汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
皆様方からの虐待推奨が溢れる感想に恐怖で夜も眠れませんでした……
ハーメルンはサディストの坩堝だったんだ……!
そして今回も憐れな被害者が一人……
「ククッ、今日もいい虐待ができたぜ〜」
上機嫌なままに渡り廊下を歩く。月光がまるで俺の虐待を祝福してくれるかのように照らしてくれているようだぜ。クククッ、いよいよお天道様も俺の味方についちまったってかァ?
さて、俺がここに来てから一週間経つ。
ガキどもの管理も今のところパーフェクトで、特にこれといった反乱は起きていない。ククッ、俺にかかれば造作もないことよ……!
あとは……そうだな。俺は今、
ククッ……!コレを見てアイツらの苦しむ顔が容易に想像できるなァ……!楽しみにしてろよ!!
「…………」
「あん?」
渡り廊下の奥────その曲がり角から妙なガキが出てきやがった。ピンク色の髪をした、仮面のガキ────秤アツコだな。
資料を見たんだが、何故かコイツの写真だけ仮面着用の仕様だった。だから俺もコイツの素顔は知らねぇし、誰かと積極的に話すようなヤツでもなさそうだから、どんな声なのかも知らねぇ。
ククッ、
「オイ、アツコ。もう少しで就寝時間だぞ。何でこんなところにいやがる」
「…………」
………は?
なんだ?その指の動きは……?
おちょくってる────ようには見えねぇし、かといって何か伝わるかっていっても一ミリも分からねぇ。
なんだコイツ……?何がしてぇんだ??
「あっ、ひ、姫ちゃん……!!」
さらに曲がり角から水色のガキ───ヒヨリがドタバタと走りながらやって来た。な〜んか鈍臭いんだよなァ、コイツ。すっ転んで俺の前で醜態を晒すんじゃねェぞ?
「サ、サドさん……!?な、何でここに……」
「あぁん?むしろこっちが聞きたいわ」
「ヒィ……!!」
ククッ……!コイツは少し凄めば大袈裟にリアクションしてくれるから面白ェ。所謂音が鳴る玩具みたいなモンだなァ。
「オイ、ヒヨリ。俺がさっきから話しかけてやってるっていうのによぉ、こんな……指をこう……クイクイっと動かすこと以外しねェんだ」
「あ、あぁ……ひ、姫ちゃんは、何て言いたかったんですか……?」
「…………」
「ふむふむ、成程………え、えっと……姫ちゃんは『今日のご飯も美味しかった。ありがとう』って……い、言ってます。え、えへへ……確かに美味しかったです……」
──────は?何で会話成立してんの?
「………お前、アツコが何言ってるのか分かったのか?」
「え?えっと……はい。そ、その……ひ、姫ちゃんは
「………成程なァ、コレが手話ってヤツか」
手話の存在は知っている。ただ、俺の前で手話を披露するヤツなんて現れたことがなかったもんで、実際に実物を見たのは初めてだぜ。
ククッ、しかしまぁ、かなり興味深いモンを見たぜ。つーことは、コイツはアレか?もしや─────
「アツコは耳が聞こえないってことか……」
手話を使うということは、つまりそういうことなんだろう。耳が聞こえないのは生まれつきか、それとも後天的かは知らねェが……まぁ、んなことはどうでもいいわな。
しかしまぁ、手話ってのは本当に分かんねェモンだな。目の前で会話してるっていうのに、コレだとコイツらが
「あっ、違くて─────」
「ククッ……クククッ……!!成程なァ。こいつは
「え?な、何がですか……?」
「オイ、ヒヨリ!アツコに“これから毎夜俺の部屋に来い!”と伝えろォ!!」
「え、えぇっ!?な、何でですか!?」
ヒヨリは震えながらアツコを背中に隠す。ククッ……、美しい友情物語ってかァ?
だが、そんな抵抗は無意味に等しい!なんせお前らは俺の道具なんだからなァ!持ち主の言うことは絶対だ!
