汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

46 / 54

またしても悩める少女が1人……
キヴォトスの子供たちはなんでこう悩みまくっているんだ!?


第40話

 

 

 

 

 

 「……見てよサドさん!街がすっごく綺麗だ!」

 「そうだな!」

 

 まるでウサギのようにぴょんぴょんと跳ね回る喧しいガキを他所に街を見下ろす。

 雪景色というものはどの風景に合うモンだなと常々思うぜ。見ろよ、上から見る百鬼夜行がまた一段と輝いているぜ。

 

 この街でもうすぐお祭りが開催される。

 それもただのお祭りではない、ガキどもが開くお祭りだ。

 

 汗水流しながら必死に機材を運び、碌に休憩も取れず、日々身体に鞭を打ちながら働いた地獄の日々。

 あぁ、たまにリンゴジュースを飲ませてくれと足に縋りついて懇願してきたガキどももいたなァ。勿論そんなヤツらの要求など呑むわけもなく、冷たい麦茶とオレンジジュースを出して不満一杯な顔を拝めたりもした。

 あ?キキョウの件*1はどうなんだってか?………あれは忘れろ。一種の災害に遭ったと思えばいい。

 

 つまり、そんな過酷すぎる環境下の中で完成されつつある街を見て思うことはただひとつ────ぶっちゃけ超楽しみ!

 

 「…………何も聞かないの?何で外に連れ出したのかって」

 

 アヤメは隣から随分と大人しめな声でそう尋ねてくる。

 ………すまん、正直言ってめっちゃ忘れてたわ。そういや何で外に出てんだろうな?俺たち。

 

 しかし、この内心をそのまま伝えるのも躊躇われる。だってどう見ても“とんだ間抜け野郎”にしか見えんし、なんかダサいし……

 

 「ククッ、聞いてほしかったのか?」

 

 だからこう返すしかなかった。

 常に意識はしていたが敢えて聞いていない───といった体面を何とか守ることに成功したぜ。

 

 「…………ううん、そんなことない。むしろ待っててくれたお陰で気持ちの整理がついたかも」

 

 気持ちの整理?何を整理する必要があったんだ?

 つーかいつもの元気はどうしたよ。通常のお前がシャキシャキの梨だと例えるなら、今のお前はパッサパサの柿だ。

 

 いつもの喧しいぐらいのお前は何処いった───なんて、そんな質問は野暮か。

 

 

 だってコイツの元気を奪ったであろう要因を作ったの、俺だもん。

 

 

 

 

 なんせ───今日の夕飯は俺特製の中辛カレーだったもんなッ!!

 

 

 

 

 きっとコイツらは今まで甘辛のカレーしか食ってこなかったのだろう。だってガキばっかだし。明らかに辛いのに耐性がないようなヤツらばっかだし。

 

 その証拠にコイツら、何と一瞬で平らげるようにカレーをバクバク食ってたんだぜ?乙女として躊躇われるであろう行為を平然とやってのけたのだ!

 残すことは勿論許されていない状況で取った選択が、まさかの乙女としての外聞も恥も殴り捨てた一気食いとは……

 

 そして、終いにはまさかの咲き誇る笑顔でおかわり宣言と来た。皮肉たっぷりの、お前の虐待には負けないぞという強靭な意志が見え隠れしている笑みを俺に向けながらな。

 

 いやはや……正直舐めてたよ。そんなにも覚悟が決まっていたとはこのサドの目をもってしても(re

 

 「サドさん?お〜い、大丈夫?」

 「ククッ、なに、お前らの今日の夕飯の食べっぷりを思い出していただけだ」

 「あぁ、あのカレーね!すっごく美味しかったよ!なんか家庭の味っていうか、舌馴染みのある懐かしい味っていうか……とにかくいっぱい食べちゃった!」

 

 はい、ダウト!俺はテメェらの実家の味なんか知りませ〜ん!

