汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
平穏な市街地のラーメン屋で行われる虐待!?
「…………」
砂に覆われ、都市が崩壊したアビドスでも市街地なるものは存在している。
大都市と比べたら雲泥の差もある市街地だろうが、この場所があるから私たちは暮らしていけると言っても過言ではないのかもしれない。
さて、そんな市街地をスキップし出しそうな程に軽やかに歩くサド─────を尾けている私たちは、現在彼にバレないように電柱に隠れている最中だ。
「あ、あの〜、ホシノちゃん?」
「静かにしてください、先輩。アイツに気づかれたらどうするんですか」
「あ、ごめんね………じゃなくて!えっと、私たちは何をやっているのかな……?」
「何って……アイツの後を追っていますが」
「何で!?」
ユメ先輩は本当に分からないといった顔で問いかけてくる。
ハァ……全く先輩は。そんなの1つしか理由がないじゃないですか。
「監視です」
「監視……?」
「はい。先輩も知っていると思いますが、アイツは不定期に放課後になるとすぐ何処かに行っています」
「そ、そうだね。でも、この前聞いたら『大した事じゃねェ!』って返されたじゃん?」
「えぇ、そうです。だから今日はその秘密事を暴きに来たんですよ。アイツは怪しい“大人”なんですから、私がアイツの行動を記憶しておかないと……」
通常ならいつも生徒会室でユメ先輩と一緒にアホなことばかりしている癖に、ある日ある日で私たちから離れて何処かに行っているんです。
こんなの……どう考えても怪しいでしょ?
「それってただのストーカーなんじゃ……?」
「何か言いましたか?それか反対でも?」
「う、ううん!私もサドさんのことをもっと知りたいし、着いていくのは大賛成かな!」
……意外です。先輩ならてっきり『直接聞きに行くよ!』なんて言ってアイツの下へ駆け出すものだと思っていたんですけど……
というか何ですか、その『私も』って。まるで私がアイツのことを知りたがっているみたいじゃないですか。
そんな気は微塵も……いや、1割─────いいや1.5割………さらにお情けで2割ぐらいはあるかもしれませんね。それでも全然ありませんが。
「……それにしても、アイツは何処まで行くんですか。もしや適当に歩いているだけじゃ─────あっ、止まりましたね」
「あれは…………“柴関ラーメン”?」
サドが止まった場所は柴関ラーメンというラーメン屋の前だった。
しかも、何の躊躇いもなくラーメン屋に入って行ったではありませんか。
「毎週ラーメンを食べに行っているんですかね……」
「うへ〜、何だかいい匂いがするよ〜。ねぇねぇ、ホシノちゃん。私たちもラーメン食べに行かない?」
「な、何を言っているんですか!?たった今アイツが入ったばかりでしょ!?絶対鉢合わせます!!」
あの人はどうしようもない部分だけは勘が鋭いですからね、このままアイツと鉢合わせたら、きっと私たちが着けてきたことを察しますよ!
「でも、ホシノちゃんだってお腹空いてきたんじゃない?」
「そんな事は──────」
最悪なタイミングでお腹が鳴る。
本当に、この16年間生きてきた中で最も最悪なタイミングだった。
「ふふっ、ホシノちゃんのお口は素直じゃないけどお腹は素直なんだね!」
「なっ、なっ……!?」
「ほら、行こ?それで、もしサドさんが1人席にいたら2人でお隣に座ろうよ!」
「ぐううぅ……!!」
……やむを得ませんね。えぇ、本当にやむを得ない。
「分かりましたよ!行けばいいんでしょ行けば!!」
「ちゃんとサドさんのお隣ね?」
「分かってます!!」
こうなったら腹を括るしかありません!
変質者だとか虐待者だとか何でも来なさいッ!!
「いらっしゃいませだぜ!!!」
「──────は?」
カウンター席の内側────その場所には、一丁前にタオルを巻いているサドがいました。
何やってるんですかね、あの人は……
◇◆
「ククッ、俺を尾行するなんざいい度胸してんじゃねェか!!」
「……気づかないあなたがおマヌケなんですよ」
「何をぉ!?」
クククッ、まさかコイツらが俺の
さっきユメが口を滑らかさなければ、マジでただの偶然でやって来たのだと勘違いしていたところだったぜ!
「それより大将、本当にいいのか?俺だけ休憩入っちまってよ」
「いいともいいとも。まだそこまで忙しくないし、何よりこんな可憐な学生さん方が男1人を待ってくれているんだ。ならそれに応えることこそが男の役割ってもんよ!」
「……?そうかァ!!」
────などと同意してみるが、実際はこれっぽっちも分かっていないのが俺である。
だって……なぁ?俺のような悪虐人を誰が待ってくれているというのか。
どうせこのガキどもも俺の弱みを見つけようとして追ってきた口だろうし、むしろこうやって隣にいること自体最悪な状況だろうになァ!!
