汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
みなさん!……お別れが……近いですねぇ……
「─────つーわけで、オアシスが復活したわ」
「というわけでじゃありません!!!」
よぉ!開幕早々ガキどもに正座で説教をかまされている最恐最悪の虐待者、サドだぜ!!
ちなみに怒られている理由が全くわからん!!なんでだ!!
「……なんで私たちに黙って行ったんですか。護衛を1人もつけず、単身でノコノコと相手の陣地に向かって行って……」
「あぁ?……まぁ、いいかなって」
「ッ」
黒服さんやビナーくんもいたしなぁ〜。セトくんは予想外だったけど……それ以上は流石に過剰戦力だって。
でもまぁ、コイツらに教えていないから知る由も────
「何でですかッ!!!!」
これでもかと力強く胸元を引き寄せられる。
珍しく上から見上げる形で拝むホシノの蒼と黄金の両眼には、憤怒、悲嘆、安堵、不安、憂慮、愛憎と、ありとあらゆる感情がミキサーでかき混ぜられたような色をしていた。
「相手は大企業、隠蔽工作が十八番の魔窟なんです!そんな場所に丸腰で向かうバカが何処にいるんですか!!この部屋であなたがいなかったことに私がどれだけ焦燥に駆られたか理解出来ますか!?」
「……せめて私に────私たちに一言ぐらいかけてくださいよっ。もっと私たちを頼ってくださいっ……私たちはあなたの“道具”なんじゃないんですか……?」
「私っ─────すっごく怖かったんですよ……?」
俺の目の前にはいつものように毅然とした態度をとるホシノはおらず、歳相応に何かに震えるガキがいるだけだった。
ククッ、しかしそうか。怖かった、かァ?
なるほどなるほど、コイツは可愛いところがあるってモンだなッ!!
お前────今日悪い夢でも見たのかァ!?
何やら『一言声かけろ』や『頼れ』、『怖かった』などと宣っているが、日々虐待に虐げられているコイツらがそんな感情を持つ筈もねェ。
どうせ昨日の夜にお化けの出てくる動画を見て、そのまま悪夢に出てきたとかだろう。
今の言葉を要約するに、『悪夢の恐怖を紛らわせようとわざわざ探してやったのに、勝手にどっか行ってんじゃねェよ』だろうなッ!!
……だが、確かに報連相もなしに向かったのは良くなかったことだけは認めてやる!
「ククッ、次からは紙にでも書いておくぜ」
「………はぁ、そういうことじゃないんですけどね。まぁ、今はもうそれでいいです」
ホシノは満足したのか、まるで潮の満ち引きのように急激に激昂が引いていった。
まったく、コイツは冷静なのか苛烈なのか分からんときがたまにある。
いや、きっとコイツの本質は炎のように燃え滾る苛烈さなんだろうけどな。なんせ厨二病だし。
「仲直りは出来たかな?」
「なっ!?仲直りも何も、最初からコイツとなんか仲良くありませんからッ!!」
「………ホシノちゃんってやっぱりツンデレだよね〜。か〜〜わい!!」
「ツンデレじゃありません!!やめてくださいッ!!」
今の喧騒を最も身近で見ていたユメではあったが、どうやら何処までも目が節穴だったらしい。
ツンデレっつーのは、ツンツンの中にデレが入ってることを言うんだろう?今の何処にデレが入ってたっていうんだこのすっとこどっこい!!
「それよりユメ先輩はコイツに何か言ってやらなくていいんですか。今なら日頃の不満を全て吐き出せますよ」
「オイ、ホシノ!!テメェそんな理由で俺に当たってたのか!?」
「違います!本心です!!それに何処ぞの女たらしさんには不満の1つや2つも溜まりますよ!!」
「なに急に他人の話してんだよッ!!虐待者が女たらしなわけねェだろうが!!」
「こ〜〜ら!!また喧嘩しちゃメッ、だよ?」
ふんっ、今回はユメに免じて許してやる。次はドでかい虐待をかましてやるからなッ!!
