Re:無下限アーカイブ   作:サリム

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色を追う者

「『色彩』について何か知ってるか?」

 

静まり返った風紀委員室の中で、悟の声が響く。その問いかけに、アコは一瞬眉をひそめた。

「色彩、ですか……?」

その答えは、探るような響きを伴っていた。

 

アコは指で机を一定のリズムで叩きながら考え込む。悟が質問しているのは単なる色彩の話ではない。先ほどの会話の関連性を考えるに、古い歴史や書物に記された特別な何かについて話しているのは明らかだった。彼女は頭の中で、これまでに読んだ膨大な資料や本の中を必死に掘り返す。だが、どうしても「色彩」という言葉についての明確な記憶は浮かばない。

 

「すみませんが、色彩とやらについて私は知識がありませんね。」

アコは冷静に答えたが、その内心にはわずかな不安があった。外から来た人間が自分達の知らない情報を持っているのだ、それ自体は何ら不思議では無いが悟の真剣な眼差しに妙な胸騒ぎがした。

 

「そうか。」

悟は軽く肩を落とす。表情には特に変化はない

 

(知らないとなると、一般的には広まっていないってことか。こいつには悪いがやっぱトリニティとやらに行くしかないのか……いや、待てよ?)

悟は思考を巡らせながら、ふと目の前のアコを見た。その冷静な表情に、彼は別の可能性を思いついた。

 

「水色の長い髪で内側がピンク色をしていて、前髪で目が片方隠れてる……白い服の女は知ってるか?」

唐突な質問に、アコの瞳が僅かに動く。明らかにその特徴には心当たりがあった。

 

「……その特徴なら、私の知る限り連邦生徒会長しかいないはずですが。」

アコは正直に答える。その言葉を聞いて、悟は小さく息を吐いた。

 

「やっぱりか。で……そいつは絶賛行方不明中ってわけね。自分勝手な女だ。」

悟は皮肉めいた口調でそう言い放つ。だが、その言葉にはどこか苛立ちが含まれているようにも感じられた。

 

その言葉を聞きながら、アコは内心で少しだけ共感していた。連邦生徒会長が突然行方不明になったことで、キヴォトス全体の風紀が乱れ、いくつもの問題が発生している。特に風紀委員会はその影響を大きく受けており、アコ自身も日々の業務量が増えたことを思い出していた。

 

(はぁ、連邦生徒会長が失踪したせいで、ただでさえ忙しいヒナ委員長の仕事がどれだけ増えたか……思い返してもムカつきますね。)

アコは心の中でそう呟いた。

 

「まあ、次に行く場所は決まったな。」

悟の言葉が、アコの考えを遮る。彼はポケットに突っ込んでいた手を抜き、少し真剣な表情でアコを見た。

 

「アコ、連邦生徒会の場所を教えろ。これが命令だ。」

悟のその一言に、アコは僅かに目を見開いた。命令口調、しかも呼び捨て。アコの眉間に軽く皺が寄る。

 

「呼び捨てですか……まあいいです。」

アコは小さく息をつきながら冷静に返答する。悟の態度に苛立ちを覚えながらも、それを表には出さなかった。

 

アコは静かに部屋の隅に視線を向けた。「チナツ、悟さんを連邦生徒会まで案内してあげてください。」

その言葉を聞き、姿勢よく待機していた少女、火宮チナツが近づいてくる。彼女は控えめな態度ながら、冷静さを漂わせた表情でアコに応えた。

 

「分かりました、アコ行政官。」

短い返事と共に、チナツは悟の方を向いた。

 

「では、ついてきてください。連邦生徒会の場所はここから少し離れていますので。」

その落ち着いた声を聞き、悟は軽く笑みを浮かべた。

 

「ああ。」

 

二人が部屋を出て行くと、アコは少しだけ肩の力を抜いて椅子に腰を下ろした。その表情には、わずかな疲労の色が見え隠れしている。

 

(連邦生徒会……色彩に関しての情報がそこにあるのでしょうか。後でチナツに報告書を書いてもらいますか…。)

アコは悟の背中を思い出しながら、内心で僅かに不安を覚えていた。

 

 

悟とチナツは、整理された廊下を抜けて連邦生徒会へと向かっていた。ゲヘナ学園の構造は単純でほとんど一直線の道しかない、それ故に馬鹿でも迷子にならないという訳だ。

 

