やさぐれ天使と俺の、厄災をうちはらう正義の話(旧タイトル:でこぼこバディ) 作:朝食付き
白い靄の拡大速度はだんだんと遅くなっている。単純に広がるほど面積は広がっていくため、パンドラモンとはいえども一気に街全部を飲み込むことはできない。避難がひと段落したこともあり、二人は拠点となる草太の家へと戻ってきた。避難だけではなく、こちらから攻め込む必要がある。そのための対策を話し合うためだ。また、テイルモンとしては部屋に残してきたこよりのことが気になるということもある。
幸い草太の家まではまだ距離があったことと、ホーリーリングの力が守ってくれたのか、飢餓の兆候は見えない。
すでに目を覚ましていたこよりが、ぽつりぽつりとこれまでの経緯を話す。
ホーリーエンジェモンとしては語られる全てを信じるつもりはない。だが、それが悪意を持って行われたとは思わない。
「あの、テイルモンとホーリーエンジェモンさんはこれからパンドラモンと戦うんですよね……?」
「ええ。私たちはそのために来ましたから。それに、あの白い靄を何とかするためにも、パンドラモンを逃すわけにはいきません。」
ホーリーエンジェモンとしてもパンドラモン封印・打倒は使命以上の理由がある。
「……私も、連れて行ってくれませんか。」
「こより…。病み上がりのあなたを連れて行くことはできません。無理をする必要はありませんから、まずは体を治すことだけ考えて。」
「それじゃダメなんです!私が原因だって分かってるんです!あの時、私が手を差し出したりなんかしたから、こんなことになってるんです!だから、だから待っているだけなんてできません!お願いします!なんでもします!だから、私も連れて行ってください…!」
「こより……、私は「いいぞ。」何を言ってるんですか!ホーリーエンジェモン!」
「明日の夜明けにパンドラモンを潰しに行く。テイルモン、貴様はそいつと契約しろ。その姿では対して役には立たんが、進化すれば話は別だ。」
全力を振えないホーリーエンジェモンとしては戦力は多い方がいい。ただでさえ靄の中心近くは状況がわかっていないのだ。避難すべき人間がいる可能性を考えれば、人を抱えて運べないテイルモンより、進化してもらった方が都合がいい。
「……分かりました。こより。今からあなたと契約をします。一度契約をしたなら、もう泣き言は許しませんよ?それでも、本当にいいんですね?」
「はい!よろしくお願いします!」
契約についていつかも聞いた話を始めるテイルモンと少女を置いて空へと羽ばたく。最寄りの鉄塔に足を下ろして街を眺める。夜の街は普段であれば街灯や家の明かり、ビルの煌びやかな光があたりを照らす、なかなかの見物だった。今も街灯は道を照らしているし、誰も消すもののいないビルの電気は煌々と灯ったままだ。それらを覆う靄さえ無ければ、夜景としては十分だろう。
風に揺らぐことのない白い靄に光が滲んでいる。そこにはただ明かりがあるだけ。人の営みはそこにはない。何一つ面白味のない風景だ。ホーリーエンジェモンはそのまま鉄塔から動かずその風景を目に焼き付けていく。
──決して怒りを途絶えさせないために。
***
パンドラモン討伐へ向かう。陽が昇る直前の濃い藍色の中、3つの影が街の中心へと走る。
ホーリーエンジェモンを先頭を滑るように飛び、テイルモンが後に続く。新たにテイルモンと契約を交わした高間こよりはといえば、ホーリーエンジェモンの金帯にしがみついている。流石に病み上がりの少女ではデジモンについて走るのは困難だからである。例によって難色を示したホーリーエンジェモンであったが、すでにこよりの保護者気取りのテイルモンが盛大に噛み付いてきたため妥協した形だ。契約したとはいえ、わずかな期間では進化するだけのパワーを溜めきれない。わずかでも長い間蓄えるために、テイルモンのまま向かうのだ。
