汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

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ククッ、サディストの皆さん、お久しぶりです。
ちょっと色々やってて執筆できていなかったんですが、今章がもうちょっとで終わるので頑張って描き終えようと思っています。いや本当に終了間近なのにスッゲー中途半端なところで終わってたんですよ、過去の自分。どっかで行き詰まったんですかね()


第46話

 

 

 

 

 

 『あぁ?何処だここ?』

 

 気づけば狭い部屋にいた。狭くて、まぁまぁ古くて、それでも住むには困らないであろう程度の部屋。だが、何処となく懐かしさを覚える、そんな部屋だ。

 

 『……気味が悪ぃな』

 

 見覚えのない場所である筈なのに、やけに既視感がある。

 知らない場所である筈なのに、妙に心が落ち着く。

 ククッ、まるで意味が分からないな。俺はこんな場所知らねぇし見たこともねぇ。これが夢なら早く醒めてほしいもんだぜ。

 

 ───ガチャリ。

 

 部屋の奥から鍵が差し込まれる音が聞こえた。ドタドタとこちらに近づく足音も聞こえてくる。

 誰かがこの部屋に入って来た──つまり、俺以外の侵入者がこっちに来るということ。警戒心が底上げされていく。

 

 だけど。何故か不思議なことに。俺はソイツを知っているような気がして────

 

 やがて扉は開け放たれる───

 

 

 

 

 

「ただいま、兄さん!」

 

 

 

 

 見知らぬ(見知った)ガキが、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──きよ。起きよ、サド」

 「フガッ」

 

 あぁ〜?誰だテメェ〜……?せっかくいい夢見れてたのによ〜。俺の睡眠を妨げようなんざ、よほど恐れ知らずでバカな野郎に決まって────

 

 「ほれ、尻尾触らせてやるから」

 「んぅ……?」

 

 フワフワなものに包まれた。布団なら良かったが、やけに見知った感触のフワフワだったので今しばらく考えてみることにした。

 う〜〜ん、このモフモフ具合はワカモか?いや、あいつのはもっとビクビク震えていたような……。シロコ?いや、あいつはフワフワじゃなかったな。

 ………つーことはアイツしかいねぇじゃんか!!

 

 「ったく、クズノハかよ…………あ?クズノハ?えっ、何でお前がいんの?」

 「久方ぶりの再会にしては随分と辛辣ではないかえ?のう、友よ」

 

 久方って言っても数ヶ月とそこらだろうが!

 

 「何やら魘されていたが悪い夢でも見ておったのか?」

 「あ〜?そうそう!聞いてくれよ!なんかな、えっと………あれ、全然思い出せねェ……」

 

 なんかオモロい夢見てた筈なんだがなぁ。もう何見てたか忘れちまったぜ。

 

 「一瞬にして無限。故に記憶に留めることが叶わぬ。それが夢というものじゃ」

 「そういうもんか」

 

 クズノハに手を差し伸べられ、その手を掴み起き上がる。僅かに着いていた雪を払い、クズノハの方へと顔を向ける。

 クズノハは落ち着き払った淑女然たる笑顔を向けて。

 

 「少し散歩でもせぬか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも思うが、この空間は摩訶不思議に満ち溢れている。

 

 春の桜が咲いているかと思えば、秋の彼岸花が咲いていたり。温かい風が吹いているかと思えば、地面にはガッツリ雪が積もっている。

 クズノハが言うには、此処は過去・現在・未来といった概念がない場所……であるらしい。よく分からんが、とにかく凄い場所ってのは分かったぜ!

 

 さて、現在はそんな摩訶不思議な場所で、これまた摩訶不思議に建造された多数の鳥居をゆっくりと潜り抜けている最中だ。

 

 「………時間の流れとは時に残酷であり、時に奇跡を生む。どれだけ生を望んでも、どれだけ栄光を積み重ねようとも、いずれ平等に終わりは訪れる。それらは生きていく上で当然であり必然であるが、なかなかに残酷で理不尽だと思わんか?」

 

 なんか突然哲学的なことを語り出したぞ、コイツ。

 だがまぁ、クズノハの言い分には共感するぜ。確かに時間の流れは残酷だ。だって、時間がなかったらずっとガキどもを虐待出来るっていうのに、1日は24時間と決まっているからどうしても区切りが出てしまうからな!

 あぁ、残酷だ。惨たらしい。時間があるせいで、俺の虐待出来る瞬間が減っているのだ。許してなるものか!