「……私の気持ちはホシノちゃんと同じです。だから同じことは言いません。でも、これだけはどうしても伝えたくて─────」
そう言って俺の腰回りに手を巻きつけ、胸に顔を埋めるユメ。その目の端には、わずかに水が溜まっているように見えた。
「─────ありがとうございますっ」
何故か告げられた感謝の言葉。
俺は俺のために、俺の欲を満たすためだけにやっているというのに、何故コイツから感謝の言葉が出てきたのか理解出来なかった。
………だがまぁ?悪い気はしねェってな?
「…………いつまで抱きついてるんですか。私たちにはコイツに抱きついていられるほど時間も余裕もないことはご存知ですよね?」
「ふふっ、ホシノちゃんもサドさんのことを抱きしめたいのかな?羨ましいって可愛いお顔に出てるよ?」
「なっ!?そ、そんなことありません!!!それより早く離れてください!!」
『ごめんね〜』とまるで思っていなそうな謝罪を告げながら離れていくユメを見て、俺はたった今行われた行為の意味を探っていた。
もちろんただのハグだなんて浮かれた思考なんかしない。俺にハグしてくれるのは虐待神だけだろう。
腰に手を回された…………ハッ!!つまり俺の腰ごとへし折ろうとしてたのか!?なんてヤツ……!!ホシノが止めてくれなかったら今頃虐待神の御前であっただろう……くわばらくわばら。
「ククッ、俺なんかに礼を言ってよかったのか?まぁでも、言っちまったモンはしょうがねェしな!!有り難く受け取っておくぜ!」
「うぅ〜……全然伝わってないよ〜……」
「そんなのいつものことじゃないですか。それより
あぁ、すっかり忘れてたぜ。俺たちがかつてない程に追い込まれていたことによォ。
窓からチラリと校門を見下ろす。
そこには─────
「アビドス砂漠にオアシスが復活したことについてお尋ねしたく!!」
「アビドス生徒会の方で何かやられてたんですか!?」
「カイザーコーポレーションが何かを掘り起こしたという噂は本当ですか!!」
「生徒会長〜!!説明してくれ〜!!今一体どういう状況なんだ〜!!」
記者、記者、市民、記者、市民、市民、記者、記者…………
アビドス高等学校前にアリの軍隊のように群がる人間たちを見て俺たちはため息を吐いた。
記者は数十年ぶりという滅多に出てこないスクープのために。
市民は突然の事態による困惑と説明を聞きたいがために集まった、ってところか。
「つーわけで呼ばれているぞ、生徒会長」
「………え?え、え?私ですか?む、無理です!!こんな人前で話したことなんてありませんし!」
「ククッ、オイオイ、ユメ。逆に考えるんだ。今のこのピンチの状況を逆に利用してやれば、お祭りの成功にまた一歩近づける」
「ふぇ……?」
察しの悪いユメに耳元でボソボソと
しかし、やはり憂い顔は晴れない。
「出来る、のでしょうか……?私が、こんな大役を────」
「余裕だろ。あんなデッケ〜砂漠の中で3人でお宝を見つけようと掘り進めるよりはよ」
「ッ」
なんなら目を瞑ってでも出来ちまうよ。だから─────
「─────だから、お前の言葉で話すだけでいい」
そう言ってやれば、ユメは覚悟を決めたような顔つきと化し、パンパンと自分の頬を叩く。
そうして覆った手を外したユメは、一皮も二皮も剥けた
………これならもう大丈夫だろう。
「頑張ってこいよ!」
「はい!行ってきます!!」
◇◆
─────あぁ、やっぱり怖い。
目の前に群れる人たちを見て、ようやく私の立場の
この程度の視線で臆しているような私は、やはり何処まで行っても生徒会長には向いていないのだろう。
─────だけど。
……だけど、
誰がなんと言おうとも、どれだけ不向きだと自嘲しようとも、他の誰でもない……私が。
チラリと後ろを見る。
そこには私なんかよりもよっぽどしっかりしていて優秀な可愛い後輩─────ホシノちゃんが心配そうに見つめている。
