汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
これ以上ない“青春”ですな〜。
これならサドがいなくても大丈夫そうですね!()
─────“奇跡”を夢見た。
なんてことはない、ありふれた夢。
何も知らない子供が純粋に見るような夢を抱いた。
思えば、この頃が1番人生がキラキラしていたかもしれない。
─────“現実”を知った。
そんな私を奈落へ堕とすように、次々と“現実”が迫って来た。
アビドスの砂漠化問題。
“大人”たちの底なしの悪意。
毎日少しずつ離れていくアビドスの生徒たち。
そして、とうとう生徒会のメンバーも全員が去って行った。
─────“現実”を見た。
生徒会の仕事なんてこれっぽっちもやったことがなかった私は、最初は本当にてんてこ舞いだったっけ……
生徒会長になったのはいいけど、まさか生徒会のみなさんが全員何も告げずに出て行くなんて思ってもみなかったからなぁ……
だから私なりに勉強して、アビドスを守るためにいろんなことを頑張ったけど……やっぱりダメで。
夢のために────その一心で尽力してきたけど………それでも寂しくないわけじゃなかった。
……もし、アビドスに残らなかったら────なんて妄想をしなかったと言えば嘘になる。
“青春”なんてものは遠に諦めていたかな。
でも、私はこの行いに一切の後悔を抱いたことなんて一度もなかった。
だって─────
『お前、なんでこんなところで倒れてやがる────あぁ?転んだだぁ?……つったく、しょうがねぇな!膝貸せよ、ガキ!!』
─────私は
◇◆
「ホシノ先輩!射的上手ね!!」
「うへへ……まぁ、撃つのは得意だからね」
「じゃあ次はアレを撃ってください!」
「いいよ」
ククッ、現在ガキどもは射的に夢中だぜ!
時間も昼頃とちょうど良く、3時のおやつ前の丁度いい運動になるだろうぜ!
「ホシノちゃんは本当にすごいな〜」
「……お前は1個ぐらい当てろよ」
「ひぃん……」
さて、紹介しよう!コイツは後輩にカッコつけたいがために勇猛果敢に射的に挑んだが、全弾外れるという大恥をかいたバカこと梔子ユメだぜ!
よくキヴォトスで生きていられるな!!
「わ、私にはこの盾がありますから!」
「盾あっても相手は倒せないだろ」
「せ、先輩としてみんなの盾になりますよ!」
「その盾が真っ先にやられそうだけどなァ」
「ひぃん……!」
まったく、なんて頼り甲斐のない先輩なんだ。
……しゃーない、明日から銃の特訓を────って明日からはもういないんだった!!
「ククッ、いくらお前らといえど怪我はするんだからよ、もっと気をつけた方がいいぜェ?……あぁ、そういや俺とお前が出会ったときもテメェが怪我をしていたときだったな?」
ここで俺との出会い&過去の痴態を思い出させる虐待が炸裂するッ!
フハハハッ!!この俺に油断というものは存在しないのだよ!
「─────覚えて、くれていたんですね……」
「当たり前だろうが!!なんせ、この地で初めて虐待をしたのがお前だったからなァ!!」
そう言うと、ユメは必死に泣くのを堪えていそうな顔に早替わりしていった。
そこまで思い出したくない思い出だったか!それは失敬だったな!
「えへへ、懐かしいですね。あの日は署名活動中に転んで膝を怪我しちゃったときでした」
「馬と羊のキメラみたいな鳴き声が聞こえてきたから向かったらお前が蹲ってたんだよなァ」
「ひぃん……ひ、ひどい……」
そうこれ!!このキメラの鳴き声だ!
この鳴き声が妙に耳に残ってな、耳障りだったからコイツに虐待してやったわけだ!
「あっ、そうだ!改めて、あの日は治療して下さりありがとうございました!」
「治療じゃねェ、虐待だ!!」
俺がやったことといえば水を傷口に降り注ぎ、水で十分に痛めつけた後に覆い被さるように絆創膏を貼り付けただけだ。
ククッ、あの日は膝が滲みて滲みてしょうがなかっただろうな!!
「ふふっ、でもあの日があったから今の私があるんだと思います。そう思うと、なんだかロマンチックじゃありませんか?」
「俺ならもっとクールな出会いがしたかったけどな」
「ひぃん……」
「だが……
クールな出会い方もいいが、たまには血塗れ砂まみれな出会い方も悪くない。
「サドさん」
「あ?」
「────私と出会ってくれてありがとうございます!」
おうおう随分な皮肉でビックリしちゃうぜ!
だが有り難く受け取っておくぜ!サンキューな!!
