそろ引き払わないとダメかもって思って」

 

「……」

 

 墓石に触れながら呟くカナデの背中を、黙ってタルタリヤは見つめる。

 それを見て、笑顔をカナデは作ると「困らせたかな?」

 と、少し明るい声で誤魔化すように言う。

 少し痛々しいが、カナデの他者に心配をかけまいと思う優しさが、そこにはあった。

 

「……別に、困ってないよ」

 

「そう。ならよかった。……音がする。誰か来るみたい」

 

 そう言って、カナデはくるりと辺りを見渡す。足音をカナデが聞き分けた事に、タルタリヤが感心した様に目を見開きながら、『ん?』と声を上げる。

 その方向を見ると、1人の青年がいた。

 燃えるような赤く長い髪をした青年は花を持っている。

 カナデはその歩いてきている青年──ディルックを見ると、少し気まずそうな表情を浮かべた。

 上品なコートを纏うその青年に、タルタリヤは少しだけ見たことがある様な気がした。

 カナデは一瞬、躊躇った表情をする。

 しかし、ディルックはカナデの表情を気にすることも無く、近づいていくと花を差し出した。

 

「……そろそろ帰ってくる日だと思った。君は毎年この季節になると戻って来るから」

 

 カナデは差し出された花を受け取り、苦笑する。

 

「まあ、ね。でも、もうそろそろこの場所から離れようと思っていたところだから。……ほら、いこいこ!」

 

 カナデは慌てた様にタルタリヤに近づくと、その腕を引っ張る。

 

「え? ちょっと、待ってよ」と、少し驚いた様に言うが、カナデは構わず引っ張っていく。

 そんなカナデを見て──一緒にいるのがファデュイの『公子』であるタルタリヤだと気がついたディルックは目付きを鋭くする。

 

「……お前は。ファデュイの……。カナデ。……この男が誰か分かって一緒にいるのか?」

「……分かっているよ。でも、別に何か酷い事されてないし、騙されたりする訳じゃないから」

「そうだとしても──」

 

 カナデはディルックが何か言おうとすれば、嫌そうに溜息をつくと口を開く。

 

「……私たちはもう『ただの幼なじみ』。きみに口出しをする資格はもう無いよ。ディルック、きみはあの日、選択を間違えたんだから。誰といるかは私が決める」

「……」

 

 カナデのその言葉に、ディルックは押し黙った。

 かつてカナデはディルックと付き合ってはいたが、今では友人だ。

 お互いに譲れないものがあったが故に決別した。

 ディルックは、ファデュイに対していい感情は持ってはいない。カナデと交際していた当時だって、快く思っていた訳では無いだろうが、彼の父の死からはファデュイに対して、明確に悪感情を露わにしていた。

 社交界などでは態度には出さないが長年の付き合いのカナデはディルックが仏頂面をしていても分かる。

 そしてカナデもファデュイに対してはいい感情は無いが、何人かは別だ。

 

「心配してくれるのはありがたいけど、私はもう子供じゃないし、自分の意思で行動している。……だから、口出ししないで」

 

 カナデは真っ直ぐ前を向いて告げる。

 そんなカナデに、ディルックは小さく息をつく。

 

「……それでも君を心配しない理由にはならないよ。……君は昔から危なかっしくて、目が離せないんだ」

「あはは、それはごめん」

 

 カナデはバツが悪そうに笑い、謝ってから肩をすくめる。そして言葉を続ける。

 

「大丈夫だよ。昔と違って無茶はしないから。……だから、そろそろ行くよ。ごめんね?」

「ああ。次来る時は手紙でも寄越してくれ」

「うん。分かったよ。じゃあね」

 

 そう言ってカナデは歩き出し、少し遅れてからタルタリヤが続くと、2人は墓地を後にする。

 

「……ねぇ。さっきの男、知り合い?」

「え? ああ、うん。幼なじみだよ。えっと、ほら。アカツキワイナリーのオーナーなんだよ」

「ああ。……あのワイナリーか」

 

 そういえば、とタルタリヤは思い出す。

 アカツキワイナリーはモンドの有名なワインを作り出している場所だ。

 その名は国外にも響き渡っている。

 

「そうだよ。今でもたまに葡萄の収穫時期とかに手伝いにいったりしてるんだよね」

「ふぅん。なるほどね」

「そ。……うーん。でも、どうしようかな。いや、まあいいか。うん」

「……なに?」

「いや、なんでもないよ」

 

