俺達のラブコメは聖地巡礼先で!?   作:yuurin

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初デート

「ユウマさん、ミサキさんとデートをしてください」

 

「どうした急に。昨日写真見てテンション上がったのか? でもおまえちょっと目が腫れてないか?」

 

「私はどうでもいいんです。いいからデートをしてください。お膳立ては私が整えますから」

 

「お前いつもは「!」って感じの喋り方するのにどうしたんだよ何があったんだよ昨日」

 

「いいですか。私は今真面目な話をしています。デートです。いいですね?」

 

「あ、ああ……」

 

 と押し切られてしまった。本当に何があった。

 

「それじゃあいまからミサキさんにも話ししてきますから、逃げないでくださいね?」

 

「わかったって。でもせめて何があったのかくらい言えよ。怖いって今日のお前」

 

「いえ。私は今至って冷静にやることが見えています。それでは。 ……ミサキさ~ん! 今日の放課後ちょっと時間ありますか?」

 

「ったくなんなんだよ」

 

 と言いつつも少し思い当たる節がある。美咲の家のアルバムにはあの写真がある。聞いたのだろう本人から。あの事故の話を。それで気を回しているのだろう。

 

「俺はもう気にしてないのに。美咲ってやつは……」

 

 そういいながら、俺は無意識に後頭部の傷跡をなぞっていた。

 

 

「あれ? 佐藤くん。ユリアさんは?」

 

「俺はユリアに誘われてきたんだけどそっちは?」

 

「私もだよ。近くのカフェの写真撮りたいから一緒に来てって」

 

 なるほど。つまりはそこに俺と美咲の二人でいけということなのだろう。仕方がない、ここは乗ってあげたほうが良さそうだ。

 

「ユリアからメールが来た。遅れるから先行って待っててほしいって。行こうぜ。今日も暑いしせっかく待つなら室内の方が良い」

 

「あっちょっと待ってって! 良いのかなぁ? ……もしかしてユリアさん私に気を使ってる?」

 

「あいつはそういうやつじゃないだろ? 行こうぜ」

 

 メールが届く。文面は

 

『いま未来道具で透明になりながらあなたの後ろにいます。手を握ってエスコートをしながらカフェに向かってください』

 

 ホラーかじゃなきゃ誘拐犯か何かの要求メッセージみたいなのが届いた。高校生の恋を応援する文面じゃねぇ。しかたなく要求に応じることにする。

 

「ほら。今日ちょっと混んでるから」

 と、手を伸ばして美咲の手を掴む。ちょっと抵抗する素振りのあと、観念したのか手を開いて握り返してきた。

 

「ユリアさんからなにか言われたりしてる?」

 

 おっとするどい。だがここはユリアの意思を尊重しようと思い、

 

「でも姿が見えないじゃないか。指示を出してる怪しい人影があるか? 言っちゃなんだが目立つだろ? ユリアは」

 

「そ、それもそうだね……」

 

 ともじもじ落ち着かない仕草。俺も気恥ずかしくなって

 

「と、とりあえずカフェ行くぞ」

 

 と歩き出した。こうしてデート? は始まった。

 

 

『そこに思い出の公園があります。さり気なく寄って思い出話をしてください』

『そこに昔なじみの豆腐屋があります。手を繋いでいるのを見せつけて噂にさせてください』

『そこに……そこに……』

 と、とにかくディレクションのメールがひっきりなしに届く。俺は頑張って応えようと思っているのだが、美咲が顔を真っ赤にしているのを見るととにかく目的地に早く着くようにしてしまう。そのたびに

 

『ヘタレ』

 

 だの

 

『甲斐性なし』

 

 だのと言った辛辣なお小言を耳元で囁かれる。怖いってだから。推しなんじゃないのか? 俺は。

 

「こ、ここだよね? 目的のカフェって。結構並んでるし、先に来ておいて正解だったかもね?」

 

「そ、そうだな」

 

 と、そこにまたメールが届く。

 

『手は繋いだままそこに並んでください。会話を弾ませて。良いですね?』

 

 またしても要求が届く。離したそうにする美咲の手をぎゅっと握って離す気がないことをアピールする。

 

「きょ、今日は暑いね~。汗かきそうになっちゃう(から離してほしいなぁ)」

 

「そうか? まだ春だし長袖だし風がちょっと寒いくらいじゃないか? (ごめん、離せないんだ)」

 

「で、でもちょっと手に汗かいちゃって……あはは……(お願い離して!)」

 

「そんなことないだろ、すべすべしてて汗なんてかいてないぞ(ごめん! 美咲!)」

 

 と攻防を繰り広げていると前に並んでいるカップルが衝撃的なことを言い出した。

 

「今日のカップル限定メニュー楽しみだねぇ」

 

「ああ。2ショット写真が必要なんだよな。今のうちに撮っとくか」

 

「さんせぇ~」

 

「「なっ」」

 

 と、そこにちょうどメールが届く。

 

『聞きましたね? 2ショット写真を撮るのです。そしてカップル限定のラブラブベリーフラペチーノを飲むのです』

 

 嘘だろ!? そこまでさせるのか!? 

 そしてカフェの看板を見るに、例のラブラブベリーフラペチーノとやらは絡み合う2本のストローが刺さった大きなサイズのものだった。つまりこれはあれを二人で一つの飲み物を飲むカップル飲むというやつ専用らしい。

 

「あはは。そんな限定があったんだねぇ。何にしよっか? 私は……」

 

 美咲がスマホに目を落としメニューを見ているが、そこにメッセージが届いたらしい。

 

「ユリアさんからメッセージ来て、今日行けないって。でもこの……限定が今日まででどうしても写真がほしいから頼んで写真撮ってきてほしいって……」

 

「そ、そうか。でもまた期間限定なんてやるし、そのときにユリアに送ってやればいいだろ? だってあっち帰っても途切れるわけじゃ……」

 

「ないんだしって言うと思いますが、このメニューが読んでる小説に出てきていたので今送ってほしいのです。未来じゃ困るのですって続いてきてるよメッセージ……」

 

 あいつ未来って単語で俺を脅してやがる! なんてやつだ! 

