白星の君へ   作:F1さん

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ディルックルートです。

【旅編 崩れる】まで一緒ですが、その後旅に出ないルートです。
展開なども変わってきたり、こちらの話で補完できる話もあります。

違いは以下の通りです。
・祖父が生きている
・モンド、璃月以外の知り合いは少ない
(代わりにその辺りと仲良い)
・名前は『キャロル』のまま。
性格などもちょっと違っているので、新しい感覚で見ていただければと。


If ディルックルート 【暁天の星が登っても】
帰ってきたきみ


 

帰ってきたきみ

 

「───私は待つことにするよ」

 

「……いいのか、キャロル? 今ならまだ間に合うかもしれないぜ?」

 

 キャロルは、気を使うように軽い調子で話しかけてくるガイアに少し悩んだ様子を見せたが──首を横に振った。

 

「確かに、旅をする道はあるかもしれない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。でも、約束したんだ。だから、私はモンドを守る。騎士にはなれないけど、それがディルックの恋人である私の務めだと思うから」

 

「……そうか、それがお前の答えか。なら俺は何も言う訳にいかないな」

 

 ガイアはそう言うと、キャロルの頭を慣れたように優しく撫でた。キャロルはそんなガイアを見つめ、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「ごめん……。だから、ガイアにも手伝ってもらっていいかな? 私は強くないから、もっと強くなりたいんだ。そして、皆を守れるくらい強くなりたい」

 

「いいや、構わないさ。俺たちは幼なじみだ。それに、アイツくらいキャロルは頑固だからな」

 

 ガイアは肩をすくめ、少し戯けたような様子を見せると、キャロルもそれにつられて小さく笑った。

 

「あはは、確かにね! いつか、ディルックが帰って来た時、びっくりさせたいな」

 

「そうだな、アイツはきっと喜ぶだろうよ」

 

「……でも、まさか私が落ち込んでるかもってわざわざ家に来るとは思って無かったよ。ガイア、人が狼狽しているのを見るのは好きなのに、可愛い所あるよね」

 

 キャロルがそう言うと、ガイアは少し驚いたように見えている片目を目を丸くしたが、直ぐにいつもの調子を取り戻した。

 

「おいおい、可愛いって……。それは、お前だろ? 俺はただ様子を見に来ただけだぜ?」

 

「はいはい、そういうことにしておくよ」

 

 キャロルがそう返すとガイアは、若干眉をしかめながら不服そうな表情を見せたが、ふっと笑うだけで何も言わなかった。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行くか」

 

「うん。ガイア。本当にありがとうね?」

 

 キャロルはガイアに向かって、そう言うと首を傾げた。

 

「大したことじゃないさ……キャロル」

 

 ガイアはそれだけ言うと、静かに部屋を後にした。

 

 彼の胸の内には罪悪感や居た堪れないような想いが渦巻いていた。しかし、それでも彼は譲れないものがあったのだ。

 

『本当に感謝されるべきは俺の方だろう』とガイアは独りごちた。

 

 キャロルの恋人を止めれず、むしろ協力する様な形でこのモンドに彼女を留めたのは紛れもなくガイアの意思だった。

 

 きっと、今回の事でキャロルはガイアを恨むだろう。あるいは愛想つかされるかもしれない。

 

 だが、それでも良いとガイアは思った。彼女が知らない場所で野垂れ死んだり、自分を置いて帰らなかった本当の父のように、居なくなる事の方が彼にとっては遥かに苦痛だったから。

 

 ガイアは自分が歪だととっくの昔に理解し、それを直そうとも思わない。

 

 だけれど。鳥籠の鳥が傷付くのを見るのは忍びないと思った。

 

 だから、ガイアはディルックとの『約束』をわざと守る事にした。

 

 ガイアは、キャロルの『幼なじみ』で。

 

 そして『友人』で。

 

 ───彼女の事を、純粋に光に惹かれる生物の様に愛しているからだ。

 

※※※

 

 数年後。

 