 ん?それは俺だけの残酷さであって、ガキどもにとってはむしろ有り難いものなのでは……?俺は訝しんだ。

 

 「まぁな!だけどよ、お前のいう奇跡って一体何なんだ?」

 

 クズノハは言ったのだ。時の流れは残酷と奇跡の二面性を持っている、と。

 『時間の流れって残酷よね〜』とは近所のおばさんがお隣同士でよく話す際に取り上げられる内容としても知られているが、時の流れが奇跡を生むとはあまり聞いたことがなかった。

 文明の発展?歴史?それとも人の進化?何にせよ、クズノハの中では既に答えが出ているみたいだし、ほんの軽い気持ちで聞いてみただけ───だったのだが。

 

 「それはの────()()()()()()()()()()()、妾にとってはそれで十分証明たり得るのじゃ」

 

 ふむ、虐待IQ180の頭脳明晰で賢い俺は察した。

 クズノハのヤツ……特に何も考えずに言ってたんだろうな、ってな!

 

 分かるぜ。ちょっとカッコつけてみたくて言ってみたはいいが、なんか後に引けなくなってしまったんだよな?そんで俺が深く聞いたせいで、お前は今追い詰められてるんだよな?

 だから、“俺と出会えたことが奇跡だよ”なんてよく分からんことを言い始めたんだろう。すまねェ、俺が察せなかったばっかりに……!

 

 俺は『そうか』と当たり障りのない返事をするが、クズノハはカラカラ笑って再び口を閉ざした。

 ………結局何が言いたかったんだろうか。

 

 「さて、其方がこの世界に連れ込まれてから、彼方の世界で言うと軽く1時間弱は経過しておるが、何か尋ねたいことはないのかえ?」

 

 もうそんなに経ったのか。クズノハと久々に会えて嬉しかったからか、少し会話に夢中になってたのかもな。楽しい時間は時が過ぎるのが早いって言うし。

 楽しい時間を奪う所業……やはり時の流れは残酷だぜ……!俺以上の虐待者かもしれんな!

 

 にしても、聞きたいことか。聞きたいことね……………あっ。

 

 「シロコは大丈夫なのか?一応ゴルコンダさんに預けたつもりなんだが、少し気になってな」

 

 そう尋ねると、クズノハはポカンとした顔をして、再びカラカラと笑い始めた。

 ククッ、コイツ、自分で聞いておきながら笑い始めるとか、流石は俺の友なだけある。ちゃんと狂ってやがるぜ。

 

 「くふふっ、自身の身よりも童の心配か?」

 「あ?俺の体なんてどうだっていいわ。どうせ何ともないんだろうし」

 

 だってただのゲームだし。俺が怪我して気絶していようが、色々丈夫だからきっと大丈夫な筈だ。

 

 「あい分かった。まずは童の安否じゃが………ふむ、どうやら其方の言う通り、確りと仲間が保護しておるようじゃぞ。ただ、疲れによる蓄積か、もしくは精神的ショックのせいか分からぬが、今は意識を失っておるようじゃ」

 

 精神的ショック?虐待された恐怖が遅延的にやって来たとか?

 ククッ、流石は俺。何処までも悪虐を尽くす虐待王をしていやがる。

 

 「他のガキどもは?」

 「大事ないが……………童共の()()()()、聞きたいかえ?」

 「いらん。問題ないならそれでいいぜ」

 

 ゲームとはいえビーム直撃してぶっ倒れたヤツもいたしな。

 問題ないなら詳しく聞かなくてもいいだろう。

 

 「というか、俺は何でここにいんだよ。あの化け猫の胃袋の中がこの世界に繋がってたとかとんだ笑い話だぞ」

 「くふっ、当たらずとも遠からずといったところじゃな。其方はあれに飲み込まれ、妾が此処に退()()させた」

 「退避?」

 

 その言葉にほんの少し違和感を覚えて思わず鸚鵡返ししてしまったが、クズノハは嫌な顔ひとつせずにその違和感の答えを教えてくれた。

 

 その内容を聞いて自分なりに咀嚼する。

 

 「………つまりあの化け猫には第二形態なんかなくて、本来アヤメの一撃で終いであった筈が、突如発生したイレギュラーの介入によって化け猫が暴走した、と……」

 「然り。さらに付け加えて云うならば、あのまま喰われておったら妾でも予測出来ぬ場所に連れ込まれていたかもしれぬな」

 

 ふ〜ん、それってよ……

 

 「…………俺、結構危なかった感じ?」

 「ようやっと理解に至ったか、阿呆め」

 

 『全くもって仕方のない男よ』と宣う我が友に一言申したいがそれは出来ない。なんせクズノハがいなかったら大怪我どころじゃ済まなかったかもしれないからな。

 