 何でもかんでも適当に褒めてればいいと思ってる魂胆が丸見えだぜ?アヤメさんよォ〜。

 

 「はぁ〜……やっぱりサドさんと一緒にいると落ち着くな〜。やっぱり波長が合うとか?だとしたら結構相性いいかもね、私たち」

 「ハッ!だとしたら最悪だ。お前みたいな喧しいガキと波長が合うなんてな!」

 「あっ、ひどいな〜」

 

 つーかなんの相性だよ。“道具”と“主人”の相性か?だとしたら最高だぜ?俺たち。

 

 それにしても───

 

 「ようやくいつものうるさい梨に戻ってきたか」

 「な、梨……?」

 「“瑞々しいぐらい元気なお前”って意味だ」

 

 そう答えてやれば、アヤメは目を点にして俺を見つめる。

 しかし、それもほんの一瞬。次の瞬間にはまるで堪えきれないと言うかのように目尻を下げ笑い出した。

 

 「くふっ、くふふっ……!な、梨って……私ってそんな風に思われてたんだ……っ」

 「なかなか秀逸な例えだと思わんか?」

 「うん、最高!」

 

 流石はアヤメ、よ〜く分かってるじゃねェか!

 

 「────はぁ、ほんと、サドさんはズルい人だよ。私、今日は結構シリアスなつもりで来たんだよ?なのにこんなコメディにしちゃってさ……」

 「俺が住まうこの世界で、俺が虐待している時以外においてシリアスなんて不要だろう?シリアルだのコメディだの何でも持ってこい!」

 「ふふっ、あはは!」

 

 オイオイ、笑いのツボが浅いぜ、アヤメよ。それに今のは冗談でも何でもないから笑うところじゃないんだがな。

 

 「……じゃあそんなサドさんに相談───というか、お話を聞いてもらいたいです」

 

 ………あぁ、そういやまだここに連れ出された要件聞いてなかったわ。

 つーか相談なのね。何でナグサとか他のガキにしないのかという疑問はひとまず置いとくとして、とりあえずその相談とやらを聞いてやるとするか。

 

 そうして耳を傾けていたわけだが、最初の一言めに耳が吹き飛ぶほどの衝撃を覚えた。

 

 

 

 

 

 「────私、本当はナグサのことをどう思ってるのか分からなくなっちゃったんだ……」

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 私にとってナグサは───唯一無二の幼馴染で、何よりも大切な友達だった。

 

 

 幼い頃はずっと私と一緒にいて、何処に行くにしてもまるで小鳥の雛のように後ろから付いてくるような子だったなぁ……

 

 

 昔からずっと内気で、怖がりで、私がいないと何も出来ないような子で……

 

 

 ───私が護らなくちゃって思った。

 

 

 小さくて臆病なこの子を護り、導き、背中を押せるのは私だけなんだって、そう思った。

 

 

 そう自覚した日から、私は()()()()()()()()()の“七稜アヤメ”という仮面を被るようになった。

 

 

 私だってみんなが思っているほど完璧な女の子なんかじゃない。ただみんなよりちょっと元気で明るい普通の女の子。

 

 だからこそ、私が大切な人を護れる存在なんだって理解した時………本当に嬉しかった。

 

 自分がこの子にとって大切な“何か”で在れるって……そう思ったから。

 

 

 それでね?自然とみんなから頼られるようになったんだ。褒められるようになったし、人望も集まった。

 

 ただ、正直言えばそんなことどうでも良くて、何よりもナグサが変わらず私を頼ってくれることが嬉しかった。

 

 

 これから先もずっとナグサの頼れる幼馴染として在り続けられるって思えたんだ。

 

 

 でも、ナグサも急激に成長を遂げていった。前までは雲泥の差ほどあった実力差もうんと近くなった。

 

 

 そりゃあ焦ったよ。だってこれじゃあ私はナグサを護る資格がなくなっちゃうって思ったから。

 

 でも、そんな私を繋ぎ止めてくれたのもナグサだった。こんな私でもいまだに頼ってくれるナグサがいたから、私は私を保つことが出来たんだと思う。

 

 

 それでね。そんなある日の放課後、ナグサが嬉しそうにとある“大人”について教えてくれたの。

 

 『ちょっと変な“大人”』って前置きしながらも、それでも本当に嬉しそうに『きっといい人』だなんて言っていたんだもん。

 

 ………そう、あなたのことだね、サドさん。

 ほんと、ナグサの言う通り変な“大人”だったな〜って。

 え?『本人の目の前で堂々と悪口とはやるな』って?だって本当のことだし。

 

 

