汚いガキどもを見つけたので虐待することにした。 作:史上最恐の悪役
今回もエゲツないです!
人が書いている物とは思えません!
もはや建物として本来の機能を果たせないような廃墟にて、私たちは各々の銃器を持ち銃弾を放つ。
この廃墟は何度も見たことがある。
何度も何度も、地獄のような責め苦を受けてきた場所だ。幸せに満ち足りた日々が訪れた今でさえ、時々夢に見るほどに鮮烈で凄惨な過去の全てがある場所だ。
……忘れる筈もない。忘れることなんて出来る筈がない。
もうここに訪れることもないだろうと思っていた。
他人の意思でも、ましてや自らの意思で立つことなど今後一生ないものだと。
だけど、私たちは再びこの場で銃を握る選択をした。
それは過去を払拭するためか。
それは駆られる激情を発散するためか。
それとも────
私は視線だけを背後へ────私たちの訓練を見守っているサドさんへと向ける。
私に食事の温かみをくれた人。
私に知識の深さを教えてくれた人。
私に笑い方を教えてくれた人。
私に痛み以外の涙を流させてくれた人。
私に幸せをくれた人。
私の生に色をつけてくれた人。
私の生きる灯火になってくれた人。
─────私の頭を撫でてくれた人。
嗚呼、彼から貰ったものを挙げたらキリがない。もはや何もかもをくれたと言っても過言ではないくらい、サドさんからいろんなモノを貰った───一生を賭けても返し切れないほどの恩と一緒に。
………私みたいな人間が彼に何を返せるのだろう。相手を傷つけることしか知らなかった子供が、世界を憎むことしか脳になかった人間が、彼に一体何を─────
『いいかァ、ガキども。この世には
『この世界は面白ェ場所だ!!なんせ、ときに人を殺すモノが人を生かすモノになり、その逆も然りなのがこの世界の常なんだからなァ!!』
『だから学べよ?貪欲なまでに学べ。お前たちが持つ知識も、使い方次第では唯一無二の武器になる』
─────そうだ。コレも彼が教えてくれたことだ。
私の人を傷つける事しか出来ないだけの知識が、いつか
ならば、今は私が持っている全てをひたすら研鑽するしかない。何処までも先へ、何処までも学び、そして何処までも彼を求めて────
彼の為なら私は何でもする。
何でも出来る。
何だってしてみせる。
サドさんが私の頭を撫でてくれるのなら、私は何だって──────
◇◆
「…………」
言葉が出ないというのはまさにこのことなんだろうと、実際に体験してよく理解した。
今日は金曜日。土日の休日前ということで、毎週体育の時間に取り入れている銃の訓練を行っている最中だ。休日前なのに訓練とかいう堅苦しい行事をしなければならないガキどもが憐れでならないなァ!ま、訓練を組み入れたの、俺ですけど!!
あぁ、ちなみに銃の訓練は金曜日のみだ。俺は量より質のタイプでなァ、ダラダラと毎日のように訓練させても無駄な時間を過ごさせるハメになるだろうし、何より物資が勿体ねェ。銃弾も的も無限じゃないってことをガキどもに分からせることも含めて、徹底的な節約を敷いた。
ククッ、ここでも俺の醜い守銭奴な部分を見せてしまった。すまねェな、コイツらの
話が脱線したぜ。ともかく、今は以前から使っていたとされる訓練場でコイツらの銃撃を見ていた。
ただなァ、コイツらの訓練中の様子が何とも異質だった。
以前から使用していたという人型を模した的を用いて銃の訓練をしていたんだが、まるで
そう、それはまるで
この様子を見て俺は悟ったわけだ────コイツら、あの人型に
的を蜂の巣にするまでやる気を出せるものといえば、必然と“恨み”しか残らない。
つまり、あの的を日頃のストレス発散に充てがっていたわけだ。
ククッ、コイツら、いい度胸じゃねェか。本人が目の前にいる中で堂々とヘッドショットを決め込むなんてよォ。
それにしても、虐待開始から二ヶ月経ってもなお、その反骨心は折れることはなかったか。流石は俺の見込んだガキどもだ!!並大抵の精神力ではなかったな!!
「────サドさん」
「あっ、おっ、おう?」
「……?どうしたんだ?」
「い、いや?今後の虐待プランを練ってるときに声をかけられたからな!!」
「そうだったのか?すまない、もっと分かりやすく来ればよかったな」
そう言ってガチで反省したように項垂れるサオリは、先ほどの狂気とも言える感情を隠そうともせず一心不乱に的の頭部に銃弾をぶち当てていた人間と同一人物だとは思えなかった。
「それで?俺に何か用か?」
「あぁ、いや……用ってほどの用でもないんだが……」
「あ?」
急にソワソワし出したぞ、サオリのヤツ。何だ?お花摘みか?
