汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

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最終話です!どうぞ!


第16話 彼女たちの青春の物語(ブルーアーカイブ)

 

 

 

 

 

 傷だらけの体で見上げる空は曇天の濁り空だった。

 

 私も、みんなも傷だらけ。ところどころから出血していて、久しぶりの激痛で歯を食いしばって堪えることしか出来ない。

 

 ……あぁ、特にサオリの怪我が酷いな。

 それもそうか。サオリが一番に彼女からの攻撃を浴びて、一番に猪突猛進して行ったのだから。

 何処か自分を投げ捨てるような攻撃────まるで()()()()のようにも見えたそれは、しかしてサオリの気持ちが痛いほどに私にも分かってしまう。

 

 

 

 

 

 ─────サドとは、もう会えない。

 

 

 

 

 

 この事実があまりにも重い、重すぎる。

 あまりに虚しくて、あまりに辛くて、あまりに泣きたくて、あまりに吐き出したくて─────

 

 私は………私はどうすればいいんだろうか。

 このままではサオリが殺されて、ミサキが殺されて、ヒヨリが殺されて、みんなが殺されて────そしてアツコが生贄にされる。

 

 そう思っても体はピクリとも動かない。あぁ、私はダメだ。もうダメなんだ。

 もうサドに会えない“世界”で抗いたいなんて思えない。私は……弱くなってしまった。

 

 ベアトリーチェはゆっくりとサオリの元に向かっていく。

 サオリは────虚空を見つめたままだ。きっとあの空にサドの姿を思い浮かべているのだろう。だが、このままでは確実に殺されてしまう。

 

 ……もう、いいのではないのだろうか。

 このままみんなで淡い思い出を抱いたまま死んでいった方が良いと………そう思えるのに。

 

 

 

 

 

 『実力はお前らに比べたらまだまだかもしれねェが、俺の慧眼がコイツに見込みアリと判断したぜ。コイツはきっと強くなる……色んな意味でな?』

 

 「ッ」

 

 

 

 

 

 ─────あぁ、分かっている。

 これは私が都合よく見せている思い出の記憶(過去)

 もう決して戻ることのない淡い光景。

 

 

 

 

 

 『ククッ、それにしてもよく出来た落とし穴だったな!全然気づけなかったわ!流石は俺の道具だなァ!』

 

 「ッッ」

 

 

 

 

 

 そう分かっていても─────

 

 

 

 

 

 『じゃあ約束だよ?ほら、小指を出して!』

 『はいはい』

 

 「ッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

  

 私、は………私は─────!!

 

 

 

 

 

 

 

 『いいかァ?テメェらにもいずれ、何かに熱中する瞬間があるかもしれねェ。部活動だったり、趣味だったり……あとは誰かに恋をしたりとかな?』

 『恋?恋ってなんだ?』

 『あ?恋っつーのは………アレよ、ほら。ソイツを見ているだけで胸が温かくなったり、逆に胸が締め付けられたり、ソイツのことで頭がいっぱいになっちまう……とか?────って本に書いてあったような気がする……

 『そう、なのか?………なら、私はサドに恋をしているのか?サドを見ていると胸が温かくなるし、他の子と一緒にいるところを見たら胸が締め付けられるし、ずっとサドのことを考えているぞ』

 『ハンッ!!それは全部嫌悪感からくるものだから勘違いすんなよ!』

 

 

 『まぁそこは置いといて、だ。人はそんな輝かしい春のような期間(人生のピーク)に名前を付けた。その名は─────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私は────サドと一緒に未来を生きたい!!」

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「アズサ……」

 

 サッちゃんの前に躍り出たアズサを見上げる。

 その正面にいるのは、もはや人の形をしていない怪物────ベアトリーチェ。

 

 【彼との未来を生きたい?何を巫山戯た事を。そんなもの(幻想)を抱いて何になるのです?“全ては虚しい。どこまで行こうと、全ては虚しいもの”……そう教えてきた筈ですが?アズサ】

 「……確かにそうかもしれない。私が望んだものは悉く全てが手元から抜け落ちていった。もしかすれば、この世界は私たちの“幸福”なんて望んでいないのかもしれない」

 

