汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
惨状溢れる部屋に迷える子羊が一匹……
「ククッ、今日もいい出来だなァ!!」
俺は今、ガキどもの今日の夕飯であるカレーを作っている最中だ。
カレーと聞けば、ガキどもの人気ランキング上位を占める超人気料理であるということがまず頭の中に思い浮かぶだろう。しかし、俺がそう簡単にガキどもに超人気料理であるカレーを食べさせると思うか?
─────否、断じて否である!!
今回の夕飯はカレーだが、普通のカレーじゃあない!ガキどもが大っ嫌いな野菜をふんだんに入れた
テメェらの大好きな肉はねェぜ?代わりに大っ嫌いな野菜を入れてやったから感謝するんだなァ!!
「ククッ……!!この大鍋の蓋を開けたときのガキどもの表情が楽しみだぜェ。─────さて」
そう区切って、俺は調理室の出入り口に一番最寄りのある机を見る。もっと詳しく言えば、机の下からひょっこりとはみ出ている
さっきからピョコピョコ揺れてるチョロ毛が妙に腹立たしい。アレで隠れているつもりなのか?まさしく“尻隠して頭隠さず”ってなァ。
「それで………そこにいるのは誰だァ?」
「ひゃう……!?」
そこに誰がいるのか分かっておきながら、敢えてそこにいるガキに問いかけた。
チョロ毛が一際大きく揺れ動き、悲鳴にも似た甲高い声も出ていた────が、そこから出てくる気配はない。
オイオイ、まさかまだバレていないとでも思っているんじゃあないだろうなァ?
ククッ、いいぜェ?どうしても出てこないっていうんならこっちも切り札という名の虐待をしてやるぜェ……!!
「あと10秒以内に出てこなかったら、今日のアイスは抜き────」
「は、はい!!私です!私ですぅ!!だからアイス抜きにしないでくださいぃぃぃぃ……!!」
「ならさっさと出てこいやァ!!ヒヨリィ!!!」
「
ヒヨリが机の下から出てきた瞬間距離を詰め、コイツの両頬を摘みながら怒鳴り散らす。
この頬……!随分と柔らかくて癖になりそうな頬じゃねェか!肉ばっか食ってきたから、こんな駄肉が付いちまったんだなァ!!
やはりヘルシー野菜カレーにしといて正解だったぜェ。
「うぅ……もう終わりです……。アイスのお預けは何とか免れることが出来ましたが、その代わりに今日のご飯が減らされちゃうんですぅ。みんながモリモリ食べている中、私はカレーのルーだけで寂しくちょびちょびと食べているんですね……。うわあぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「あぁん!?減らすわけねーだろうが馬鹿め!!テメェらには全員平等に虐待を敷いてやるんだよ!!」
何を世迷いごとをほざいてやがる!テメェだけ虐待を逃すわけねェだろうが!
「え!?ぎゃ、虐待ですか?……………うわあぁぁぁぁぁん!!やっぱりお終いですぅ!!きっと今の罰でご飯とルーが大盛りできちゃうんですぅ!!」
なんか妙な間があったが、まぁいい。ちょうどコイツから良い虐待アイディアを教わったからなァ……!!
ククッ、相変わらずお馬鹿さんだぜェ、テメェはよ〜!!自分のうっかり発言で自分自身の首を絞めてるんだからなァ……!!
「ククッ……!!ならテメェの言う通り今日の夕飯は2倍にしてやるよ!!俺に感謝するんだなァ!!」
「…………じゃあ牛乳も?」
「いいぜェ、牛乳も2倍だァ!!」
「えへへ……ありがとうございます♪」
“ありがとうございます”だとォ!?コイツ……嫌味か!?ここまで虐待されているのにも関わらず嫌味を言えるのか!?
ククッ、コイツはガキどもの中でもかなり図太い神経をしていると思っていたが……まさかここまでだったとはな。見直したぜ……!
