汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
今日はついに子供たちの反撃が……!?
「いやぁ〜、いい眺めじゃないかァ」
俺は今、ガキどもが訓練している最中に腕を組みながら上から指示を出しながら戦況を眺めていた。
別に大したことも、大して動く事すらもしていないのに図々しく指示をする様はガキどもにとってはさぞ屈辱的だろうな!
「つーかやけにリアルだな、あの立体映像」
俺はガキどもが相手している3Dホログラム────仮想敵を見る。
その姿はまさしく“異形”。
胴体や腕は枝のように細く、ましてや腕の数は4本というキショさ。
そして何より醜いのはその顔。一見花のような顔だが、その隙間隙間には幾つもの目がある。
総じてバケモンの異名が相応しい姿であるが、俺はなにも適当にこんなバケモンをシュミレーションに組み込むよう頼んだ訳ではない。
コイツは俺の
「ククッ、ベアトリーチェ。テメェのそのキモい図体もたまには役に立つようだなァ。見ろ、ガキどもが容赦なくお前の顔面に銃弾をぶち当てているぞ!」
そう、この仮想敵の正体はベアトリーチェの別の姿────所謂
あ〜、醜いねぇ。驕り高ぶっている癖に、本来の姿があんなのでは……ククッ、とんだ失笑もんだぜ。
ちなみに、この仮想敵シュミレーションゲームの製作者はシャイなゲマトリアの先輩ことゴルコンダさんだ。シャイな理由はいつも顔を見せてくれないから。
それと、物作りが得意っていうんでダメ元で頼んだらすんごい完成度で送って来た別の意味でバケモンな先輩である。
【ぎゃあああああああああああ!!!!!!】
「叫び声の再現度も高いな」
そんなこんなで適当に指示していたら勝ってしまったらしい。
──────は?勝っただと??
「わーい!やったー!」
「なんか無性に腹立つ顔だったから倒せてスッキリしたー!!」
ガキどもは各々ハイタッチして喜びを分かち合っているが、俺の頭はこんがらがっていた。
……うぅむ、可笑しい。ゴルコンダさんには俺がコイツらの辛酸を舐めた様な顔を拝みたいが為に
まぁ、そんな日もあるか!俺の道具が想像以上に強かったって収穫があっただけでも大満足だわ!
「クククッ、お疲れだぜ!!」
疲労困憊でその場にへたり込みガキどもに水を手渡していく。
俺がここに来るまではアップルジュースだとかぶどうジュースばっか飲んでいたんだろうが、俺の場合は水かオレンジジュース100%のみと決まっている。
味のない水か酸っぱいオレンジジュースでも飲んで悶え苦しめ!
「ありがとう、サド。折角なら飲ませてほしい─────」
「調子乗んな」
「ひゃうっ」
世迷いごとを吐くアツコの首にキンキンに冷えたペットボトルを押し当てる。
恨めがましい様に半目で睨みつけながらも素直に水を飲み始めるアツコを見ながら、今回の
「よう、サオリ。お手柄じゃねぇか」
「……?何がだ?」
「本来だったら今回の相手はお前らでは絶対に勝てない相手だった筈だ。なのにどうしてかテメェらは打ち破った。ククッ、随分と上出来じゃねぇか?」
「…………」
俺がわざわざ褒めてやっているというのに嬉しそうな顔をこれっぽっちもしないサオリに訝しむ。
いや、確かに怨敵であり宿敵でもある俺なんかにお褒めの言葉をもらっても嬉しくないことは火を見るよりも明らかだが、それでもコイツらはガキだ。出来ない事を出来たと知ればそれ相応に喜ぶ筈なんだがな。
「……多分、なんだが」
「あ?」
「多分、
「……というと?」
「……
ここでふと視線を感じて周囲を見渡せば、もれなくガキども全員が俺を見ては頷いていた。
「そ、そうですね。なんだかいつもより動きやすいような気がしました……」
「うん、いつもより戦いやすかった」
「私は力が溢れてくるような感覚がしたぞ」
「視界がいつもより広がった、かな。新しい感覚だった」
……ククッ、揃いも揃って何をいうかと思えば……下手な芝居だなァ!!