 ───ただ、その日からナグサは変わった。

 

 

 内向的だった性格が少しずつ外向的に。

 

 怖がりな筈の子供は、少しずつ勇気を持ち始めた。

 

 何より、少しずつ私の背中から離れていって、少しずつ私以外の人にも頼り始めるようになった。

 

 

 ───嫌だなって思っちゃったんだ。

 

 

 本当ならナグサの成長を喜ぶべきなのに、素直に喜べなかった。

 

 ナグサが私の元から離れていく───その事実をどうしても認めたくなくて。

 

 

 ナグサが私以外の人を頼っている。

 

 ナグサが私以外の人に信頼を向けている。

 

 ナグサが私以外の人に笑顔で感謝を伝えてる。

 

 

 この事実が私の胸を締め付ける。

 薄暗い感情が私の心を汚染するように広がった。

 

 

 何で私以外の人を頼るの?

 

 何で私以外の人に信頼を向けるの?

 

 何で私以外の人に感謝を伝えてるの?

 

 だって───だってそれは全部()()()()だったのに。

 

 私を満たす()()()()()だったのにって……

 

 

 ───嗚呼、醜い。

 

 

 結局、私はあの子のことを純粋な友達として見れていなかったんだ。

 ただあの子の特別な“何か”になっている自分に酔っていたかっただけ。ナグサはその“道具”でしかなかった。

 

 

 …………こんなこと、ナグサには聞かせられないよ。

 私は、本当の“(七稜アヤメ)”を知られたくなくて、自分自身に嘘を吐いてまで仮面を被り続けてきたんだから。

 

 

 言えるわけないよ。あなたが頼ってくれた“(七稜アヤメ)”は───もうとっくに死んでいるんだって。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 俺は二の句を告げられずにいた。

 あまりにも……あまりにも深く、重く、そして繊細な内容だったから。

 

 「ここ最近、こんなことばかり考えるんだ。私は本当にナグサの幼馴染として相応しいのか、私は本当にあの子の傍にいてもいいのかって。おかげで全然眠れなくて……ほら、目元に隈も出来ちゃった!」

 

 『ナグサに心配された時は肝が冷えたよ〜』なんてアヤメはケラケラ笑っているが、こんなもの空元気だってことは誰が見ても明らかだろう。

 

 「ク、ククッ、なるほどなァ……」

 

 そんなアヤメに対して何かを答えるわけでもなく、ただ適当に繋ぎ合わせるための言葉しか出てこなかった。

 いやはや、まさかこの全智の虐待者が的確に答えられない相談をしてくるとは……

 

 「…………失望、したよね?」

 

 珍しくもカスほどしか残っていない良心とも言えない良心が浮かび出てしまうほどに考え込む俺に、ほんの少し気落ちした声が鼓膜を揺らした。

 

 「それもそっか。いつもサドさんが見てる私は演じてる私で、本当の私はこんなにも浅ましくも醜いことを考えているような子だったんだから───」

 「ちょっと待て。失望?何を言ってるんだ?お前は」

 「───え?」

 

 いや、「え?」って言いたいのはコッチだわ。今の独白の何処に失望する要素があったよ?

 

 「だ、だって私っ、ナグサのことを友達とすらも思っていなくて……ずっと私利私欲を満たすためだけの便利な“道具”として見ていて───」

 「そんなモン(気持ち)誰だって持ってんだろ。ようはテメェはナグサっつー大切な存在の特別になりたかっただけのただのガキだ。そこを適当に理由を付けて履き違えているだけにすぎねェよ」

 

 ここで傷心のガキに辛辣な言葉が炸裂するゥ!!お前は鬼かってな!!

 

 それに話を聞いていれば()()()純粋に友達として接していたみたいらしいし、コイツが勝手に考え込みすぎて勝手に自爆したにすぎないだけだ。

 

 「……そう、なのかな?私、ちゃんとナグサの友達で───幼馴染でいてもいいのかな……?」

 「俺に聞くな。そんなのお前とナグサ以外で誰が決めれんだよ」

 「ッ───うん、うんっ……!」

 

 意味分からんがなんか納得した感じがするな。マジで意味が分からんが。

 

 いや、それより………アヤメのヤツ、やはり気付いていないようだ……

 

 「ククッ、それよりアヤメ……その、お前は……ナグサのことが大事なのか?」

 「ッ、うん!もちろんだよ!」

 「どれくらい大事なんだッ!?」

 「どんなものよりも大事!!」

 「世界で1番か!?」

 「世界で1番───うん!世界で1番大好きで大事だよ!!」

 「……………最後に聞こう。お前はナグサのことをどう思っているんだ?」

 「ナグサは───ナグサは何よりも大切な幼馴染で、親友だよッ!!」

 「……………そうか」

 

 違うッ!!!まるで言い切った感満載だが違うぞ、アヤメェ!!