 カナデは首を横に振り、気にしないでほしい、と付け足した。それから、そのまま真っ直ぐにモンド城へと向かう。

 その反応をみたタルタリヤは、ならいいけど……と内心首を傾げながらもそれ以上は深く追求することも無く、後を着いて行く。

 モンド城に着いた後、カナデは自分の家がある場所に向かうと、家の鍵を開けた後、タルタリヤに振り返る。

 

「じゃあ、ちょっと家に行って掃除するから、適当に時間潰しててくれる?」

「え? 俺も手伝うよ」

「……いや、でも流石にきみはお客さんになる訳だし、お願いする訳には……」

「今更じゃない? 前に一緒に掃除もしたことあるし、気にしなくていいよ。それに、俺、こういうの慣れてるからさ」

「……きみって本当に偉い人に見えないよね。……分かった。じゃあ、お願いするね」

「うん。任せて」

 

 それから、2人は家に戻り、軽く掃除を終わらせると夕食の時間になる。

 

「今日は流石に私が作るよ」とカナデが言い、キッチンに立つ。

 その後ろ姿を見て、タルタリヤはふと疑問に思ったことを口にする。

 

「ねぇ、そういえばさ」

「ん?」

「さっきあの男と墓で話していたのは何の話?」

 

 その言葉にカナデは、ああ。と頷き、悩んだ様な表情を浮かべつつ、野菜を洗った後、包丁で刻みながら口を開く。

 

「ん……まあ、うん。ちょっとね」

「……言いたくない?」

「そういう訳じゃないけど……」

 

 カナデは包丁をまな板に起き、「うーん」と悩む様な仕草をする。

 そして悩んだ様子を見せたあと──軽い声で続けた。

 

「これ、さっきも言うべきか言わないべきか悩んだんだけど。彼、私の元恋人だったんだよね

「は?」

 

 その言葉に、タルタリヤが目を丸くし、思わず声を上げる。

 その反応を見て、カナデは気まずそうに笑う。

 

「だから言いたくなかったんだよね。だからちょっとあの場所で会うのはあまりねぇ。酒場とか、道端なら平気なんだけど。でも、あの人私を置いて旅に出たんだよ。待っていて、じゃなく忘れて、みたいな事を言ってね。ムカついた私は追いかけて、言ってやったよ、私は別の道を行くってね」

 

 カナデは半目で、思い出す様に言葉を連ねていく。若干の怒りが表情に出ていた。

 

「ふぅーん……そっか」

「……何も聞かないんだ?」

 

 てっきりもっと詰め寄られるものだと思っていたカナデが、拍子抜けした様に言う。

 思っていたより反応が薄かったからだ。

 

「聞いてほしいの?」

「……いや、別に」

 

 カナデの返答を聞いて、タルタリヤはいつもの笑みを浮かべると「じゃあ聞かないよ」と告げ、それから静かに口を開いた。

 

「君が言いたくないなら、それでいい。……君の中で整理がつくまで待てばいいし、話したくなったら話せばいい」

「……そっ、か……。意外とそういう所は気遣えるんだよね。いや、別に気にしてないだけかもしれないけど。あ。ごめん。失礼だったね」

「あはは、いいんだよ。俺はこれでも心広いからね」

「……ふーん。そっか」

 

 カナデは照れたように、それでいて少し安堵した様な声音で言った。そして調理に戻ろうとまた野菜を刻み始める。

 そんな様子を見て、タルタリヤは気づかれない様に、小さく笑った。

※※※

 

 

「……あの。この家のもの大半片付けてるから、ちゃんと家具とか残ってるのリビング辺りか私の部屋だけなんだよね。大切なものは壺の中にあるから。って事で、壺の中の家かここの生家? に寝るかになるんだけど、きみはどうする?」

 

 夕食の後、後片付けも済み、風呂に入って戻ってきたカナデがリビングでくつろいでいるタルタリヤに聞く。

 相変わらず我が物顔の様にソファを陣取っていた。

 と言っても手はキチンと膝にあるので、育ちはちゃんとしている事が分かる。

 それが様になるので、少しの悔しさをカナデは感じた。

 

「君は?」

「私は……せっかくだしこの家の部屋で寝ようかな」

「一緒に寝る?」

「は!? 何言ってんの!? 寝ませんけど!?」

「あはは、冗談だよ」

 

 カナデの反応を見て楽しげに笑うタルタリヤに、カナデは目を丸くし、呆れて溜息をつくと、呆れたように口を開く。

 

「人で遊ぶな。…………それいいって言ったらどうするの?」

「ん? 一緒に寝るけど」

 

 と、迷いなくきっぱりというタルタリヤに、カナデは益々呆れた顔をした。

 この男は前からこんな風に思ったままを言葉にする事が基本だ。

 その性格は知略渦巻くファデュイでは異質だ。

 なのに何故か執行官の末席を許されている。相変わらず変な人、と思いつつもどうするか、とカナデは考える。

 

