やさぐれ天使と俺の、厄災をうちはらう正義の話(旧タイトル:でこぼこバディ) 作:朝食付き
パンドラモンの封印、いや討伐が完了した以上、ホーリーエンジェモンとテイルモンがこのリアルワールドにいる理由はない。もともとデジモンという存在がリアルワールドに与える影響を最小限に抑えること、そのために力の制限だとか、テイルモンまでの退化までしてきたのだ。影響云々をいうならそもそもいない方がいいのが道理である。
パンドラモンが呼び出したデジモンがいないことが確認できたこともあり、ホーリーエンジェモンとテイルモンがデジタルワールドが戻る日がやってきた。
見送りは当然草太とこよりの二人。人目につかない河川敷に4人が集まる。すでに泣きはらした目の女性陣は、これが最後とずっと抱き合ったままだ。草太とホーリーエンジェモンといえば、あれからも何も変わらず、絶えることのない口喧嘩をして過ごしてきた。ホーリーエンジェモンは別れ難さに泣いている二人をやや冷めた目で見てすらいる。
ずっと行方不明になっていたこよりは、家に帰ると大騒動だったため、草太とホーリーエンジェモンと会うのも久しぶりである。テイルモンはずっとこよりにつきっきりだったので、相当仲良くなっていたらしい。とはいえいつまでも抱き合っているままではいられない。
4人の前に幾何学的な模様が浮き上がり、機械仕掛けの門が開く。リアルワールドとは違う風が吹き込んでくる。門の先には10枚の翼と輝く鎧のデジモン、セラフィモンが待つ。
「久しぶりだね、長峰君。それに、ホーリーエンジェモン、テイルモン。ご苦労様だった。」
「ああ。約束通り、パンドラモンは何とかしたぞ。」
「テイルモン、ホーリーエンジェモンが無事任務を完了しました。」
きちっとした返事はいいのだが、こよりに抱きしめられたままでは台無しだ。さすがのセラフィモンも対応に困ったらしい。しかしホーリーエンジェモンはいつも通りそっぽ向いたまま。草太は首をすくめるばかり。
「ふっ、強いきずなを結べたというなら何よりだ。」
「雑なコメントだな。それよりセラフィモン。俺たちはあんたたちのやらかしを解決した。だから俺たちの願いを一つ聞いてもらいたい。いいよな。」
どうにもならず適当をかますセラフィモンへ、突っ込みと要求を告げる。つっこみは流しつつも、要求に対しては慎重さを以て答える。
「内容次第といったところだね。こちらの落ち度であることは認めるが、叶えられることには限界がある。それはわかってくれるだろうね。」
「別に大したことじゃない。このデジタマをちゃんとしたところで育ててほしいってだけだ。それくらいのことが出来ないなんて言わないよな。」
「──パンドラモンの、デジタマか。さすがにそれは 「私がそいつの面倒は見る。」」
仮面がなければ驚きに見開いた目が見えただろう。それほどセラフィモンの驚き方はわかりやすかった。
「ちっ、その顔はやめろバケツ頭が。──もう、そのデジタマに特別なものは何もない。私たちがパンドラモンの特異なものはすべて焼き尽くしたからな。だが、天使連はこいつが怖くてたまらないのだろう? すでにただのデジタマだということが信じられないんだろう。だから私が面倒を見てやると言っている。パンドラモンを倒した本人が面倒を見るというのだ。渡りに船というやつだ。さっさと許可を出せ。今ここで。」
「ホーリーエンジェモン……。あなたにも責任感ってものがあったんですね。」
ふぅ、と大きく深呼吸の音がする。セラフィモンが息をつく。
「長峰君。ホーリーエンジェモン。君たちが成したこと、その全てに心からの賛辞を贈ろう。そして君たちの願いは確かに聞き届けた。ホーリーエンジェモンを保護観察官とする条件の下、私が知る限りもっとも信用のおける者のそばでこのデジタマを育てよう。……これでいいかな?」
「ああ。それでよろしく頼む。もんざえモンには面倒を押し付けて悪いって謝っておいてくれ。」
「ふふふ、いいとも。体のいい雑用係もできて逆に喜ぶかもしれないよ。」
「ならいいけどな。せいぜいこき使ってやってくれ。」
「まて、私は保護観察以外する気はないぞ。」
「まあまあホーリーエンジェモン、私もたまには手伝いに行きますから。ちょっとは働くのもいいものですよ?」
「すごい嫌そうな顔してるね……。」
残った懸念はもうない。そして今更話すこともない。
ホーリーエンジェモンとテイルモンがゲートを渡り、二つの世界が徐々に離れていく。泣きながらお互いの名前を呼び合うテイルモンとこより。だが、自分たちには、せいぜい一言あればいい。
「じゃあな、鳥頭。」
「さらばだ、唐変木。」
それで終わりだった。静かに閉じていった門は、何もなかったように消え去った。テイルモンの名を呼び泣くこよりの背をポンポンと叩き、ゆっくりと歩き出す。こよりのことはテイルモンから頼まれている。これからもちょくちょく様子を見ることになるだろう。
だから、いつまでも、あの尊大な天使に頭を使う時間などない。
これから草太はもう一度プロを目指すのだ。こよりの様子を見つつも、サッカー選手となるべく自分を鍛えなおさなければならない。どこまでできるかなどは分からない。だが、奴のたわごとを証明するつもりはないが、できるところまでやると約束はしている。
ダメだったならダメでその時だ。いくらでも目の前に道はある。
あの天使が開いた未来の広さを、希望の輝きを、草太は知っているのだから。
おわり
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