汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
虐待者とはメンタルが強靭な者のことなり───
よぉ〜!今日も百夜堂はオープン中、どうもオーナーのサドだぜ!
早速だが俺は今、ある意味百鬼夜行きっての問題児に振り回されている。
「もぐもぐ……この丸いの、美味しいね〜。サドもそう思う〜?」
「オウ、団子の感想を尋ねられても俺食ってないから答えられないんだわ」
「そうなの?変なの〜」
「変でも何でもないんだよなァ」
いつもの縁台で、恐れ知らずも俺の膝の上で団子を呑気に食ってるコイツの名は和楽チセ。
【和楽姫】、【チセ様】なんて大層な異名や敬称を付けられるほどにこの百鬼夜行では人気を誇るガキであるが、俺的にはただのド天然へっぽこガキにしか見えん。
「良いではありませんか、サドさん。チセ様からお膝の上に乗っていただけているのですよ?むしろ私が代わりたいぐらいです」
「いいぜ、全然代わってやるよ」
「………しかし、誠に残念ながらそれは出来ないのですッ。何故なら、私の力では今以上の幸せオーラ溢れるチセ様を演出させることが出来ないからです……!!サドさんでなければこの表情、この雰囲気は引き出せないのです……ッ!!」
「うん。サドの近くにいると、何だかお日様みたいに暖かくて、いい香りがして、すっごく幸せな気持ちになれるよ〜?」
「ですよね!?」
「ですよねじゃねェよ【バカ服2号】がァ!!」
まるで正論を突き付けたかのように誇らしげな顔をする【百鬼夜行のバカ服2号】───もとい【アホ服2号】こと桑上カホの言葉に思わず過剰に反応してしまう。
おっと、チセが不満気な顔で見て来やがるぜ。どうやら大声がうるさかったらしい。というか今のって俺が悪いのか?どう考えてもこの【バカ服2号】が悪いだろうが。
「───ったくよ……チセと百鬼夜行関連の話じゃなければ普通のガキなんだが……」
「な、何ですか、その言い草は……!?まるで私からチセ様と百鬼夜行連合学院を取り上げたら何も残らない平凡でつまらない女だと思っているのですか……!?実際その通りかもしれませんが……!」
「何もそこまで言ってねェだろうが……」
こういうヤツのことなんて言うんだっけ。
……あぁ、アレだわ。残念美人ってやつ。
「お前って色々勿体無いヤツよな。おそらく黙ってれば頼りになる美人枠だろうにな、黙っていればの話だが」
「────び、美人ッ!?!?」
……?何をそんなに驚くことがあるんだ?ただ事実を述べただけじゃねェか。
「サ、サドさん……!お世辞なんか言わなくていいですから……!」
「お世辞!?俺がお世辞を言うわけがないだろうが!美人は美人!そこに何ら違いはないわ!」
そう言い放ってやれば耳まで真っ赤にして赤面するカホ。顔を手で覆って必死に隠そうとするその姿は、まるで何かに悶えているような────はっ!?
クククッ……!分かったぜ、お前がそこまで美人という言葉に反応するのかを!
お前───もしやその顔面で過去に苦労してきたクチだなァ!?
おそらくこの外面からも分かる“仕事が出来るキャリアウーマン風な顔”のせいで様々なことを頼まれた経験があるのだろう。そして、白い両手で必死に覆い隠そうとするその仕草……それは過去を思い出したせいだろう!違うか!?
ハーッハッハッハ!!ならそこを責め立てぬ俺ではないわ!