「サッちゃんは頭を撫でて欲しいんだよ、ね?そうでしょ?」
「ア、アツコ……!!」
うおっ!?アツコの野郎、急に横から現れるな!!心臓に悪いだろうが!!
いや、今はそんなことどうでもいい。それよりアツコの発言の真偽を確かめなければなァ。
「オイ、サオリ。今のは本当かァ?」
「えっ、あっ………その……………………うん」
顔を真っ赤にして俯きながら頷いたのを見て、アツコの言葉が正しかったことを悟った。
そして内心で何が目的か推察して─────俺の虐待IQ185を持つ優秀な頭脳はすぐさま答えを導き出す。
サオリのヤツ────恥辱への耐性を付けようとしているなァ!!
人とは順応適性が高すぎる生物だ。だから、ずっと同じことをされ続ければ慣れてしまう。
そのため、俺も常に虐待のレパートリーを変えているわけだが……それも今はどうでもいいことだな。
ククッ、しかし、慣れるためにわざわざ虐待を受けにくるとは………やるじゃねェか!!
「ハーッハッハッハ!!コレでいいのかァ?オラオラオラ、俺に撫でてもらえて嬉しいか!!」
自分で言っておきながら鼻で笑う。嬉しいわけがないことは百も承知であるのに、こんな言葉をスラスラと吐き出せた自分に惚れ惚れしちまうよ……!!
「─────あぁ、嬉しいよ。………本当に」
「クククッ……!!」
気持ちよさそうに目を閉じながら一欠片も思っていなさそうなことを宣うサオリに感嘆する。
もはや反吐が出るであろう言葉を顔色ひとつ変えずに────むしろ本当に嬉しそうに話せるコイツの精神性は褒めてやってもいいぜェ。キヴォトス最優秀女優賞も夢じゃねェよ、オメェ。
「………ただもう少し優しく撫でてほしい」
「注文が多いな!?だが、今の俺は気分がいい。それぐらいお茶の子さいさいだ!!」
「じゃあ私は片腕貰うね。…………わぁ、意外と筋肉あるんだ」
「わ、私は背中に失礼しますね……」
「私もしてもらおう」
「私も!」
「お願いします!」
何だコイツら、全員で耐性を付けようってか?アツコに関しては俺の片腕にスリスリペタペタしてるだけだし、ヒヨリはコアラか何かか?
ククッ、まぁいいぜ。意味は分からんが全て平等に受けてたとうじゃねェか!!
「…………」
「あ?」
ガキどもを撫で回していたら、またしても目の端にミサキを捉えた。アイツは遠くから無感情にガキどもを────いや、俺か?俺をただじっと見ているような気がする。
……それにしても、なんかアイツのことをよく視界に入れている気がするなァ。何となくいつも目の端に映るような感覚がするぜ。
それに、コレもまた何となくなんだが……ふと目を離すと
まぁ、その理由は何となく分かるぜ。なんせ相手は厨二病患者でありながら、俺が最も危険視しているガキだ。ふと俺の視界から消えて何をしているのかも分からなくなるとか……嗚呼、恐ろしくて昼寝も出来やしない。
「オイ、ミサキ!!テメェは(耐性を付けなくて)いいのかァ?」
「………私はいい」
そう言ってそそくさと背中を見せて何処かに向かうミサキ。
ククッ、“私は他の人間と違うぜ”と言いたげな背中だなァ。相変わらず厨二病は健在か……。だが、この二ヶ月間の虐待でも屈しなかったのは褒めてやるぜ、ミサキ……!!
◇◆
「つーわけで、以前から言っていた通り部隊を分けてみたぜ。基本的に4〜5人組な!」
訓練を終えてコイツらをお風呂に行かせた後、また再度教室に集結して俺が編纂した部隊の言い渡しを行っていた。
まぁ、そもそも部隊なんていらねェんだがな。
コイツらに銃を持たせて訓練させているのだって、結局のところキヴォトスにおいて
ククッ、この世界を作ったとされる“神”とやらはつくづく残酷でサディストな野郎だ。なんせ、痛みが必須とも言える───言えてしまうような歪な世界を生み出しちまったんだからなァ。
そんなんだから、俺みたいな極悪人が生まれるんだよ!まぁ、俺の場合は転生(?)だから少し違うけどな!!
つまり俺が部隊を編成したのはな───特に意味はない!何かあった時に便利だろう程度だ!以上!!
