天与呪縛がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:ウッウ

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作者の妄想垂れ流しです。
お気に召しましたら、どうぞ。


#0 終幕

夕焼けが空を染める中、戦場には微かな風の音だけが漂っていた。

足元の砂利が踏みしめるたびにざり、と低い音を立て、緊張感が肌を刺す。

 

目の前には、覚醒した無下限呪術の使い手――おそらく現代最強となった呪術師がいる。

 

俺は息を吐き出し、呪具を握りしめる。

骨が軋む感覚が確かに自分がまだ立っていることを教えてくれる。

全身にみなぎる力は、まるで獲物を前にした猛獣のそれに似ていた。

 

 

 

だが――俺は感じていた。

 

名状しがたい…違和感

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

虚式「茈」――

 

眩い光が視界を埋め尽くし、体が押し潰されるような感覚に包まれた。

五条悟の放つ圧倒的な呪力が、俺のすべてを飲み込む。

 

 

 

 

 

禪院家、呪術の名門に産まれた俺はそこで「猿」扱いされた。

 

呪力を持たない天与呪縛という枷。それは、呪術師としての価値を――禪院家における絶対的な価値を俺から奪った。

 

幼い頃から、蔑まれ、見下され、そして追い出されるように家を去った俺は、生き延びるために牙を研いだ。

 

金さえ積まれれば、どんな依頼だって受けた。

 

いつからか「術師殺し」なんて呼ばれるようになった。

だが――どこまでのし上がっても、俺の中には埋まらない空白が広がっていた。

 

 

 

そして、最強を目の前にしたその時――俺は何かに取り憑かれたように動いた。

 

最強を……俺を否定した禪院家、呪術界、その頂点をねじ伏せる――そのために。

否定され続けた俺自身の存在を、この手で肯定するために。

 

 

自分を肯定するために、いつもの自分を曲げちまった。

 

 

その時点で負けていた。

 

 

 

 

 

時間が止まったかのように、戦場は静寂に包まれる。

夕日に照らされる中で、身体は動かない。

呪具は俺の手から滑り落ち、地面に転がっている。

 

抉れた俺の身体からは、止まらない血が大地に染み出している。

かすむ意識の中でも、あいつの蒼い瞳だけは異様なほど鮮明に映る。

 

「最後に言い残すことはあるか」

 

目の前にたたずむ最強は、そう低い声で問いかけてきた。

 

口の端が僅かに歪む。

血の味が広がるのを無視して、かすれた声で笑いながら答える。

 

「……ねぇよ」

 

声はかすれていたが、それでも言葉を絞り出す。

自嘲混じりの笑いを浮かべながら、俺はあいつの顔を見つめた。

 

五条悟は沈黙したまま、俺を見つめていた。

その蒼い瞳に宿る感情――それが何なのか、俺にはわからなかった。

憐れみか?

それとも、ほんの僅かばかりの敬意か?

 

何であれ、今の俺にはもはや関係のないことだ。

 

 

 

 

その時、ふと脳裏をよぎるのは――(あいつ)の顔だった。

 

俺の血を引き、才能を持って生まれた存在。

俺とは違う未来を歩むはずの小さな存在。

 

 

 

術式(才能)がありゃ幾分まし

 

 

 

だから、禪院家に渡すと決めた。

俺が面倒を見るより、そっちのほうがいい――そう思った。

 

 

だが、今思い浮かぶのは禪院家に囚われた(あいつ)の姿だ。

 

 

 

あの呪われた家で、果たして幸せに生きられるのか?

 

大切にされることなど、本当にあるのか?

 

 

 

 

自尊心(それ)は捨てたろ)

 

自分も他人も尊ぶことがない生き方、それが俺の選んだ選択のはずだ。

 

だがもし――もしも目の前の最強(五条悟)が、何かを変えられるのなら――

 

 

「あと数年もすれば、俺のガキが禪院家に売られる……」

 

 

途切れ途切れの声でそう言葉を吐き出す。

自分の言葉の軽さに苦笑する。期待なんてしてねえ。

 

だが、こいつがいるなら――少しはマシな未来になるかもしれない。

 

 

「……好きにしろ」

 

 

 

 

視界はぼやけ始め、足元の砂利も、夕焼けに染まる空も、すべてが遠ざかっていく。

 

残りわずかな力で、俺はもう一度だけ笑った――薄っぺらい、力のない笑みだったかもしれない。だが、それが俺という存在の締めくくりに相応しいと思えた。

 

全てが闇に沈む。静寂と冷たさだけが残り、俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

時は流れ――小さな家を訪れた五条悟は、とある少年と対峙していた。

 

「伏黒…恵君だよね?」

 

五条悟は彼の姿を見るなり、何とも言えない表情を見せる。

 

「あんた誰?っていうか…何、その顔」

 

「いや、ソックリだなと」

 

「?」

 

 

 

何もかもが間違いだらけだった彼の人生。

その中で最後に託した小さな希望。

この先どうなるかは、もう知る由もない。

 

だが、もし彼がその場を見ているなら――少しだけ、満足気に笑っていたのかもしれない。

 

 

 

 

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