汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
今回も残酷です!
※追記
今気づいたんですけど、非ログインの方は感想出来なくなっていたことが判明しましたので、非ログインの方も感想を書けるように設定いたしました!
作者、感想大好き人間ですのでじゃんじゃん送ってください!
──────温かい。
生まれて初めてお湯に浸かったにしては浅い感想。だけど、それが全てだったんだ。
今まで冷水や異臭のするドブ水しか浴びてこなかった私には、この匂いのついたお湯の全てが初めての体験で……まるで心までも温まっているような、そんな気持ちだ。お風呂というものは凄いな。
……いや、本当にお湯の温かさだけなのだろうか?もっと別の……他の何かを感じるが、今の私にはソレが分からない。
ただ、ソレに対して決して悪感情など抱いていないことだけは確かだった。
「リ、リーダー……」
右隣でお湯をブクブクさせていたヒヨリが私を呼ぶ。
その顔は何処か困惑したような表情だった。
「なんだ?」
「あ、あの……サド、さん?って……い、いい人、なんですかね……」
「アレを“人”として見れるのはヒヨリだけだよ」
さらに左隣からミサキがヒヨリの発言にチクリと指す。その声色は何処か冷ややかなものであったが、天井に顔を向けながら目を瞑っているのを見るに、しっかりとリラックスできているようだ。
「確かに、彼を私たちと同じ“人”とは言えないかもしれないな」
思い浮かぶ姿は、まさしく異形の怪物。
漆黒の執事服を着飾る姿は人間であるが、その顔はまるで一灯の燈のように燃え盛る炎。
赤、黄、白、青、紫、黒………まるでこの世に存在するありとあらゆる色が混ざり合うように燃えている
「…………」
「………“マダムも似たような姿だった”か。確かにその通りだが……それを言えるのは姫しかいないだろうな」
私の正面で、彼に言われた通り肩までしっかり浸かっているアツコが手話で私たちに語りかける。
しかし、幾ら今彼女がいないといっても、そんな悪口にも似たことを口にできるのは姫を除いてどれほどの人数がいるのだろうか。
「いい人、か……」
「リ、リーダーは誰よりも長く彼と……せ、接していましたよね?な、何か分かったことは、ないんですか……?」
……確かに、私は彼と唯一言葉を交えさせた存在だろう。
その中で私が抱いた印象は─────
「────彼は………正直言って分からないんだ」
「分からないって……明らかに悪い大人でしょ。私たちを道具としか思っていない、
「………あぁ、そうだ。………その筈、だよな」
傲慢で、不遜で、驕慢。それが彼に抱いた印象。
彼の発言は全て本心から出た言葉だった筈だ。……私たちを道具と、そう言ったことも全て。
しかし、何処か引っ掛かりを覚えたのは確かだ。それに……彼に何故か期待してしまう自分がいる。
全ては虚しいだけだって分かっている筈なのに、期待して裏切られるぐらいならいっそのこと最初から期待しなければいいのに……それでも、と。
─────いや、そんなものも全て幻想か。
地獄に垂れた一本の糸は誰にも魅力的に映ってしまう。それがたとえ、次の地獄への一本道だったとしても。
「……もう上がろう。十分休めた」
「あっ……」
ヒヨリの声に後ろ髪を引かれる思いになるが、これ以上ここで彼のことを考えていたら頭がどうにかなりそうだった。
彼は私たちを道具として求めている。あぁ、ならいつも通りだ。私たちは彼の道具として働き、憎しみを絶えさせることなく、また新たな憎悪を植えさせて、外にいるヤツらへの報復だけを考えていればいい。
───── 全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものなのだから。
そうである筈なのに───────
「よぉ、早速だが虐待の時間だぜェ?」
どうして、彼はまだ諦めさせてくれないのだろう。
◇◆
一丁前に長風呂してきたガキどもに、皮肉を込めてたっぷりと笑顔で出迎えた。
マジ遅せぇよ、テメェら。何分入ってんだよ。
一回マジで虐待に耐えかねて死んだんじゃねぇのかって思ったわ。
しかし……見給え、コイツらの表情を。さっきの無表情から正反対の、まるで幸せが溢れ出た表情だ。凡人から見ればお風呂でリラックスしてきたんだなって感じるだろ?違うんだな、コレが。コイツらはお湯責めで喰らった苦痛を巧妙に隠しているだけだ。
クククッ、意外にも強かで安心したぜ。あんな序の口でリタイアされたとなっちゃあ、不完全燃焼もいいとこだったからなぁ?
