俺達のラブコメは聖地巡礼先で!?   作:yuurin

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未来への祝福

 最終日の朝、俺とユリアは駅前で待ち合わせていた。

 約束の15分前に駅についたが、そこには先にユリアがいた。

 

「ユウマさん! こっちです!」

 そういったユリアの服は白いワンピースだった。見たことがない服装だ。

 

「どうしたんだ? それ。もしかして昨日美咲がお前を連れて行ったのって……」

 

「はいっ! ミサキさんに選んでもらいました! 似合ってますか?」

 

「ああ。すごい似合ってるよ」

 

 実際すごく似合っている。ピンクの長髪が映える白のワンピースは清楚さと大人っぽさの丁度いいバランスが取れたデザインのものだ。

 靴も普段のようなスニーカーじゃなく少しヒールの高い靴で、おしゃれになっている。

 

「えへへ。どうですか?」

 

「すごい似合ってるよ。大人っぽい感じだ」

 

「えへへ。ユウマさんの好みですかね?」

 

「ああ。すごい良いよ。好きになりそうだ」

 

 娘だってわかってなければ恋してたかもしれないな。

 だが今日は娘としてではなく、一人の女の子として接すると決めていた。

 

「えへへ。そう言ってもらえて嬉しいです!」

 

 そういったユリアの顔はどこまでもきれいで、思わず照れてしまったのだった。

 

 

 目的の遊園地は電車で20分程度で着く。俺と美咲が昔からよく行っていた場所だ。

 本来は昔他の女の子といった場所というのはマイナスなものだが、ユリアは一応俺と美咲が推しカップルで、聖地巡礼に来ていることからこれも聖地巡礼の一貫というわけだ。

 

「この電車に乗って行ってたんですか?」

 

「ああ。どっちの家も車持ってなかったからな」

 

 何しろ都心まで電車1本1時間かからないのだ。当時のマンションは駐車場の料金がかかるので、車を買うという選択はなかったらしい。

 

「じゃあこれも聖地ってわけですね?」

 

「そうなるかな? 写真は撮るなよ?」

 

「わかってますって!」

 

 いま一瞬スマホに手を伸ばしてたのを見逃してないぞ俺は。

 ともあれ普段の電車と違い二人で、いまはデート中なのだが、なんか無言の時間が流れている。

 

「美咲さんとはどんな話をして乗ってたんですか?」

 

「あんまはしゃがないようにしてたなぁそういえば。外の景色見て、看板探しとかしてたような……?」

 

「幼稚園の頃とかですもんね。じゃあ今何しましょうか?」

 

「じゃあお前のこと教えてくれ。なんでも良い。好きな食べ物とかそんなんでも良いからな」

 

 そう、俺はあまりこいつのことを聞いてこなかった。だから今度は俺が知る番だ。

 ユリアは嬉しそうに、いろんなことを教えてくれた。好きな食べ物の話から未来の学校事情まで。

 未来のことは俺に聞こえなかったが、それでも楽しそうに話すユリアの顔だけは変わらなかった。

 

 そして駅につく。駅からすぐのところにテーマパークはある。

 

「わぁ。ここがテーマパークですかぁ! テンション上がりますねぇ!」

 

「未来にはここ無いのか?」

 

「ええ。経営があまり良くなくて」

 

 そりゃ残念だ。俺と美咲なら絶対連れてきただろうし、予想はついていたことだが。

 

「早く早く! こっちです!」

 

「待てって。ほら。手」

 

「はいっ! あるがとうございます! 今日は楽しい一日にしましょうね?」

 

 もちろんだとも。さあデート開始だ! 

