汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

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ククッ、約2ヶ月ぶりの投稿ですね……すいませんでした(土下座)
就職活動とか、卒論とかで色々忙しくて……ちょっと久々なので思い出しながらやっていこうと思います。
あとですね、アヤメとのキャラの格差があってどうしようか悩んでいたのもあるんですよね〜……
いつかこの章だけリメイク出すかもしれないです。

あと鬼滅の映画最高でした(2回視聴)


第43話

 

 

 

 

 

 パチンっと聞き心地の良い音が辺りを木霊する。

 普段は特段気にならない音。だけど、今日は特に周囲に人がいないせいか、やけに目立っていたように思えた。

 

 私は目の前で顎に手を当てて考え込む異形を見る。

 表情は分からないけれど、必死に考えているであろうことは容易に想像出来た。

 

 ……私はこの時間が大好きだった。

 静かで落ち着いた時間で、誰にも邪魔されることのない2人っきりの時間が。

 

 「ククッ、強くなったじゃねェか、キキョウ。この百鬼夜行において、将棋でお前の右に出る者はいないだろうぜ」

 「当たり前でしょ。誰に教わってると思ってるの?」

 

 そう言えばいつもの怪しげな───しかし何処か嬉しそうな含み笑いをする。

 いつも『弟子じゃない』と否定する癖に今回ばかりはしないことに現金な人だと思う。ただ、そう思う反面、この人に僅かでも喜んでもらえたことが嬉しいと思っている私がいて、そんなチョロい自分に妙に腹立たしくなる。

 

 「───まぁ、それでもまだまだだけどなァ」

 

 渾身の一手───そうとでしか表現出来ない一手を繰り出された。

 たった一手、されど一手。この一手によってこれまで描いていた全ての勝ち筋が崩壊していく。

 

 「……………ダメね。負けた」

 「クククッ!!」

 

 随分と意地の悪い笑い声だ。本当に腹が立つ。

 

 「もしかしてずっと泳がされていた?私がこう動くだろうって予測して、もしくは誘導していたとか?」

 「そんなんじゃねェよ。お前のあの一手は拍手喝采モンの正しい配置だった。だが、少々戦果を急ったな。お陰でほら……囲まれちまった」

 

 ……この人の言う通りだった。

 もちろん油断していたわけではない。ただ、最善の一手を見つけ、その勝ち筋しか見えなくなって、吸い寄せられるように打ってしまった。

 そしたらどうだ。1番守らなければならない『玉将』は敵に囲まれてしまった。彼の駒は私が気付かないうちに、意識の隙間を縫って忍び寄ってきたんだ。

 

 「お前の弱点は最善手を打ち続けることと、相手の戦術を真正面からしか見ていないことだ」

 「後者はともかく前者はそれで正しいんじゃないの?」

 「あぁ、確かに正しいのだろう。だが、お前にとって最善手であろう一手は、相手にとっても最高の一手である可能性があることを忘れるな!………なんてパッション軍師こと俺からのコメントだッ!!」

 

 ……確かに大事なことだ。覚えておこう。

 

 「はぁ〜……またしても幼気なガキを“理解”らせてしまったか……」

 「………もう1回やろう」

 「ハンッ、何度やったってお前が俺に勝てる道理はねェんだよ!」

 

 勝敗がどうこうだからじゃない。

 

 この人の卓越した知識や技量を欲するためでもない。

 

 ただ、この人のそばにいたかった。

 

 ただ一緒にいて、ただ一緒に語り合あって、ただ同じ景色を眺めながらお茶を飲んで。

 

 それだけで幸せだった。

 

 それ以上何も望まなかった。

 

 私はただ、この人の体温を感じられる場所にいたくて─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「───キョウ?キキョウ!大丈夫か?」

 「ッ」

 

 肩を揺すられて意識が浮上する。

 ………いけない。こんな状況なのに全く関係のない考え事をしていただなんて。

 

 どうしてあんな記憶を今更……いや、過ぎたことを考えても仕方ない。これから切り替えていこう。

 

 「ごめん、少し考え事をしてただけ。何かあった?」

 「いや、ひとまず粗方避難は済ませたってことを報告したかったんだけど……」

 「………そう」

 

