汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

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シロコ編は一旦“完”!!


砂狼シロコ③

 

 

 

 

 

 ─────アジト近くの公園。

 

 

 「エッホ、エッホ」

 「ん、ん」

 「エッホ、エッホ」 

 「ん、ん」

 

 彼の荒い呼吸音に合わせるように相槌を打ちながらランニングコースを走る。

 公園を縦断するように出来た池を囲むように配置されたランニングコースがあるこの公園は、その名の通り走るにはもってこいの場所と言える。

 

 

 現在、私たちは日課の朝のランニングをしている最中だ。

 

 日課といっても、つい最近始めたものだけど。

 またしても私がサドと一緒に何かしたいが為に、なんか上手いこと理由を立てて朝のランニングを誘ったら、何を勘違いしたのか分からないけど『お前を監視してやる!!』とか叫んでOKしてくれたのが始まり。

 確かあの時『わざわざ朝という超ダルい時間に走るだと!?もしや虐待の耐性をつけるつもりか!!』なんて言ってたっけ。ん、バカ。

 

 

 「よ〜〜し!!今日はここでストップだぜ!」

 「………ん」

 「あぁん?何だ、その不満そうな顔はよォ。まさかまだ虐待の耐性をつけるつもりなのか?」

 「ん、何でもない」

 

 本当に何でもない。

 ただ、あと20周ぐらいは走るかなって思いながらランニングしていたから、今日はもうサドとは走れないってことが少し残念だっただけ。

 

 …………そう思うと何だかムカムカしてきた。もっと一緒に走りたかったのに。

 一言くらい言っても罰は当たらないだろう。

 

 「でも、サドは体力がない。もっと付けるべき」

 「あぁん!?お前らが異常なだけでこれでも平均以上の体力はあるわ!!」

 「私はまだまだ行ける。でも、サドは?もう走れないんじゃない?」

 「ぐっ……!?そ、それは……」

 「ふっ、“道具”にも負けちゃうなんて…………失笑」

 「テ、テメェ……!!」

 

 私の言葉ひとつで色んな感情を見せてくれるサド。

 ……私はこの瞬間が大好きだ。

 

 「……ふんっ、イキがっていられるのは今この瞬間だけだぜ。家に帰ったらお前は地獄を見るんだからなァ?」

 「また虐待?」

 「exactly(その通り)!!ククッ、まず聞くがシロコよ。運動後は必ずシャワーに入るよなァ?」

 「ん」

 「ククッ!!ここまで聞いておいていまだにこの恐ろしさを理解できていないとは!!いいか、よ〜〜く聞けよ?運動後のシャワーは気持ちいい、そして朝シャワーも無条件に気持ちいい……そうだな?」

 「ん、気持ちいい」

 「つまり────お前は『気持ちいい』+『気持ちいい』=『最高の爽快感』を朝っぱらから味わう羽目になるんだよォ〜!!この快感を覚えちまったら、お前はもうそれ無しでは生きていけない身体へと変貌してしまうだろうぜ!!」

 

 『勝ったなガハハ!!』と大笑いしているサドには私のジト目が見えていないのだろう。

 

 「さらにここからダメ押しィ!!今からお前にスポーツドリンクを飲ませてやるぜ。さぞ糖分を欲しているだろうその小さな身体に、キンキンに冷えたスポーツドリンク………こうなればもう普通の飲み物では満足できない身体になっちゃいますねェ!!ハーッハッハッハ!!」

 「ん、いつものやつね」

 「わーってるよ!!」

 

 ……さて、サドも自販機を探しに行っちゃったし、私はサドが休めそうなベンチでも探すとしよう。

 何処か近くに2人で座れるベンチはないものか………あ、それか1人用でもいい。私がサドの上に座れば問題なし。

 

 そんなことを考えながらベンチを探していると、何とか休憩できそうなベンチを見つけることが出来た。

 ただ、お隣には既に先客がいた。ん、これなら仕方ない。サドには私の椅子になってもらおう。

 

 「隣座っていい?」 

 「へ?あっ、は、はいぃぃ!!?だ、大丈夫ですぅぅぅ……!!」

 

 一応先客に尋ねたら、何故かこれでもかと挙動不審に震わせながら返答が返ってきた。

 ん、結構面白い人だ。

 

 「あなたもランニングしに来たの?」

 「え?あ、ここってランニングコースだったんですね……。も、もしかして走りに来ていないような怠惰な人間はベンチに座っちゃいけないとかそんな感じですか!?そしてあなたは違反者の私からお金を毟り取ろうと、そういうわけですね……!?うわぁぁぁぁぁん!!もうおしまいですぅぅぅぅ!!!!」

 「ん、落ち着いて」

 

 私のジャージ姿を見て全てを察したかのように自分の世界に入り始めた隣人。

 だけど察しすぎてあらぬ方向に思考が行ってしまって、結局変なところに着地したらしい。

 ……何だかサドみたい。

 

 「安心して、私が銃口を突き付けてお金を要求するのは銀行ぐらいだから」

 「え!?銀行!?何で銀行!?!?」 

 「あ、今は銀行の窓口からの正面突破でしか襲撃方法が思いつかないけど、いずれは完璧な襲撃計画を立てれるようにするから」

 「こわ!?この人怖いですよぉぉぉ……!!」

 