 

 な、何故そこまで自覚しておきながら()()()()()()()()()に気づかねェ!?

 友情?友愛?そんな生易しい感情じゃねェだろうが、テメェのソレは……!!

 

 

 大切な存在を前にして強くありたいと思うその感情は……!

 

 ナグサが自分じゃない誰かと一緒にいる時に『嫌だ』と思うその感情は……!!

 

 心臓がギュッとなるその感情は……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───お前、多分ナグサに恋をしてるぞ!?

 

 

 

 

 

 

 

 いや、確定で恋してるだろ!というかしてなきゃ怖いわ!

 もし万が一コレで恋愛感情がなかったら、今後()()()()()()()を誰かに向けるようになった時が()()()()恐ろしくてたまんねェよ!!

 

 しかしな〜、これが百合ってヤツなんだな〜。

 いや、元々百合自体には砂糖の粒ほども興味もなければ、それに一喜一憂するほど好みのジャンルでも断じてないが、巷で噂のものを見つけてしまっては野次馬根性が炸裂するというものよ……!

 

 「…………」

 「え?なに?なんか付いてる?そ、そんな熱心に見つめられたら照れちゃうっていうか……」

 

 しかもどうやらコイツは気づいていないしな。

 否、気づかないようにしていると言った方がいいかァ?

 

 アヤメは必死にナグサのことをただの幼馴染として見ようとしているが……所々で無意識に漏れ出ているんだぜェ?お前の本当の気持ちがなァ……!

 だってよォ……普通の友達に『世界で1番好き!』とか言わんし!『何よりも大事』だなんて大声で宣言しないし!

 

 はぁ〜……恋愛関連はマジで分からんから虐待のしようがないんだよなァ……

 なんせガキの恋愛なんて興味ねェし。そもそも恋愛自体に興味の微塵もないし。

 

 だがまぁ、応援ぐらいはしてやるよ!精々頑張るこったな!

 

 「はぁ〜〜……何だかスッキリした〜!!うん、やっぱりサドさんに相談して本当によかったよ!」

 「ククッ、俺は傷心のお前を貶しただけだがなァ?」

 「え?…………そんなことあったかなぁ」

 

 とんだペテン師だなァ、アヤメ!お前は然りとその耳で聞き、俺の心ない言葉にも反応を返していただろうがッ!!

 そんなことにも気づかないとは……やはりコイツ、ドが付くほどの鈍感野郎なのでは……?

 

 「もういいか?用が済んだならさっさと帰るぞ」

 「あっ、うん………因みにさ、今日のことは───」

 「言わねェよ。だから安心しな」

 

 そりゃあ本人すら自覚していない【無自覚恋愛相談】とか喋り散らかしても、話を聞くヤツもアヤメのヤツも意味分からんだろうからな。

 

 「俺とお前───2人だけの秘密だなッ!!」

 

 そんな果てしなくキショい宣言をした後、小指を差し出す。

 アヤメも俺の行動の意図を察したのだろう、にっこりと微笑んで小指を絡ませた。

 

 「指切りげ〜んまん!嘘ついたら傷物にされた責任を取っても〜〜らう!!指切った!!」

 「オイオイ、ませたことを言ってんじゃねェぜ」

 

 ハァー、これだからガキは……

 

 「じゃあ帰ろ〜!多分もうそろそろ帰らないとみんなに心配されちゃいそうだし!」

 

 相談している時とは打って変わりいつもの喧しいガキへと戻ったアヤメは、あろうことか俺を置いて足速に歩き始めてしまった。

 ククッ、一刻も早く俺の元から立ち去りたいという気持ちは理解してやるが間違っても足滑らすんじゃねェぞ!!怪我したら虐待出来なく─────

 