 

「ま、まあそこまで言うなら送ってあげたほうが良いような? 気がするし?」

 

「そ、そうだね。私達付き合ってるわけじゃないし、とりあえず注文して外観だけでも撮ってさ……」

 

 ピロッとまたメッセージが届いたらしい。おそらく言われることは……

 

「の、飲んでる姿がほしいって来たんだけど……」

 

「そ、それじゃあしょうがないな。ほらっ。近く来い。写真撮るぞ。2ショットの」

 

「う、うん。って手を繋いでるから離れてないよぉ」

 

「もっと近くじゃないと画角収まらないんだよ。ほら」

 

 ぐいっと肩をこっちにひっぱると、抱き寄せる形になる。

 

「あわわわわわ」

 

 と美咲が混乱しているうちにシャッターを切った。

 

「これで大丈夫だろう」

 

「あわわわわわ」

 

「おいっ戻ってこい! 美咲ぃ!」

 

 そして俺達の順番が回ってくる。しかし前のカップルがラブラブベリーフラペチーノを注文したとき、店員が予想外なことを言ってきた。

 

「それではお客様、愛の告白をどうぞ!」

 

「「はあっ!?」」

 

 またハモってしまった。聞いてないぞこんなの。

 

「最近はカップル割とか限定目当てにカップル詐称する人がいるからこういうことさせるらしいよ」

 

「まじかぁまあ言いなれてっから良いけどな。愛してるよみーちゃん」

 

「私も愛してるよまーくん」

 

「はいっありがとうございます! カップルフラペチーノ1つオーダー入りました!」

 

 ……え? 今からこれやるの? 嘘でしょ? 

 

『嘘ではありません。早くやりなさい。早く早く』

 

 透明になった未来人から司令が届いた。仕方ない。俺は男を見せるときだ、と思い

 

「「あ、愛してる!」」

 

 とハモってしまった。似たようなことを美咲も考えていたらしい。

 こっちを見る店員の生暖かい視線が辛い。もう終わってくれ。

 

「ラブラブベリーフラペチーノでよろしいですね? ありがとうございます! ラブラブベリーフラペチーノ1つオーダー!」

 

 ラブラブラブラブうるせぇ! あとちゃんと注文する前に言っちゃって恥ずかしい! 

 二人して顔真っ赤にしながらラブラブベリーフラペチーノの到着を待つ。やっと渡れるが、渡す店員すら生暖かい初々しいカップルに向ける目をこっちに向けてくる。くそっ。

 

「じゃ、じゃあ飲んでるところも送らないとね?」

 

「そ、そうだな」

 

 もう恥ずかしさが一周回っていて、俺達は麻痺していた。これ以上恥ずかしいことなんてないと。それは間違いだったのに。

 

「じゃ、じゃあ飲むね?」

 

「お、おう。こっちも飲むぞ」

 

 と二人でフラペチーノを飲み始める。が、すぐに気づいたのがお互いの顔がすっげぇ近い。それにストローの飲み口が正面に固定されているため必然的に真正面から見ることになるのだ。恥ずかしすぎて顔が真っ赤だし、うおっすげぇまつ毛長い。やばい。意識が持っていかれた。

 コクッコクっと飲む音が聞こえる。少し固形のフラペチーノが喉を通る音まで聞こえてくる。目線を合わせないようにすると柔らかそうな唇が目に入ってきて、更に恥ずかしくなる。

 

「あ! しゃ、写真! 写真撮らないと! 飲んでるところ!」

 

「そ、そうだった。すみません。写真撮ってもらえませんか?」

 

 店員に頼む。また同じ生暖かい目で見られた。初々しいカップルを見る目だ。

 

「はい。それじゃあ撮りますよ! はいチーズ!」

 

 パシャリ、と写真が撮られる。美咲は真っ赤な顔でその写真をユリアに送っている。

 

「こ、これで送ったから、わ、私帰るね? 今日はありがとう! お金おいておくから……」

 

「いいよ。俺が出しといて後日ユリアに払わせるからさ」

 

「そ、そう? ごめんね。ありがとう。そ、それじゃあまた明日~!」

 そう言い残して去っていく。そこに透明を解除したらしいユリアが近づいてくる。

 

「ふっふっふ。どうでしたか私のディレクションは」

 

「二度とするなよ」

 

「ええ~でもあんないい感じの雰囲気作った私を褒めてくださいよぉ。あ! それとこのフラペチーノ飲んじゃっていいですか? 味気になってはいたんですよ。私が払いますから良いですよね?」

 

「バカっおまえ」

 

 そう言ってる間にズズズ……と飲み始める。周りはというと急に現れた美少女にびっくりしているが、話の内容を聞いて顔をしかめ始めた。

 

「……あの子がここ払うって? 自分で出さずに?」

 

「そもそもなんでカップル向けを一人で飲ませてるの?」

 

「……財布? 財布として呼び出したの? サイテー」

 

 ヒソヒソと話し声が聞こえるが、飲むのに夢中のユリアは気がついていない。

 結局ユリアが飲み終わるまで俺は、針の筵のような状態で待たされるのであった。

 もうこの店、これないな……。そうおもいながら……。

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