俺達のラブコメは聖地巡礼先で!?   作:yuurin

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俺のヒロインは誰?

 未来から来たとでも言うのか? でもこの変な服装に染めてるわけじゃないようなピンクの髪と、何より本人に嘘をついている感じがないため、そうなのかもしれないと思っていると、

 

「そういえばまだ名乗ってなかったですね。私の名前はユリア。あなたからすると未来人です。あ! 

 未来ではもう名字を名乗る文化がないんですよ。古風な家だとまだ頑なになって名乗っている人もいますけど」

 

 などと話が進んでいく。

 

「そういえばまだお名前を伺っていませんでした」

 

 と、ユリアに言われて、たしかに名乗られたからにはちゃんと自己紹介くらいはしないといけないなと思い

 

「俺は佐藤悠真。高校2年生で、ここに通っています」

 

 そう答えた。

 すると、ユリアはさっきまでとはまた様子が違った感じになっていた。

 口をパクパクさせてアワアワとしている。どうしたんだ? 

 

「あ……あなたがユウマ! あの俺恋の主人公ユウマなのですか!?」

 

 と急に興奮して顔をずずいっと近づけてきた。

 美少女どころかクラスの女子との会話ですら最小限の俺には刺激が強すぎて何を言われたのか一瞬理解できなかったが、なにかすごいことを言われたような気がするんだが!? 

 こいつの話を整理していくと、つまりこいつは未来人でここの高校が原作のラブコメがあってそれの主人公が俺ってことか? 

 流石におかしいって!? なにこれ新手の美人局? それとも最近噂の闇バイトってこんな感じで募集してんの!? 怖い!! と思っていると

 

「う~ん本当は未来の小説そのものを見せられたら早いんですけど……こんなカンジでこれ……見えます?」

 

 そう言ってユリアはなにかモザイクのかかった単行本サイズくらいの物体が差し出した。

 

「モザイクが見えます」

 

 エッチな感じのあれとは流石に言えなかった。

 

「あ~そういうかんじなんですねぇ。私は至って普通の紙の本を見せようとしているだけなんですけど流石に対策はされてる感じですかねぇ」

 

 ともかく、虚空にモザイクが投影されているようなそれを見て、未来云々がただのでまかせではなく、少なくとも未来チックな技術がそこにあるという何よりの証拠になっていた。

 

「ともかく! あなたは佐藤悠真さんですよね? あなたはこのラブコメ小説俺恋の主人公! にして! 私の最推しキャラなんです! あえて良かったあぁぁぁ! 」

 

 と言ってきた。こっちは情報量やらでパンクしそうなのにユリアの方はというと

 

「あっ! あそこ最初の登校シーンの挿絵に書いてあった電柱で、あそこには125ページでユウマさんがぶつかっていた電柱!」

 

 とさっそくそのへんの電柱に早速目移りしていた。はたから見ると完全に怪しい人だ。まあ会話しても怪しい人感は減らないのだが。

 そこに美咲が通りかかる。

 美咲はこちらをちょっと見ると何故か明後日の方を見ながら校門を通っていった。

 

「あの石畳は224ページ目で転んでいた場所! ああぁぁ~物理的に推しと同じ空気吸いながら聖地巡礼できるなんてなんて幸せな!」

 

 とあいも変わらず右へ左へ大忙しのユリアであった。ちょっと待って俺そんなにぶつかるの? 

 さすがに身分証持ってるか怪しい自称未来人を校内にいれるのはちょっと……と思いつつなにか身分証持ってないか聞いてみると、現代で使用する用のマイナンバーカードが出てきた。ちゃんと移行できてるんだ……未来……。

 ともかくそのまま校門前で待ってもらうのもあれなので、一旦家に帰ることにした。

 校内にいれるわけにもいかず、かといってずっと待っていてもらうのは忍びないと判断したからである。さらば俺の皆勤賞。密かな自慢だったのに……。

 両親は働きに出ていて、妹は朝から学校。女子を家につれてくるなんて中学の頃以来でちょっとドキドキしているが、それはそれとして突然謎の黒服が出てこないかという別のドキドキがあるのも事実だった。

 家までは徒歩15分程度。なのだが、ユリアは道のちょっとしたものや店に反応して手元のおそらく未来のスマホを使って写真を取っていた。そのせいでいつもの数倍の時間を使って帰宅したのだった。

 

「わぁぁぁぁ! ここがあのユウマの自宅! 挿絵のまんま! すごい!」

 

 とユリアはもう興奮しっぱなしで、まずは落ち着いてもらおうと

 

「珈琲と紅茶とお水があるけどどれが良い?」

 