本当ならコイツの問いに答える義理はねェが、なかなか面白い喜劇を見せてもらったからなァ。特別に教えてやる。
「コイツから
この手話の危険性───それを俺は誰よりも理解している……つーか、理解したつもりだ。
よく考えろよ?他のガキどもは声を発するから、コイツらが今何を思っているのか俺に筒抜けってわけだ。しかし、コイツはどうだ?声を発さず、黙々と手で何かを表すのみ。
……オイオイ、それってよぉ〜─────
俺の悪口言いたい放題じゃねェか!!!
ククッ……!まさかこんな抜け道があったとは……!!
読めなかった!!このサドの目をもってしても……!!
なんなら俺が目の前にいたとしても平然と悪口を言えるなァ。大ボスの前でバレたら一発終了のデスゲームをやってる感覚に近いだろうが、それすらも可能にしちまうのが手話だ。
きっとこの一週間でも数えきれないほどの悪口を言ってきたに違いない。なんせあんな残虐な虐待をしてきたからなァ、不平不満を言わない筈がねェ。おそらくだが、俺の前でも堂々と手話で言っていた筈だ。
そして気付かぬ俺に内心ほくそ笑む、『この馬鹿め!』と。
………んなこと許されるわけないよなァ!?
俺はその手話を使えるテメェの驕りを討たせてもらうぜェ!!!
「いいなァ!!俺の言葉は絶対遵守!!分かったかァ!?」
「えっ……あ、あの……!?」
俺の顔とアツコの顔を交互に見るヒヨリを他所に、アツコは人差し指と親指を繋ぎ合わせてOKサインを出す。
ケッ、仮面の下が見れなくて残念だぜ。きっと今頃、焦燥に塗りたくられたような顔が前面に出てるっていうのによォ。
クククッ、まぁいい。明日から手話を覚えていけばコイツの逃げ道は少しずつなくなる。
精々日々成長していく俺の姿に焦燥を覚えるこったなァ!!!
◇◆
「オイ、アツコ!!全然分からねェぞ!!なんでこの指の形が“あ”になるんだよ!?」
「…………」カキカキ
「あん?なに文字書いて─────“私にも分からない”だとォ!?」
「クククッ……!数日かかったが、指文字は全部覚えたぞ!これでテメェが何を言っているのかも全部分かっ─────あん?」
「…………」カキカキ
「なになに…………“指文字と手話は全然違うものだよ”……だとォ!?」
「ガキども!“おはよう”だ!!」
「………何あれ」
「最近姫がサドさんに手話を教えているらしい」
「も、もう指文字は全部、覚えたらしいですよ……?お、大人ってすごいですね……」
「……………へぇ。それが全部無駄な努力だったって知ったらどう思うんだろうね」
「ミサキ……」
「手話、難しいなァ。だがもうちょっとで“あいさつ編”はコンプリートするところまで来たし、頑張らねェとな……」
「───…………」カキカキ
「あん?“なんでそんなに手話を覚えたいの?”ってか?ハン!道具であるお前の言葉も理解できねェようじゃあ、俺は虐待マンとしてまだまだだぜェ!」
「──────ッ」
「そして、いつかお前が俺の悪口を言っているところをひっ捕えて、咽び泣く虐待をプレゼントしてやるよ!!覚悟しなァ!!」
「…………、……」カキカキ
「は?“期待しているね”、だとォ……?ク、クククッ……!初めてだぜェ……ここまで俺をコケにしてくれたお馬鹿さんはよォ……!!」
「───────ふふっ」
「クククッ……!今日もノコノコとやってきたなァ!今日こそは全部言い当てて────オイ、アツコ。具合悪りィのか?」
「…………」
「“そんなこと無い”わけねェだろうが!……今日の練習はもういい、あの普通のベッドでおねんねしてこい!ちゃんと薬を飲むことも忘れずになァ!!」
「─────………」
「あん?“ごめんなさい”だと?ケッ、お前が勝手に謝んな。これは
「───────」
「こうして……それで確かこうやって………どうだァ!?」
「─────“俺はお前を虐待する”………で、いいのか?」
「そうだぜェ!!クククッ……!やっとコレを言えるようになったなァ!!次はもっとスムーズに、かつ大胆な言葉を覚えていきてェもんだ!!」
「…………サドさん、たまには休んだらどうだ?連日だと疲れてしまうだろう?」
「アツコを慮かって出た言葉かァ?だがまぁ、確かに考えてやらんことも─────あん?なんだよ、アツコ」
「…………」
「ククッ、どうやら無用な心配だったみたいだなァ。これでもかと首を振ってるぞ!俺に教えれば教えるだけ自分が不利になっていくっていうのに面白いヤツだ!ハーッハッハッハ!!」
「…………姫、彼には正直に話した方が──────そうか。姫がそう言うなら、私からは何も言わないさ」
────コンコンコン。
「ククッ、来たか」
ここ
「よう!待ってた──────あ?」
そこには見た事がないガキが立っていた。
生気のない白い顔、血のような紅い瞳が俺の姿を写し出す。
……誰だ?コイツ。こんなヤツ、見たことが──────
「────ふふっ。やっぱり、そんな顔すると思ってた」
「あん?」
いきなり人の顔を見て笑いやがった。おうおう、嬢ちゃん?なんだ?俺の虐待の餌食にでもなりたいのかァ?