 ひとまず第一ミッションはやり遂げたみたい。

 やり遂げた、とはいっても、これは別に私だけの力で出来たワケじゃない。確かに私が大まかな指揮を任せられたけど、コレはたまたま周囲に人がいて、指揮を取れるような人間が私しかいなかったからやっただけ。

 それにお互いに協力かつ迅速的な対応が出来たからこそ、予想よりも早く避難を完了することが出来た。

 

 「そ、そうだッ!師匠はどうなったんだ!?」

 「安心して。さっき無事の確認が取れたから」

 

 そう言ってやり取り済みのモモトーク画面を掲げ騒がしい幼馴染に見せる。

 

 アヤメ先輩とナグサ先輩があの人の保護を優先する旨はアヤメ先輩の連絡を通して知っていた。

 あの人たちなら大丈夫だと思って、私も救命活動に専念出来たわけなんだけど……お陰で早く済んだ。

 

 

 ケガ人はあれど、想定よりもずっと少ない被害。

 

 あの人の安全も大丈夫。

 

 燃え広がっていた火も爆走していた消防車の子たちによって消火済み。

 

 

 ………そう、これでよかった筈。これ(救命)が私のすべきことだった筈だ。これが最高の結末を迎えるための()()()()()………だった筈。

 なのに、それでも、どうしても────この選択が()()だったような気がしてならない。

 言いようのない()()がずっと背筋を這っている。

 

 「じゃあアタシたちも早く行こう!なんか変なのがうじゃうじゃ湧いてるし、人手は幾らあっても良いって!」

 「え、えぇ、そうね……」

 

 考えても仕方がない、か……

 とにかく今は目の前の問題を解決しないと────

 

 「うわっ!?また変な傘が湧いてきたよ!?それもパッと見さっきの倍以上の!!」

 「なっ!?」

 

 音もなければ気配もない。

 まるで異界からやって来たかのように地面から這い上がる傘の異形。そいつらが列を成して、まるで私たちを囲むように出現して来た。

 それにオマケして、その数はさっきの比ではないほどだ。さっきの戦闘状況を考えて、今の戦力でこの数は……ちょっとマズイかもしれない。

 

 「………キキョウ」

 「………分かってる」

 

 それでも、やはり目の前の光景が現実なのだ。

 幾らその数に嘆こうとも、幾ら現実逃避をしようとも、目の前に映る光景は何も変わりはしない。

 

 「みんな、やれる?」

 「やれるっていうか……」

 「やるしかないですね!」

 

 

 

 

 

 そうして私の指揮の元、再び戦いの火蓋が上がった。

 

 

 

 

 ───痼りのように、微かな嫌な予感を抱いたままに。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 ────ドゴォォォォォォン

 

 

 ムッ!?あっちからスッゲー銃声の乱射音が聞こえるんだが!?

 

 「今度は別の場所で暴動!?一体どうなってるのよ!?」

 「分からないけど、早く応戦した方が────」

 「ッ、サドさん!!」

 

 アヤメの切羽詰まった声で叫ばれて、気づけば引き寄せられる形で抱きしめられていた。

 そのコンマ数秒後、アヤメの銃を放ったとされる振動が腕を伝って感じ、そこでようやく俺の後ろにヤツ(モブ傘)が出現していたのだと気づいた。

 

 「ククッ、サンキューな!アヤメ!」

 「ひゃっ……!あっ、ご、ごめん、サドさん……これには他意はないから!?本当に咄嗟で胸元に抱き寄せただけだからね!?」

 「……?あぁ、そんなこと分かってるが……」

 

 なんでそんな誰がどう見ても分かるであろう事実を、何故そんな大罪を犯した被告人のようにペラペラと弁明してるんだ?

 

 「アヤメ……」

 「へ〜、アヤメさんってそういうことをする人だったんですね〜」

 「ん、見損なった」

 「流石アヤメさんデス!お頭の危機を救いマシた!!」

 「フィーナ、“しーっ”ですよ?今は魔女裁判の最中なんですから」

 「魔女裁判!?そんな物騒な……」

 

 ほら、俺なんかを助けるからお前がヘイトを一身に受けちまってるじゃねェか。

 お前の誰も彼も救おうとする正義感は美徳だが、それは時と場合によるってわけだなッ!!

