汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。   作:史上最恐の悪役

54 / 56

サディストの皆様、お久しぶりです。作者です。
就職活動やら卒論やらで忙しかった昨年ですが、今日を以てとりあえずひと段落つきました。就職活動も卒論も、もう二度とやりたくないですね。

本作も少しずつ再開できたらと考えています。執筆の感覚取り戻さなきゃ(使命感)

というわけで間章です。ただ、読んで下さる皆様に感謝を。


短編 親愛なる、はじまりのあなたへ②
砂狼シロコ④


 

 

 

 

 

 ようようよう!天下の大悪党にして、子々孫々に語り継がれる虐待者、サドだぜ!

 

 百鬼夜行を離れて数週間経ったわけだが、今俺たちが何をしているのかというと────

 

 

 

 

 

 

 「天然風呂はやっぱり気持ち良いよなァ、シロコ!!」

 

 「ん」

 

 

 

 

 

 

 雪山で露天風呂を満喫中だぜェ!!

 

 

 何故いきなり堂々とお風呂に浸かっているのか。察しのいい奴は既にお分かりのことだろう。

 お風呂……つまり、あの温泉狂い共(温泉開発部)と再会し、『掘り起こしたんだから入ってってよ!』と勧められたからに他ならない。

 まぁ、特に行き先も決めてなかったし、コイツらの提案は渡りに船だったぜ……!教えてくれてサンキューな!

 

 「ククッ、それにしても良かったのか?シロコよ。タオル巻いているとはいえ、俺の前で裸体を曝け出してよ」

 「………なんで?サドにならいつでも───」

 「クククッ、分かった。もういい」

 

 つまり、様々な虐待を経て、コイツの情緒は既に擦れに擦れ切ってしまったというワケか。

 嗚呼、可哀想に。乙女としての恥じらいすらも感じられなくなるとは……。お前を拾った頃は、まだ忌避感や抵抗は多少なりともあったぞ?

 

 「見て見て、せくしーぽーず」

 「10年早いわクソガキ」

 

 ケッ、なんて芋臭いポーズなこった。“うっふ〜ん”やら“あっは〜ん”みたいな擬音が聞こえてきそうだぜ。

 

 “大人ごっこ”のお遊戯をし出したシロコに『冷えるぞ』と諫言して再び湯船に浸からせた後、しばらく無言が続いた。

 山奥ということもあって、かなりの雪が降り積もる。シロコはその白銀の世界に見惚れていたようだが、俺は違う。

 

 俺が考えていたのは───このガキ(シロコ)の今後のことである。

 

 というのも、この前電話で黒服さんから言われた言葉が妙に頭に残っており、最近はこればかり考えている。

 

 

 

 

 

 

 

 『死の神──いえ、砂狼シロコとは縁を切るべきでしょう。アレはいずれ貴方に厄災を齎す存在です』

 

 

 

 

 

 

 

 別に信じちゃいない。むしろ厄災だとかバカバカしく思う。

 しかし、黒服さんの目は本気(マジ)だった。いつもなら『クックック、冗談ですよ冗談。黒服だけにブラックジョークです。クックック』と笑って終わらせる筈なのに、今回ばかりはそれがなかった。つまり、結構ガチで忠告をしてくれている。……意味が分からん。

 しかし、この話が嘘であれ真であれ、コイツの将来を考えるキッカケをくれたのは確かだ。

 

 「なぁ、シロコ。百鬼夜行での生活はどうだった?」

 「………楽しかった」

 

 楽しかった、ねぇ。

 

 「………解放してやってもいいぞ」

 「え?」

 「聞こえなかったのか?俺の虐待“道具”から卒業し、アイツらと共に穏やかで平穏な日常を過ごすことを、特別に許可してやると言ったんだ」

 

 別に、これは慈悲でもなんでもない。解放してやってもいいと思ったから、解放してやるだけ。適当に虐待し、これまでのように適当に放り捨てるだけ。つまり、ただの気まぐれだ。

 ただ、何だろうな。コイツが百鬼夜行の連中と一緒にいて、笑ってる姿を思い出すとよ……何でか、なぁ?こう……なぁ?分かるか?むしゃくしゃすんだよ。あいつらの輪の中にシロコがいないのが、何となく気持ち悪いっつーか、しっくりこないっつーか。

 

 などと、ワケの分からない感情に振り回されていると、ピタリと何かが肩に伸し掛かる。

 シロコの頭だ。さっきまで真正面で景色見ていた癖に、気づけば隣に忍び込んでいやがった。

 

 「前にも言った。絶対に離れないって」

 「ククッ、過去は過去、今は今だ。多少なりとも世界を知り、お前の心にも変化があったのではないか?」

 「…………」

 

 見て見ぬふりをして閉ざしていた物を、無理やりこじ開けた。

 

 「……確かに、百鬼夜行の生活は楽しかった。百夜堂のバイトも、雪合戦も、お祭りも。みんなと離れるのも、少し寂しい」

 「ふん、なら───」

 「でも、サドがいないのはもっと寂しい。サドがいないのはもっと嫌だ。………サドがいなかったら、多分、もう生きていけない」

 

 あぁん?

 

 寂しいだァ?

 

 もっと嫌だだァ??

 

 もう生きていけない、だァ???