「ククッ、美人っつーのは顔だけじゃなく心もそうだぜェ!!お前がこの百鬼夜行を想う気持ち───その愛はこのキヴォトスでも随一だろう!」
「───は、はぅぅ……」
「ハーッハッハッハ!!さぞお前の心は百鬼夜行な色をして────イタッ!?」
後ろから後頭部を強烈に叩かれた。
頭を撫でながら下手人を見ると、お盆を振り翳した後のシロコがジト目で俺を見ていた。
「な、何だァ、テメェ……」
「ん、浮気の気配がしたから制裁を加えてあげただけ。それに、その人ももう限界っぽかったから」
「きゅう……」
「寝ちゃった〜」
カホは顔をこれでもかと真っ赤にして、まるでこれ以上聞きたくないと言わんばかりに気絶していた。どうやら俺の虐待によって恥辱を味わい、そのまま耐えかねず意識を手放したらしい。
クーックックック……!バカなヤツめ、お前が意識を手放したら一体誰がチセを守るってんだ。なぁ!?チセッ!!!
「くぅくぅ……」
「なにィ!?」
コ、コイツ……俺の膝の上で寝ている、だと……!?
な、何故寝ているんだ!?何故寝れるんだ!?恐怖の虐待王である俺の膝の上で!?分からねェ……分からなさすぎて混乱して来た……
ク、ククッ……流石は陰で【百鬼夜行のトリックスター】と呼ばれているだけある。まぁ、全部俺が言っているだけだがな!!
「ん、ズルい。後で私にもやってね」
「わざわざ地獄に足を突っ込むとはアホなヤツだ」
「じゃあ私、仕事に戻るから。サドも早く戻って来てね」
「あいよ〜」
まぁ、コイツらも寝ちまったからな〜。
俺の“道具”であるならば、コイツらの管理も俺が徹底すべき義務である。であるから、ここで眠ってしまっては風邪を引いてしまいそうだし、ここは俺の自室のベッドにでも運んで────
「おやおや〜、チセにカホ……まさに両手に華といった感じでしょうか〜?」
雪を踏み締める音が徐々に近づいてくることを確かめながら、その音が鳴る方向へ顔を向ける。
そこには────
「にゃはは〜、これはこれはサドさん。ご機嫌麗しゅうございます〜」
「出たな、【バカ服1号】め」
「そのあだ名どうにかなりませんかね〜……」
そう言って困ったようでちっとも困ってなさそうな笑みを作り出す、全くもって腹の内が分からんガキ───天地ニヤがやって来た。
名前の通りいつもニヤニヤしている、ある意味笑顔が素敵なガキだ。
ゲヘナにいるとあるガキみたいなバカみてェな服しやがって……絶対寒いだろうが。
つーか何でだ?何でキヴォトスのガキどもは服装になるとIQが著しく下がるヤツらばっかなんだ?
「ククッ、生憎だが、今はこのバカガキ2人で手一杯なんだ。お前も虐待してやりたいのは山々なんだが、今日は運が良かったな!この2人に感謝しろよッ!!」
「あら、それは残念ですね〜……とまぁ、雑談はここまでにしておいて本題に入りましょ。私、今回サドさんととある事案でお話がしたくて赴いたんです」
「あぁ?話だァ?その前にまずコイツらを───」
「にゃはは、そこまでお時間はお取りしませんよ。ほ〜〜んの少しお尋ねしたいことがあるだけですので」
ふむ、ほんの少しか。
ならいいだろう。それに、自ら俺と話したいなどと気の狂った勇気を振り絞ったコイツの本願に応えてやらねばなるまいて!
っと、その前に……
「ほれ、上着だ。お前らみてェなバカな服装をするヤツらのために上着を何着か常備している俺に感謝するんだなッ!!」
「……あらあら、それは嬉しゅうございますね。チセやカホにまで羽織らせていただいて……ほんまにありがとうございますね〜」
「ククッ、俺の目が黒いうちは風邪なんて引かせてやらねェからな!」
俺の上着を羽織りカホとは反対側に腰掛ける。
おっと、ちゃんとタオルを敷いてやったぜェ?傘があるとはいえ、必ずしも濡れないわけではないからなァ。
それを見たニヤはただただ笑うだけ。ククッ、ただ笑うことしかできないとはこのことか……!