 

 「……皆様、そのような醜い言い争いを早く終わらせて、今は現状の把握を務めるべきでは?」

 

 ここで、ここまで静観を保っていたワカモは鋭利な言葉でガキどもを一閃する。しかし、その言葉は何処までも正論で、まさしく正論で殴りかかってきたといった感じだ。

 そんな血も涙もないワカモに続くようにガキどもも真剣に周囲を見遣る。さっきまで意味分からん裁判をしていたとはとても思えない切り替えの速さだぜ……

 

 「音もなく突然現れたね、コイツら。たまたま私の目の端に映り込んでいなかったらどうなっていたことか……」

 「それにさっきから……」

 「ん、サドばかり狙ってる」

 

 周囲にはモブ傘が一堂を介して俺たちを囲んでいた。

 その数はまたしても膨大だが、さっきよりはマシだろうな。

 

 つーか俺狙われてるってマジ?意味分からんぜ!

 

 「ククッ、とうとう俺にもモテ期がやってきたみたいだな」

 「それはまた随分とイヤなモテ期だね」

 「でも、これであっちの応援は出来なくなった」

 

 まぁ、そうなるよな〜。

 

 だって、ここで戦線離脱してもこのモブどもは俺の尻を追いかけて来るわけだし。むしろ今行っても火種を増やすだけだ。

 

 …………………

 

 「ワカモ、あっちにいる傘どもは一体何体ぐらいいるんだ?」

 「………具体的な数値はお出しすることは叶いませんが、先ほど感じた異質な気配と、ここから聞こえて来る足音の数から見て……おそらく我々が窮地に立たされた際に遭遇した数と同等かそれ以上はいるのではないかと」

 

 ………う〜む、それは大変だ。

 あのワカモですら1人で捌き切ることは不可能だった数を、たとえあっちに数十人いても果たして立ち向かうことが出来るのか否か……

 

 いや、分かっている。そんな自問自答をせずとも、もう既に答えなんて出ているのだ。

 

 しかし、俺の虐待的センスから来る直感がこう告げてくる────()()()()()、と。()()()()()()()()()()()()、と。

 まず前提に、この催しを開催している俺の友人たちは俺の嗜虐性を理解を示してくれるようなヤツらだ、まずマトモな感性などしていない。つまり俺と同種の“悪”というわけだ。

 どんなに小さな穴でも、そこからこじ開けて大打撃を与えることだって可能だろう。だって性格悪いもん。まぁ、そこが好きなんだけどな!

 

 あぁ、容易に想像出来ちまうよ………今も悩める俺の姿を見てニヤニヤとしているクソガキ(シュロ)の姿がなァ……!!

 

 だが、ここで自身の“道具”を()()()()などあり得ない!そんな4文字は俺の辞書にはねェぜ!!

 たとえこれがお遊戯のゲームだったとしても、ここで見捨てちまったらそれこそ“主人”の風上にもおけねェよな?俺はコイツらに堂々と胸を張って誇れる“主”でありたいのだ!

 

 「………ワカモ、お前あっちの援護行けるか?」

 「え!?」

 「ちょっとサドさん!?」

 

 驚愕の顔を向けてくるガキども。

 なんだァ?俺の意見に異論があるってェのか?

 

 「いい!?サドさんは今敵から狙われてるの!いつ相手が動いて来るかも分からないし、少しでも戦力を堅めなきゃ!」

 「………私もそう思う。出来るだけサドさんの護衛を強化したい。そのためにワカモの力は必要になってくる」

 「それに、ワカモさんが向かった後に此方にも敵が攻めてくるかもしれませんし……」

 「ククッ、お前らの意見もよく分かるが……俺は断固拒否するぜ!」

 

 まさしく理詰め鮨詰め袋詰めって感じで正論を並べ立てるガキども。しかし、その表情はやはり優れない。

 これは俺を心配して言っているわけではないのは理解している。おそらく一時的にあっちにいるガキどもを見捨てる選択肢をコイツらは選ぼうとしているわけで。それ故の罪悪感で顔色が優れないのだろうが……笑止千万!!ガキの癖して一丁前に“責任”を背負う覚悟なんかすんじゃねェよ!!