大将……アンタは紛れもなく善人だ。
だが、世の中にはいらない気遣いもあるってことを知った方がいいぜェ?コイツらのような被害者を今後出さないためにな!!
「それで?柴関ラーメンで一体何をやっていたんですか?」
「ククッ、それはラーメン食べながら話そうぜ。多分もうそろそろ────」
「へい、お待ち!!柴関ラーメン並2つと大盛り1つ!!」
「わぁ〜!!来た〜〜!!」
「これは……確かに美味しそうですね……」
ククッ、ガキどもが全員ラーメンに釘付けになっていやがる。
そりゃあ美味そうだろう、なんせ俺が惚れ込んだラーメンなんだからよ!
「それじゃあ、いただきます!」
『いただきます』
ガキどもの
「─────」
「美味しい〜!!」
「……ほんと、すごく美味しいですね────って何で固まってるんですか?この人」
「さぁ?」
─────ゥんまあ〜〜〜〜いっ!!!!
俺は叫びたい衝動を懸命に抑えながら、心の中で絶叫をあげる。
もし叫び声を上げたら大将はもちろん、他のお客さんやガキどもにも迷惑がかかっちまうから自重するぜ!
それにしても……オイオイ、相変わらず美味いじゃんかよ大将ォォォォ!!!!
俺はこの味に『敬意』を表するッ!!
「ククッ、流石だぜ、大将。俺がアンタの味を完全にモノにするのに、まだまだ時間がかかりそうだぜ」
「ハーッハッハッハ!!まぁ、俺も伊達にラーメン一筋で生きていねぇってこった!!」
「……?どういうことですか?」
余程俺がここにいた理由を知りたいのか、ホシノはしつこく尋ねて来やがる。
いいぜェ?教えてやるよ。俺とこのラーメンが出会った日のことをよォ!!
「あれはこのスープのように透き通った青空の日のこと──────」
「あっ、店長さんに聞くから結構です。どうしてこの人がここで働いているんですか?」
「あぁ、何でも俺のラーメンに惚れ込んだって言って作り方を教えて欲しいって頼み込んできてよ。そっからバイトとして雇ってんだ」
「へぇ、そんな経緯が……。大丈夫ですか?ご迷惑をおかけしていませんか?」
「ここでもずっと『虐待!』って言ってそうだもんね!」
「ハハっ、まぁ最初はお客さんも困惑していたけど、今じゃあウチの看板娘───いや、看板男になってるな!」
「何ですか、それ。絶妙に嫌ですね」
「え〜?私はいいと思うけどな〜、サドさんの看板娘〜」
…………このガキども、一体どうしてくれようかな。
いやはや、ここまで自身の持ち主を無碍に扱えるモンなのかと逆に感心すらしているよ。
「テメェら……帰ったら覚えてろ─────」
「失礼しま〜〜す☆サドさんはいますか?」
「あぁん?」
ユメとは違うゆるふわボイスを背中に受け、俺の名を呼んだヤツの方に顔を向ける。
そこには
「おぉ、ノノミじゃねェか。今日も来たんだな!」
「はい!来ちゃいました☆」
ベージュのロングヘアを靡かせながら、あろう事か悪の権化であるこの俺に微笑みかけるガキの名は十六夜ノノミ────よく柴関ラーメンに訪れては俺に悩み事を相談しに来るという思いっきり人選ミスをかましているガキである。だが、本人的には相談相手は俺がいいそうだ。
意味わかんないね!!
「今はお休み中でしたか?」
「ククッ、その通り!まぁ、そんな事はさて置いて……ほれ、お前も席に座って一緒にラーメン食べようぜ!俺の奢りでいいからよォ!!」
「わぁ〜〜い☆じゃあ失礼して─────あれ?この方たちは?」
そう言って俺の両隣にいるユメとホシノに目を向けるノノミは心底不思議そうに、されどすぐに何かに気づいたように目を見開く。
「その制服……もしかして、アビドス高等学校の学生さんですか?」
「そうだよ!私は生徒会長の梔子ユメ!それでこっちの子が─────」
「…………小鳥遊ホシノです。よろしくお願いします」
……?なんかホシノの野郎が何処となく不機嫌っぽくね?
…………まぁ、気のせいか!コイツが不機嫌なのはいつものことだしな!
「それで、あなたは?お名前はなんていうの?」
「えっと……私は十六夜ノノミといいます!」
「十六夜ノノミ……?何処かで聞いたことがあるような?」
「聞いたことがあるもなにも、彼女は
「あぁ!そうそう!確か私立ネフティス中学校にお嬢様がいるって噂になってたかも!」
「………それってまた自分だけの噂とかじゃありませんよね?」
「え?そうだけど?」
何やらコントし出したぞ、コイツら。
ゆるふわなユメと厨二病なホシノ……結構水と油な関係かと思うが、どうしてなかなか妙に気が合うんだよな。
「お前って結構有名人だったのな、ビックリしたぜ」
「ふふっ☆私は良い意味でも悪い意味でも有名人なんですよ?」
「へぇ〜────ってオイ、悪い意味で有名なのは俺の方だからな。そこ勘違いすんじゃねェぞ」
「……あははっ☆やっぱりサドさんは面白い人ですね☆」
ケッ、よくもまぁこの俺を前にして口角を上げて笑えるモンだぜ。
やはり砂漠育ちはみんな反骨心溢れたガキへと育つってわけかァ?