 震えながら立つその姿は、ほんの少し風が吹けば折れてしまいそうな程に脆く、危うい背中だった。

 

 

 

 

 

 「でも、そんな暗くて憂鬱な話、私は嫌だ!」

 

 

 

 

 

 「それが真実だって、この世界の本質だって言われても、私は────私たちは好きじゃないんだッ!!」

 

 

 

 

 

 だけど、その背中を見ていると勇気が湧いてくる。

 

 

 

 

 

 「私には好きなものがある!大好きな人だっている!こんな私でも……自分の好きなものについては絶対に譲ることが出来ない!!」

 

 

 

 

 

 大好きな、もの……

 大好きな、人……

 

 

 

 

 

 『つーか、テメェが勝手に決めてんじゃねェぞ。無駄かどうかは俺が決める。この手話も今後の虐待に役立つかもしれねェし……それに案外楽しかったしなァ?』

 

 

 

 

 

 ……私にも、ある。絶対に譲ることのできない、大切な想いが。大切な記憶(過去)が。

 

 

 

 

 

 「友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて、辛いことは慰めて、苦しいことがあっても………最後は笑顔になれるような!そんなハッピーエンドが私は好きだッ!!」

 

 

 

 

 

 曇天の空に僅かに光が差していく。

 その光が、あの子を────アズサを照らす。

 

 

 

 

 

 「誰が何と言おうとも、何度だって言い続けてみせる!私たちの描く(未来)は、私たちが決める!!」

 

 

 

 

 「終わりになんてさせない、まだまだ続けていくんだ!!」

 

 

 

 

 

 ────サドの言う通りだった。

 

 あの子は、本当に()()()()()()()強くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私たちの物語………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私たちの、青春の物語(ブルーアーカイブ)をッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────気が付けば立ち上がっていた。

 

 私だけじゃない。ミサキも、ヒヨリも、サッちゃんも、みんなだって。

 満身創痍な筈なのに、立っているだけで辛い筈なのに、それでも歯を食いしばって立ち上がる。

 

 きっと、今のあの子たちにも流れているのだろう────色褪せることのない、彼とのかけがえのない思い出が。

 

 【小賢しい……!ただ搾取されるためだけに存在している社会の贄どもが……!何を勝手に“未来”などという幻想を語っているのですッ!!】

 

 彼女の大きく開いた顔に赤黒い光が集まっていく。あの赤い光線を使って今度こそ全員を打ち払う気だ。

 でも、あんなビームに誰が太刀打ちできるのか──────あっ。

 

 

 【くだらない幻想を抱いたまま死に逝きなさいッ!!】

 

 

 彼女が光線を発射する直前────私はアズサたちを庇うように前に出た。

 

 「アツコッ!?」

 「大丈夫っ」

 

 多分だけど、彼女は無意識に私への攻撃を避けていた。

 それにプラスしてこの仮面があったから、他の子と比べたら軽傷で済んでいるのだと思う。

 

 だからこそ私なら─────この忌々しい仮面を持つ私なら、たった一度だけでも光線を耐えられる筈っ。

 

 

 

 『クククッ……!オイ、アツコ。帰ったら一緒に花の手入れをしようじゃないか。なんせ花が大好きなんだろう?クククッ……!!』

 

 

 

 ─────そうだ、お花。

 あの校舎には、彼と植えたお花がたくさんある。これからもいっぱい植える筈だったのに……

 

 「…………絶対に許さないから。こんな気持ちにさせて、こんな感情を持たせておいて、そのままさよならなんて」

 

 少しずつ光線の威力が消えていき、攻撃の終了と同時に私の仮面は完全に粉砕した。もう二度と使うことは出来ないだろう。

 

 【なっ!?“ロイヤルブラッド”!?何故貴様が─────!!】

 「ヒヨリ!今!!」

 

 怪物の言葉に耳を貸すことなく、すぐさまヒヨリへ確認の合図を取る。

 

 

 ─────その直後、彼女の両の足は撃ち抜かれた。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 アズサちゃんの言葉……とても胸に響きました。

 

 私にだって好きなものがあります!好きなものが出来たんです!

