ヴェルティの孤独のグルメ   作:丼丼

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まだやる気がある内に2話書いちゃいました
読んで下さってる方、ありがとうございます


二品目:レディZのこだわりコーヒー

 

ある日の早朝、ヴェルティは財団本部を訪れていた。

今月の月報をレディZに提出するためだ。

早朝に財団を訪れるなんて何の緊急事態かと思うが、その理由は至極簡単である。

月末の任務が真夜中に終わり、スーツケースに戻って休んでから月報を書こうものなら月を跨いでしまう。そう考えたヴェルティは任務を終えたその足でそのまま財団を訪れたのだ。

しかし、レディZのオフィスの前に到着したのは朝の4時だった。あのレディZでもこの時間に出勤はしていないだろう。

「……ふぅ…」

ヴェルティは先ほどから任務の疲れで睡魔に襲われていた。

朦朧とした意識の中、レディZのオフィスの前に座り込んで少し寝るだけだからと言い訳しながら膝を抱え、意識を手放した。

 

彼女の眠りを覚ましたのは他でもないレディZだった。

「こんなところで何をやっているのですか、ヴェルティ。」

「ん…バニーバニーそれは食べすぎ…」 

「…その件は以前話したわ…同情はするけど、それは経費では落ちないわ。起きなさい」

「ん…」

ヴェルティの意識が覚醒し始め、やっと状況を理解した。

「おはようございます、ヴェルティ。」

「…おはようございます、レディZ。ずいぶん早い出勤ですね」

「何を言っているのですか…もう朝の7時ですよ」

確かに寝ぼけ眼のヴェルティが座り込んでいる廊下では彼女に構う暇もなく職員が忙しそうに歩き回っている。

「あぁ…そうでした。これをご査収ください」

ヴェルティは自分の任務を思い出した。紙の束を取り出し、上司に手渡す。

「これの提出でしたか、ご苦労様。」

レディZはそれをしっかり両手で受け取った。これは彼女の仕事への向き合い方の表れでもある。

「では私はこれで…」無事任務を果たしたヴェルティは立ち上がったが、寝起きの体は思い通りに動かずバランスを崩し、思い切り壁に頭をぶつけてしまった。

「っ〜…‼︎」

声にならない声が出る。

「はぁ……入りなさい、コーヒーを淹れるわ。」レディZは呆れたようにオフィスのドアを開く。

幼い頃__あの時からの付き合いだ。部下を労るのも上司の仕事だろう。

「はは…ありがとう…ございます…」

相変わらずヴェルティは眠そうだ。

 

何の変哲もない部屋だが、彼女はここが心地良い。

「そこに座っていなさい。今から用意するわ」

月報をデスクに置き、部屋の給湯スペースに向かう。

言われるまでもなくヴェルティはソファーに腰を下ろし、再びうとうとと船を漕ぎ始めた。

レディZはコーヒーの準備を開始する。

まず、コーヒーケトルに水を入れて火にかけ、その間に豆を挽く。お湯を沸かし始めるタイミングで粉の準備を始めると、準備を終えたくらいの頃に丁度良くお湯が沸くのだ。

「えーっと……」

戸棚にある何種類もあるコーヒー豆の中から一袋を取り出す。

彼女は時間帯、その時の気分によって淹れるコーヒーを変える。かの有名なコーヒーオークションで選ばれた素晴らしいコーヒー豆が揃っている。

取り出したのは深いコクと強い香りが特徴のグアテマラの豆だ。甘さと酸味は控えめで、朝目を覚ます1杯を淹れるにはぴったりの代物。

給湯スペースの机に取り付けられたコーヒーミルの蓋を開け、豆を入れる。

世の中には自動で豆を挽いてくれる物もあるが、手でコーヒーを挽く時の振動は心を落ち着かせてくれる。

ガリガリと部屋中に豆を潰す音を響かせながら今日の予定を思い出し、頭の中でこの後の行動計画を立てていく。

 

そうこうしている内に豆が挽き終わる。

淹れるのは一番慣れているドリップコーヒー。

コーヒードリッパーの内側を少し濡らし、そこにコーヒーフィルターを被せ、先程挽いて粉末になった豆を入れる。

スプーンで粉を平らにして真ん中に指の第1関節くらいの深さの窪みを作る。これをする事で1注ぎ目が淹れやすくなる。

 

コーヒードリッパーをサーバーの上にセットし、いよいよコーヒーを淹れていく。

コーヒーケトルは普通のやかんと違って口が細いので狙いを定めてお湯を投下することができる。

火を止めて、ミトンを手にはめる。

いつになってもこの瞬間は楽しみだ。

ケトルの口から垂直になるように窪みをめがけてお湯を落とす。すると窪みが膨らみ始め、まるでカルデラの火口の様になる。そして20秒蒸らす。ドリッパー全体にお湯を行き渡らせるためだ。

ドリップコーヒーにおいて2注ぎ目は一番風味が出る。

1注ぎ目によってできた膨らみを中心にゆっくり渦を描くように外側に向かいながら注いでいく。ポタッ…とサーバーに最初の一滴が落ちる。ここでも急いではだめだ。ドリッパーの中で起こっているお湯のた対流を意識しながら泡の山を崩さないように何回かに分けて注ぐ。

この時泡の層が崩れないように、新しい泡を生み出しながらゆっくり回し入れる。

「よし…」

そうして繰り返していくと段々山が平らになってくる。

そうなったら潮時だ。最後に全体を掻き回すように大きく残りのお湯を注ぎ切って完成。

彼女は満足げだ。

 

彼女にとってルーティーンになっているコーヒーは朝の目覚まし、仕事のお供、仕事終わりの休憩と色々な場面でお世話になっている。

「〜♪」

戸棚からカップを2つ出す。1つは自分のお気に入り、もう1つは来客用の物だ。

ふふっ、と自分がプリントされたマグカップを見て微笑む姿を見る者は誰もいない。

そうして微笑んだまま自分とヴェルティの朝ごはんの準備を始める。

朝ごはんと言ってもトーストしたパンにバターとジャムを添えた簡単な物だ。

「そろそろ起きなさい、ヴェルティ」

テーブルに出来上がった物を並べる片手間、ヴェルティに声をかける。

「ん…」ヴェルティは暫く虚空を見つめると、本日2回目の寝起きを迎えた。

そして意識の覚醒。しかし今度は寝ぼけ眼ではない。状況を確認するのに2秒も要しなかった。

「申し訳ありません、レディZ。こんな…」

「別にいいわ…これ、飲むといいわ。その様子だとあなた、朝ごはんも食べていないんだろうし。」この時にはもうレディZはいつもの真顔に戻ってしまっていた。

ヴェルティの目の前に出されたコーヒーとトーストは良い香りを発していて、12時間ほど食事を取っていなかった彼女のお腹の虫は思わずぐぅ、と鳴る。

「で、では…いただきます…」恥ずかしいのを隠すようにコーヒーに口をつける。

コーヒーが流れ込んだ瞬間、口の中に深い香りが広がり鼻に抜ける。ホッとする味だ。(ホットコーヒーだけに)

「美味しいです…レディZ…」

「そう、よかったわ」

表情こそ変わらなかったが、そう言うレディZの声は柔らかかった。

ヴェルティはその顔を見て、少し安心したように微笑むとレディZと一緒にパンに齧りついた。

 

 




2話目にして孤独じゃなくなちゃった……
まあヴェルティに孤独は似合わないってことで…
次回:未定
感想とか下さる嬉しいです
試験あるので3話は12月以降
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