「……まだ分からない?ちょっとショック」
「んん?いや待て、もしやゲマトリアの……」
「ゲマトリア?何それ?」
「────じゃねぇみたいだな。……マジ分からん」
つーか、何これ?知らないガキが目の前にいて、唐突に問題出してくるとか脳内バグるんだが?
「じゃあ大ヒント」
そう言って背後から取り出したのは
「テメェ………アツコか?」
「ようやく気づいたの?遅すぎ」
仕方ないヤツを見るような目と顔に少々イラっとするが、それは一旦置いておこう。問題はアツコと俺が会話出来ていることだ。
アツコって喋れないんじゃ……いや、そもそもアイツは耳が聞こえないんじゃ……だから手話で……あぁ?ん?でも普通に会話出来てるし……耳も聞こえてるっぽいし……
「それも全部説明するから。だから、取り敢えずお部屋に入れて?」
「お、おう……分かったぜ……」
よ、よく分かんねェけど、この最恐最悪のサディストである俺を前に臆さない態度を見るに、コイツは本物のアツコで間違いないようだ。
ククッ……しかし、アツコも成長したモンだぜ。この俺をほんの僅かにでも取り乱せることができたんだからよォ。
誇れ、お前は強い……ってかァ?クククッ……!!
◇◆
────最初はほんの少しお話出来れば良かった。
サッちゃんが言うように『不思議だけど温かい人』である彼のことをもっと知ってみたくて、あの日に手話のお勉強の申し出を引き受けた。
今にして思えば随分とチグハグな過程だ。別に手話以外でも彼とお話できる手段なんて山のようにある。普通に声を発して、彼とお話できれば良かったのに。
私が耳が聞こえないってなったとき、どんな反応をするのか見たかったからか。
それとも、数年使ってきた手話が咄嗟に出てきてしまったからか。
─────ううん、分かってる。本当は私はあの時
彼女とは違うと分かっているのに、その異形な姿が彼女の姿と被ってしまって声を出すことができなかった。彼女からの支配に解放されたというのに……いや、だからこそより一層彼女への恐怖が浮き出てしまう。
………一週間経った後でも、私は大人という存在を心底恐怖していたんだと思う。
────だけど、この一ヶ月半はまるで宝物のような毎日だった。
彼との練習は楽しくて、なんだか懐かしいような、逆にまるで初心に戻ったような気持ちにもなって。いつも強気で人の話には絶対従わなさそうな彼があまりに真剣にやってくれるものだから、私も応えないとって気持ちになっちゃって。
そして、何も知らない彼は耳が聞こえないと思っている私のために、ずっと手話を練習してくれた。私が語る声にならない言葉を理解してくれようとしていた。
……たった一人、手のかかる女の子のためだけに。
あぁ、彼はきっと虐待のためだとか、自分自身のためだとか言うのだろう。ただ、それでも良かったの。
彼がこんなにも私に寄り添おうとしてくれたことが、その想いが、胸を締め付けるほどに嬉しかったから。
────だから、この偽りの毎日を終わらせないといけない。
たとえ彼から嫌悪されるような事実を話そうとも、それでも、私は……
「なるほどなァ。ベアトリーチェに手話で会話するように言われていたとはなァ」
「…………」
目の前で笑う彼は特に怒り心頭といったわけではなく、ただ単に面白がって笑っているだけのように思える。