 そう聞いた。するとユリアに

 

「コーヒーで! 砂糖はスプーン2杯で牛乳多め! のユウマさんブレンドで!」

 

 コーヒーを入れるときのクセすら言い当てられてしまった。どうやら本当に未来人かどうかはともかく俺のことに詳しい……推し? なことは間違いないらしい。

 

「で、未来から来たって言うけどそんなに未来から来てなんかパラドクスとかって大丈夫なの? そもそも未来人ってそんな頻繁に過去に来ているの?」

 

「う~ん。正直理屈面はあんまわからないんですよねぇ。この時代の人だって旅行に飛行機とか電車とかで行きますよね? でも飛行機操縦できなくても飛ぶ理屈がわかってなくても権買って乗って旅行はできるじゃないですか。それに未来のものは基本さっきみたいに見せられませんし変にかき乱すような人は審査通らないと思いますよ? 結構厳密に審査されるのと記憶にちょっとした処置はされてからくるので」

 

「あ~まあさっきのモザイクみたくなったりするなら変なことは起きないのか? でも未来人ってそんなに過去に来てるのか?」

 

 よく話題にならないな……と思っていると、

 

「未来人と会ったっていっても証拠が残らないのに言いふらす必要あります? そういう人って基本的に変な人ってラベル貼られて終わりな世の中じゃないですか?」

 

 たしかに、と頷く。よくできた話である。とりあえず矛盾もなく、また嘘を言っている雰囲気もないため信用しておこうと思う。

 

「それで、僕が主人公ってことはヒロインもいるのか? でも周りに女の子なんて……」

 

 いないし無縁だと思っていると、不意に赤みがかった髪を思い出し、それを振り払う。

 

 眼の前のユリアはまさにラブコメ1話で現れるヒロインと言った感じの出で立ちだが……。

 

「あ! 私はヒロインじゃないですよ? 念の為! でもそれ以上は教えられません! 私だって流石にそれを今この段階で明かすなんてことしたらあれこれしちゃうことくらいわかりますから!」

 

 と肝心の部分については聞かせてくれない。あれ? でもじゃあ……

 

「俺が推しだってことと主人公だってことは教えて良い範囲なの?」

 

 と聞くと、

 

「あ~あのそれはついうっかり口走ったといいますか推しと対面して漏れ出たというかなんというか……」

 

 ユリアはバツが悪そうだった。

 

「すみません! タイムパトロールには何卒内緒に! どうか!」

 

 と泣きそうになりながら懇願してくるがそんな組織への通報手段なぞ持っているはずがない。そもそもあるのか、そんな組織が。

 ユリアを見るとそれは流石に冗談だったようだが。

 とりあえず泣き止むまで待ってからまた話を切り出す。

 

「とりあえずこっちで住む場所とかあるのか?」

 

 うち部屋余って無いんだけどな……と思っていると

 

「あ~いえ! お気遣いありがとうございます! でもちゃんとこっちにホテル取ってるので大丈夫です! ちゃんと現代のお金に替えてきたのもあるので!」

 

 そこら辺はちゃんとしてるんだなぁ

 じゃあそっち行ってもらえばよかったかとおもうがあのときは動転していたし、聞きたいことは聞けたからまだ良かったと思うことにする。

 

「このあとはどうするの? あとこっちに何日くらいいるの?」

 

「予定では1ヶ月ほどいる予定ですね。今日はとりあえずホテルに帰って休もうと思ってます」

 

「そうか。じゃあ呼び止めちゃって悪かったかな?」

 

「いえいえ。推しの自宅訪問もできてありがたかったくらいです。あところでここからこのホテルってどう行けば……」

 

 といいながら、スマホの画面を見せてきた。これはちゃんと見えるようになっているが、駅前のホテルの公式ページのようだ。

 

 それなら……と、ここからホテルへの道を教えてそのまま解散となった。

 

「ありがとうございました! 明日からよろしくお願いしま~す!」

 

 と足早に去っていくユリア。

 ……明日からよろしく? と思っているうちにもう背中が見えなくなっていた。

 

 

 

「ふふふ~。推しとあえて自宅まで招かれるなんて……しかも思っていたとおり優しかったなぁ」

 その日の夜、ホテルでユリアは呟く。

「明日からはもっともっと推し活頑張らないと! 折角のチャンスだし!」

「メインヒロインのミサキさんと同じクラスなのはラッキーでしたね。うふふ~明日また学校で!」

 と、うっとりするユリアの目線の先には立てかけられた『俺恋』の表紙が……そしてそこには赤みがかった髪のヒロインが描かれていた。

 

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