朝日が少しずつ街を照らしていく。白い靄が消えることはないが、街の状況を見るのには十分な光。人のいない街。何も変わらないはずの景色が寒々と映る。
白い靄はどうやら広がる距離に限界があるらしく、昨日の夜からその範囲は広がっていない。靄が広がれば広がるほど、避難に取られる手が増える。パンドラモンを叩くならこのタイミングしかない。
そしてそれはパンドラモンにとっても予想通りの動きである。白い靄を切り裂くようにデジモンが飛び出してくる。パンドラモンが温存していた手駒か、新たに呼び出したのか、クワガーモンやヤンマモン、ゴキモンが一塊となってホーリーエンジェモンに迫る。黒く塗りつぶされた虫型のデジモンは統制の取れた動きでホーリーエンジェモンの前方を塞ぎ、上下から立体的な動きでそれぞれの必殺技を放つ。
クワガーモンのシザーアームズをひらりと交わし、ゴキモンのドリームダストが生み出すゴミを嫌そうに避け、サンダーレイの稲光に合わせて高速移動を行う。光に紛れてクワガーモンのハサミを掴み、勢いよくゴキモンへと叩きつける。甲虫ならではの硬い甲殻がゴキモンの体に致命的なダメージを与えていく。当然その衝撃で前後不覚となったクワガーモンを放り投げ、背後から不意打ち気味に放たれた二発目のサンダーレイへとぶつける。群れになれば完全体を狩ることすらあるヤンマモンだが、単独では大した脅威ではない。頭部を蹴り飛ばすとすぐに地面に力なく落下した。
完全体というのは伊達ではない。力の制限があろうと、並の戦闘経験ではないのだ。
その間振り回される高間こよりといえば、ぎゅっと金帯から振り落とされまいと力をこめるしかなかった。当然これにはテイルモンが猛抗議をする。
「こよりが掴まっているのにあんな動きをするなんて何を考えているんですか!あなたならもっと穏当に対抗できたでしょう?!第一私がいるんですからコンビであたればよかったはずです!……大丈夫ですか、こより?」
「戦いについてくると決めたのはそいつだろうが。この程度で根を上げるくらいなら役に立たん。置いていく。第一、あのひょうろく玉でさえできたことだ。」
「草太さんを基準にものをいうのはやめてください!普通は振り落とされないようにしがみつくので精一杯なんです!荷重かけて急カーブなんてやれるほうがおかしいんです!もう!ここからは私がこよりを預かります!」
色々言いたいことがあるホーリーエンジェモンではあるが、こよりという人間の"おもり"がなくなるのは歓迎である。目を回している少女へテイルモンが駆け寄っていく。
「こより、大丈夫?もし気分が悪いようなら休んでもらってもいいんですよ?」
「……ありがとうテイルモン。でも大丈夫。絶対に止めたいの。私の責任だから。」
「……こより。」
「それに、私がいればテイルモンも進化できるんでしょう?ならやっぱり私も行かなくっちゃ。」
少女の言葉にテイルモンが身を震わせている。薄寒い責任感に寒気でも起きたのだろうか?何にしても時間をかけるべきではない。時間はパンドラモンの味方だ。
「話は終わったな。ならさっさといくぞ。進化するなら今のうちにしておけ。ここから先は足止めはなしだ。」
「あなたのそういうところ、本当にがっかりしますよ……。」
***
ホーリーエンジェモンとエンジェウーモンが白い靄を切り裂きながら空をいく。完全体二人の飛行能力は並の成熟期程度では追いつけるものではない。パンドラモンが放ったデジモンを容易に引き離し、白い靄の中心へと到達した。
白い靄の発生源、その中心に座すは、パンドラモン。
