汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

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約束されたハッピーエンドへ、レディーゴー!!


第11話

 

 

 

 

 

 「海といえば焼きそばだよなァ!!」

 

 

 昼時となり、俺たちは海の家にてお昼を済ませている最中だ。

 あぁ、この海の家はアツコが写真を撮った看板のところだなァ。

 正直、かなり美味くてビビってる。

 

 「焼きそば、美味しいですね!」

 「確かに美味いがテメェはがっつきすぎだ。焼きそばは逃げねェからもっとゆっくり食えよ。ククッ……!!」

 

 隣で掻き込むように口に入れているヒヨリに注意を促す。

 ククッ、コイツめ。もしや俺に焼きそばを取られるだなんて考えているわけじゃあるまいな?流石にお前らの分まで集るほど賤しい人間じゃねェよ。

 ま、その代わりこれ以上ないくらい悪辣な人間だけどなァ……!!

 

 「店員さんッ!!カモン!!」

 「はい!」

 「コレを頼むぜェ!!」

 「かき氷ですね。承りました♪」

 

 ガキどもが不思議そうに俺を見てくる。

 ククッ……!!今に分かるぜ、俺の虐待の全貌が……!!

 

 「お待たせ致しました!当店名物のかき氷でございます!!」

 

 俺たちの前に置かれたのはピンク色の氷の小山───そう!かき氷でェす!!

 テメェらの好みが何なのか知らねェが、ここはメジャーである“いちごシロップ”を選ばせてもらったぜ!!

 アツアツの焼きそばの後にキンキンのかき氷……さぞお前たちの舌はビックリしてしまうだろうな!!

 

 「きゅ〜〜……頭が痛いですぅ……。でもすごく美味しいですぅ……!!」

 「ハーッハッハッハ!!一気に食べたらそりゃそうなるだろうが!!」

 

 ヒヨリのヤツ、かき氷を食べる時の鉄則も知らねェのか?

 だが、やけに美味そうに食うなァ。よく食えよ!!

 

 「あう……。もうなくなってしまいました……」

 

 はやっ!?ついさっき頭痛めてただろうがッ!?

 ……それになんだ?その物欲しそうな目は。ヒヨリの視線が俺のかき氷から離れねェ。

 

 「私だけ早く食べ終わっちゃいました……。あぁ、みんなが食べている中、私だけはこうして指を咥えて見ることしか出来ないんですね……。辛いですね……苦しいですね……」

 「…………」

 「あぁ、サドさんがかき氷を食べようとしています……。美味しそうですね、むしろ私が食べたかき氷よりも輝いて見えます……」

 「…………」

 「あれ、食べないんでしょうか?あぁ、なるほど……これは私を憐れんで食べていないんですね。うぅ……それならいっそのことひと思いに食べてくださいぃ……」

 

 

 コイツ────めっっっちゃオモロ!!

 

 

 さすが音の鳴る玩具ことヒヨリさんだぜ!ただ口元にスプーンを運ぶ仕草をしただけでこんなに面白い反応をしてくれるとか、なんて俺得なヤツだ!!

 

 「ほら、やるよ」

 「えっ……!?い、いいんですか!?」

 「今の俺は気分がいいからな!」

 

 だからこうやってかき氷を差し出すのも抵抗はない。

 よく食って、よく遊んで、よく寝る!これが虐待の大三原則だぜ!

 

 「…………」

 「あ?どうした?」

 

 受け取ったはいいものの、それからじっと俺を見上げるヒヨリが不思議でならねェ。

 受け取ったんなら早く食えばいいものを……

 

 「あの……サドさんに食べさせてもらいたいなぁ、なんて……」

 「は?俺に?」

 「はい!」

 

 そうして俺の承諾を得る前だというのに、まるで俺がすると確信しきっている様子で“あーん”と口を開くヒヨリ。

 

 ククッ、何が目的かは知らんが俺はこれをヒヨリからの挑戦状と受け取った。

 待っていろ!今すぐにその綺麗なお口を真っピンクに染め上げてやるからなァ!!

 

 「オラ、食らえ!」

 

 スプーンでひと掬いしたかき氷をヒヨリの口の中にぶち込む。

 ヒヨリはパクリと()()()()()()()()味を確かめるように舐め、ほんの僅かに咀嚼した後、ゴクリと喉に通していった。

 

 ……そういや、このスプーン俺が使っていたヤツじゃん。すっかり忘れてコイツの口の中に入れちまったが……まぁ、気にしている様子はないしいいか!

 

 「すっごく甘くて美味しいです!!」

 「ククッ……!そりゃあ俺のかき氷だからな。美味くないわけがねェ」

 

 まるで餌付けをしている気分だ。

 そう思われていることも気づかずに、またしても口を開いて待つ雛鳥(ガキ)の姿はなんとも滑稽かな。

 

 いいぜ、テメェの気が済むまで付き合ってやるよ!