「この、匂いは……?」
大広場に戻ってきたガキどもが沈黙を貫いていれば、まるで代表するかのように藍色のガキが俺に尋ねてくる。
クククッ、待ってたぜぇ!その言葉をヨォ!!
「見て分からねぇか?テメェらのご飯だぜ!!」
大広場に鎮座するのは人数分のオンボロの机と椅子。その上に置いてある馬鹿でかい大鍋の中身が、コイツらの今日の夕飯というわけだ。
クククッ、コイツらが大鍋の中を見たときの表情が今から楽しみで仕方ないぜ。
「─────えっ……え?こ、コレが……ご飯?」
水色髪のガキがまるで“わけが分からない”といったふうに大鍋に近づいていく。
それに続くように、ガキどもはワラワラと一つの大鍋を囲い始めた。
おっと、もう効果が出てきてしまったか?
「クククッ、中身を見たいか?」
「み、見たいです!!」
「お、おい!ヒヨリ!」
「いいぜェ?是非とも絶望して泣き叫ぶんだな!」
ガバリと躊躇わず大蓋を開けて中身を見せてやれば──────ガキどもはまるで石化したように固まっちまった。
─────ププッ。
「ククッ、クククッ!ハーッハッハッハ!!!!初めて見たかァ?
俺がガキどもに作ってやったのはごく普通の一般的なクリームシチューだ。食材はベアトリーチェの私室から勝手に持ち出した。
随分とまぁ高級な食材がわんさかあってな?コレを見て俺はコイツらの食事事情を察したわけよ。
このガキども、
だから、コイツらがいつも丸々食っていたであろう肉を切り刻み、芋を切り刻み、牛乳を大量に使ってやったわけだ!!
しかもそれだけじゃねぇ。ガキどもが嫌いそうな野菜もたっぷり入っているぜ!ブロッコリー!にんじん!玉ねぎ!虐待における最高の相棒たちをぶち込んでやったぜぇ!!
どうせコイツらは肉しか食ったことがねぇんだろ?なんせ、あのババァに甘やかされてきたんだからなァ。
もうそんな生活を送れると思うなよ?これからは毎日野菜を摂取することを義務付けるぜ!
クククッ、好物を細切れにされ、苦手な物もふんだんにぶち込まれただけでなく、アツアツのお風呂に入ってからのこのアツアツのシチュー……さぞ体は悲鳴を上げるだろうなァ?
『───────』
「ククッ、言葉も出ねぇってか?オラ、早く席に着け!!全員平等によそってやるからよ!!」
続々と俺の前に整列するガキどもを見る。
どいつもこいつも未だに現実を受け入れられないといった顔をして、肩を震わせてやがる。
そりゃそうだよなぁ?なんせ、いつもお前らがたらふく食っていた肉がこーんな小さな塊になって、クリームシチューなんていう庶民的な食べ物を食わされるんだからよ!
「え、えっ……ははっ。夢、なんですか?夢……なんですよね……?」
「あぁ?夢じゃねぇよ、水色のガキ。ちゃんと
「っ………っっっ……!!」
コイツ、とうとうクリームシチューの衝撃で泣きそうになってやがる。
クククッ……!やはり泣き顔が一番最高だ!そういう表情をもっと見せてくれ!
「全員行き届いたな?じゃあ、まずは『いただきます』だァ!!」
食事をする前にちゃんと感謝をする……んな当たり前なこともできなさそうな甘ちゃんどもに強制させてやるよ!さぞ屈辱的だろうな!