 

 

 「……そうだ!どうせだし、このまま私たちの部屋に来てよ!それで今日はサドさんも一緒にお泊まり会したいな!」

 

 

 

 「あぁ、私の独断で決めていいのかって気持ちは分かるけど、多分大丈夫なんじゃないかな!部屋にはナグサもいるしきっと喜んでくれるよ!ね?ね?どうかな、サドさ─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「─────サドさん?」

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「何処だ?ここ」

 

 黒い靄みたいなのに包まれたと思ったら、なんか全く知らん場所に転送されていた件について。

 

 何だここ……廃校かァ?それとも廃墟か……

 つーか埃やばっ!?上も下も穴だらけだし……こんなん人が住むってレベルじゃねェぞ!?

 

 「清掃前のアリウスの校舎を思い出すな……。俺をここへ連れ出したヤツは余程いい趣味をしているぜ」

 「そうかえ?そう言ってもらえるなら嬉しいねぇ」

 

 薄暗い一室の奥から声が聞こえてきた。それまるで語り手のように流暢で、自然と耳に入ってくるような聞き心地の良い声をしていた。

 

 部屋に入り込む月光が周囲の影を取り払う。しかし、その影の先にはまた更なる人の影が生まれ落ちていた。

 血の気のない肌、気怠そうな目つき、何処か草臥れたOLみたいなソイツはまさしく“妖艶”という2文字が最も似合うであろう女郎であった。

 

 ソイツは何をするわけでもなく、ただニッコリと笑うだけ。そこには悪意も欺瞞もなく、心から()()()()()をしてくれているのだと理解出来た。

 

 さて、一見何とも不可思議な場面だが、それを見て俺がどう思ったのかというと────

 

 

 

 

 

 「コクリコ!?何でお前がここにいんだ!?」

 

 

 

 

 

 ────純粋に()()がいることに対する驚嘆のみだった。

 

 

 「久方ぶりだねぇ、サド。息災であったかえ?」

 「おう!虐待者は元気が1番だからな!そういうお前も元気だったか?」

 「あぁ、そうさね。元気にやらせてもらってるさ」

 

 突如現れた友人に不可思議はあれど、それよりもまず会えた嬉しさが勝るものよ。

 しかし、少しずつ話を続けていくによって浮き出てくる疑問もあるわけで。

 

 「そういや()()()は何処行ったんだよ?今日は留守番なのか?」

 

 そう、本来ならコクリコの側に引っ付いているアイツがいないのだ。

 いつも俺にちょっかいをかけてくる恐れ知らずなガキだが、そんな反骨心を俺は気に入っている。

 だから何かとどんなイタズラをしてくるか楽しみだったんだが……

 

 「おやおや、そなたが気付けなくなっているとは………あの子も幾分か成長しているということかね」

 「……?」

 

 『何言ってんだ?』と口を開きかけた時────

 

 

 「サ〜〜ド〜〜さ〜〜ま〜〜?」

 「ッ!?」

 「あははっ!手前は此方ですよぉ?サド様ぁ」

 

 

 背後から耳打ちされたと思った次の瞬間には俺の前でしてやったりな顔をするいけ好かないガキが佇んでいた。

 その表情を見てどう思うか。一部界隈ではご褒美と言われるそれは、俺にとってはただ龍の逆鱗を逆撫でさせるのに十分な行為だったとだけ伝えておこう。

 

 「ククッ、“大人”を舐め腐るのも大概にしろよ、シュロ!!」

 「あっ♡捕まっちゃいましたぁ♡」

 

 俺の神経を逆撫でするという“神”をも恐れる暴挙に出たクソガキの名は箭吹シュロ。そこにいるコクリコの見習いみたいな立場にいるガキだ。

 いつも飄々として俺を揶揄ってくるが、お前みたいなヤツには力の差を見せつけることで従順になることは学習済みなんだよ。そう……絶対に敵わない、理不尽な“大人”の力ってものをよォ!