 それよりも気になるのはアヤメの有終の美を貶したバカ野郎の存在だ。

 あの広場の周辺には俺とガキ共と化け猫しかいなかった筈。誰があんな無粋な真似を……

 

 「クズノハ!お前は知ってんのか?俺の“道具(ガキ)”の功績に泥を塗った真犯人をよォ……!!」

 「…………無論、知っておる。しかし、“アレ”はあまりに強大すぎる故、今の其方では指先に触れることさえ叶わず、精々大空を眺めることしか出来ぬ」

 「知るか!今はダメでもいつか絶対ぶん殴りに行くぜ!俺の“道具”に手を出したことを後悔させてやる!」

 

 さぁ、言え!俺を怒らせちまったバカ野郎の名を!

 

 「………あい分かった。どのみち、其方が目醒めた時点でこうなることは目に見えていた。遅かれ早かれ伝えようと思うてたおったが、それが今宵になっただけのこと」

 

 いつもニヤニヤと余裕たっぷりな面をしているクズノハが緊迫感と緊張感を感じさせる面様へと変貌させ、俺を見る。

 

 そうして告げられた名は───俺も何処かで聞き覚えのあるものだった。

 

 

 

 

 

 「“アレ”の名は【色彩】。これから其方が立ち向かわなくてはならない、厄災とも呼べる敵の名じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アレが【色彩】……なるほど、想像以上に厄介な現象です」

 「そなたらでも理解し得ない現象があったとは驚きやねぇ……流石に“アレ”は探求内容には含まれんのかい?ゲマトリアさんや」

 「…………ご存知でしたか。今のメンバーで表立って行動している人間はサド以外いない筈ですが……」

 「人の噂を馬鹿にしちゃならんよ。どんな形であれ、動いている以上一挙手一投足全てが観察対象となり、必ず人の目に入り込む。否が応でも人の口伝の対象となる。そして、それらがやがて噂となり、風に運ばれて遠くの誰かに届いていくのさ」

 「なるほど、誡告感謝します」

 「そういうこったぁ!!」

 

 深い夜の帷が堕ちたここは百鬼夜行連合学院の中でも最北端に位置する森林地区だ。

 観光街からかけ離れた位置にあるため、その森林は殆ど人の手が加えられていない未踏の地のような場所であり、人から身を遠ざける、或いは公では話せないような内容や逢瀬でもここならば可能だということだ。

 

 さて、そんな森林には5つの人影があった。

 より詳細に言えば、うち2名が瞼を閉ざし、毛布や簡易的な枕に身を包まれながら眠っており、うち1名が臆面もなく泣き喚きながら異形の1人に抱きつき、うち2名が空を見上げながら会話をしている。

 

 ならば彼ら彼女らは志を同じくする仲間か───否、そういうわけでもない。

 彼らはただ消えた筈の男の回収をしに来た際にちょうど鉢合わせ、今はお互いの利害の一致のために情報を交換しているだけの義務的な時間でしかない。

 

 「グスっ……コクリコ様ぁ……まだサド様がお目覚めに……」

 「そう慌てなさんな。ついさっき容態を見て問題ないと確認したばかりだろう?」

 「で、ですがぁ……!」

 

 またしても目端に涙を溜め込ませるシュロを見て、コクリコは『然もありなん』と納得する。

 なんせ、故意でなかったとはいえ自身が嗾けた怪異によって慕う人物が気を失っているのだ。些か理解を示してやる必要はあるだろう。

 

 「目覚めないと言えば……」

 

 対してゴルコンダは自身の元に投げ込まれた少女───砂狼シロコ(狼の神)を見遣る。

 彼女もまた深く眠りについており、それが肉体的疲労が原因か、はたまた精神的なものに由来するものかは計り得ないが、ただ1つ分かるのは、この少女もまた目立った外傷はないということだ。

 

 一先ず彼ら彼女らを確保出来たのは良い。しかし、次に待ち構える難問にゴルコンダは頭を悩ませていた。

 

 「【色彩】……太古から伝わる不吉な光。以前読んだ古書にはそう綴られていたねぇ。なるほど、何とも気味の悪い光なことだい」

 

 そう、【色彩】は何も今回初めて観測されたわけではない。不規則な周期を経て、度々ここキヴォトスに侵攻している形跡も見せている。

 故に厄災、故に災禍。だからこそ、“アレ”はそういう現象として受け止め、どうにかして対抗手段を考えてきた───が。

 