「つーか、俺もうそろそろ食い終わるからこの席座っても────」
「失礼しま〜〜す!!大将〜、サドいる〜────ってあぁ!?サボってるじゃん!」
「ちょ、ちょっとセリカちゃん……!?」
さらに騒がしいガキが1名追加。ほんと、元気のあるガキばかりで退屈しねェな!!
「あぁん!?誰がサボってるってェ?セリカ!!それとアヤネェ!!」
「えぇ!?私は何も言っていませんよ!?」
この猫耳の喧しいガキが黒見セリカ。まだまだ中坊の喧しいガキだ。高校生になったらここでアルバイトしたいなどと言っていたなァ。
そんでナイスツッコミをかましたウェリントン眼鏡のガキが奥空アヤネ。まぁ、コイツは見て分かる通り如何にも真面目で本の虫野郎だ。それと────
「…………」
「サ、サドさん……?あの……?」
「あぁ、すまん。お前が
「……?」
あと昔のアルに似ているぜ。容姿も髪色も全く違うのに、どうしてここまでシンパシーを感じるのだろうか?もしや、あの眼鏡のせいか?
……まぁいいか。取り敢えず今知っておくべきことは、コイツらもよく柴関ラーメンにやって来ては学校で何があったとか、どんなことをしただとかわざわざ俺にいちいち伝えに来やがるってことだ。
何度も言うが、ぜってー人選ミスってるって。
「さてセリカよ、俺はサボっているのではない。ちょっとばかし早めの夕飯ってわけだ。優雅なディナータイムというわけだ。分かったか!!」
「え!?っていう事はサドと一緒にラーメン食べ─────」
「────あっ、たった今汁まで飲み終わったわ。つーことで戻らないとな!!」
「アンタわざとでしょ!?!?」
「わざとじゃねェよ、このツンツン娘!!!」
黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって、このツンガキが……!!
こりゃあもう
「お前ら、ほぼ同年代だし一緒の席でまとまった方がいいだろ。あのボックス席で食ってな」
そこで俺を出汁に陰口を叩きながら、精々仲良くなってろってんだ!
「あっ、でも私たちはもう少しで食べ終わっちゃいますし……」
「あぁ、嬢ちゃんたちも残りたかったら残ってもいいぜ」
「………いいんですか?」
「サドさんと一緒に帰りたいんだろ?結構時間かかっちまうけど、それでもってんなら全然いいぜ!」
「なっ!?わ、私は別に……!」
「えへへ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいます!でも流石に悪いので、ラーメンもう一杯ください!」
「私はサドさんが食べたものと同じで!☆」
「あいよ!!」
ほう、ユメの食いっぷりも凄まじいなァ。ホシノもユメぐらい食えば身長も大きくなれると思うぜェ?
「ほら、行った行った!あ、まずは自己紹介から始めろよ!名乗りは大事だからなァ!」
「わ、分かってるわよ!」
「あはは……。それじゃあ、サドさんもお仕事頑張ってくださいね!」
「後でサドさんも混ざってお話しましょうね☆待ってますから!」
「みんないい子そうだなぁ〜……。よ〜〜し!!ここは先輩として威厳を─────」
「余計な事をしてその威厳がなくなりそうなのでやめてください」
「ひぃん……」
まったく、なんて騒がしいガキどもなんだ。他にお客さんがいないからいいものをよォ……
「……いいもんだねぇ、若いってのは。一気に店が活気付いたなぁ」
「ケッ。……まぁ、ガキはガキらしく騒ぐ事が仕事みたいなモンだからなァ。なら、アイツらは自身の役割を全うしているっちゅーことですよ!流石は俺の“道具”たちってわけだな!」
「…………」
「……?何だよ、大将」
「……いやぁ、相変わらずだなって思っただけさ」
それは相変わらずの
そりゃあ俺にとっては褒め言葉以外何でもないぜ!!
「注文決まったら呼べよ!こっちは水とか色々準備しておくからよ!!」
『は〜〜い!!』
ククッ、呑気に間延びした返事しやがって。いつまでその余裕が保てるかな!?
とくと見るがいい。虐待王が贈る渾身の
その後は普通にバイトを終わらせて、従順にも俺のことを待っていたらしいガキどもと一緒に帰り、各々の家に送り届けてやったぜ!
夜中の不審者よりも恐ろしい虐待者が横にいる恐怖は計り知れないぜ!
中学生の頃から過酷すぎる虐待を受けちまったらよォ、もう二度と忘れることなんて出来ないよなァ!?(実例あり)