 サドさんと一緒にお食事することや、一緒に雑誌を読む時間が大好きなんです!

 

 

 もう一度サドさんのシチューが食べたいです!

 もう一度サドさんのカレーが食べたいです!

 もう一度一緒に雑誌を読みたいです!

 もう一度海に行きたいです!

 もう一度ファッションショーだってしたいです!

 

 

 

 『あぁん?何を今更言っていやがる。テメェらは俺の道具だし、俺もテメェらを解放するつもりはねェよ!!残念だったなァ!!』

 

 

 

 『きゅ〜〜……頭が痛いですぅ……。でもすごく美味しいですぅ……!!』

 『ハーッハッハッハ!!一気に食べたらそりゃそうなるだろうが!!』

 

 

 

 

 ……もう一度、もう一度だけでもいいからサドさんに抱きしめて貰いたいんですッ!!

 

 

 譲れないものがあるから……私はこんなに辛くて苦しい世界でも何度だって抗ってみせます!!

 

 

 【な、何故だ!?何故私が押され始めている!?こんな………こんなカスどもにィィィィィ!?!?

 

 

 うっ……!またあのビームの予備動作が……!!

 シミュレーションゲームだと後もう少し時間がかかった筈なのに……!!

 

 

 

 ─────ドゴォォォォォン!!

 

 

 

 【アアァァァアァァ!?!?】

 

 

 大量の()()()()()()()()()が彼女の顔に着弾し、間一髪でビームの発射を食い止めることが出来ました。

 

 

 反射的に発射地点に顔を向けて─────後悔しました。

 何故ならそこには──────

 

 

 「ヒィィィ……!!」

 

 

 ─────般若のようなお顔をしたミサキさんがランチャーを構えていたからです。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 ─────ムカつく。

 

 

 

 『ククッ、だから言っただろう?たかが10年ちょっと生きただけのガキが世界を知った気になんなってよォ』

 

 

 

 ─────………ほんとムカつく。

 

 

 

 『あぁ。人間は十人十色であり、輝ける場所も人それぞれ違う。だが、人は必ず輝くことが出来る……この花火のようにな?』

 

 

 

 ─────アイツ(あの馬鹿)との思い出に支えられている私が、本当にムカつく。

 

 

 

 ─────思い出を思い出して心の裡では歓喜している私が、本当にどうしようもなくてムカつく。

 

 

 

 ─────アイツのことが本当に好きなんだって再認識しているようで、何だかムカつく。

 

 

 

 「ミ、ミサキさん……?」

 「……なに」

 「あの……お、怒ってますか……?」

 「………うん、そうだね。これ以上ないくらいに怒ってる」

 「ひゃあ……!?」

 

 ……思えば、別にアイツは死んだわけではない。あの女の話を信じるなら、代役を終えただけらしいし。

 なら、いつか会える────いや、()()()()()()()()

 何年かかっても絶対に、何処へ逃げようとも、このキヴォトスの地の果てまでも追いかけて─────

 

 

 「だから……こんなところで死ぬわけにはいかないッ」

 

 

 今の銃弾でライフルは尽きた。もう次のチャージを阻止することも出来ない。

 

 

 だから、これが最後のチャンス─────

 

 

 「行って、サオリ姉さん(リーダー)

 

 

 長い蒼の髪を揺らしながら走る後ろ姿を見送りながら、私はその背中にエールを送った。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 馳ける、馳ける、馳ける。

 

 

 

 

 全身が悲鳴を上げている────それでも。

 

 

 

 

 脳がもう限界だと声を上げている────それでも。

 

 

 

 

 もうここに彼が帰って来ないことも全部分かっている────それでもッ!!

 

 

 

 

 

 【やめろ……!見るな……!その希望に満ちた目で私を見るなァァァァァァ!!!!