 「……【色彩】は意志も欲望も目的もない不可解な観念───我々はそう解釈してきました。しかし、先ほどの行動を見る限り、“アレ”には明確な“意志”と“計画性”を感じます」

 

 ただの現象、ただの災禍であったならばどれだけ良かったか。

 これまで意志のない現象をどう食い止めるか、または撃退、消滅させるかと考えていた筈が、どうやら“アレ”には意志が、目的があるらしいときた。

 

 「しかし、幾つか疑問が残ります」

 

 ゴルコンダは非常事態の中でも冷静であった。

 冷静であったが故に気付けた2つの疑問点を並べ立て、自身の考えを整理する意味も含めて、順序良く説明を始める。

 

 「1つはキヴォトスに攻め入ったタイミングです。意志を持っていたとはいえ、“アレ”にもキヴォトスへ侵攻する何らかのキッカケが必要でしょう。そして、これまでキヴォトスに長らく姿を見せてこなかった理由もまた同じ。【色彩】は“神秘()”に引き寄せられるという仮説が正しいのであれば、何故今になって侵略してきたのか、またこれまで侵略してこなかった理由はどのようなものか、そしてそこに規則性はあるのか、気になるところですね」

 

 「そして、もう1つはこの()()()()()です。過去の記録や古書から見ても、【色彩】の到来時は少なくとも狂気が浸透したと分かる程度には被害が齎されていた筈です。しかし、現状を見る限りそういった被害は見られず、あった被害と云えば怪異が暴走しただけというごく小さなものでした。何故“アレ”はキヴォトスの全域にいる“神秘”を我が物としないのでしょうか。他に目的があるのか、それとも別の理由があるのか」

 

 一通りの疑問点を並べ立てたが、コクリコは何処か困ったような顔をして首なしの彼を見つめていた。

 

 「すまんねぇ、そういったことには疎いんだよ。なんせ我は風流を語る怪談家、疑問と仮説を説く探求者ではありゃせんので」

 

 『ただまぁ……』と、その細くしなやかな人差し指を顎に押し当て。

 

 「()()()()()()()()()()()()()が“アレ”にこの場所(キヴォトス)を教えはった………とかならあるんじゃないのかねぇ」

 「─────」

 

 コクリコの純粋な疑問と推測。しかし、その何気ない一言がゴルコンダの思考に潤滑油を注いだ。複雑な論理と回路を組み込んで考えていたからこそ気付けなかった灯台下暗し。そこが小さな歯止めとなっていて、脳の思考全てにストップがかかっていた。

 

 そして、その不純物はたった今取り除かれ、凝り固まった思考が一気に活性化して。

 そして思い出したのだ。血と純白のドレスを纏った()()のことを。

 

 「まさか────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やっぱやることやってんじゃねェか、あのババァ」

 

 どうやら【色彩】が『こんばんはー!』してきた原因があのババァ(ベアトリーチェ)にあったらしい。

 だろうと思ってたぜ!黒服さんたちの予想がそうそう外れることがねェってな!

 というかぶっちゃけ忘れかけてたわ、アリウスで【色彩】がうんぬんかんぬんって。ガキどもとの虐待の思い出ばっかで記憶がなァ。

 

 「じゃが、当の本人は儀式は失敗したと思うておったな。()()()()うんともすんともしなかったからの。【色彩】の力を手に入れることができなかったのがその証拠じゃ」

 「何やってんだ、アイツ」

 

 おまけに醜態を晒す始末。探究者名乗るくせして気が短かったことが仇となったな。

 

 「それに、“アレ”はまだ()()()()()()()()()()()()()。今回はいわば寝返りを打った程度じゃろう。故にそこまで心配はしなくても良いが………」

 「ほうほう」

 

 まるで()()()()()みたいな言い方じゃねェか。とどのつまり、起こしちゃいけないヤツを起こしちまったってことでいいんだよな?

 

 「そして、いずれあの厄災は必ず其方の前に現れる。必ずじゃ」

 「あ?なんでだよ」

 「…………遠い遠い過去の因縁から、としか伝えられんな。まったく、其方は何故こうも厄介な者らを惹き寄せるのか。脇が緩いのではないのかえ?ん?」

 「なんで俺が責められてんだよ」

 「胸に手を当てて聞いてみたらどうじゃ?朴念仁」

 

 ん〜、なになに………『お前は最高の虐待者だぜ!』って言ってるが?