「うーん、ま。……いいけど」

「いいの?」

「何、その反応。きみが言い出したのに」

 

 目をぱちくりさせたタルタリヤに呆れた様に答えると、カナデはハッ、と何かに気がつくと、気まずそうに目を反らしながら言った。

 

「いや! 変な意味じゃなくて、ただ添い寝だけだから! そういう意味じゃないからね! ほら! 広い部屋で1人だと、なんか寂しいから仕方なく! ね! 断じて邪な意味じゃないからね!」

 

 と、カナデは焦りながら早口で捲し立てていく。そんなカナデにタルタリヤは「はいはい」と笑いながら返事をした。

 

「と、とりあえずきみも風呂に入ってきてよ! あ、着替えは脱衣所にあるの使っていいから」

「わかったよ。じゃ、借りるね」

 

 タルタリヤが立ち上がり、お風呂場へと向かった後、カナデはソファにドサっと座ると、大きく溜息をつき頭を抱える。

 

「はぁ〜……言ってしまった」

 

 まさか言うつもりは無かったのに……つい勢いがあまって。発言した後に後悔しても仕方ない。

 今更「やっぱり添い寝は無し!」なんて言えない。……でも、あの言い方だとそういう風な事を考えていたのは私だけ!? ムッツリなのか、私は! とカナデは1人で頭を抱える。

 しばらく考え込んだ後、ふぅ……と息を吐くと立ち上がった。

 

「水飲もう」

 

 とりあえず水でも飲んで頭を冷やそう。と思い、カナデはキッチンへと向かった。

※※※

 

(変な事は考えない! 無心! 無心になるんだ!)

 

 カナデはベッドの端によりながら必死に無心になろうとしていた。しかし、そう思えば思うほど意識してしまう。

 いっそ先に寝てしまえばいいのでは、と思いつき、ベッドに潜り込む。

 目を瞑り、何も考えない様に努める。しかし一向に眠気はやってこない。

 寧ろどんどん目が覚めていく気すらする。と、その時。ギシ……とベッドのスプリングが軋む音がした。

 

「!」

 

 思わず飛び起きそうになるも、なんとかそれを堪える。いつの間にか風呂から上がったタルタリヤが来たのだろう。

 考えすぎていて音に今、ようやく気がついた。

 落ち着け……とカナデは自分に言い聞かせていく。

 すると不意に影が落ちてきた気配があったかと思えば、耳元で声がした。

 

「……寝てる?」

「っ!」

 

 突然耳元で囁かれたその声に、カナデはビクッと体を震わせる。そして咄嗟に反応してしまった事を後悔するがもう遅い。

 するとまた声を掛けられる。

 

「起きてるなら返事くらいしてくれない?」

 

 からかうような声音で言われてしまい、カナデは居た堪れないような気持ちになってしまう。

 

「寝てる、めちゃくちゃ寝てる」

 

 思わず口を開き、そう返事を返せば、笑われてしまった。

 

「起きてるじゃないか。今更意識してるの? 可愛いね」

「うるさいよ! ばか!」

 

 揶揄うようなその物言いにカナデは思わずカッとなり、毛布を引っ張り、ぐるんと自分に巻く。

 すると、毛布ごしに優しく抱きしめられる感覚があった。

 

「っ!」

 

 その行動に驚き、カナデは思わず硬直する。

 しかしそんな事は気にせず、さらに優しく引き寄せられた。

 

「ちょ……ちょっと!? 何すんの!?」

 

 慌ててカナデが抗議の声を上げると、その抗議は届いていないとでも言うようにさらに強く抱きしめられる。

 

「恥ずかしいの? 大丈夫だよ」

 

 優しく囁かれる言葉に、カナデは思わずドキリとしてしまう。

 しかしすぐに気を取り直し反論する。

 

「べ、別に恥ずかしいとかじゃない! ただ、いきなりでビックリしただけ! ち、ちょっと離れてよ。布で息が、苦しい」

 

 カナデの言葉を聞いて、「ああ」と納得したような声をあげ、抱きしめる力を弱めると少しだけ離れてくれた。

 ようやく毛布をはぎ取り、カナデは大きく息をつくと、苦しかったからか、恥ずかしかったからか、赤い顔のまま少し恨めしそうに隣にいるタルタリヤを睨み、見上げる。

 

「あの! 急に抱きついてきたらビックリするし、息も苦しい!」

「あはは、悪かったね。でもこれで許してくれないかな」

 

 そう言って小さく笑うと、ちゅ、と軽く額にキスを落とされる。

 