そしてもう1人。私に夢を叶えさせてくれると言ってくれた人────サドさんからは特に緊張や不安といったものは感じられず、至って普通に私のことを見ている。
………その視線にものすっごく胸が温かくなった。
まるで『俺の“道具”ならこの程度余裕だろ?』とでも言いたげな視線、そしてその態度。
これだけで、彼からの信頼をこれでもかと背中に受けることができた。
─────彼からの期待に応えたい。
もちろん不安と恐怖もある。
彼が紡いでくれた“奇跡”、そのバトンを落として失望されないか。今までドジばっかり踏んできた私が、ちゃんと次に繋ぐことが出来るのか……
だけど、それ以上に
私の夢を肯定してくれた、彼に─────
「みなさん、初めまして。私はアビドス生徒会、生徒会長の梔子ユメです!」
◇◆
「つ゛か゛れ゛た゛〜〜……」
「よ〜〜しよしよしよし、よく頑張ったなァ!!」
結論から言うと、プチ記者会見は成功と言っていいデキで幕を閉じた。
この会見で知らせるべきことはたった1つ。それは
今の報道機関や世論の流れを見る限り、様々な根も葉もない噂話も噛み合ってか『アビドス』関連で一色に染まっている。
そして追い討ちをかけるようにこの会見……さぞキヴォトスの市民の方々からの注目が集まっていただろう。宣伝にはいい舞台だった。
ここでビシッとユメが決めてくれれば、無事宣伝は大成功!ってワケだったんだが………ククッ、100点中120点上げちゃいま〜〜す!!
「お前スゴかったな!!ビックリしたぞ!!」
「………そうですね、まるで別人のようでした」
今までのナヨナヨでヒレヒレなユメの姿は何処にもなく、俺たちが見たのはあの威風堂々たる後ろ姿────まさしく生徒会長って感じだったぜ!
「……えへへ、またサドさんに支えてもらいましたから」
「はぁ?」
『また』も何もコイツを支えてやった覚えは微塵もないがな。おそらくコイツの幻聴とか幻覚の類だろう。
だが良い!!それで乗り越えられたんなら素晴らしいことじゃないか!!
「───あ、電話が来ましたね。ユメ先輩はお疲れでしょうし、ここは私が取ります」
「ごめんね〜……」
「いえ、ゆっくり休んでいてください」
そう言って携帯を片手に廊下に出て行ったホシノの電話相手は大体予想出来ている。
おそらくネフティスのお偉いさんからだ。きっとノノミが上手いこと説得してくれたのだろう。
その結果、どれだけ支援を出してもらえるかは分からんがな……
「クククッ……!!先ほどの宣伝によりアビドス外にも砂祭りの存在を認知させ、民衆も活気付いた!!あとはネフティスから支援を大量に受けられるなら御の字だが────」
ここで更に着信音が。
ユメは疲れているだろうし、ここは俺が────って
「あ、大丈夫ですよ!私が出ますから!」
幾分か顔色が良くなったユメが電話を片手に取る。
ククッ、別に俺が出てやっても良かったんだがな……
「はい、もしもし、アビドス生徒会です。───はい、はい………えぇ!?あ、すみません。……はい、はい……それはそれは……はい、ありがとうございます……!では失礼します……」
顔色が白から真っ青に悪化して戻ってきたユメ。
まるで玉手箱を開けたヤツみたいな変わり様に度肝を抜かれちまって、なんて言葉をかけてやればいいか分からないんだが……
「────戻りました。ネフティス、支援をして下さるようですよ────ってなんでそんなに顔色が悪いんですか?」
「俺が聞きたい」
「いや〜……その、こっちも支援の話で〜……それもかなりの……」
なに?ネフティス以外に支援をしてくれるような組織が存在していたのか?
俺のメモにはないぞ!?
「今の情勢に付け込む怪しい組織かもしれません。相手はなんて名乗っていましたか?」
「えっとね──────
─────れ、連邦生徒会だって……」
「──────は?」
………なんか知らんがオモロいことになってきたなァ〜!!
そうして順調に準備を進めていき────いよいよアビドス砂祭り当日となった。
電話相手はもしかして:未来の連邦生徒会長