 キャロルはモンドで活躍する冒険者の1人になっていた。

 たまに別の国に行くが、基本的にはモンドに留まっていた。

 

 その日は晴れていて、雲一つない青空が広がっている。

 すやすや、とキャロルは大きな、アカツキワイナリーの下側にある、緑の垂香材が採れる木の下で昼寝をしていた。

 

 キャロルは心地好い陽射しに、丁度いい風、それにこの木が作る影に包まれながら、うとうとと微睡んでいた。

 

「にゃ〜……また寝てる。キャロル、キャロル姉! 起きて! もうっ! このあたしに探させるなんてなんて人なの! ……キャロル姉、起きてよ!」

 

 すると、猫耳と猫尻尾の生えた少女が慌ただしく走ると、キャロルを見つけ、膝をつくと肩を揺らした。

 

「んん……? ディオナ? どうしたの?」

 

「あっ! 起きた……。もう! 探したんだよ! こんな所で寝てたら、身体冷えちゃうにゃ!」

 

 ディオナは耳をピンと立てながら、ぷりぷりと怒った様子でキャロルを軽く睨む。

 

 しかし、それはディオナがキャロルを心配しての行動だと分かっているので、キャロルは「ごめんごめん」と軽く謝りながらディオナの頭を優しく撫でた。

 

「もう……。そ、そんなんじゃ騙されないんだから! 今日は一緒に狩りに付き合ってもらう約束だったでしょ? だから、キャロル姉を探してたのに、こんな所でお昼寝してるし……。もうっ! 本当に心配したんだから!」

 

 ディオナはそう怒るが、キャロルは内心(そういうディオナもよく変な場所でお昼寝してるけど)と思っていた。

 

「もう、わかった! 分かったよ! ごめんね? ディオナ……。でも、私はシュヴァルツがいるから大丈夫だよ」

 

 キャロルがそう言うと、頭上から「ピィ」と鳴き声と共にシュヴァルツが飛び降りてきた。そしてキャロルの肩に着地すると、そのまま頭に乗り、目を閉じる。

 

「シュヴァルツも寝てない、それ? もう、キャロル姉はのんびりすぎるにゃ! ……でも、シュヴァルツがいるなら大丈夫かな?」

 

「うん。それよりディオナこそよくここが分かったね?」

 

 キャロルがそう尋ねると、ディオナは自慢げに胸を張った。

 

「ふふん! あたしは「カッツェレイン一族」の1人だよ? このくらい、朝飯前にゃ!」

 

 ディオナはそう言うと、キャロルの手を取り立ち上がらせた。そして「早く! 早く!」と急かすようにキャロルを引っ張る。

 

「分かった、分かったから! ディオナ!」

 

 キャロルは苦笑しながら、それに着いていく。そして2人(と一匹)は草原へと駆けて行った。

 

※※※

 

「やっぱりキャロル姉と狩りをするのは楽しいにゃ!」

 

「そう? なら良かったよ」

 

 ディオナが笑顔を浮かべながらそう言うと、キャロルは目を細め、柔らかな笑みを返した。

 

「うん! ……あ、あのさぁキャロル姉」

 

「……何? ディオナ?」

 

「えっと……」

 

 ディオナが言いにくそうに口ごもると、キャロルはディオナにそっと近付いて頭を撫でた。

 

「どうかしたの? 悩み事?」

 

「……ううん……。大した事じゃないよ。ただ最近、またパパが忙しそうにしてるなって」

 

「そっか。ドゥラフさんは凄い狩人だからね」

 

「うん、あたし、パパの事は大好きなの! ……でも、お酒のせいで、いつも直ぐに寝ちゃうの! だから、あたし……」

 

「ディオナ……。じゃあ、その時は私と遊んだり、話そうよ」

 

「……いいの? キャロル姉」

 

「うん、勿論だよ! 私がディオナのお願いを断る訳ないでしょ?」

 

「……えへへ……。ありがとう、キャロル姉!」

 

 ディオナがそう言うと、2人はまた笑い合った。そして、ディオナが「そろそろ帰ろ? キャロル姉」と誘う。

 