 つーわけで、コイツの両脇に手を差し込んだ後、【擬似・赤ちゃんプレイ】の奥義『高い高い』をするという高等恥辱プレイを与え、畳み掛けるようにシュロを胸に抱き抱えた。

 コイツチビだからなァ、俺の胸元に丁度よく収まるサイズなんだよ。

 

 「ふふっ、心地よい心音が聞こえてきますぅ。あっ、そういえばご挨拶がまだでしたね。お久しぶりでございますぅ、サド様」

 「おう!久しいな、シュロ!どうせコクリコに甘やかされていたことは容易に想像付くが敢えて聞いてやる……元気にしていたかァ?」

 「えぇえぇ、それはもう手前はご覧の通り元気でございます!」

 

 ククッ、相変わらずハイライトオフなお目目なこった!これじゃあ本当に元気なのか分からんな!

 

 「はぁ、お前って子は……。いつもすまないねぇ、サド」

 「ククッ、無問題(モーマンタイ)!なんせガキどもからよくせがまれてるからなァ!」

 「それはそれでどうなんだい……」

 

 野生の動物は相手に降伏するとき腹を見せると聞く。

 つまりアイツらは俺に降伏するために腹を見せて抱っこをせがんでいるというわけだ!

 

 「それで、この俺に一体何の用だよ?それにここが何処なのかも分かんねェし────」

 「まぁまぁ、そう慌てなさんな。我らの時間は限られているとはいえ、久方ぶりの邂逅でそう急かさせてしまえば我といえど少し傷つく」

 「ムッ、すまん!そんなつもりじゃなかったんだぜ!」

 

 クソッ!俺のバカ野郎!なに久しぶりに会った友人を悲しませてんだァ!

 見ろ!コクリコがおいおいと袖で涙を拭っているではないか!

 

 「ク、ククッ、ありとあらゆる人間の泣かし方を熟知している俺だが、泣き止ませ方までは知らねェのよ……」

 「…………ふむ。ならばサド、少し此方へ来なさいな」

 「……?あぁ──っとと……」

 

 ………なんか急に引き寄せられたと思ったら首元の匂いを嗅がれ始めたんだが?おまけに滅茶苦茶顔を顰められたんだが?

 

 「………シュロ、お前も分かったかえ?」

 「───はい、コクリコ様。強まっていますねぇ、()()の獣臭が……!

 

 胸元から地獄から轟くような音が聞こえたと思ったら、目が真っ黒なシュロが俺の心臓部を睨みつけていた。

 ふむ、どうやらいつものコイツの目にはちゃんと光は灯っていたみたいだ。今のお目目真っ黒具合を見ると夜空の星々のように輝いていたんだなァ……なんて思えるぐらい今の瞳は真っ暗な闇だ。

 

 「獣臭するってマジ?さっき温泉入ったばっかなんだが」

 「もう最悪の臭いですよ!これ以上ないくらい下劣な悪臭です!手前様にこんな臭いを残していくなんて……手前が上書きしてあげます!」

 「そうさね。こんなにもベッタリと自身の臭いを付け回って……これだから()()は風情も品もない。まるで()()()()()だと誇示しているようで腹が立つねぇ」

 

 わけわからんが俺の匂いを発端にこの2人がキレ散らかしていることはよ〜〜く分かった!後でもう1回お風呂入るわ!

 

 「あぁ、そなたの質問に応えなくてはねぇ。まずこの場所のことだが……ここは我ら【花鳥風月部】の活動拠点やね」

 

 花鳥風月部……?お前らって部活に所属してたんだな。普通に無所属の小説家なのかと思ってたぜ。

 

 ……………………

 

 あ?部活だァ?

 

 「……お前らって百鬼夜行に所属してんの?」

 「おや、言ってなかったかい?」

 「おう、初耳だ」

 

 だってコイツらと会った場所も百鬼夜行じゃなかったし。

 まぁ、よく見たら百鬼夜行っぽい服装だとは思うけどよ……

 

 「それでそなたを呼んだわけなんやけど────とある催しの告知をしようと思ってねぇ」

 「告知だァ?」

 

 

 コクリコの目が妖しく光る。

 その口はほんのりと三日月を作り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────サドよ。そなたは怪談に興味はないかえ?」

 

*1
りんごジュース強奪事件




この後滅茶苦茶アヤメに怒られたサド氏であった。


それにしても、サド氏と仲良さそうなお二人はきっといい人なんでしょうね!よかったです!()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。