「それで?何でここにいやがるんだ、ヒヨリ」
「えっと……その……匂いに、釣られちゃって……」
ほう、匂いにか。まぁカレーだし、匂いが漏れ出たのは容易に予想が出来る。
そして迂闊にも、ヒヨリは虐待をするための準備室に入り込んでしまったと。ククッ、ホラー映画だと真っ先に死ぬタイプだぜ、コイツ。
……しかしそうだな、コイツに先に虐待ネタバレをしてもいいかもしれない。所謂、普段の虐待とはまた違う趣向───変化である。
日々技術が変化や進化していくように、虐待もまた変化や進化をする。今回はその試験調査のようなものをやってみようじゃないか。
それに、ヒヨリはなかなか素晴らしいリアクションを取ってくれるしなァ。
「オイ、ヒヨリ。中身見たいか?」
「え……!?み、見たいです!!見てもいいんですか!?」
「ククッ……!!そりゃあな。見るだけで減るわけでもねェし」
今すぐに見たいって感じでウズウズしているな!今日の晩御飯の惨状をいち早く確認したいのだろうが、既にお前らの末路は決まってんだよ!!
「コレが今日のテメェらのご飯だよッ!!!」
ヒヨリが側に寄って来たタイミングで見えやすいように鍋を傾けさせる。中からスパイシーな匂いが香ばしく漂い、ヒヨリの鼻腔を刺激することだろう。
さぁ染まれ、絶望をそのお顔に染め上げろッ!!
「わぁ〜〜……」
ククッ、あまりの悲劇に言葉も出ない様子だなァ。ただ、ちょっとリアクションが薄いのはアレだったが……
いや待て。確かに俺の予想したリアクションとは少し違ったが、むしろこっちもこっちでアリかもしれない。何なら静かにリアクションを取ることで、より絶望感が上がってる……ような気がするぜ!!
「一口食べてみるかァ?」
「え……?い、いいんですか……?」
「クククッ、今の俺は気分がいいからなァ!」
ヒヨリが二の句を告げる前に小皿を用意してカレーのルーを装う。
虐待ネタバレの第二弾!視覚や嗅覚からだけじゃなく味覚でもネタバレさせて、未来で迫り来る虐待への恐怖に震えてもらうといった残酷な虐待だ!
カレーの中辛よりの甘口に舌を痺れさせろよ、槌永ヒヨリ……!コレが今夜行われる虐待のほんの一部だァ!!
「……うぅっ……美味しいですぅ……!!」
「ハーッハッハッハ!!!そうかそうか!!」
ククッ……!ヒヨリはご飯で泣く癖があるからなァ、だからこうやって滝のように涙を流すことも予想が出来ていたわけで……あぁ、そうだ。俺はその表情が見たかった……!!
あ〜、大満足ですわ!!もうめっちゃ大満足!!やっぱ泣き顔だよねッ!!うんうん、この表情を見れただけで今日は快眠できそうだわ!!サンキューな、ヒヨリ!!
◇◆
最近、人生が上手くいきすぎて怖いと思う瞬間があります。
ほんのちょっと前までは、そんな事を考えた事すらなかったのに、人生は辛く苦しいものばかりだと思っていたのに……
今は、あまりに
今は空腹に苦しむこともありません。
今は冷たい床に寝転び、薄い毛布を被ることもありません。
今は殺される寸前まで銃弾を撃たれたり殴られることも、誰かの痛みに苦しむ悲鳴も聞く事はありません。
……それに、みんながほんの少し笑うようになりました。
笑い方も知らなかったような子たちが、ぎこちないですけど笑顔を見せるようになりました。
姫ちゃんも仮面を外して、昔のような笑顔と一緒に話しかけてくれるようになりました。
全部……全部彼のおかげです。
あぁ、まるで夢の様な生活ですね。きっと夢だと言われても、私は信じることが出来る程に満ち足りた日々です。
…………もしや本当に夢なのでは?あぁ、なんかそう思うと本当に夢のように思えてきましたね……
そうですよ、そんな都合よく人生はできていません。きっと眠りから醒めれば今まで通り空腹と痛みに耐える日々が………苦しいですね、辛いですね……。なんで私たちばかりがこんな───────
「オイ、ヒヨリ。何ボサっとしてやがる。もう用がねェんなら食堂なり部屋なり戻ってろ」
「あうっ」
私のくだらない妄想を打ち消すかの如く、私のおでこを優しく小突いたサドさんを見上げる。
彼が私たちに夢のような生活を贈ってくれた人です。そして、私が初めて出会った男の人でもあります。
顔は火の玉ですし、虐待が大好きだし、口も悪くてちょっと驚いたり怖いときもあるけど─────でも、本当に優しくて温かい人でした。
「ほら、行った行った。もうこの場でお前に対する虐待はねェよ。
「…………」
彼はいつものように笑いながら言いますが、私はそうではありません。きっと他の人が私の今の顔を見たら強張っていると思われるような表情をしているでしょう。
────彼に返事が出来ない。その場から去るための足も固まったように動きません。
このままだと怒られちゃうかもしれないのに、それでも口も足も動かないんです。
ど、どうしてでしょうか……
今日は───というより、サドさんが来てからは変な食べ物は口に入れてない筈です。
……もしかしてカレーのせいですか!?あのちょっとピリッとした辛さが口を動かなくさせているんですか!?