「それで?一体何を聞きたいってんだ」
「いやはや、実は最近、あの雪山で物騒なことが起こってはりましてね」
「ワ───じゃなくて【山の化け狐】の話だろ?知ってるぜ」
「えぇえぇ、まさにそのお話でして」
パチン──と気持ちの良い音の響きと共に開いていた扇子を閉ざす。
いつもは一本の線のように閉ざされた瞼が、ほんの僅かに見開いている。
「サドさん、最近その雪山の方に行ってらっしゃるようで……。一体何をしてはりますの?」
嘘は許さない───その意気込みを感じられるほど力強い半目で見られながらも、大して隠すことでもないので素直にぶっちゃけることにした。
「あぁ、2週間前ぐらいからその【狐】に会いに行ってんだ」
「………何のために?危険なことは承知の筈では?」
「ククッ、そりゃあお前……俺がわざわざ足を運ぶ理由なんてたったひとつしかないだろうが」
そう!俺の目的はたったひとつ!
「俺はあのガキを“道具”にし、思う存分虐待するためだよッ!!」
「───ハァ〜、やはりそうですよね〜……」
クククッ……!全く反省の色を見せない俺にため息も吐きたくなろうて!
だがな、お前もそのうちの1人であることを忘れるなよ!
「つまり何だァ?お前はこの俺を止めに来たと……?」
「あぁいえ……そういうわけではないのですよ。ただ、何をしてはったのかご本人のお口から直接お聞きしたかっただけなんですわ。それに、何となく百花繚乱の意図も読めてきましたし……」
「百花繚乱?なんか関係あんのか?」
単純について出た疑問をニヤは難しそうな顔をしながらも、『まぁ、答えてもいいでしょう』と一言呟いてから口を開き始める。
「これもお耳に挟んでいるかもしれませんが、実はその雪山の調査を百花繚乱紛争調停委員会に依頼したのです。たとえその狐の正体がただの生徒であったとしても、また摩訶不思議な妖魔だったとしても、その原因を明らかにせねばなりませんから」
そう区切り、ここからが本番だと言わんばかりに眉間を解す。
「ですが、
「……俺に行き着いたと?」
「えぇえぇ、その通りです。しかし、先ほどの会話で、この一件はサドさんに全てお任せしても問題ないと判断しました故、後ほど依頼は取り下げていただきますとも」
ククッ、コイツはアレだ。要はワカモに対して早々に見切りをつけてトンズラこくというわけだな?
幾ら暴れ狂っているワカモとはいえ、コイツらにとっては百鬼夜行の一生徒……俺という虐待者が関わっていることを小耳に挟み、流石に助けてやらんとという気持ちになってしまったのかもしれんなァ。
まぁ、もう諦めてしまったみたいだがな!2週間も虐待を受けた者はもう救えないと判断されてしまったのだろう!
可哀想なワカモ……!ひとえにテメェが暴れ回っていたせいだが……
「ククッ、俺に任せておけよ。たっぷりじっくり虐待してやるからよォ?」
「にゃははっ、それはもう期待して待っておりますわ。では、私はもう行きます。依頼の件もありますしね」
『2人をよろしゅうお願いします』と言って立ちあがろうとするニヤ───を上から押さえつけるように頭を撫で回す!!
ククッ、この俺が何もせずに帰すと本気で思っていたのか?無論、お前も虐待だァァァ!!!
「にゃっ!?サ、サドさん!?」
「……お前はよく頑張ってるなァ。いつも色々世話になってる。ほどほどに頑張れよ!人生は常に気を張ってたら疲れちまうからな!」
「分かりましたから!どうか堪忍したって下さ───」
「オラ、なでなで!!」
バカめ、離してと言われて離す俺ではないわ!
見ろ!涙目になって俺を見上げてくるではないか!くぅ〜、その顔を見たかった!その顔を見るために虐待をやっていると言っても過言ではない!!
その後、ニヤを散々撫で回した後に解放し、いまだに寝ているチセとカホを自室のベッドで休ませた後、俺は今もお盆を持って右往左往しているシロコを捕まえて雪山へ向かった。
ククッ、今回はお前の助力が必要不可欠なんだぜ、シロコ!!