「何となくアツコたちはいるだろうと思っていたが、まさかアズサもいるとは……」
「うん、私もちょっと意外」
「私だって驚いてる。でも、アツコたちと一緒の隊で嬉しい。これからよろしくね、みんな」
「うん、よろしく」
「よろしくな」
「えへへ……よろしくお願いしますね、アズサちゃん」
「よろしく」
何気にこの隊分けで一番気がかりであるアズサだったが……やはり上手く馴染めていそうだなァ。
アツコからサオリとヒヨリ、ミサキは幼い頃から仲が良いと手話の練習の時に聞いた。その仲の良さはこの訓練を通しても発揮されており、他のメンバーと比べても連携が段違いに良い。ハッキリ言ってレベルが違う。
そして、実力はまだまだ荒削りなところがあるが、いずれ近しい実力を持つだろうと予測を立てることができ、かつコイツらの連携に上手く合わせられるだろうと目を付けたのが─────
「まぁ、コイツなわけだ」
「わっ……サド、後ろから急に撫でないでくれ」
アズサが何かを言っているが無視して頭を撫で続ける。
お前は黙って俺の赴くままの虐待を受けて入ればいいんだよッ!!
「実力はお前らに比べたらまだまだかもしれねェが、俺の慧眼がコイツに見込みアリと判断したぜ。コイツはきっと強くなる……色んな意味でな?」
「─────も、もうやめてくれっ 。…………口角が戻らなくなるっ」
ククッ……!流石に撫で続けたことで、いよいよ虐待に耐えられなくなってしまったか。こうやってボソボソと悪口を言うしかできねェもんな!!
見ろ、アツコたちが抗議するような目で俺を睨んでくる。特にサオリの迫力がヤベェな!仲間想いなのは知っていたが、まさかここまでだったとは……
そんなテメェには面倒ごとを押し付けてやるよ!
「サオリ、アズサに色々教えてやってくれや。お前は人に教えるのが上手いからなァ」
「ッ、あぁ!任せてくれ!!」
先ほどの気迫から打って変わり、まるで周囲に花が開いたんじゃなかろうかと思える雰囲気で了承の旨を伝えてくる。
いい返事だ!!だがほどほどにな!!なんてったって、お前らを虐待出来るのは俺だけだからなァ!!
◇◆
昔から私は人に頼られることが多かった。
……“人”とはいっても、主にミサキやヒヨリ、アツコからだけどな。
何かと世話が焼ける妹分たちだったから、私が率先して仕切っていた。住居も、食糧の簒奪も、戦闘も。………そうでもなければ、今頃は
だから、
彼に頼まれた────それだけでここまで心に火が灯るものなのか。今の私は、かつてないほどの使命感に燃え滾っていた。
「次は
ここで黒板にかかっていた白い布を勢いよく引っ張り下ろす。
そして現れた黒板の盤面に白い文字で書かれた固有名詞こそが、彼が私たちの為に考えてくれた隊名であると理解するのに時間はかからなかった。
「
私たちの隊名はそう書かれていた。
彼が考えてくれた隊名だ。不満なんてあるわけがない。
……ただ、どうしてそう名づけたのか理由を知りたいと何となく思った。
「サドさん、『スクワッド』にどんな意味が……」
「
「………え?」
「だ〜か〜ら!仲のいいグループだから“
そ、そこまで大それた意味は入っていなかったな。
サドさんならもっと強そうな言葉を使ってくると思ったが……
「アリウススクワッド……いいと思う」
「は、はい……!サドさんが付けてくれたお名前、大事にしますね!」
「私も賛成。ミサキは?」
「いいんじゃない?」
みんなも楽しそうな雰囲気を見せて───ミサキはいつも通りだが───ただの隊名だけで談笑している。
………本当に、かつては想像も出来なかった光景だな。
「サド、掛け声はどうする?」
「掛け声いるか?まぁ、いるってんなら考えてやらんこともないが…………あ〜〜〜、ほら、お前らが前によく言ってたヤツ。“ばに”…………“ばに”なんとかってヤツ」
「……もしかしてvanitas vanitatum et omnia vanitasのことか?」
「(早口過ぎて何言ってるか分からんかった……)あぁ、その……えっと………“ばにたす”!!なんか残虐そうだから“ばにたす”にしようぜ!!」
『──────ぷふっ……!!』
どっと広がる笑い声。教室を震わすほどの笑い声は残響のように何処までも耳に残る。
私も、みんなも、人生で初めて大笑いした瞬間だった。
「─────サドさん、ありがとう」
「ククッ……!笑い声よりも悲鳴を聞かせてくれよ……!」
相変わらずだなと思うが、そんな彼が心底
──────そして、そんな彼だからこそ今の“幸せ”があるのだろうと思えた。
負の遺産である言葉を掛け声にするだけでなく、表情筋が凝り固まっているであろう子たちの口角を無理矢理あげさせる悪業……!!