辛いですね、苦しいですね………でも、美味しかったから許します。だからその代わり────サドさんも私の
「あ、あの……」
「あ?何だよ」
「もっと……もっとここにいたらダメですか……?」
なけなしの勇気を振り絞って出た言葉は、自分自身から出たと思えないほどに芯のある声色でした。
理由なんて……そんな繊細な部分を考えられるほど冷静な頭ではないので、今はよく分かりません。
ただ、今はただ
「ここにィ?ククッ、随分と物好きな野郎がいたもんだ。いいぜ、何が目的かは知らねェが全部返り討ちにしてやるよ!!」
「ッ!!」
粗暴な返答に思わず頬が緩む。それと同時に、胸の奥から湧き出るポカポカする温かさが体全体に広がっていった。
「ありがとうございます!」
「ハーッハッハッハ!!!」
何もかもが満たされて、無条件に安心できて、心までもが温かくなって……
この尊い感情や気持ちこそが────きっと“
……どうして辛く苦しいだけの人生を生きたいと思える人がいるのか、ようやく分かったような気がします。
きっと、この“幸福”を味わいたくて生きているんです。どんな食べ物よりも美味しく甘味で優しい味を、私たちは苦しみの中で見つけていくんです。
あぁ、分かります。分かってしまいます。こんな味を知ってしまったら、
「そろそろ食堂にカレーを持っていかねェとなァ。オラ、行くぞ!!」
「は、はい!」
彼の隣を並んで歩く。ここでサドさんは歩調も歩く速度もいつもより遅いことに気づきました。
……きっと、私の歩く速度に合わせてくれているんだと思います。言葉にはされていませんが、何となくそう感じ取ることが出来ました。
そんな些細なことでさえ私の心を何処までも満たしてくれる。何度も何度も、私に“幸せ”を教えてくれる。
ここでふと、彼に尋ねたいことが出来てしまった。
「サドさん。私たちは……私は、あなたの道具なんですよね……?もう離してくれないんですよね……?」
「あぁん?何を今更言っていやがる。テメェらは俺の道具だし、俺もテメェらを解放するつもりはねェよ!!残念だったなァ!!」
私の漠然とした不安を消し飛ばすかの如く、彼は私の望んでいた言葉を言ってくれました。
嗚呼、よかったです……
「───あぁ、やっぱり私はサドさんの道具なんですね……。ずっとこのまま全ての権利を握られて、一生サドさんの言いなりなんです……!でも従わざるを得ないですもんね、だって私は道具なんですから。だから……だからどうか丁重に優しく扱ってくださいね……?ご飯もくださいよ?」
「ククッ……!!そこは安心しなァ。俺は見極めが上手い方だからよォ!!」
「…………ご飯は?」
「ウルセェな!?あるに決まってんだろ!そんな当たり前のことを聞くなッ!!」
「ふふっ、はい♪」
どうやら私の“幸せ”はこれからもずっと続くみたいです。
ずっと、一生離さないでくださいね?返品は許しませんから…………えへへ。
何も知らなかった無垢な少女を“沼”へ引き摺り込んだコイツの罪は重い……!!
※彼はカレーとシチューが好きで、よくゲマトリアのメンバーにも振る舞って上げているようですよ。(ベアトリーチェ以外)
なんでも