「ハーッハッハッハ!!俺を褒め称えようとする心は素晴らしいが、それでも時と場合ってのがあんだよ!ただ適当に指示していただけなのに褒められても全然嬉しくないわ!」
「そ、そうなのか?」
「俺はそんな安い男じゃないんだよ!ここは素直にお褒めのお言葉を有り難〜〜く頂戴していろってんだ!」
「いや!絶対サドさんがすごいから勝てたんだ!私はそこを断固として譲るつもりはない!」
「じゃあ俺の指示無しでもう一回やるかァ!?」
「分かった!絶対に負けるからよく見ていてくれ!!」
「なんでそこまで自信満々なんだよ!?」
そんなこんなで始まった第二戦だが……結果は敗北。奇しくもサオリが宣言した通りの結果になった。
だけどコイツら、明らかに
さっきまで出来ていた動きも出来ず、なんかよく分からん弱点も露骨に出て来よったわ。
これでサオリたちが正しかったと言われても癪に障るし認められる筈もなかった為、全員にその弱点を教えていき、それを意識させてまたしても適当に俺が指示を出してやれば───
ほれ見ぃ、お前らが手を抜かなかったら勝てるんだよボケ!
しかし勝ってしまった故にガキどもがつけ上がり、今日は結局俺の意見とサオリたちの意見は堂々巡りで結論が出なかったけどな!!
マジで頑固だわ、アイツら。ったく……誰に似たんだか。
◇◆
今宵は悪の夜。
ガキは声を上げぬよう必死に恐怖を抑え込み、大の大人すらも家に籠り出てくることのできない闇の夜。
まさしく俺のためにあると言っていい日だ。ならば、今日という日を虐待一色に染めぬ馬鹿はいない。
────ま、俺の場合は毎日が虐待一色なんだがな!!
「ハッピーハロウィーン!!!」
『ハッピーハロウィーン!!!』
悪の宴────ハロウィーンの開催だァ!!
「ククッ、よ〜〜く似合ってるぜェ、お前たち!!」
ハロウィーンといえば仮装!もちろんガキどもにも仮装をさせているぜ。
魔女、ミイラ、ガイコツ、ゴースト、フランケンシュタイン諸々……代表的な悪役どもに仮装させてやったぜ!
悪の宴に強制的に参加させられた事実に咽び泣くこったな!!
「ねぇねぇサド。これ似合う?」
そして今回の宴の主催たる俺に話しかけてきたのはいつもの5人組────アリウススクワッド隊だ。
「クーっクックック……!似合ってるぜ、これ以上ない程になァ!!」
アツコはシンプルな魔女っ子衣装だ。
魔女特有のとんがり帽子と箒がコイツの魔女っ子適性を上げているぜ!
「ほう、ヒヨリはミイラか。センスがいいぜ!」
「す、少しスースーしますけどね……」
ヒヨリは体中に包帯を巻き付けてミイラと化していた。
ただど素人が着飾ったせいか、ところどころ包帯が緩んでいてその隙間から肌色を見せている。
スースーするってコイツ裸かよ。そりゃあ寒いわけだなァ!風邪は引くなよ!
「ミサキは……狼男か?」
「全然違う。これ黒猫だから」
ミサキはツケ耳と黒の毛皮を纏って見事に狼男────否、黒猫となっていた。
なるほどな、そう言われてみれば確かにそう見えなくもない!
「ムッ、アズサのはなんだ?」
「これは悪に堕ちたシスター。似合う?」
「悪に堕ちたシスター………素晴らしい!!まるでお前のようだなァ!!」
「………そ、そうかな」
おっとぉ!!ここでも虐待をかましてしまった!!
アズサほど“悪”などという薄汚れた文字が似合わぬ女はいないだろう。なのに『お前のようだ』などと……さぞそのシスター衣装の下で鳥肌がそそり立っているだろうなァ!!
「それで────お前は誰だ?」
「なっ!?わ、私だサドさん!!」
さっきからウズウズとしていたかぼちゃ頭が勢いよく抜き出る。その中からサオリが半泣きで出てきやがった。
「お前……かぼちゃ被っただけって……お前……」
「私たちもやめた方がいいって言ったんだけど……」
「そ、そんなに
「い、イヤってわけじゃ……!?ただ、アレは自分には似合わないだろうと思ったから……!」
「あーあ」
「……姉さん、
「そういうこったァッ!!!」
つい内なるデカルコマニーさんが出てきてしまった。
さぁ着ろ。今すぐ着ろ。そして俺の前で恥辱を晒せッ!!