 

 

 さてとはいったものの、意識したデートなんてものは初めてなので、右も左もわからない。

 ユリアさんの方を見てもどうしたら良いのかわからない……といった感じである。

 事前に陽斗、文芸部コンビ、美咲に聞いてはいたのだが、どいつもこいつもデート経験がなかった。とくにラブラブな相手がいるはずの部長には期待していたのだが、当人は恥ずかしそうに

 

「いや~あいつそういうの全然なくてね? どっちかの部屋でゲームとかするようなことばっか昔からしていたせいでね? ちゃんとしたデートしたこと無いんだよね?」

 

 とか言ってた。なので結局出た答えは、『聖地巡礼デート』ということになった。

 俺と美咲がよく遊んでたやつに乗りながら思い出を語ってやる、という構造だ。

 最初に来たのはコーヒーカップ。昔からあるもので少し色褪せている。

 

「当時はピカピカ! って二人ではしゃいでたんだけどなぁこれ」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。昔はもっときれいでな? 見せてやりたかったよ」

 

「じゃあ早速行きましょう!」

 

 そう言ってユリアは走り始める。おれは引っ張られるようにコーヒーカップに乗った。

 

 コーヒーカップの中、ユリアは楽しそうに笑いながらカップを回し始めた。

 

「ユウマさん、しっかり捕まってくださいね!」

 

 俺は苦笑しながら中央の取っ手を握り、少しだけ力を入れて回すのを手伝った。カップはぐるぐると回転し、視界があっという間に歪んでいく。

 

「ちょっと速すぎないか!? 俺と美咲はこんなに早く回してなかったぞ!?」

 

「これくらいがちょうどいいですよ! ほら、もっと楽しんでください!」

 

 そんな無邪気な笑顔を見せられると文句なんて言えない。俺もつられて笑ってしまう。

 コーヒーカップを降りた俺たちは、お互いふらふらしながらも笑い合った。

 

「ユウマさん、顔が真っ青ですよ? 大丈夫ですか?」

 

 ユリアが心配そうに顔を覗き込む。だが、その瞳の奥には微かな楽しさが混じっているのを俺は見逃さなかった。

 

「お前があんなに勢いよく回すからだろ……この年になってこういうの乗るのはちょっとキツいんだぞ」

 

「そうですか? 私的には、ユウマさんが子ども時代に乗った感覚を再現したかっただけなんですけどね?」

 

 ユリアが「昔の二人はこんな風に回してたんでしょう?」と言わんばかりにニヤリと笑う。そんな事ないって。いや、どうだろう。俺もそうだが美咲の方も結構はしゃぐ子どもだったような気もしてくる。

 そんなやりとりをしていると、自然と次のアトラクション──メリーゴーラウンドへと辿り着いていた。

 

 メリーゴーラウンドの前で、ユリアが目を輝かせる。

 

「ここですね! 二人が初めて『特別な場所』だって認識したシーンの舞台!」

 

「特別な場所……?」

 

「ほら、ユウマさんが小さい頃、『美咲は王子様が乗る白馬の方が似合うよ』って言って、美咲さんが『じゃあユウマは王子様じゃないの?』って聞いた場面!」

 

 ユリアがそう言いながら嬉々としてメリーゴーラウンドを指差す。

 

「あのセリフ、本当に最高でした! 二人ともまだ子どもなのに、将来を感じさせるやりとりがあって……」

 

 なんでこんなにも詳しいんだ。そもそもそんなきざったらしいこと言ったのか? 俺。だが、そこまで俺と美咲のことを知っているユリアと一緒にその「舞台」に立つのは、やっぱり落ち着かないものがある。

 

「まあ、なんだ。とりあえず乗るか?」

 

「はい! 私はもちろん白馬で!」

 

 ユリアは笑顔で白馬にまたがり、俺はその隣のベンチシートに腰を下ろす。メリーゴーラウンドが回り始め、陽の光が優しく二人を包み込む。

 

「ユウマさん。馬引いてください。口取りってやつです」

 

 もうそれ聖地うんぬんもこの時代も関係なくないか? 