「それにしても、連邦生徒会ってやつは何をする場所なんだ?」

悟が歩きながら尋ねると、チナツは少し間を置いてから答えた。

 

「連邦生徒会は、キヴォトス全体を統括する組織です。各学園の間で問題が起こったときに調整役を担うことが主な仕事ですね。」

彼女の声は淡々としているが、どこか慎重さが滲んでいた。

 

「なるほどな。つまり、ここのボスみたいなもんか。」

悟は軽く鼻で笑うように言ったが、その目は鋭く光っている。

 

「ボス、という表現が適切かどうかは分かりませんが……確かに連邦生徒会長は、このキヴォトスにおいて非常に重要な人物です。」

チナツは真面目な声で返答する。

 

「その肝心なヤツがいなくなって、世紀末みたいになってるのか?。」

 

ゲヘナで結構な頻度でただの不良...それも学生が軍隊が使うような立派な戦車を乗り回していることがある。悟はただ散歩しているだけで何度も絡まれることがあった。

 

「……それについては、私たちも困っています。」

チナツの声にはわずかな苦悩が混じっていた。

 

「他の学園もこんな感じか?。平凡な人間ならとっくにくたばってるな。」

 

チナツは悟の言った、平凡な人間という言葉に少し違和感を覚える。

 

「...気になっていたんですが、ヘイローが無いあなたが何故特殊な能力を使えるんです?」

 

「ヘイロー?色んなやつの頭に浮かんでる変な形した輪っかのことか?。」

「形は分かりませんが...。」

「そうか?...それに、さっきの言い方だとそのヘイローとやらがあるやつはオレと同じような力を持ってるって聞こえるが?。」

「はい、目に見えるような力は珍しいですが...ほとんどの人は使えますよ。」

「...風紀委員長もか?」

「勿論です、私は使用する所を見た事がありませんが、アコ行政官が以前自慢げに話していたので。」

 

その言葉に悟は軽く舌打ちをする。ヒナと戦った時はそれらしいものを見ていない、つまりあの時はかなり手加減されていたということになる。その事実に悟は僅かな苛立ちと溢れる高揚感で笑みを浮かべる。

 

「...それは楽しみだな。」

 

「今の一言で連邦生徒会長があなたをゲヘナに呼んだ理由がわかった気がします...。」

 

小さくため息を吐きながら、チナツが呆れるような目をしてそういう。

 

「そりゃどーも。」

 

自然に軽く受け流す悟にチナツは少し驚きながらそのまま思ったことを口に出す。

 

「私はあなたのことを少し誤解していたようです。最初に会った時は少し乱暴な方だと思っていましたが...思っていたより話しやすい人ですね。」

 

前を行きながら少し後ろを向いて話すチナツに、悟は無言でその背中を追った。

 

 

到着した場所は、ゲヘナの荒廃した雰囲気とは一線を画していた。白を基調とした建物は清潔感があり、装飾も洗練されている。入り口には警備用のロボットが待機しており、厳重なセキュリティ体制が敷かれているのが一目で分かった。

 

「ここが連邦生徒会のある建物です。」

チナツが淡々と説明する。

 

「へぇ……随分立派じゃねぇか。」

悟は建物を見上げながら言った。彼の目には、ただの建物以上のものが映っているようだった。

 

「まずは、入口で手続きを行います。」

チナツは歩みを進め、受付にある端末の前に立った。

 

彼女が操作を始めると、端末から低い電子音が響き、モニターに「アクセス制限」という文字が表示された。

 

「……やはり、外部の人間は許可なしには入れないようです。」

チナツは眉をひそめながら悟に向き直った。

 

「おいおい、ここまで来てそれかよ。」

悟は呆れたように言いながら、ポケットに手を突っ込む。まあ、一般の生徒が入れたらそれはそれで問題なのだが。

 

「少し待ってください。確認を取ります。」

チナツは冷静に言うと、通信端末を取り出し、何やら通話を始めた。

 

その間に悟は建物内部の周囲を見渡しながら、頭の中で思考を巡らせていた。連邦生徒会のこの施設には、きっと連邦生徒会長が残している、色彩に関しての手がかりが隠されているはずだ。

 