◇◆
目の前にあるのは見たこともない御馳走。
冷たいだけの味のしないスープでもなければ、何の腹の満たしにもならない豆粒なんかでもない。正真正銘、夢想した御馳走が目の前にあった。
「全員行き届いたな?じゃあ、まずは『いただきます』だァ!!」
彼の言う『いただきます』の意味がよく分からない。彼が言うには、どうやら食事をする前に食材に対して感謝を告げる儀式だそうだ。
……そんなこと、考えたこともなかった。食事が目の前にあったら手だろうが足だろうが掴んで食べていたし、そんなことをしている暇があるなら早く胃袋に何かを詰め込んでいた方が良かったから。
だから、私も、周囲にいる仲間も、彼の動作を真似て手を合わせ、『いただきます』と唱える。
……たったそれだけなのに、目の前にある御馳走がより一層輝かしく見えた。
我慢しきれず、スプーンでシチューを掬い口に運び込み───────
「──────────」
──────視界がぼやける。
甘くて、まろやかで、体の芯まで温まるシチュー。それもただ温かいだけじゃない。心にまで染み込む温かさを持つシチューだった。
一口目からは、もう無我夢中だった。私が生きてきた中で間違いなく一番美味しいと思える食べ物を、私は涙を流しながらひたすらに口へ放り込む。
辛いだけの日々、空腹に耐え続ける毎日、何で生きているのかさえ分からなくなるような人生………その全てが、今一瞬だけ全てが報われたような感覚すらあった。
「ハーッハッハッハ!!この景色が見たかった!!むしろこれを見たいがために虐待王を目指していると言っても過言ではない!!」
彼が高笑いに何かを叫んでいるが、私にはちっとも届いていなかった。あまりに美味しくて、温かい食事に夢中になってしまっていたから。
「どうだァ?うめぇか?」
「────うぅ……!おい、しい……!美味しいですぅ……!!」
「クククッ……!そうかそうか。ならここにお代わりがたらふくあるから、全員一杯以上お代わりな!!」
ヒヨリに味を聞いていた彼は意地の悪い声色でもう一つの大鍋を指差す。彼の号令を聞いた瞬間、ヒヨリを筆頭に瞬く間に大鍋に集っていく仲間たちを見ていると、彼と目が合った。
「オイオイ、もう泣いてんのか?そんなんじゃあ今後待ち受ける虐待に耐えられないぜ?」
ゆっくりと近づいてきた彼は自身の目元を摩る仕草をして、私を嘲笑う。……だけど、不思議と嫌な気持ちはこれっぽっちも抱かなかった。
それにしても………虐待?
「あ、あの……虐待って……」
「クククッ、今更気づいても時すでに遅し!何故なら、現在進行形で虐待を受けているんだからな!」
「え?むしろ─────」
「ハッハッハ!!恨むんなら自身の運の無さとやらかしたベアトリーチェにでもするんだな!そして嘆け!!お前たちは不幸にも、この最恐最悪のサディストである俺を呼び寄せてしまったことをなァ!」
「っ」
彼はそう高らかに宣言したあと私の頭を乱雑に撫で回し、高笑いしながら大鍋に集う仲間たちの元へ向かっていった。私はただ、その後ろ姿を見送るだけで……
………………
「──────」
無意識に先ほど彼に撫で回された頭に手を置く。
………温かかったな。人から撫でられた記憶なんて終ぞない私にも、さっきのは雑だったと分かるほどに乱暴な撫で方だ。だけど、ずっとああされたいと思ってしまうほどに手放し難いモノだったのは間違いなくて……
──────あぁ、そういうことだったんだ。
私は心の底から
生まれて初めて入ったお風呂でも、これ以上ないほどの食事にありつけたときも、乱雑に撫で回されたときも……
ひどく歪で、捻くれて、だけど温かな幸せを感じていたんだ。
「ガキども!!ちゃんと食ってるかァ?」
「はい!本当に美味しいです!!」
「クククッ……!テメェら、結構図太い神経してるじゃねぇか。気に入ったぜ!」
「えへへ〜♪」
…………何が不幸なのだろうか。
普段は決して笑う筈のない────感情を失っていると思えた仲間たちですら僅かにだが頬の口角を上げている。一生見ることはないと思っていた景色を一瞬で生み出せた彼を、どうして不幸の使者だと思えるのだろうか。
「────変な大人だな……」
変な大人だけど、とても温かい人─────それが、きっと彼なんだろう。