 

「それか、手を握ってください。王子様」

 

「王子様は今お前だ」

 

「ひどい!」

 

 だがまあ希望は叶えてやろう。そう思い手を伸ばす。

 

「ほら。手、握ってほしいんだろ?」

 

 パシッと勢いよく手が差し出される。ぎゅっと手を握った。

 結局俺は回り終わるまで、その手を離さなかった。

 

 

 その後、ジェットコースターに乗ったり、屋台で当時食べていた好物を食べさせ合ったりして時間が過ぎていった。

 そして夜、最後のアトラクションに着く。観覧車だ。

 

「ここが二人のあの!」

 

 と興奮しているが、何かあったっけかここ。

 

「はい! 未来のお二人が告白する場所です! ってネタバレしちゃいました」

 

 またか。とはいえもう聞こえなくなることはない。それにユリアの体も今にも消えそうになっていて、終わりが近いことを俺に告げてくる。

 

「じゃあ今度美咲といっしょに来ないとな」

 

「いまは私の方見ててくださいよぉ!」

 

「ネタバレした罰だ。おまえはこれから逃げ場のない場所でああ、今度美咲のこと連れてくるんだなって思いながら過ごすのだ」

 

「なんてひどい!」

 

 そう話しているうちにゴンドラが来た。

 俺達は乗り込む。少し狭いが、4人乗りのやつだ。

 

「わあ~! あっちのほうがユウマさんたちの街ですよね?」

 

「ああ。そしてお前の街だ」

 

「こんないい眺め、来てよかったです!」

 

「昨日ブッチされたけどな」

 

「はうっ!」

 

 ちょっといじめすぎたかな? 最後なんだ。もうちょっといい雰囲気にしたほうが良いのかな? 

 

「ありがとうございますユウマさん。いつも通りに接してくれて、私を見てくれて」

 

 ユリアの体が光り始める。

 

「幸せでした。好きな人に囲まれて、素敵な人に恋をして、最後にはデートまで! ちょっと聖地巡礼のために来たのが思わぬ収穫でした!」

 

 ユリアは更に言う。

 

「でももうおしまい。ねえ。最後にキス、してもらえますか?」

 

 ああ。わかった。そう言うと俺はユリアに近づく。近づく顔と顔。ぎゅっと目を閉じるユリア。そして俺は……。

 チュッとおでこにキスをした。おでこへのキス。その意味は……。

 

「祝福を、ユリア。俺も楽しかった。この1ヶ月、色んな経験をした。お前のお陰で美咲と仲直りできた。さようなら、愛しい親友。娘。そして……」

 

 好きだった人。その言葉を言う前に、ユリアの姿は消えていったのだった。

 

 

 数日後、俺は文芸部部長に聞き取りをされていた。ユリアとのラストデートのことまで今まで1ヶ月のことを洗いざらい吐かされたのだった。

 

「それで、君の方からもなんか頼みがあるんだって?」

 

「俺と言うよりは未来のファンからの要望です。俺と美咲の事、本にしてもらえますか?」

 

「それは……なるほど。でも良いのかい? 根掘り葉掘り聞いて全部書くよ?」

 

「ええ。観光ガイドになるくらい丁寧に書いてください」

 

「ユリアちゃんのため、かぁ。良いねぇ愛されてるねぇ」

 

「娘ですから。好きになったきっかけも、多分俺と美咲の話を小さい頃から聞いてたからなんでしょうね?」

 

「いやぁ~? 君と美咲ちゃんのエピソードがどれだけ面白いかにかかってるからねぇ?」

 

「ははは。まあお手柔らかに」

 

「それと……君が書くの? こっちは」

 

「はい。まあ暇なんで。ちょっと挑戦してみようかと」

 

「良いんじゃない? この『未来から来たヒロインが俺のこと推しって言ってるんだけど!?』ってやつ。じゃあまあ書き始めは……」

 

「それは決まってます」

 

 そう言って俺は書き始める。未来人と俺の恋愛を。あり得たかもしれないその話を。未来の読者に向けて。

 

『 私は未来人。ここに聖地巡礼に来ました』──────

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