 

 お前らの意見も、意思決定権も、それに伴う“責任”も全て俺のものだッ!!

 

 「ッ、私たちは真剣に話していますッ!!いつものように反抗から来る行動だと思っているのなら、それは大きな間違い───」

 「いや、お前らの言葉はちゃんと理解しているぜ!その上で言おう───お前らの要求を断るとな!」

 「ッ」

 

 こればかりは譲れんな。

 何故ならこれは謂わば俺のポリシー───つまり、絶対に譲れない矜持なのだから。

 

 「ちなみに言っておくが、本当はお前ら全員をあっち側に回したいぐらいだ。俺なんか置いていってな」

 「なっ!?そんなこと────」

 「だが、それはお前らが許さない。つまりワカモだけ向かわせるのは最大限の譲歩と言ってもいい」

 

 つまり、ワカモ単品を向かわせるのは俺にとっては確定事項なんだよ。

 理由は色々あるが……まぁ、ワカモがいるなら大丈夫だろうってのが大きいな。

 

 「………どうして、そうまでして────!」

 「俺がお前らの“主人”だからだ」

 『ッ!!』

 

 俺の命かコイツらの命かどちらか選べって言われたら────非常に難しいが、辛うじてコイツらを選ぶな。

 だって癪だろ?こんなガキどもに生かされるなんてよ。とんだ生き恥だ。恥辱極まる仕打ちだ。コイツらに命を代償に守られるぐらいなら、俺は自分から死を選ぶぞ!

 たとえこれがお遊戯のゲームだったとしても、今少しでも引いちまったら……なんか、こう、俺の中にある信念っつーか、誇り高い矜持っつーか、そんな大事なモン全てがあやふやになっちまうような気がすんだ。

 

 なかなか意固地だなってか?ハンッ、結構結構。矜持ひとつ守れないようなヤツに虐待者を名乗る資格もないだろう。

 “悪”は“悪”でも、誇り高き虐待者だ!俺は自身の矜持を軽く売れるほど安い信念はしていない!

 

 

 誰1人欠けることなく全員でハッピーエンドを迎えるぞ───なんてなッ!!ハーッハッハッハ!!」

 

 

 そんな身の毛もよだつクサいセリフを吐けば、まるで俺を嘲笑うかのようににっこりスマイルを披露してくる。

 ククッ、まるで戦場に咲き誇る数輪の花ってなァ?

 

 「ワカモもそれでいいな?」

 「………仰せのままに」

 

 まぁ、いうてゲームだしそこまで重々しく捉えなくてもいいぜェ?

 これまで言ってきたことは全部例えばの話だからな!

 

 「あっちにいるヤツら助けてきたらすぐ帰ってこいよ!待ってるからな!」

 「はい!」

 

 ………さて、ワカモも向かったことだし、とりあえず周囲にいるモブどもを片付けないとな!

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「あはっ、流石はサド様と言うべきでしょうか。本当なら初動で終いにしておきたかったですが……」

 

 『まぁ、()()()()は成せましたし良しとしましょう』と、広がる惨状を見下げるように、シュロは独りごちる。

 自身が犯した所業をまるで他人事のように呟く彼女は、この煙火が燃え広がる景色に一切興味がないような態度であった。

 

 いや、実際興味がないのだろう。

 事実、彼女の瞳には燃え広がる惨状よりも、ただ一点の炎───異常者のみを映しているのだから。

 

 「ですが、次で詰みですね。何故なら手前様らはコレの対抗手段を持ち得ていないのですから」

 

 ぺたりと一枚捲る。

 すると、彼らの目の前に暗黒を纏った化け猫が音もなく出現した。

 

 

 

 

 「さぁ、どうか手前に見せてください」

 

 

 

 「手前様がこの危機をどう乗り越えて下さるのか………手前らはそれが見たいのです」

 

 

 

 

 彼女は嗤う。

 それはまるで舞台を眺める幼子のように、純粋な輝きを帯びた目を以て。

 

 

 

 

 

 その丁度真上で、キラリと()()()()光を帯びたことにも気づかずに。

 

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