 

 「ククッ、ババァに叩き起こされたのは憐れでならねェが、俺の“道具(ガキ)”の晴れ舞台を穢した罪、いつかキッチリ返してもらうぜ!」

 「…………くふっ、相変わらず無茶苦茶じゃな、其方は」

 

 威厳に満ちたクズノハは何処へやら、今は容姿相応にケラケラと爆笑するゲラへと化した。

 何が面白ぇのかいまいちピンとこねェが友が笑ってくれるなら気分が良いぜ!

 

 「んお!?体が透けてるゥ!?」

 「もうそろそろ時間のようじゃ。楽しい時間はあっという間に終わる、やはり時間とは甚だ残酷よの」

 

 そうか、帰っちまうのか。もうちょっとゆっくりしていきたかったが、仕方ねェな!

 

 「おい、クズノハ」

 「ん?」

 「()()()!」

 

 別れの挨拶をすれば、目を細めて嬉しそうに微笑むクズノハ。

 『またの』と手を振る友が段々と薄れていく。そして、彩華やかな世界は真っ白の空間へと変わり────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────ふっか〜〜つ!!!」

 「おぉ、元気な起床やね」

 「サド様ァ〜〜!!」

 

 俺、復活!!俺、復活!!俺ッ!!復活ッ!!!

 ハーッハッハッハ!!あっちの世界もいいがこっちの世界もいいな!おいおい、どうしたシュロ。そんな泣きっ面に蜂みたいな顔しやがって!ほれ、ハンカチを貸してやる!

 

 「サド」

 「おぉ、ゴルコンダさん!シロコのことありがとうな!」

 「いえ、礼には及びません。彼女もまた重要なサンプル。あなた程ではないにしても優先順位は高い存在ですから」

 

 またよく分からんこと言ってるな!まぁ、助けてくれたし別にいっか!

 

 「そういやなんでゴルコンダさんがここにいんだ?」

 「黒服からの伝令で、あなたに新たな指令を与えるべくやってきました。本当にタイミングよく介入できて良かったです」

 

 あ〜?指令だァ〜?

 つーことはよ〜……

 

 「バケーションは終了ってか?」

 「そういうこったぁ!!」

 

 おぉ、珍しくデカルコマニーさんから返答もらったな。

 

 「ククッ、百鬼夜行のガキどもともここでおさらばか」

 「申し訳ありません、ちゃんとした別れの場も用意できず……」

 「オイオイ、そう謝らねェでくれよゴルコンダさん。俺と“道具”の間に別れの言葉はいらず。好き勝手虐待して、用が済んだらポイっと捨てる。これが悪虐の限りを尽くす虐待王に相応しい振る舞いだ。違うか?」

 「………そうですね、その通りです」

 

 ククッ、むしろ良かったぜ。もし、今アイツらのところに戻れば、またしても虐待心を擽られて百鬼夜行から離れられなくなるところだっただろうからな!

 

 「えっ……サ、サド様、行ってしまわれるんですかぁ……?」

 「まぁな。だが、どうせまた何処かで会うだろ!次会ったときは泣き虫を治しとけよ!」

 「な、泣き虫じゃありません!!」

 

 少なくともこうやって腰にしがみついて泣き喚いている時点でガキで泣き虫には変わりねェな!

 

 「達者でな、サド」

 「あぁ、短い間だったけど、元気そうな顔見れて良かったわ。また今度会おうぜ!ガキどもをよろしく頼むな!」

 「はぁ、まぁ、これからお互いお世話になっていく関係になる予定だからあながち間違っちゃいないけどねぇ……」

 

 最後に別れのハグをされ、二人は闇夜に消えていった。

 さて、俺たちも行くか。

 

 「シロコは……起きてないな」

 「私が運びましょうか?」

 「いや、いいぜ。“道具”の管理は主の務めだからな!」

 

 改めてシロコを背に背負い、ゆっくりと森の奥へと進んでいく。

 

 ククッ、楽しかったなァ、百鬼夜行の旅も。

 百鬼夜行の旅は休暇というには些か濃いものだった。アリウス、アビドスとはまた違うガキどもだったが、どれも虐待しがいのあるいいガキどもだった。

 そしてワカモ。お前のことは本気で仲間に入れてやろうと思ってたんだ。だが、運命がお前を守ったらしい。アイツほど“悪”の才能が溢れたガキもいねェだろうが……まぁ、しょうがねぇ!今回は諦めてやるから感謝しろよ!

 

 「ハーッハッハッハ!!!あばよ、百鬼夜行!!そして待っていろよ、次のガキども(被害者)!!!お前らの悪夢が今迎えにいってやるからなァ!!!」

 「サド、うるさいですよ」

 「すまねェ!!」

 




恐ろしき虐待者は前へ進む。しかし、少女たちは───
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