◇◆
夜。
いつもならこんな砂漠地帯の夜は星空の光しかない闇夜が広がっている筈が、今夜は地上からこれでもかと人工的な光が照り輝いていた。
普通なら人工的な光よりも自然の光の方が美しく感じる筈なのに、この揺蕩う幽けき光がどうしようもなく美しかった。
光だけではない。人の話し声、笑い声、足音がバックサウンドのように聞こえる。
闇夜に包まれた砂漠では聞ける筈にないものが………聞こえる。
……そんな事実が
その全てを教えてくれたのは───────
「ねーねー!まだ?まだなの?」
「ククッ、あともう少しだから大人しくしてろッ!!そんなんだからガキって言われんだよ!!」
「ガキじゃないわよ!!というか、そんなこと言ってくる人なんて……サド、しか………いないもんっ」
「……何でだんだん声が小さくなってたんだ?」
「はは……きっと照れちゃったんだと思いますよ」
「特別な人から特別な何かで呼ばれることって、と〜〜〜っても嬉しいことなんですよ☆」
「アヤネちゃん!?ノノミ先輩!?」
「特別………なるほどなァ、つまりお前らは自身を虐げてくるという特別厄介な虐待者からそう呼ばれて、苛立ちが一周して逆に嬉しくなってしまったと!!そういうことだなァ!!」
『………………はぁ』
…………まぁ、はい。それを気づかせてくれたのはあの女誑しのバカ野郎ですが。
“神は人に二物を与えず”とは聞いたことがありますが、彼がまさしくその典型例ですね。
でも、それが彼の良さでもあると理解している自身の頭が恨めかしい。
「あれ?どうしてこんなところにいるの?ホシノちゃん。もう少しで始まっちゃうよ?」
いつになくフワフワとしたユメ先輩が私の隣にやって来る。
……その言葉、そのままそっくりお返ししますよ。
「先輩も何をしているんですか?こんなところにいても、湖前で並ぶ人の背中しか見れませんよ?」
「…………うん、それを見に来たの」
その横顔は、やはり何処までも慈愛が溢れるような顔だった。
「最後に、みんなの笑顔が見たかったの」
「…………奇遇ですね」
「へ?」
「私も見に来たんですよ。この光景を」
─────私が信じようともしなかった、“奇跡”の実在を。
「……そっか」
「オ〜〜イ!!テメェら何してんだ〜?もうマジで始まるぞ〜」
サドが手を振って私たちを呼ぶ。
……そろそろ行くとしよう。
◇◆
─────
自身の存在を証明するかのように大きな音を立てて、見る人をこれでもかと釘付けにする魅惑の火薬の花。
─────打ち上げ花火。祭りのフィナーレを飾るのはコレしかないと、隣にいるサドが提案した最後の催しだ。
「クククッ、素晴らしい……!!やはりお祭りには花火が必要不可欠だな!」
セリカちゃんたちよりも目を輝かせていそうなサドは、上を見ながら呟いていた。
……ふふっ、やっぱり何処までも子供っぽいですね。
でも、そんな彼がこれ以上ない程に
誰よりも“大人”であることを強調してくるくせに、誰よりも子供っぽいところ。
誰よりも口が悪いくせに、その行動の節々に優しさが隠せていないところ。
誰よりもバカで。
誰よりもアホで。
誰よりも純粋で。
誰よりも夢見がちで。
誰よりも私たちを考えてくれて。
誰よりも私たちを見てくれて。
誰よりも私たちを信じてくれて。
誰よりも真剣に向き合ってくれた。
………嗚呼、もう認めざるを得ないだろう。
この破裂しそうな程に感じる胸の鼓動の正体は。
内側から燃え尽きてしまうのではないかと思えるほどに燃え滾るこの気持ちは。
気づけば彼のことばかり考えてしまうこの感情は。
人はこれを─────“恋”と呼ぶのだろう。
──────……そっか。私、サドに恋をしているんだ。
「─────サド」
「ん?」
「…………ありがとう」
「……?おう!」
どうしよう、以前のようにサドのことを真っ直ぐ見れない。“恋”と認めてしまったからだろうか、彼を見ているとどうしても恥ずかしさが勝り、胸が切なく締め付けられる。
その事実に、私はどうしようもなく彼が好きなのだと自覚してしまう。
でも、今はこれでいいのかもしれない。
だから今は、ただ感謝を。
──────私に“奇跡”を見せてくれて、本当にありがとう。
最後の花火が打ち上がる。
その花火は今まで見た花火の中で1番綺麗で─────とても儚かった。
たくさん(あと数時間)