 

 

 彼女の枝のように細い指から赤い球が生成されていく。あの銃にも似た球の厄介さは、数多に受けてきた私が最も理解している。

 

 だけど、もう大丈夫だ。

 

 「やってくれ!みんな!!」

 『ばにた〜す!!』

 

 私たちが注意を引きつけていた後、仲間たちは四方八方を囲んで()()()()に一斉射撃をする。

 一発一発の弾では何ともないかもしれないが……数百発になれば話は変わってくるだろう?ベアトリーチェ。

 

 【グゥゥゥゥッッッ!?!?】

 「やってー!サオリさ〜ん!」

 「後は頼みます!」

 「あのムカつく顔面をぶっ壊しちゃえ〜!!」

 

 仲間たちの声援を背中に受け、私は彼女の顔面に目掛けて飛び立つ。

 

 

 

 『テメェの今の持ち主は俺!!ならテメェは、俺と共に生きる未来のことだけを考えていればいいんだよ!!』

 

 

 

 サドさん、私はもうあなたと生きる未来しか想像出来ない。想像したくないんだ。

 

 

 あなたとみんなで、ずっと、永遠に、争いごとも無縁な長閑な場所でひっそりと暮らしていきたい。

 

 

 だから、そのためには─────

 

 

 「お前は邪魔だッ!!ベアトリーチェ!!」

 

 

 彼女の顔面を足踏みし、ど真ん中に銃口を合わせる。

 幾多もある目が一斉に怯えにも似た感情を宿して私を見ていた。

 

 【ま、待つのですッ!待ちなさい、サオリ!!ここまで誰が育ててきたと────】

 「あぁ、そうだな。確かに曲がりなりにも貴女の下で育ってきた。それでも、私は貴女に育てられた数年よりも()()()()()()1()()()()()()

 

 その言葉を最後に銃弾を放つ。

 容赦はなく、慈悲もなく、命乞いも耳を傾けず、ありとあらゆる覚悟を持って銃弾を撃ち放った。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

  【ぎゃあああああああああああ!!!!!!】

 

 

 思わず耳を防ぎたくなるほどの絶叫を発しながら、以前の人型に戻っていくベアトリーチェ。

 私たちはそれでも油断など一切見せず、銃口を彼女に合わせながらにじり寄る。

 

 「あぁ……何故……何故!?何故私が……!!」

 「ベアトリーチェ」

 「ッ!!」

 

 彼女は私を射殺さんとばかりに睨め付ける。

 以前ならそれだけで恐怖に震えていたかもしれないが……もう何も怖くない。

 

 「私は貴女が嫌いだ。殺してやりたいほどに憎んでいる。だけど……このまま無様に立ち去り、今後二度と私たちの前に現れないというのなら許してやる」

 

 今言ったことは全て本心だ。殺してやりたいほどに嫌いだし、憎んでいる。

 でも、その憎悪に呑み込まれてはいけないとも思っている。

 憎悪に呑み込まれてしまえば、それこそ目の前にいる彼女の教えが正しいことになってしまう。

 私は───私たちは、この蓄えられた力をもっと別の部分に使っていきたい。かつて、彼がそう教えてくれたように。

 

 「ま、まさか……あなたは私に慈悲をかけているのですか……?矮小な存在であるあなたが、大人に搾取されるだけの贄であるあなたが……私に慈悲を……?」

 「そうだ。私たちは()()()()()()()()()()()()()と言っているんだ」

 

 そう言えば、元から赤かった彼女の肌は更に赤く染まり、激昂を隠さない顔でこめかみに血管を浮かばせた。

 

 「図に乗るなァ!!たかが……たかが一度勝利したぐらいで粋がるんじゃありませんッ!!私はあと一回変身が出来ます!次に闘えば負けるのはあなたたち─────」

 

 

 ─────ピシャァァァァン

 

 

 上空で雷が猛る音が聞こえた。陽が見え隠れしていた筈の空は、いつのまにか嵐のようなドス黒い色に変色している。

 その空は、その雷は、私が今まで見て聞いてきたモノと全く異質のモノであると直感が告げる。

 

 「アレは………ッ、まさか!?()()()─────」

 

 彼女の声はそこで消えた────いや、()()()()

 

 

 

 何故なら渦巻く雲の中心に一筋の雷が奔り─────それが()()()()()()()()()()して跡形もなく消え去ったから。

 

 

 