◇◆
今日も今日とてワカモに会いにちょっと小高い雪山を歩く。
先日、ようやくヤツの心を折った俺であるが、ここで手を緩めてやるほど生温い男ではないことは承知であろう。とことん痛めつけ、そして2度と逆らわないようにしてやるよ!
さて、そのためには初動が大事だ。初動で生温い虐待でもしたら『あら?案外優しいですわね』なんて内心舐められるかもしれん。
嗚呼、考えただけで腹が立ってしょうがない!虐待者は常に恐怖の象徴でなければならない!ということで、今回はゲストに協力してもらうことになった。
「敵はまだ?」
「敵じゃねェ、ワカモだ。あとはよ降りろや、そもそもなんで俺より体力ある癖に背負われてんだよ」
「………
などとわけわからんことを吐かすチビガキことシロコ。コイツが今回協力してもらうこととなったゲストだ。
俺の背中から絶対離れないと言わんばかりに胸先まで手と足をロックしている。だんだんコイツが協力者なのが不安になってきているところだ。
「最近2人きりの時間が少なくなったから………ダメ?」
「いや、お前寝るときいつも俺の布団に潜り込んで────」
「ダメ?」
「……………ダメじゃねェけど………ハァ、分かった分かった。着くまで背負われていてもいいが、着いたらちゃんと頼むぜェ?」
「ん、もちろん」
全く、本当によろしく頼むぜェ?今回の虐待はお前にかかってんだからよォ。
それにしても、まるで2人きりを望むような口ぶりじゃねェか。何だ?2人きりだと何か───ハッ!もしや暗殺!?
「ん?あそこに人がいる」
冬の寒さではなく恐怖で肝が冷えている中、シロコが遠くを指差しながら報告してくる。
あぁ、もう着いたのか。コイツと話しながら向かっていたお陰か、体感数分程度に感じたぜ。
「あぁ、アイツだな」
「アレが…………敵」
「敵じゃねェって」
そんな幾度目か分からないやり取りを返しながら、真っ直ぐに倒れ臥した木に座る可憐な狐面のガキに近づいていく。
俺の接近に気づいたのか、パッと顔を上げて俺を見るワカモの雰囲気は少し柔らかいものになった。
「サドさん、今日もいらした────あら?後ろの方は?」
「クククッ、お前へのプレゼントだ」
「プレゼント……?」
疑問符を塗りたくったような声色で首を傾げるワカモ。そんなワカモを見て俺が抱くのは憐れみだった。
あぁ、俺とさえ出会わなければお前はただ趣味を楽しむ日常を送れていたというのに……なんて可哀想なヤツだ、と。
しかし、スタ◯ド使いはスタ◯ド使いと引かれ合うように、“悪”と“悪”もまた引かれ合う。お前が悪さばかりしているから、お前の悪名が俺の耳に入ってしまい、こうして関わりを持ってしまったのだからな。
つまり俺と出会ってしまったことは謂わば天災───神から与えられた天罰だと思え。
「ククッ、よく理解しとけ!お前にプレゼントをしてやる物は、テメェにとって耐え難い屈辱であるということを!!」
さぁ、サドのキヴォトス虐待珍道中ver.3が幕を開く!!
「お前にはな───この砂狼シロコちゃんと友達になってもらうぜェェェェ!!!!」
その名も【友達作戦】!!
聞けばコイツ、友達などいないだとか吐かしてきやがる。世紀の大悪党である俺ですらいるというのに、ただちょっと爆破がお好きな華の女子高生に友達がいないというのは考え難い。
だから、もしワカモの言うことを信じるならば、俺はこう仮説を立てた………
───コイツ、友達が云々の前に単純に人間という存在が苦手なだけだってことをよォ!!!