 

 「オラ、あー──────」

 

 

 ─────ガシッ

 

 

 「………あ?」

 

 手を掴まれ動かなくなり、反射的に手が伸びてきた方向に目を向ければ、そこにはサオリとアツコが立っていた。

 ………なんかやけに()()()()しながら。

 

 「すまない、サドさん。少しヒヨリに用事が出来たから連れていくが大丈夫だな?」

 「はい、あっちに行こうね、ヒヨリ」

 「うぇ……?え……?ひ、姫ちゃん?ど、どうしたんですか……?そんな()()()()()お顔をして────」

 「ん?」

 「ヒィィィィィ!!!サ、サドさん……!!助け─────」

 「それじゃあサドさん、ヒヨリと()()()()()()()よ。大丈夫、すぐ戻るから」

 

 ヒヨリの助けを求める声も虚しく、その伸ばされた手を掴むこともなく、ヒヨリとその両脇を抱えた二人は海の家の外に出ていった。

 

 ………………何やってんだ、アイツら。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「オラァー!!合戦じゃーッ!!!」

 

 

 昼休憩を挟んで、次は紅白対抗水鉄砲合戦だ!

 ルールは至ってシンプル!胸に付けてあるリトマス紙が染まりきったら負けだ!

 

 ────といっても、俺はもう死にかけだがな!

 

 だからこれは最後の特攻だ!

 俺に相応しい有終の美を飾ろうではないか!!

 

 「アズサァァァァァァ!!!」

 「ムッ」

 

 突っ込んでいく先には随分と華奢で派手な水着を着ているアズサがいる。

 ハーッハッハッハ!!死なば諸共だ、アズサ!!お前は死んでも仕留めるぞォォォォ!!

 

 「あっ……!待って、サド─────!」

 

 

 

 ──────ズボッ

 

 

 

 「─────え?」

 

 

 

 

 

 

 ─────ズドォォォォン

 

 

 

 

 

 ─────あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……!

 俺はアズサに目掛けて水鉄砲を構えたと思ったら、いつの間にか()()()()()()にいた……!

 何を言ってるのか分からねェと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……。頭がどうにかなりそうだった……。

 爆弾だとか、超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねェ……。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

 

 「サド!!」

 

 上からアズサが焦ったように降りてくる。

 ククッ、なるほど。これはアズサの十八番であるトラップだったわけか。やられたぜ……

 

 「大丈夫!?怪我してない!?」

 「あぁ!元気ピンピンだよこんちくしょー!!」

 

 アズサは倒れ臥す俺にペタペタと触り、本当に怪我がないことを確認すれば、勢いよく俺の体に抱きつくように倒れる。

 ────ってかイテェ!?コイツ抱きしめる力加減間違ってるだろ!?むしろ落ちた時より今の方がイテェわ!!

 

 「よかった……よかった……!サドに怪我をさせていたら、私……!!」

 「クッ、ククッ……!そりゃあ主人を怪我させちまったら、何されるか分からねェもんな……!」

 「ッ」

 

 イタイイタイ……!さらに抱きしめる力が増したんだが!?

 

 だが、ここで屈する男であらず。

 ここで顔を顰めたり、『痛い』などと苦言を申せば、それはつまりコイツの反抗が成功してしまうことを意味する。

 ククッ、アズサめ、とんだペテン師だ。心配している風に見せかけて、その実こうやって俺に攻撃をしているんだからなァ!

 

 「ごめん、ごめんね……!サドに使うつもりなんてなくって……!」

 「ハーッハッハッハ!!いいってことよ。罠に引っかかったのは俺だからな」

 

 罠もまた戦略の一つ、それを『卑怯な手だ』と罵るわけがない。その戦術に打ち負かされたのが俺だったってだけだ。

 

 「ククッ、それにしてもよく出来た落とし穴だったな!全然気づけなかったわ!流石は俺の道具だなァ!」

 

 それに、こうやって頭を撫でることで虐待も出来るしな!

 

 道具の優秀さを知れたし、ついでにアズサに虐待も出来る……俺にとって良い事尽くしだなァ!

 

 「ッッ……!!サドッ……!!」

 「ハーッハッハッハ!!!」

 

 『まだ上の力があんのかよ』と思いながら、黙ってアズサの抱擁という名の攻撃を受け続ける。

 その時間は上から救助が来るまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 空が朱に染まり、やがて闇がそれらを食い潰さんと広がっていく。

 さっきまであった筈の喧騒は嘘のように静まり返り、明かり一つ灯さない場所に成り果てた海浜で──────

 

 

 「花火だァァァァァァ!!!」

 

 

 俺たちは今、花火をしています。

 

 いや、そりゃそうだろう?

 夏といえば花火、海といえば花火……なら夏で海に来ている俺たちがやらない道理はねェだろうが!

 

 「スゴイ!!」

 「ね!すごく綺麗!!」

 

 小さな棒から勢いよく出てくる火花はこの暗黒に染まり切った海の世界に色彩を灯し、俺たちはそれに魅了される。

 見ろ、ガキどもも興味津々でブンブンと花火を振っておるわ!だが、それを決して人が周囲にいる場所ではやっていない。

 ククッ、ちゃんと俺の言いつけを守っているようだなァ。道具として完璧だぜ!