 ん、だってサドが言ってた。

 『俺の“道具”っつーならよォ、せめて銀行の1つや2つ襲撃出来るヤツじゃねェとな!!』って。

 

 私はサドの“道具”と認めたわけじゃないけど、銀行を襲えるようになったらサドは喜ぶらしい。

 サドが喜んでくれるのは……ちょっぴり嬉しい。だから、いつか銀行を襲撃したいと思っている。

 

 「それより私はあなたのことが聞きたい。あんまり見ない顔だし、私たちみたいに走りに来ているわけじゃなさそうだし……何で朝からここにいたの?」

 

 サドはまだやって来ないし、暇つぶし&時間稼ぎも兼ねて隣人に話題を投げた。

 ……だけど、何故かすごく怯えている。

 

 「う、うぅ……テロリスト予備軍が隣に……!!───ってあれ?私たち、ってことはお連れの方もいらっしゃるのですか?」

 「ん、今は飲み物を買いに行ってる」

 

 ………言われて思い出したけど、サドが遅い。一体何処まで遠くの自販機に向かったのか。

 ん、これは罰として1時間椅子の刑に処さねば。

 

 「──────あなたは……その……その人のことが、大好き、なんですね……」

 「……私が?なんで?」

 「えっと、なんでかは存じ上げていませんけど……あなたがその人の話をされている時、すごく、その……目が、キラキラって、輝いていたので……す、すごくその人のことが、好きなんだなって。えへへ……」

 

 ……気づかなかった。どうやら私はサドのことを話すと目がキラキラするらしい。

 

 どうしてサドのことを話すと目がキラキラするのだろう。

 どうしてサドのことを考えると胸がぽかぽかするのだろう。

 どうしてサドが近くにいないと寂しさを感じるのだろう。

 

 どれも、結局、分からない。

 

 「─────羨ましい、です。本当に、これ以上なく……。すぐそばに大切な人がいてくれることへの嬉しさは、誰よりも分かっているつもりですから……」

 

 隣人は俯いていた顔を上げ雲ひとつない青空を見上げる。

 でも、その瞳は快晴ではなく何処か遠く尊いナニカを見つめているようで、不思議とその濁り切った目を見ていると何だか他人事のように思えなくて。

 

 「あっ、何でここにいるのか、ですよね……?じ、実は私、()()()()を探している最中、なんです。い、今はその帰りで……えへへ……」

 「探している?」

 

 何となく頭に引っかかった言葉を復唱し、しかしすぐさま今までの会話の流れからおおよそ察することが出来た。

 つまり、この隣人にとって大切な人を探し回っているのだろう。

 

 ならその人は見つかったのか────なんて野暮なことは聞けない。

 この場には彼女と私以外いない……それが答えだ。

 

 「……夜逃げ?」

 「えっ?ま、まぁそんな感じですね……。ひ、酷いんですよ?私たちに何にも言わずに出て行ったんですっ。もっと前もって言ってくれれば──────絶対に行かせなかったのに

 

 彼女の瞳はこれでもかと濁りきり、ありったけの愛と怒りを煮込んだような色を放つ。

 それはまるで深い深い底なしの闇。世界から太陽を失ったらこう見えるだろうと思えるほどの“黒”が彼女の心を支配しているように見えた。

 

 人はそれを見て行き過ぎた愛情だと思うかもしれない。

 でも、私はそう思えなかった。

 

 彼女にとって大切な存在が、私にとってのサドだとして、もしサドが何も言わずに私から離れていったと知ったときは─────あぁ、その時は、きっとサドのことを許せないだろう。

 

 「………ん、応援する。早く見つかるといいね」

 「ッ!!は、はい!頑張ります!!」

 

 だから、こうやって声援を送るのもやぶさかではない。

 彼女を求める“その人”を知り得ず、何も出来ない私は、ただこの人の健闘を祈ることしか出来ないのだから。

 

 それに、何だか妙な()()()()()を彼女から感じられる。

 何がとは言えないけど、すごく近しい何かを。

 

 ……そうだ。

 

 「これも何かの縁。縁は大事にしろって言われてる。だから、あなたの名前を教えて欲しい」

 「え、えへへ……えっと、わ、私なんかの名前で良ければ……。わ、私は槌永ヒヨリといいます……あなたは?」

 「私は砂狼シロコ。よろしく」

 

 お互い奇妙な縁を感じていたのか、躊躇わず名前の交換と握手を交わす。

 『友達になるときはまず名乗りと握手』────サドに教えてもらったことだ。

 

 「そ、それじゃあそろそろ行きますね。早く帰らないと、リ、リーダーに怒られちゃいますから……」

 

 よっこいしょと小さな掛け声と共にパンパンで大きな荷物を背負い込むヒヨリ。

 そして一歩を踏み締めようとしたところで、再びこちらに振り返る。

 

 「シロコ、さん………どうか、どうかその人と過ごす時間を大切になさって下さい。その時間はきっと、シロコさんにとってかけがえのない時間なんですから……」

 