 それにキャロルは頷き、2人は手を繋いでディオナを送りに清泉町へ向かったのだった。

 

※※※

 

「少し遅くなっちゃったね」

 

 キャロルとディオナが清泉町に着く頃には、空はオレンジに染まっていた。もう間も無く夕暮れで辺りは薄暗くなっている。

 

「ここからモンド城に帰るなら暗くなるなる前に帰った方がいいと思うにゃ」

 

「うん……。そうするよ、ディオナ。それじゃあまたね?」

 

 キャロルは手を振ると、ディオナもそれを真似るように手を振った。

 

「キャロル姉、またね!」

 

 ぴょん、と猫を思わせるような動きでディオナは家へと駆けて行った。

 

 それを見送ってから、キャロルは家に帰る為歩き始めた。

 

 清泉町から歩いていると、アカツキワイナリーが見えた。キャロルは何故かふと、そのままモンド城へ帰るのではなくアカツキワイナリーに寄る事にした。

 

 何故そうしたいと思ったのか。それは分からないが……それでもそうするべき、という謎の直感がキャロルをそう動かしたのだ。

 

 そして、アカツキワイナリーの前まで来ると、葡萄畑の方から微かな明かりが点いているのが見えた。

 

 キャロルはそちらへ歩みを進めると、赤い長い髪を揺らし、屋敷へ歩いて行く影が目に止まった。

 

 一瞬、キャロルは見間違いかと思ったが、やはりそうではなかった。キャロルはその人影を追いかけた。

 

 そして、ようやくその人物の姿がはっきり見える距離まで近付くて、どうしよう、とキャロルは考えた。

 

 何故ならその人影の正体は……間違いなく今、行方不明の恋人であるディルックだったからだ。

 

「(え……? どうして、彼が……ここに?)」

 

 そうキャロルが困惑している間も彼はゆっくりと歩き続けていく。しかし、歩き方がどこかおかしい。ふらついていて、今にも倒れそうな程だった。

 

「(駄目だ……放っておけない……!)」

 

 キャロルはそう思い駆け出すと、その背中に向かって声をかけた。

 

「あ、あの、怪我、してるの?」

 

「っ……誰だ!?」

 

 彼はキャロルの声に反応してゆっくりと振り返る。そしてキャロルの顔を見ると驚いたように目を見開いた。

 

「……キャロル?」

 

「え? あ、うん、そうだけど……」

 

 彼は一瞬何か考える素振りを見せた後、口を開いた。

 

「僕と会ったことは……その、皆には言わないでもらえないだろうか?」

 

「……え? う、うん。でも……」

 

 話したい事が沢山ある。伝えたい事が山ほどあるのだ。

 

「お願いだ」と彼は懇願するようにキャロルに言う。

 

「……分かった、言わないよ。でも……せめて怪我が酷いから手当させて?」

 

「……わかった」

 

 彼は、渋々と言った様子で頷いた。そしてキャロルは案内されるまま、彼の部屋へと連れていかれる。部屋に足を踏み入れるとそこは最低限の家具しか置いておらず、物寂しさを感じる空間だった。

 

 長らく帰っていなかった部屋だが、メイド達が掃除をしていたらしく埃っぽさは感じなかった。

 

 キャロル自体、屋敷で手伝いをよくしていた時期があった為この広い屋敷の清掃はかなり大変だろう事は容易に想像がついた。

 

 それでもメイド達はディルックがいつ帰ってきてもいいようにと毎日掃除をしていたのだろう。

 

「ねぇ、なんでここに?」

 

 キャロルは風元素の力を使い、治療をしながらそう尋ねる。すると彼は少し間を置いてから口を開いた。

 

「……気になる事に一段落ついたから、帰って来たんだ」

 

「そっか。それは良かったね? それで、その怪我はどうしたの?」

 

「……」

 

 キャロルが尋ねると彼は気まずそうに黙り込んだ。恐らく彼の事だから無茶をしてきたのだろう。

 