ならばこんな雪山にいる理由も納得が出来る。雪山にさえ篭っちまえば人とも会わんし、何よりこんなヤツと友達になろうとするバカは出てこないわけだ。
そして、雪山に入るほどなのだから余程人が苦手と見た。仙人もそんな理由で山に篭らされたらさぞ驚き桃の木山椒の木だろう。
つまり、カヨコの虐待と少し似ているっつーことよ!ただ、カヨコのときはアイツをアルたちの下に引き合わせてやったが、今回はこっちから連れてきてやった形だ。突如の来訪の方が怖いだろうから、おそらく効果的に今回の方が上だろうな!
「ククッ、驚きすぎて声も出ないってか?」
ワカモは俺の言葉を聞いたきり、うんともすんとも言わなくなってしまった。だが、それもそうだろう。なんせコイツは華の女子高生時代を犠牲にしてまで山に引き篭った極度の人見知りなのだから、俺以外の人間が来てしまったなら石のようになろうて。
「仕上げだ。シロコ、行ってこい!」
「ん」
半ば勝利の確信を抱きながら、最後のトドメとしてシロコに命令を出す。
シロコに託した命令は、とどのつまり友達になるための“挨拶”だ。友達になるために名乗りを上げてから手を差し出す───つまり全ては“挨拶”から始まる。世界の常識だ。
ククッ、さぁ、思う存分哭いてくれよ、ワカモ。
人見知りのお前がその手をどんな顔で受け取るのかを是非見たい!!
「私は砂狼シロコ。あなたは?」
「………狐坂ワカモです」
「………そう。やっぱりあなたが……。ねぇ、ワカモ────」
よし、言え!言うのだシロコ!!
『私とお友達になって』と言うのだ────
「───私、あなたのことが嫌い」
「あぁ、それはよかったです。なんせ私も何となくあなたのことが気に入らないと思っていましたので」
……ん?
…………んん???
…………………??????????
「ちょ〜〜っと待てシロコ!!!おまっ、お前、俺がなんて言ったか覚えてるか!?」
「ん、ちゃんと覚えてる。“挨拶”、でしょ?だからこうやって“挨拶”しに来た」
そう言って銃を構えるシロコ、それを冷酷な眼差しで見つめるワカモ。
「───“宣戦布告”、その挨拶にね」
ちがァァァァァァう!!!!
何もかも!寸分たりとも!!どう解釈しても全てがちがァァァァァァう!!!!
何で戦乱の世verの挨拶かましに来てんのコイツ!?法螺貝ブーブー鳴らしてんじゃねェぞシロコ!?
マズイ……!このままではワカモに対する虐待が中途半端なまま終わってしまう!
おそらくこんな意味不明な宣戦布告なんか受け取る筈ないだろうから、その後のアフターフォローを考えなければ───
「いいですわね。その宣戦布告、受けて立ちましょう」
あっれぇ?受けちゃったよ、この子あっさり受けちゃったよ。
もしかして戦闘になると人格変わるとかそういうパターンか?山に引き篭ってるような人格は表の人格で、戦闘になるときは裏の過激な人格が出てくるとかそういうヤツだったの?
絶対裏の人格の趣味だろ、破壊と略奪は。
「……サド、離れてて。これからサドの仇、取ってあげるから」
「はて?サドさんの仇、ですか?そのようなことをした覚えはありませんが……」
「惚けないで。あなたでしょ?サドを気絶させ、剰え怪我を負わせた張本人は。最近は怪我をせずに帰ってくるようになったけど、私はずっと許してないから」
「あら、それは大変申し訳なかったと今でも思っております。ですが、その旨と謝罪も予めサドさんにお話して既にお許しを得ていますし、あなたの気持ちなど今更どうでもいいのですが?」
「それはサドが優しいからそう言ってるだけ。私はサドの
あっ、マズイ。空気が死んできた。
「シロコ!ワカモ!テメェらいい加減に───」
『サド(さん)は黙ってて』
「…………」
───えぇい!!もうままよ!!