「テメェら!やっておしまい!!」
『お〜』
「や、やめろォォォォ!!」
サオリの叫びも虚しく、スクワッドの見事な連携で部屋に連れ込まれて行った。
ククッ、さてさてさ〜て。一体どんな格好で帰ってくるのか……楽しみだなァ!!
「普通に似合ってんじゃねェか!!!」
かぼちゃ頭から変わって出てきた姿はまさかのナース服。
コイツの引き締まった体が程よくくびれを見せつけ、恥ずかしそうにスカートを掴むその姿は俺でなかったら庇護欲を掻き立たせられただろう。
ハァ〜、興醒めだわ。普通に正解引いてきやがって。これならかぼちゃ頭の方が弄りがいあったわ。
「に、似合ってるのか……?」
「あぁ、ムカつく程に似合ってるな!!」
「サ、サドさんから見て私は…………か、可愛い、のか……?」
「だからそう言ってんだろ!!」
「─────そう、か」
チッ、嬉しそうな顔しやがって。そんなに俺の想像を上回れた事が嬉しいのか?いい性格していやがるぜ……!!
「オラ!今日の晩ご飯はかぼちゃのシチューだ!!冷めない内に食えよ!!」
『はい!!』
以前までなら戸惑いながら席に着いて食べ始めていたというのに、今では
高級品に慣れきっていた舌はすっかり庶民舌になってしまったね!もうあの頃の生活には戻れなくなっちまったなァ!!
「そうだ。後であそこにあるバスケットを部屋に帰る時に持っていけよ」
「……?うん、分かった」
「す、すごいお菓子です……!こ、こんなに貰ってもいいんですか……!?」
「あぁ、いいさァ。今日は無礼講だからなァ、クーっクックック……!!」
ガキどもは何も疑いなどせずにバスケットの中身を見て喜んでいやがる。
やれやれ、お前らも学ばないなァ!!俺が何の理由もなしにそんな大量のお菓子を渡すわけないだろうが!!
なんせそのお菓子は─────
「トリックオアトリートォ!!お菓子をくれなきゃイタズラするぞォ!!!」
─────俺が回収する用だからなァ!!
『虐待は二度刺す』という格言があるように、虐待とは油断している頃にやって来るものだ。
本来なら大量に食える筈だったのに、俺が回収したせいでいつもよりちょっと多いぐらいの量になった時のガキどもの気持ちを考えるだけで身震いがしちまうよ!なんて冷徹な男なんだってな!!
「あっ、やっぱり!」
「ちょっと多過ぎたからね〜。一人じゃ食べきれないな〜って丁度思ってたんだ〜」
「どうぞ貰っていってください!サドさん!」
「クククッ、潔いのは嫌いじゃないぜ?」
クーっクックック!本当なら泣き叫んででも阻止したい筈なのに、俺に対する恐怖で身動きが取れないようだなァ!!
「きっちり回収したぜ!じゃあな、ガキども!おやすみだぜ!」
『おやすみなさ〜い!!』
挨拶は大事だからなァ。これでガキどもはお菓子の存在を忘れてぐっすりだろうぜ!
「さて、ここまでは順調だなァ。だが、次の相手はそうもいかないだろう」
俺は最後の部屋───スクワッド隊のガキどもがいる部屋のドアノブを握る。
コイツらはとことん俺の虐待に反撃して来る反骨心溢れる者たちの集まりだ。
今までのは寧ろ前哨戦。こっからが本番だぜ!
「トリックオアトリート!!お菓子をくれなきゃイタズラ……する………ぞ………?」
部屋は真っ暗で灯りはなく、不気味といえる程に人の気配がなかった。
ククッ、タイミングが悪かった!!まさかここでも反骨心剥き出しとはやるじゃねぇの!!