ホーリーエンジェモンとパンドラモンが直接相見えるのはこれが初めてである。だが、お互いがお互いに抱く感情はすでに初対面のそれではない。かたやリアルワールドに暴力と飢餓、災いをもたらした災厄の権化。かたやパンドラモンの封印を指名として遣わされたリアルワールドの守護者。
パンドラモンの活動のことごとくを阻害してきたホーリーエンジェモンと、ホーリーエンジェモンが守るべき人間を苦しめ続けるパンドラモンである。犬猿の仲どころではない。必ず潰す。互いの視線が同じ意図を持って交差する。
自らをリアルワールドへ導いたこよりを見ることすらない。
***
動いたのはホーリーエンジェモンからだった。8枚の翼を推進力とし、一息にすべての距離を置き去りしてパンドラモンを強襲する。その右手には聖なる力が顕われ青く輝いている。ヘブンズナックル。ホーリーエンジェモンが進化する前の姿、その必殺技である。あらん限りの力と怒りを込めた拳が、パンドラモンへと叩きつけられる。その瞬間に轟く衝撃音は未だ上空に止まったままのエンジェウーモンとこよりの肌を震わせるほど。紛れもなくホーリーエンジェモンが今撃てる最大の一撃である。
期待を込めた視線の先、見えたのはホーリーエンジェモンの拳と、それを防ぐ黒い塊。黒い靄がパンドラモンの目前に現れ、ホーリーエンジェモンのヘブンズナックルを押し留めている。
これまでもパンドラモンの黒い靄は物理的な攻撃を度々行ってきた。鞭のように打ち据えることもあれば、蛇のように噛み砕く動きもあった。そのことごとくをホーリーエンジェモンは退けてきた。元は微小な粒子の集まりである。容易く散らすことのできる技でしかなかったのだ、これまでは。しかし今ホーリーエンジェモンの拳を受け止めたこの黒い靄は桁が違う。莫大な量の靄が圧縮されたことで、極めて強固な壁を形成している。邪悪な力に対して特に効果を発揮するはずの聖なる力が完全に押し負けている。
ヘブンズナックルの光が消えるとともに黒い靄も薄れていく。靄越しにギョロリとパンドラモンがホーリーエンジェモンへと目を向ける。その瞳に浮かぶは嘲笑。あれほど煩わされた天使を、今パンドラモンは完全に上回っている。青筋を浮かべて二発目のヘブンズナックルを構えるホーリーエンジェモンのこともよく見えている。ホーリーエンジェモンが拳を振るう前に、黒い靄がホーリーエンジェモンの眼前に集めっていく。
直感がホーリーエンジェモンに回避を選ばせる。そして一拍ののちに炸裂音が響く。瞬時に翼へ力を回して上空へと舞い上がったホーリーエンジェモンだが、その両腕は黒く爛れている。黒い靄がまるで爆弾のように炸裂したのだ。回避と同時にとった防御がなければ、この一撃で終わっていた。黒い靄による打撃だけではなく、遠距離での爆発攻撃が可能なほどに、パンドラモンが成長している。
タネを明かせば、パンドラモンが行ったのはファイアピストンである。空気を急激に圧縮することで空気温度を上昇させて発火させる、それを黒い靄で再現したのだ。狭い範囲に急激にかつ大量に靄を圧縮することで高まった圧力が、黒い靄を爆風の如き勢いで弾き飛ばす。まるで爆発のように。こよりから掠め取った理科の知識すら応用を始めている。
追撃に黒い靄を集め始めたパンドラモンだが、背後から感じる危険への対処のために靄を回す。質量すら持つ黒い靄の壁に突き刺さるのは、エンジェウーモンのホーリーアローだ。右手に備えられた弓から絶え間なく雷の矢が放たれる。その隙にホーリーエンジェモンは体勢を立て直し、靄にやられた腕を浄化する。
パンドラモンも撃たれるばかりではなく、早々に迎撃を開始する。ゾンビタトゥーの針がエンジェウーモンへと投射される。針は威力こそ高が知れているが、ゾンビタトゥー感染を招く。浄化にも時間と力がかかる。おまけに数が尋常ではない。ホーリーアローで打ち消せるような量ではなく、エンジェウーモンも攻撃を中断し、回避に専念することとなる。