 私たちが唖然としていると忽ち雷雲は消えて雲一つない快晴が私たちを照らし出す。

 この世界の神秘────その一端に触れたような瞬間だった。

 

 「な、何だったんだ、アレは……」

 

 そんな私の呟きを誰かが拾ってくれることはない。

 それもそうだ、アレはもう“神”が起こした現象に近いモノだろうからな。

 

 「さぁ?少なくとも私は興味ない。それにあんなのを考えたって、私たちに何か得することでもあるの?」

 

 ひどく目の据わったミサキが辛辣な言葉を投げかける……が、かなりのキレ度合いに口を挟むことが出来ない。

 

 「それより、私たちには考えることがある……そうでしょ?」

 「そうだね。サドは()()()居なくなったし、ベアトリーチェも消えた。つまりようやく私たちは晴れて自由の身になれたってわけでしょ?」

 

 ……あぁ、なるほど。

 

 「つまり、今なら他校や他地区に転校や移住が出来るというわけか」

 

 『どうだ?』という確認の意味も込めて周囲を見渡す。

 誰もが晴れやかで屈託のない笑顔を向けているが、誰一人として他校に移りたいと言い出す者はいなかった。………愚問だったな。

 

 「私たちは本当の意味で自由になれた。きっともう、私たちを縛り上げるものはないのだろう。………これから真の意味で私たちの物語(人生)───私たちの青春の物語が始まる」

 

 アズサが恥ずかし気に下を向く。いや、アレは本当にいい言葉だったと心の底から思う。だからこそ、私たちは立ち上がれたのだから。

 それに……きっとサドさんも両手を叩いて褒めてくれるさ。

 

 「だけど………これから始めるにしてもやっぱり()()()()と、そう思うよな?私たちの始まりに()()()()()()()()()がこの場にいない………これは由々しき事態だ」

 

 わざとらしく尋ねれば、にやけた顔を隠そうともしないで全員がうなづく。

 ────やはりというか、揃いも揃って目が据わっていた。

 

 「なら、私たちはどうする?」

 「探そう。今すぐに、すぐにでも」

 「うん、絶対に見つける」

 「えへ、えへへ……見つけたらどうしましょうか……?」

 「さぁ?少なくとも、勝手に置いていった()はちゃんと受けてもらうつもりだから」

 

 ………うん、そうだな。彼には“責任”を取ってもらわないといけない。

 

 

 

 ────そして身も心も、その全てを私たちから二度と()()()()()()ようにしないと。

 

 

 

 「サドさんを見つけよう。何処に居たって必ず見つけ出して───ここに連れ戻そう」

 『はい!!』

 

 

 

 

 そして、今度こそ伝えよう。理解出来るまで、何度でも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────私はあなたを心の底から愛しています、と。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「クックック……なるほど、()()()()()()()()

 

 仄暗い鉄の空間にて、今のアリウス自治区の状況を見ていた3つの人影。

 そのうちの1人である黒服は感嘆といった風に呟いた。

 

 「“神秘”から“恐怖”に移り変わる貴重な瞬間を目撃出来ると聞いていたが………特に何もなかったではないか、黒服」

 「いえ、()()()()()()()であれば彼女たちは“彼”という存在をなくし、世界に失望し、自身に絶望し、苦しみ、苦しみ苦しみ苦しみ苦しみぬいて………そうして存在を反転させる─────その手筈だったのですよね?黒服」

 「そういうこったぁッ!!」

 「クックック、その通りです、ゴルコンダ」

 

 マエストロとゴルコンダに相槌を打つ黒服は、それはもう愉快で仕方ないように喉を鳴らす。

 

 「しかし、彼女たちは過去の強い記憶(消え褪せない思い出)だけで“恐怖”に反転することはなく、彼女たちの縛りそのもの(トラウマ)を乗り越えることが出来たのです」

 「ふむ、つまり?」

 「そうですねぇ………この言葉は“探求者”を名乗る私が発するにはあまりにも言語道断なものですが─────これは彼と彼女たちが紡いできた“()()()()ともいえます」

 「“愛”……この世で最も理解され、そして真の意味で理解されず、私たちの身近にある普遍であり不可思議な現象。故にそれが与える影響も測り知れず、世界の───彼女たちの運命すらも捻じ曲げたと?」