(面倒だしやっぱり強引に入るか……いや、ここで騒ぎを起こしても後が面倒なだけだな。まずはあのチナツってやつがどうにかしてくれるか見てみるか。)

 

数分後、チナツが通信を終えて戻ってきた。

 

「確認が取れました。特例措置として、短時間だけ施設内を案内できます。」

彼女の声には少しの安堵が滲んでいる。

 

「特例ねぇ……まあ、入れるなら文句はねぇよ。」

悟は軽く笑い、チナツの後に続いて施設の中へと足を踏み入れた。

 

施設内は静まり返っており、機械の低い駆動音だけが響いている。壁には複数のホログラムが表示され、複雑なデータが流れている。

 

「ここが連邦生徒会のデータ管理室です。」

チナツは立ち止まりながら説明した。「ただ...私たちでは閲覧できる情報が限られているようです。」

 

「は?。」

 

一般的に公開されていない情報を見るためにわざわざ来たのに、その情報が制限されているのなら来た意味が無い。そもそもの話、この世界に呼んだのはそっちなのだから自由に閲覧出来る権限ぐらい最初から与えておけと悟は心の中で思った。

 

「...電話をかけてくれ、今いる連邦生徒会で、一番偉いやつに。」

 

「...わかりました。」

 

チナツは気まづそうに先程かけたばかりの連絡先にもう一度通話を試みる。

 

プルルルルルル…プルルルルルル...プルッガチャ

 

1回、2回とコール音鳴り、3度目で連邦生徒会、連邦生徒会長代理である、リン行政官に繋がった

 

「どうかしましたか?チナツさん...。先程も言いましたが、今は忙しいんです...。」

 

ため息混じりの疲れきった声でリンが電話に出る

 

「実は──」

 

 

チナツは軽く説明し、リンは電話越しに頭を抱える。

 

「...わかりました、直接説明した方が早いでしょう。彼に電話を代わってもらえますか。」

 

「はい。」

 

「代わったぞ、早速...言い訳を聞かせてもらおうじゃねえか。」

 

煽るような口調で悟は言う

 

「はい...率直に言うと、今の私の権限では不可能なんです。」

 

「なに?。今は連邦生徒会長代理なんだろ?権限が渡されてないのか?。」

 

「はい、肩書きはそうですが実際の権限は連邦生徒会長が失踪する前と同じ、行政官の権限しか保有していません。」

 

「...?それはおかしいだろ、なら今はどうやって連邦生徒会を運営している?。」

 

行政官の権限だけでは出来ないことも多いはず。その状態で連邦生徒会長が失踪した後も続けられるはずがない。

 

「私の権限だけで最低限、運営できるようにプログラムを作り直しました。」

 

「...。」

 

悟は言葉を失った。リンは淡々と説明しているがこのキヴォトスを運営するプログラムを作り直すとなると、どれ程膨大な量のコードをpcに打ち込むのかなんの知識も無い素人では想像もつかない。

それに連邦生徒会の行政官はリン一人だけ、となるとほとんどの作業を一人でやったということになる。

 

連邦生徒会長、夢の中以外で会ったことは無いが流石にこれは人の心が無い。失踪にどんな事情があったかは知らない、だが自分の権限を渡すくらいなら出来たんじゃないだろうか...

 

「そうか、無理な要求をしてすまん...。オレにできることがあれば何でも言ってくれ。」

 

「...ありがとうございます、ですが心配は無用です連邦生徒会長の置き手紙にはもう一人来るはずです。「先生」が到着すれば生徒会長の権限も付与される予定ですので、その時が来たら改めて連絡します。」

 

「分かった。仕事の邪魔をして悪かったな...。」

 

「いえ、では失礼します。」

 

「どうでしたか?。」

 

通話が切れたのを確認したチナツは悟に通話の内容がどうだったか質問をする。

 

「...とりあえず、「先生」とやらが来るまで適当に過ごす。」

 




待に待ちわびた先生が何も出来ない無能だったらリンちゃんはどんな顔するのか気になりますね、先生が来る話を書いたあとifとして書いてみるのもいいかもしれません。それとチナツの悟に対する好感度上がるのが早いのは所謂ギャップと言うやつです。最後ら辺悟が同情するような話し方をしていますが...いつもの性格と違うのは大目に見てください、悟から見てもリンちゃんは偉大ってことで。
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