「お前ら!派手にやりすぎんなよ!山が穴だらけになるとかマジで洒落になんねェから!」
「ん、当然」
「分かりましたわ」
次の瞬間、爆風と舞い上がる銀花によって2人の姿は掻き消された。
毎度の如く思うんだが、キヴォトスのヤツらってなんでこうも血気盛んなヤツらが多いんだ?銃で喧嘩するんじゃなくて拳で喧嘩しろよ。
「ん、負けた」
「だろうな」
大の字で寝そべるシロコを上から見下ろしながら嘆息する。
敗因は至ってシンプル、それは単純な実力差だった。まぁ、身長差だとか銃の性能の良し悪し、足場が雪という特殊フィールドということを鑑みても、やはりそこには絶対的な経験の差というものが如実に出ていたように思える。
「でも、何度か当てたから実質勝ち」
「どこまで肝が太いんだ、お前は……」
「ふふっ、負け犬の遠吠えですわね」
ワカモも俺の隣に立って見下すようにシロコを見遣る。
相変わらず遺伝子レベルで相性は悪いが、そこにはさっきまであった冷たい雰囲気は少し取れているように思えた。
「サドが言ってた。『負けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる』って。だから次は負けない。文句ある?虐待王」
「ククッ、ない!」
そう言えるんならこの唐突なゲリラ戦も少しは意味があったってわけだな。
「ワカモ……結構やるね。ちょっとだけ見直した、ほんのちょっとだけど」
「私も油断していたとはいえ、あなたからいいものを数弾受けてしまいました。少しだけ評価を上げてあげましょう、ほんの少しですが」
んん?なんかちょっと仲良くなってる……のか?さっきまで殺気を飛ばしあっていた2人が、見下し見下ろされる関係だが目を合わせながら会話をしている、だと?
……あぁ、なるほど。これがキヴォトス流の河川敷の殴り合いってわけね。拳ではなく銃で語り合う感じか。やっぱお前らイカれてるよ。
「ワカモ、最後に言っておく」
「はい?なんでしょうか?」
「───サドは渡さないから」
そう言って目を瞑るシロコ。どうやら捨てセリフを吐いて気絶したらしい。
「………ふふっ、随分と愛されていますのね、サドさんは」
「ククッ、皮肉か?今のは『私の獲物(ガチ)』って意味だろうがよ。油断していたらきっと寝首を掻きに来るに違いねェ……」
俺はこれ以上なく真剣に話している───だというのに、ワカモは手を添えてお上品に笑うだけ。まるで『ご冗談を』とでも言いたげな態度だ。ケッ、対岸の火事だからって……
「まぁ、シロコさんの懸念も取り越し苦労でしょう。何せ、私とサドさんは
「違う!“主人”と“道具”だ!!」
チッ!やはりほんの少しだけ俺に対する恐怖心が薄れてやがるなァ?本来なら咽び泣きながら“道具”宣言をやってもらうつもりだったのに……シロコ、全部テメェのせいでパーだ!!
ククッ、帰ったら覚えておけよ?まずはその疲れ切った体に熱湯を浴びせてやるからよォ、クククッ……!
「そんじゃあこのバカ連れて帰るわ。明日も来るからよろしくな!」
「…………明日も来て下さるのですか?」
あぁ?何寝ぼけたこと言ってやがる。こんな消化不良で納得していると本気で思ってんのか!?
「今日は9割9分9厘失敗したが明日はこうはいかねェ!その体を綺麗に洗って待ってろよ!」
「………ふふっ、ふふふっ。えぇ、また明日お待ちしておりますわ」
ムキーっ!!なんて余裕な態度!今頃さっさと帰ってくれと泣きながら懇願されていた筈なのに!!
シロコォ……お前は熱湯だけじゃ済まさんぞ!そのガッチガチに固まった筋肉を強制的に刺激してやる!ツボに指を当てられ哭き叫ぶ姿が易々と思い浮かべられるぜ!ハーッハッハッハ!!!
………取り敢えず明日は穴空きまくった戦場の土木作業から始めるか!なんか変な匂いもしてるし、早めに埋めた方がいいよな!
その後、シロコは