 「いえ、それはあくまできっかけに過ぎません。最もイレギュラーだったのは────」

 「…………サド、か」

 

 彼らは今この場にいない異端者(アホ)を思い浮かべる。

 そもそもだが、彼がいなければここまで事は大きくならず、ましてやベアトリーチェが負けることもなかった。

 

 「……それこそ今更でしょう。彼が友と呼ぶ“セトの憤怒”を呼び寄せた時点で、彼女の敗北は決まっていました」

 「そうですね。ただ、彼があの“神”に願ったのは()()()()()()()()()()()()()()()()()というものでした。しかし“セトの憤怒”は何を勘違いしたのか、それとも意図的か、ベアトリーチェに直接攻撃をしてしまいました」

 「そもそも“神”を花火を見せるために呼び出すのもどうかと思うが……」

 「クックック……それもまた今更でしょう。なんせ彼はあの“神”を『イカした体をしたすごいヤツ』としか認識していないのですから」

 

 『それもまた彼の可愛らしい部分ですよね』と結論づける。

 一歩間違えればキヴォトスを支配、もしくは崩壊させる手札を彼は持っているが、生憎彼の頭は虐待のことで頭がいっぱいであるため、そういったものには一切興味がない。

 彼はただ、“真性の神々”すらも友と呼べるアホだったというだけだ。

 

 「それで?そのサドは何処に行ったのだ」

 「彼には新たな任務を与えて既に向かってもらいました」

 「任務……ですか?」

 「はい。主に人材発掘の任務なので場所は指定していません。そのため行き先はまだ決めていないそうですが、場所を決めたら逐一報告するように言い付けてあります」

 「…………大丈夫なのか?」

 

 直接的表現を避けたそれは、しかしてこの場にいる者には十分すぎる程に伝わった。

 

 「クックック、そうですねぇ。次に彼女たちと出会ってしまったら()()でしょうし、ここは私たちも可愛い後輩のために一肌脱いであげるとしましょうか」

 「ふふっ、世話のかかる後輩ですね」

 「全くだ」

 

 基本的に横の繋がりが最低限な彼らであるが、後輩のことに関してはその繋がりがパイプのように太くなるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「────くしゅんッ!!あぁ?誰か俺の噂でもしてんのか?」

 

 最低限の道具を持って本拠地を出て間もなく、俺はやけに軽い荷物に違和感を感じながら徒歩で道を歩む。

 ありとあらゆる私物はあっちに置いてきちまったからなァ、必然と荷物も軽くなっちまう。

 

 「……今頃アイツらはパーティでも開いてんのかな。昨日パーティやったばっかっつーのに、なんて強情なヤツらだぜ」

 

 まぁ、それも仕方ないだろう。

 なんせ、俺のような悪の支配から解放されるんだからな!もう年末年始までどんちゃん騒ぎだろう!

 クククッ……!幸せになれよッ!

 

 「セトくんも上手く()()()()()をやってくれたみたいだし、これでもう心置きなく次の虐待道に進める」

 

 あ〜、どっかに汚いガキでも落ちていないかなぁ。そんで反骨心あるガキであればなおよし。やっぱ虐待しがいのあるヤツじゃねェと燃えねぇよなァ!

 

 

 

 

 

 

 「待っていろ、キヴォトス(世界よ)!!史上最恐最悪の虐待者が今、お前たちの下に向かっているからなァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 何処までも青く澄んだ青空の下で、俺は新たな一歩を踏み締めた。

 






虐待は続くよ、何処までも─────


というわけで()()()は完結しました!ここまでのご愛読ありがとうございました!

……はい!そうですね!第一章完結という事は、第二章あります!まだ全然出来上がっていませんけど!
それに本当は10話ちょっとで終わらす筈だったのに、いつの間にか16話までかかってしまいましたが……
とにかく年内には終わらせたかったので、ちゃんと出せて安心しています。

という事で、色々考えるためにしばしばお休みしますが、次の虐待の被害者は誰なのか予想しながらお待ちしていただければ幸いです!

ではみなさん、良いお年を!
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