「言いたくないなら無理して言わなくていいよ」

 

「……いや、君に隠し事はしたくないから言うよ。今まで、ファデュイの妨害をしたり、ファデュイの執行官とやり合ったりしていた」

 

「……そう、だったんだね。じゃあ、もしかして……クリプスさんの死は、ファデュイに関係が?」

 

「あぁ……。そうだ」

 

 彼はキャロルの言葉に静かに肯定した。やはり、そうだったか、とキャロルは唇を噛む。あの事故がファデュイの仕組んだ事だったとしたら納得がいく。

 

 ()()()()()()()()()()()()、ファデュイは基本的に裏で様々な悪事を行っている組織だと聞いている。

 

 だが、執行官と言えば桁違いの強さを持っている存在だ。そんな連中にディルックが喧嘩を売る程強くなっていたなんて……。

 

 と、キャロルは関心と心配が入り交じった様な複雑な感情を抱いていた。

 

「……うん、これでもう大丈夫! 私も風元素の使い方が上手くなったでしょ? それに、おじいちゃんにね、前より厳しい訓練に付き合ってもらってるの。だから、強くなれたんだよ」

 

 キャロルは彼に笑顔を見せると、彼は複雑そうな表情をしたが「そうか……」と呟いただけだった。

 

※※※

 

「じゃ、私はもう帰るね? ……ねぇ、また旅に出ないよね? もう、帰ってこないなんて事……しないよね?」

 

 キャロルがそう尋ねると、彼は少し驚いた様な表情をした。そして、「あぁ」と短く答える。

 

「良かった。……あ。つい。他の人たちを起こしちゃう所だった」

 

 キャロルが慌てて口を塞ぎながらそう言うと、彼は「もう、遅いから送るよ」と言ってくれた。

 

「……ありがとう! あ……でも、見つかりたくないんじゃ? 君の赤毛はモンドでは目立つから……」

 

「大丈夫。距離を置いて行くから。……見つからなければ問題ない」

 

「そう、かな?」

 

「うん。だから行こう」

 

「わかった。きみがそう言うなら、一緒に行く」

 

 そうしてキャロルはディルックとアカツキワイナリーを後にしてモンド城へ帰ることにしたのだった。

 

※※※

 

 風が吹き、キャロルの髪をふわりと舞い上げた。

 

 その風は、少し冷たくて心地好いものだった。

 

 既に夕日は沈み、空が徐々に暗くなり始める中2人はモンド城へ続く道を歩きながら、無言で歩いていた。

 

 若干距離がある為、気まずさは感じるものの、2人きりのこの時間はキャロルにとって大切な時間だった。

 

 こんな時間、滅多に取れないのだから。

 

「ねぇ、あの……さ」

 

 キャロルが勇気を出してそう切り出すが、その後の言葉を上手く繋げられないでいると彼が口を開いた。

 

「……ごめん」

 

「……え?」

 

「君を置いて、モンドを出て行って」

 

「っ……。はぁ」

 

 キャロルは深くため息をつくと、呆れたように彼を見た。

 

「本当にね……もう! だったら私に連絡が欲しかったよ、話を聞いたら他の人には手紙とかで知らせたみたいだけどさ……。でも、私はね? 君にとって特別だって思ってたから、少し寂しかったよ?」

 

 キャロルはそう言うと、彼は気まずそうに目を伏せる。

 

「……すまない」

 

「謝らないでいいよ……もう、過ぎた事だから!」

 

 キャロルは明るく笑うと、彼の手を握った。そしてそのまま歩き出す。彼は少し驚いた様子だったが、何も言わずにそのままキャロルに引っ張られて行った。

 

「やっぱり距離取るの無し! フードしてたらバレないから平気でしょ?」

 

「分かった」

 

 キャロルがそう言うと、彼は小さく笑った。そしてそのまま城へ帰ると、2人は別れてそれぞれ帰宅したのだった。

 

 

 

 

どんな話がみたいですか? 参考にいたします!

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