「っ!!」

 

 驚きに目を見開き、呆然とするカナデに、タルタリヤは悪戯っぽく笑う。

 そしてそのまま顔を近づけてくると、今度は頬へとキスをした。

 

「なっ!? こ、この! こうなったら……こっちもしてやる! えい!」

 

 と、言いながらカナデはやり返すように、ぎゅっと抱きつくとタルタリヤの頬にキスをする。

 そして少し悪戯っぽく微笑むと口を開く。

 

「ふん。どう? 驚いた?」

 

 カナデの言葉に、一瞬驚いた顔をした後、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべると口を開く。

 

「ああ。まさかやり返されるなんてね。驚いたよ」

「ふふん。そうでしょ。今日の私は違うんだよね」

 

 そんな風に得意気に言うカナデに、タルタリヤは「でも」と言いながら、その体を抱き寄せた。

 そしてそのままベッドへと押し倒す。

 

「え、ちょっと! 急に何!?」

 

 驚きの声を上げるカナデに構わず、さらに距離を詰めた。

 

「捕まえた。……さて、どうしてくれようかな」

 

 そう言ってタルタリヤはカナデを見下ろす。その顔はとても楽しそうで、しかしどこか艶っぽい。そんな様子にカナデはドキリとする。

 だが、必死にそれを悟られまいと平静を装った。

 

「……先にそっちがしてきたんだから。やり返されても文句言えないんじゃないの?」

「あはは、それもそうだね」

 

 カナデの返しに、タルタリヤはおかしそうに笑った。そしてそのまま顔を近づける。

 

「っ!」

 

 思わずぎゅっと目を瞑るが、予想していたような衝撃は無く、代わりに頭を優しく撫でられる感触がした。

 

「……へ?」

 

 おずおずとカナデが目を開くと、穏やかな微笑みを浮かべているタルタリヤの顔が視界に入る。

 

「あはは、何? キスでもされると思ったの?」

 

 その表情とは裏腹に発せられた言葉に、カナデは一瞬ぽかんとする。そして慌てて首を横に振った。

 

「ち、違うし!? 別に! 期待とかしてませんし! 自意識過剰すぎ!?」

「ふーん。……そっか」

 

 カナデの反応を見て、タルタリヤは少し考える素振りを見せるがすぐにニコリと微笑むと言葉を続けた。

 

「じゃあ期待通りにしようかな」

「え、ちょ……待っ……」

 

 カナデが何か言うよりも早く、唇が塞がれる。そのまま数秒ほど経ってからゆっくりと離れていった。

 

「ははっ、真っ赤だよ」

 

 悪戯っぽく笑いながら言われる言葉にカナデは反論することもできずにただ赤くなるばかりだった。

 

「……この。もう怒った! 今日はぜったいに寝かせない! ぜったい私がギャフンと言わせてやるんだから!」

 

 そう宣言して、カナデは勢い良く起き上がる。

 

「へぇ? 面白い事言うね」

 

 対するタルタリヤは余裕の笑みを浮かべると、カナデの手首を掴みそのまま自分の方へと引き寄せる。

 そして耳元で囁いた。

 

「やれるものならやってみなよ」

「っ!」

 

 低く囁かれた言葉に、カナデはビクッと肩を揺らす。

 しかしすぐに気を取り直して反撃するように言った。

 

「ふん。でもそういう事や体力を使う事じゃない──今日は七聖召喚でデュエルだ!」

「へぇ? いいよ」

 

 カナデの提案に、タルタリヤは楽しげに笑って了承した。

 

「ふん、真のデュエリストの私には勝てないよ。

そして、アンティルールだ! 賭けるものは当然、負けた方が勝った方の言う事を1つだけ聞く事。当然だよね」

「へぇ? 言うね。俺に勝てると思ってるんだ。じゃあ、その賭け乗ってあげるよ」

 

 カナデの提案に、ニヤリと笑った後そう返すと起き上がり、それからしばらくゲームに興じた後、二人は再度ベッドへと移動した。

 

 頭を働かせていたため、勝敗の後の話はともかく。

 とりあえず眠る事にした。

 

 寝てない状態のふわふわした頭のカナデは良く考えずに、タルタリヤに抱きつくと、スヤスヤと眠りに落ちた。

 

 そんなカナデに苦笑すると、タルタリヤは毛布を引き寄せ、カナデにかけ直してやり、自分も眠りにつく事にしたのだった。

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

  • タルタリヤ 番外編
  • ディルックルート
  • ディルックルート 番外編
  • 他キャラとの絡み
  • 過去話
  • タルタリヤ if
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