ホーリーエンジェモンが全力を振るえない以上、エンジェウーモンの攻撃が要となる。エンジェウーモンが隠し持つ最高の一撃。それを至近距離から直撃させること、今とれる勝ち筋はそれだけだ。そのためにホーリーエンジェモンが前衛としてパンドラモンの気を引いていく。白磁のような翼を羽ばたかせ、高速機動による接近戦でパンドラモンを釘付けにする。両腕に力を集め、隙あらばヘブンズナックルを叩き込むべくパンドラモンを翻弄する。パンドラモンは周囲に靄を集め、防御を固めながらもホーリーエンジェモンへと針の投射を繰り返す。
エンジェウーモンのホーリーアローは直線的で読みやすく、パンドラモンの脅威にはなり得ない。しかし変幻自在の軌道から打ち出されるホーリーエンジェモンの拳は確実にパンドラモンに迫りつつある。力こそ制限されていても、その戦闘センスに翳りはない。パンドラモンからすれば、ホーリーエンジェモンには散々煮湯を飲まされている因縁の相手でもある。黒い靄も針も、ホーリーエンジェモンへと向けられ、次第にエンジェウーモンへの警戒が疎かになる。
ホーリーアローのことごとくを弾かれたエンジェウーモンではあるが、無論無策でホーリーアローを撃ち続けているわけではない。いくつもの矢が黒い靄に突き刺さり、パンドラモンを囲っている。ホーリーエンジェモンを叩き落とそうと視野が狭くなっているパンドラモンはそれに気が付かない。
そしてその時が来る。
パンドラモンの周囲に突き刺さった雷の矢が、輝きを放つ。矢としての形を放棄し、雷が解き放たれる。光と熱が周囲を照らし、破壊を撒き散らす。当然矢に囲まれていたパンドラモンが雷光に飲み込まれていく。その溢れる閃光に影が映る。
炸裂する矢にタイミングを合わせて飛び込んだホーリーエンジェモンが、激しい雷に焼き焦がされながらも、左右のヘブンズナックルをパンドラモンへと叩き込む。
雷に吹き飛ばされた黒い靄を無理矢理に集め、パンドラモンがその拳を防ぐ。ホーリーエンジェモンならば必ず飛び込んでくる。その確信がパンドラモンを救った。
天使たちの渾身の攻撃を防ぎ切ったと嘲りを浮かべ、ホーリーエンジェモンを屠るための靄を集めるパンドラモン。
しかしその背後に女天使の影が迫る。そっと、エンジェウーモンが両手をパンドラモンに翳し、エンジェウーモンのもう一つの必殺技”へブンズチャーム”を解き放つ。優しさと美しさを力に変えて放出する光線である。邪なるものと反対の性質を持つがゆえに、相手が邪悪であるほど効力を増す特性がある。周囲の黒い靄が吹き飛ばされ、わずかな靄も攻撃のために回したパンドラモンに防ぐ術はない。巻き込まれまいと離脱したホーリーエンジェモンが離れていくのを目で追うことしかできない。
薄い桃色の、柔らかで苛烈な光線がパンドラモンへ直撃しその姿をかき消していく。
テイルモンは、こよりとの共振励起で引き上げられた力の全てをこの一撃に込めていた。紛れもなく直撃した手応えがある。邪悪への特攻を考えれば生きているはずがない。一連の攻撃で巻き上がった土煙で視界が真っ白だ。追撃を撃とうにも視界が悪くて狙えるものではない。そもそもこの一撃を防げたはずがない。煙が晴れるのを大人しく待つ。
「馬鹿がっ!追撃を放て!」
「えっ?」
戸惑いの声を上げた瞬間、土煙の中から黒い靄の腕が鞭のようにしなりエンジェウーモンを打ち付ける。咄嗟に防御こそしたものの、踏みとどまれる地面などない空中である、そのままビルへと叩きつけられてしまう。
エンジェウーモンの攻撃で舞い上がりパンドラモンを隠したのは土煙だけではなかった。街を覆う白い靄がパンドラモンへと一気に集結していたのだ。それをエンジェウーモンはただの土煙と誤解したのだった。