「アイツらいないし、ここは戻って仕切り直しを─────」
「その必要はないよ」
────声がした瞬間に部屋へ引き摺り込まれる。
訳が分からず脳がシャットアウトしている間に、いつの間にか俺はベッドの上で抑え付けられていた。
「………よう、まさかここまで手の込んだ反撃をされるとは思ってもいなかったぜェ?アツコさんよォ」
「ふふっ、褒め言葉として受け取っておくね」
俺の発光する頭で微かに見えるのは腹の上に乗るアツコと、そんな俺の手首と肩を抑えて上から覗き込むように凝視しているのは4つの影────言わずもがなスクワッドの面々だ。
「……サドってちゃんと腹筋あるんだね。ちゃんと割れてる」
「逆にないと思っていたのか?あんまり俺を舐めるんじゃあないぜ!!俺はお前らをとことん追い詰めるために日々の研鑽を忘れたことはねェ!!」
「そうなのか?てっきり鬼ごっこでサオリを捕まえきれなかったのが悔しかったから走るトレーニングしているのかと思ったぞ」
「な、何故それを!?」
「た、たまに大声上げながら走ってる姿が目撃されていましたからね……」
「あんな大声出してよく走れるね」
「それはサドだからじゃない?」
………なんか談笑の雰囲気になっているんだが、お前ら俺をその小さな体で押し潰していることを忘れているわけじゃああるまいな?
「い、痛くはないか?サドさん」
「痛くはないが……んなことよりこの状況を早く説明しやがれってんだ」
「その……よく分からないが、アツコたちがサドさんにとってもいいものだと言っていたから……」
途端に頬を真っ赤に染めてもごもごと口を動かすサオリ。
なるほど、口を割ることがないように訓練されているってわけか。
「オイ、アツコォ!!今なら全員“こちょこちょの刑”で許してやる。だからさっさと退けろォ!!」
「────それだけ?」
さっきまでの和やかな雰囲気が一変する。
揃いも揃って眼光が鈍く、鋭くなり、まるで獲物を見る肉食動物のような目をしていやがる。
ク、クククッ……少しだけブルっちまったぜ、少しだがなァ?
「ハロウィーンってお菓子をあげないとイタズラされちゃうんでしょ?ヒヨリの雑誌で見たよ」
ヒヨリの雑誌で見た、だと?まるでハロウィーンを体験した事がないような言い草だなァ。
……いや、あり得るか。なんせハロウィーンとは悪の祭典。あの過保護ババアが自身の宝物にも等しいガキどもにやらせないのは目に見えている。
「その通り!!だから俺はテメェらの幸福とお菓子を奪うべくやって来た─────」
「あげない」
「……は?」
「お菓子はあげない、から………私たちは
俺を見るアツコの目は……なんか
いや、アツコだけじゃない。周囲にいるガキども全員が目をドロドロさせながら見ていた。まぁ、流石に気のせいだと思うがな!
つーか強情すぎだろ!!イタズラは甘んじて受け入れ、それでダメなら抵抗するという意思表示……そこまでしてお菓子を譲りたくないのか!?
「どうするの?何をするの?何をしてくれるの?」
「私も気になる。今後の勉強のためにも是非体験させてくれ」
「えへ、えへへ……お菓子もサドさんのイタズラも頂けるなんて……何だか夢のようですね!」
「サ、サドさんなら私はどんな事でも……」
「ほら、早く決めなよ。どうやって私たちにサドの“道具”って分からせてくれるのかをさ」
コイツら……!人の上で好き勝手言いやがって……!
よぉし分かった。そこまでお望みならしてやるよ、とびっきりの虐待をなァ!!
「オラッ!!」
俺は全ての力を両の腕に送り、腕を抑えつけていたガキどもを全員抱き合わせた。おかげで明日は筋肉痛確定となってしまったが、そんな些細な犠牲は甘んじて受け入れよう。
クククッ、ガキどもが胸の中で混乱しているのが感じるぜェ……!!
「サ、サドさん……!?」
「クククッ……!
『ッ!?』
調子に乗ったガキどもには更に上からの虐待を!なんと今宵は恐怖の象徴と一緒に添い寝チャレンジだァァァァァァ!!
この期に乗じて俺に反撃しようと罠に引き込んだつもりだろうが、逆にその罠を利用されちまったなァ!!
「だが、今日は無礼講だ。今すぐに退ければ許してやっても─────」
「ううん、これでいい。いや、これがいい」
「な、なにブヘラッッッ!?!?」
アツコの野郎、まるで高速道路を走っている車のような速さで俺の胸に抱きついて来やがった……!!
だがこれもせめてもの抵抗だと思えば可愛く見えるぜ!!
クククッ……!実にスガスガしい気分だァ!歌でもひとつ歌いたいようないい気分だァ!
ま、今は腹が痛くて歌うどころか大声で笑う事すら出来ないけどな!!
そして誰よりも早く寝たサドであった。