 

 「ハッ、のぼせてきたか?頭が上手く回っていないようだ。そりゃまるで愛の告白みてェだぜ?」

 「ッち、違うっ。これは……っ」

 「オイオイ、否定するなら、せめてその真(・)っ(・)赤(・)な(・)顔(・)を冷ましてから言えよ」

 「〜〜〜ッッもう知らないっ」

 

 語彙力の低い言葉足らずなガキを、大人気なく言葉で蹂躙する───これぞ大人の特権だな。

 シロコは完全に拗ねてしまったのか、背中を向けて徐々に離れていく。負け犬の背中とは実に滑稽なものよ。それよりのぼせてんなら早く上がれや!

 

 「………私も聞きたいことがある。どうしてサドは私を旅に連れ出してくれたの?」

 

 静寂に満ちた空間を裂くように、ふと問いかけられた疑問は中空を伝って、俺の耳に届く。

 数秒吟味し、そして深くため息。

 

 「特に理由はねェ。ただの暇つぶしであり気まぐれだ」

 「……そう」

 「だが、強いて言うなら───お前が俺に似ていたからだ」

 

 首を傾げ見上げてくるシロコに再びため息。

 

 「いつか話したように、俺も目覚めた最初は記憶がなかった、お前と同じでな。そんで、とある人に拾われて今もこうして生きているワケだ、お前と同じでな。そして、この世界を理解するためにほんの少し旅に出た……今、お前がしているようにな」

 

 シロコを指差し、不名誉にも『俺とお前は似た境遇だ』とこれでもかと突きつける。

 

 「俺は旅に出てよかったと思っている。記憶は戻らなかったが、それ以上に大切なもんに出会えた。お前にとってどうなのかは知らんがな」

 

 その旅路で、我が崇高な“虐待”に理解を示してくれる友と出会えた。

 

 「そんで、旅すりゃテメェのあ(・)の(・)辛気臭い面も取れるだろうと思っただけ。ただ、それだけだ」

 

 出会った当初のコイツは、まさに生きているだけの空っぽな人形みてェなヤツだった。

 自分を知らない。世界を知らない。周囲を知らない。常識を知らない。友を知らない。愛を知らない。

 そん時の顔ったらありゃしない。俺ァ辛気臭いのが嫌いなんだ。ただただ不愉快。見ているだけで腹が立つ。だから、コイツを矯正してやったワケよ。

 

 「だ〜〜が?最近はそんな面を見ることも滅多になくなったなァ〜?つまり、お前は俺の矯正プランの餌食となったワケだ。クククッ……!」

 「……ん、そうかもね」

 

 あの負けん気が強いシロコが遂に負けを認めたか……!

 しかし何だその気持ち悪い面は。負けを認めた癖に、随分と気持ちのいい笑顔をするじゃねェか。

 俺としては笑顔じゃなく悔しがる顔が見たかったんだがな……

 

 

 結局シロコは俺と一緒に旅することを選択した。自由になれるチャンスを自ら手放したコイツはバカとしか言いようがないが、俺的にはこの結果は大いに満足だ。コイツの心は既に屈していることの証明ともなった。

 だが、それはそれとして、『本(・)当(・)に(・)こ(・)れ(・)で(・)い(・)い(・)の(・)か(・)』と、妙に騒めく違和感も、心の中の何処かで確かに存在しているのも、また事実であった。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 山を降る頃には、空はすっかり真っ暗。しかし、それに反するように、周囲の村々には明かりが灯る。

 

 「………あぁ、今日は大晦日だったな」

 

 だからこんなにもお祝いモードなのか。虐待以外興味ないからすっかり忘れてたぜ。

 そうだぜ、ゲマトリアのメンバーにメール送っとかないとな。えーっと、『今年もありがとうだぜ!来年もよろしくお願いしますだぜ!』っと………って返信はや。アンタら本当は暇なのか?

 

 「いっぱい屋台あるね」

 「ククッ、最近はお祭り過多なんだがな」

 「金魚掬いしてきていい?」

 「しょうがねェな──ってお前自分のお金持ってないだろうが」

 

 憐れみの駄賃を渡そうとするも、シロコはそれを拒否。

 どういうことだ?と思う間も無く、シロコに手を引かれ、なんと俺ごと強制的に金魚掬いをやらされる羽目になった。

 その後もヨーヨー風船取り、輪投げ、射撃。シロコの思うがままに、屋台という屋台を蹂躙尽くす。ちなみに、射撃で数量限定の“スーパーペロロ”を撃ち当てた。限定品なのにこんなしょぼくれた屋台で売ってもいいのか……?

 

 「………お前、よく飽きないな」

 「ん、サドがいるから」

 「???」

 

 そんなこんなで、いよいよ年が明けるまで、残り数分となった。

 人間とは不思議なもので、各々、昨日までは全く違うことをしている人間たちが、今日この瞬間だけは新年に想いを馳せるのだ。

 俺か?俺は365日24時間ずっと虐待のことしか考えてないが?

 

 ふと、僅かに肩を震わすシロコの姿が目に入る。あのフワフワで体温が高いシロコといえど、この冬の寒さは流石に堪えるようだ。

 

 …………しょうがねェな〜!

 

 「ほれ」

 「ん……マフラー?」

 「俺の手編みな。あったけェだろ?」

 「……………ん、あったかい。これ貰ってもいい?」

 「あ?別にいいけど……」

 「ありがとう」

 

 ハッ、何がそんなに嬉しいのかね。たかがマフラーだろうが。こんなんで喜ぶとはコスパの良いこった。テメェには、このマフラーの慈悲以上に、ありとあらゆる虐待をし尽くしているというのによォ。

 

 こうして俺たちは新年を迎えた。

 今年の年明けは、少し寒かった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。