パンドラモンはヘブンズチャームが放たれる一瞬に白い靄から一気に力を吸い上げていった。強力な光線ではあったが、白い靄はデジモンの干渉を受けにくいデザインとなっている。防ぐことはできないが、邪魔をされることもない。ゆえに、ヘブンズチャームで受けたダメージをリアルタイムで癒すという荒技で、破壊の力を上回って見せたのだった。
白い靄が薄まり、パンドラモンの姿が見えてくる。しゅるしゅると、ヘブンズチャームによってつけた傷が修復されていく。かすり傷程度のそれが綺麗に消える。あえてホーリーエンジェモンにそれを見せたのだろう、パンドラモンの口角が吊り上がっている。
無論、力を急激に吸い上られた人間の苦しみは尋常ではない。息をすることさえ困難なほどの飢えが体を締め付けていく。すでにまともな思考が奪われ、身を焦がす飢餓だけが体を支配していく。だがそんなことはパンドラモンの知ったことではない。
「貴様……!」
エンジェウーモンが吹き飛ばされて行ったビルにはこよりが向かっている。おそらくもう戦える状態ではないだろう。
先ほどのエンジェウーモンの攻撃はこれ以上ないタイミングと威力だった。制限なしのホーリーエンジェモンでさえあれほどの威力を出せるかは怪しい。それをここまで完全に凌がれてしまった以上、ホーリーエンジェモンには打てる手がない。もしヘブンズゲートを開けたとしても、ケレスモンがそうしたようにあの黒い靄で吸い込まれるのを防いでしまう。ゲートそのものが破壊される恐れすらある。正真正銘手詰まりだ。
***
攻撃の手を止めたホーリーエンジェモンを見て、パンドラモンはにたりと笑う。そして黒い靄の腕を形成する。黒い腕はぐるりと円を中に描く。中空に黒い線が残り、線は繋がれて黒い面になる。面、すなわちデジタルワールドとリアルワールドを繋ぐゲートだ。無理矢理に繋がれた世界を穿つ穴からデジモンが飛び出してくる。パンドラモンの十八番だ。一気に黒く染め上げられ、凶暴化したデジモンが野に放たれる。
ホーリーエンジェモンが歯を食いしばる。握りしめた拳からは血が滴る。知能の足りない小物だと見下していたパンドラモンにここまでコケにされるのははらわたが煮え繰り返るほどの屈辱だ。その視線を前に引き下がらなければならないことも。何より、弱きものを苦しめる悪をどうにもできない自分の弱さに、心が軋む。
撤退。一気に反転し高間こよりの元へ向かう。すでに気絶しエンジェウーモンから退化したテイルモンを抱きしめているこよりをひったくるようにして抱え、一目散に撤退する。
パンドラモンはそれを追わない。今ホーリーエンジェモンが見せたのは紛れもない負の感情だ。ホーリーエンジェモンは、それがパンドラモンを強くする贄だと知っている。だから高飛車な態度でパンドラモンを見下し、怒りを見せることこそすれ、負の感情としないように感情を抑えてきた。それが今、確かに崩れた。わずかに中空を漂うそれを、パクリとパンドラモンが飲み込む。
パンドラモンの直接対決は、パンドラモンに軍配が上がったのだった。
***
パンドラモンは一通りデジモンを呼び出すと、再び力を蓄える作業に戻っていく。いかなパンドラモンとはいえ、無尽蔵に呼び出せるわけでもない。エネルギー源こそ飢餓に苦しむ人の数だけあるが、無理矢理搾り取って殺してしまうわけにはいかないのだ。ただ、ホーリーエンジェモンを下した以上、かつて自分を封じたセラフィモンであろうともう負ける気はしない。
だが、それ以上にパンドラモンの本質をなす何かが、人々の飢餓を求めている。それはパンドラモンにとって、戦いや災いを求める本能ではない、純粋な欲望と言えるものだった。