 

 「サド、コレに火をつけて欲しい」

 

 ガキどもがキャーキャー言っているのを尻目に、2本の花火を持ってやって来たミサキに顔を向ける。

 

 ミサキが身に付けているものは何の装飾のない黒ビキニに男物のストライプ柄の上着という、もはや『女子としてそれでいいのか?』と思わざるを得ない程に女っ気のないものだ。何なら、その上着()()()()

 

 ヒヨリとアズサを見習ったらどうだ?あの黄色の花柄のヒヨリの水着とデコレーションが多すぎるアズサの水着……アイツらの水着が一番高かったのは言うまでもないだろう。

 だが、コイツはそんぐらいのハングリー精神があった方がいいだろう。

 

 「…………」

 「なに?………上着はまだ返さないから」

 「何も言ってねェだろうが……」

 

 上着を我が物のように庇うミサキを見て深いため息をしながらも、ミサキの手に持つ花火にライターを向ければ、突如ミサキがもう一本の花火を俺に渡して来た。

 

 「何だよ、コレ」

 「…………一緒に、やろ?」

 

 ほう、まさかのお誘いの一本であったか。

 これは大人として受け取らなければならないなァ。

 

 「ククッ、コレは有り難くもらうとして……まずはお前の花火をつけてやるよ」

 「ん、よろしく」

 

 了承も得たことで気兼ねなくライターをファイアーし、ものの数秒でミサキの花火もファイアーしだす。

 すかさず俺の花火も花火に近づけて火をもらうこと数秒、バチバチと吹き出すことに成功した。

 

 「……私の花火とサドの花火、種類が違うんだ」

 「ん?あぁ、そりゃそうだろう」

 

 俺の花火はその名の通り牡丹のような花を宙に描く花火で、対してミサキは真っ直ぐに吹き出す花火だ。

 

 「……どうして作った人はわざわざ分けたんだろう。花火は数秒で燃え尽きるのに、燃えてしまえばただの塵なのに。それに手間だってかかるのに、何でこんなに多くの種類を……」

 「()()()()()()()()()()()ってヤツだな。同じ種類ばっかだとつまらねェだろ?つまりは人間と同じだ」

 「人間?」

 「あぁ。人間は十人十色であり、輝ける場所も人それぞれ違う。だが、()()()()()()()()()()()()……この花火のようにな?」

 「……そう、なんだ」

 

 ククッ、またしてもマセたことを言っていたから論破してやったぜ。お前が俺に口論で勝とうだなんて10年早いわ!

 

 それにしんみりしている所悪いが、お前らが輝く瞬間は俺に虐待を受けている最中なんだよな!そこを忘れんなよ!

 

 「私、花火のこと()()になれたかも」

 「ククッ、ガキで花火が嫌いなヤツはいないんだぜ?」

 「……子供じゃない」

 「ガキだよ、どっからどう見ても!」

 「────子供扱いしないでよ……」

 「あぁ?聞こえなかったわ。なんて言ったんだ?」

 「…………自分で考えなよ。ばーか、あーほ、すけこましー」

 

 ありとあらゆる罵詈雑言を言い放ってスタコラサッサと離れていくミサキに驚きを隠せない。

 あ、あの野郎……!罵倒するだけ罵倒してそそくさとガキどもの所に行きやがった……!!

 

 クッ、クククッ……!やはりお前は一筋縄ではいかないようだなァ、ミサキ!!

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 やがて長物の花火は全て使い果たし、最後に線香花火のみが残った。

 一本も使われた形跡がないのは、彼の『最後は絶対線香花火』という強いこだわりからで、彼女たちもそれに大人しく従った形だ。

 

 

 

 彼女たちは手に線香花火を持って円を作る。

 今日の海を満喫した少女たちは、その儚くも力強く燃える線香花火に見惚れながら、今日を、そしてこの夏までの半年間────彼と過ごしてきた日々に思いを巡らせていた。

 

 

 

 彼との思い出は生徒の数だけあり、そしてその在り方も異なってくるだろう。しかし、全員に共通して言えることがあった。

 それはどの瞬間でも、どれを切り取ったとしても、その記憶はどれも()()()()()()、そして()()()()ものであるということ。

 

 だから彼女たちは微笑む。この半年間で自然と身についた微笑みは、どこまでも自然に彼女たちの感情を表現した。

 

 

 

 “幸せ”を知らなかった少女たちは、確かにある“幸せ”を感じ。

 “世界”を知らなかった少女たちは、憎悪だけではない、何処までも広大で美しい“世界”を知り。

 “愛”を知らなかった少女たちは、歪ながらに真っ直ぐな“愛”を受け取り。

 

 そして、生涯消え去ることのないこの記憶を、人は総じて“思い出”と称するのだと知る。

 

 

 

 故に彼女たちはその手に持つ線香花火に祈る。

 彼と過ごす日々の幸せを。そしてまた来年、再来年と、再び海に来て新たな“思い出”が彩られることを夢見て───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────彼との別れが、少しずつ近づいていることも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 線香花火は静かに、ゆっくりと堕ちていった。

 




またしても何も知らないサドさん(年齢不詳)
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