…………それなりに覚悟を持って打ち明けたんだけどな。
「………怒らないの?」
「あぁ?」
「私が、あなたに嘘をついたこと……時間を無駄に費やさせたこと……」
言いながら心はヒビが入るように軋む。彼と初めて会話した以上の恐怖が私を覆った。
彼から嫌われてしまう恐怖と、全ては自業自得だと罵る
どんな咎も受ける覚悟をしてきた筈なのに、今になって恐怖で体が震えて仕方がない。
「んなこと
「え」
思わず俯いていた顔をあげる。
今、彼はなんて言ったのだろうか。
「つーか、テメェが勝手に
「…………」
……嬉しかった。ただただ純粋に、涙が零れ落ちそうなほどに嬉しかった。
ずっと私だけが楽しんでいたと思っていたけど……そうじゃなかった。この一ヶ月半で紡いだ彼との思い出が、彼の中にもちゃんとあったと、そう思えたから────
「それよりだ!オイ、アツコ!!」
玄幽のように揺れる業火が私の顔に近づく。不思議と、火の特有の熱さは微塵も感じなかった。
「な、なに?」
「一番最初に言ったこと覚えてるか?」
「え、えっと……あんまり覚えてないかも」
「なんで覚えてねェんだよ!!いいか?もう一度言ってやるから耳の穴かっぽじってよ〜〜く聞けよ!!」
大きく息を吸う彼は、まるで爆発寸前の爆弾そのもの。一体どんな事を言われるのかと身を構えてしまう。
「ベアトリーチェのルールじゃなくて
「ッ」
“あぁ、そんなことも言われたなぁ”なんて思いながらも、彼が怒っている理由が何となく分かってしまった。
予想以上に子供っぽくて、だけどとても彼らしい理由で……何だか心がポカポカする。
「─────ふふっ。やっぱり変な人」
「ククッ、そんな変人の道具になって可哀想なヤツらだぜ、お前らはよ!!」
『虐待万歳!!』と高笑いしながら窓辺に映る月を見る彼は悪い大人そのもの。
……だけど、どうしても目が奪われる。
「これからは普通に話せよ!マスクも禁止だ!どうせそれもあのババァの言い付けだろうからな!」
「バ、ババァ………ふふっ」
サッちゃん……上には上がいたよ。世の中には彼女をババァ呼ばわりする人もいたんだね。
「な〜〜に笑ってやがる。本当に反省してんのか?」
「ふふっ、ふふふっ……。うん、うんッ、私はあなたの道具───そうでしょ?」
「ククッ、ようやく理解したかァ。あぁ……健気にババァの言い付けを守っていた小娘をとうとう分からせてしまった俺はなんて罪深いのだろうか……!ハーッハッハッハ!!!」
彼の哄笑が響き渡る。ここ一ヶ月半で聞き慣れた男性特有の低い声が私の
少し的外れな事を言う彼はいつも通りで、でもそんな所も可愛らしくて少し笑ってしまう。幸い、彼は高笑いに夢中で気づいていないみたいだけど。
「それはそうと、まだ俺の道具だと自覚が足りなかったお前にはとんでもねェ虐待を与えねェとなァ……!」
「────ふぅん、どんなことされるんだろう。怖いなぁ」
「ククッ……聞いて慄け!お前は
「……………わー、ひどいなー」
「ハーッハッハッハ!!!」
……本当に相変わらずだね、サドは。
ふふっ、ちょっと
たった一人を虐待するためにここまでするなんて……!
おまけにおばあちゃんとの約束を守っていただけの純粋な少女を穢してしまった……!
この子たちに救いはないのか……!?