 悲痛とも受け取れる心の底からの言葉。

 ヒヨリの実体験、その一部を聞いたから理解できるヒヨリの優しさを嬉しく思いつつも、私がかけるべき言葉を形にするべく口を開く。

 

 「ん、そっちこそ、もう獲物を逃したらダメ。獲物は逃げるものだから」

 「えへへ……だ、大丈夫です!ここ半年で()()()()()()()を買いましたから!」

 「ん、ならいい」

 

 大きく手を振りながら去って行くヒヨリが見えなくなるまで私も手を振り続けた。

 

 ……きっと、今日ここでヒヨリと結んだ縁はこの場だけで終わるものではないのだろう。

 いつかまた彼女とは会える……そんな奇妙な感覚がする。

 

 

 「オイ!こんなところにいやがったのか、シロコ!!」

 

 ヒヨリが去って行った方向とは真反対から()()()()()()が両手にペッドボトルを持ってやって来た。

 ほんの数分離れただけだろうに、サドを見た瞬間寂しさと喜びが同時に満たされる。

 

 「ん、遅い」

 「あぁん!?テメェが勝手にどんどん奥へ進むからだろうが!!思わずソワソワしちまったよ!!」

 「……心配してくれたの?」

 「ククッ、とある地方ではそうとも言うなァ!!」

 

 ……………嬉しい。

 

 「サド、おんぶして」

 「あぁ?なんで────」

 「いいから」

 「グハッ!?!?」

 

 サドの大きな背中に飛び乗る。

 

 サドの匂い、感触、温かさ。

 今まで当たり前のようにあったもの、これからもずっと当たり前にあるものだと思ったそれが、今なら()()()()()()()()であると感じられる。

 

 ……それがどうしようもなく怖かった。

 

 「……サド、私のそばからいなくならないでね?勝手にいなくなったら、()()()()()()()()()

 「はぁ……?何が言いてェのかさっぱり分からんが、俺がお前をタダで解放してやると思っているのか!?だから安心しろォ!!お前を勝手に手放してやったりしねェよ!」

 

 そう言って頭越しに撫でられる手の温かさを感じながら、私たちはゆっくりと帰路を歩き始めた。

 

 その日のスポーツドリンクは一段と美味しかった。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「シロコォ!!準備はいいかァ!?」

 「ん」

 

 早朝、私たちは旅支度を終えて、たった今アジトを出ようとしている。

 

 なんでも彼はゲマトリアっていう組織に所属していて、その任務をしている最中なのだそうだ。

 ……難しい話はよく分からないけど、とにかく『そろそろ飽きたから行くぞ!』と言っていたのでそこまで厳しいノルマを課されているわけではないらしい。

 

 ただひとつ問題を上げるとするならば、その目的地を選んだ理由がやけに胡散臭いことだけだろうか。

 どうやら()()()が来ただとかなんとかって言ってたけど、どうせいつものアレだろうからあまり気にしない方がいいのかな。……ん、なんだかそんな気がしてきた。

 

 あとは私の記憶を戻すための手伝いをしてくれるだとか。

 『記憶がないと何かと不便だからな!』と言っていたが、アレはサドの実体験なのだろう。

 ……本音を言えば私にとって組織だとか任務だとか、自分自身の記憶さえどうでもいい。

 ただ、サドと一緒に何処かへ行けるのは楽しみということだけ。それだけが重要だった。

 

 「どうやって行くの?」

 「ククッ、いい質問だァ。いつもなら電車で楽々と向かうんだが、いつもなんだか味気ないと思っていたんだぜ!だから今回はサイクリングで行ってみようと思うぜェ!!わざわざサイクリングで行く虐待と、ゆっくりこの世界を見て回って記憶を掘り起こさせる虐待……つまり二重の虐待に苦しむんだな!!」

 

 むしろキツくなって虐待を受けるのはサドなんじゃ……?とは思うけど、私は決して口に出さない。

 だって、せっかくサドから誘ってくれたサイクリングなんだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 自転車を押しながらアジトを出れば─────広がる青空と輝く太陽が爛々と咲いていた。

 自意識過剰かもしれないけど、その光が私の新たな旅路を祝福してくれているように思えて、少しだけ嬉しかった。

 

 

 「よし、行くぞ!!」

 「ん」

 

 

 ……私はこの世界が分からない。それどころか、自分という存在さえも分からない。

 

 

 もしかしたら、()()()()を知って深く絶望する日が来るのかもしれない。

 

 

 

 ─────だけど、それでも大丈夫だろう。

 

 

 

 だって、彼が隣にいるだけで世界がこんなにも輝かしく見えるのだから。

 




彼女への虐待は今回で終わると思ったか?残念、まだまだ続いていくんです!

シロコさんには少しだけサドの旅パに加わってもらいます。
ですが安心してください!いつか必ず解放される予定ですから!

しかし、この長く続く虐待の行く末に、一体彼女はどうなってしまうのか……
その答えは数年後の彼女にでも聞けばよろしいのではないのでしょうか!きっと涙を流しながら彼と過ごした日々を語ってくれますよ!(にっこり)
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