城東大学からほど近い地域の山中。そこにはハイキング中の登山客が居た。
「はあ、もう休ませてくださいよ先輩……」
登山客の1人が足を止めてそう言う。すると、もう1人の登山客の先輩も
「そうだな……、少し休むか」
と足を止める。そして2人は休憩を取る事にした。登山客達は休憩中の会話をする。
「しかし馬鹿に暑いな。暖かいシーズンではあるけど、この標高の山中でこの熱気は異常だぞ」
「はい、去年ここに登ったけどこんなに暑くは無かったですよね?」
「まあ、異常気象か何かだろう。……、そうだ。お前この前彼女と喧嘩したって言ってたけど仲直りは出来たのか?」
と登山客の先輩は尋ねる。すると登山客の後輩はため息をつきながら、
「出来ませんでしたよ……。というよりもう完全に関係が終わってしまいました」
と言った。それを聞いた登山客の先輩は
「そうか……」
と言って黙り込むのだった……。それから20分程後、2人は休憩を終えて再び動き出す。2人が山道を進んでいると、
「ん?なんだありゃ?」
登山客は大きな巻貝の様な生物を目撃した。その生き物に近づいてみると、
「熱っ!?」
その巻貝の様な生き物は高熱を放っているようだった。
「先輩!見てください、あちらこちらに居ますよ!」
登山客の言う通り、その巻貝の様な生き物は1匹や2匹では無かった。
「もしかしてここらが暑いのはこいつらのせいか……?」
「先輩!取り敢えず警察に連絡しましょう!」
登山客の後輩はスマホを取り出し、警察に通報する。そんな登山客達をよそに巻貝、後にガストロポッドと名付けられる生き物はその場に居続けるのだった。
◇ ◇ ◇
「ガストロポッド?新手の怪獣ですか?」
「そうらしいの。怪獣と言ってもね、街を破壊できるほど大きいサイズじゃないみたいだけど……」
城東大学でレオはワトからガストロポッドの話を聞く。
「どうも日本全国の山岳地帯に発生してるんだって。この大学にも捕獲されたガストロポッドが運び込まれて、今ザム星人のプラミー教授が研究室で調査してるそうよ」
「そうですか……、しかしガストロポッドってどんな生物なのでしょう?」
「さあね。でもこの巻貝みたいな生き物が山の中に居るのは事実よ」
とワトは言う。そこにトオルが来た。
「怪獣研究会としては放っておけないな。講義が終わったらプラミー教授に調査の進捗を聞きに行こうぜ」
「尾前崎先輩はそうなるよね……」
ワトはそう呟く。トオルは、
「まあな。それにガストロポッドがどんな生物なのかも気になるし」
と返す。そしてレオに、
「なあレオ、お前も行くだろ?」
と尋ねたのだった……。
城東大学のとある一角にある研究室でプラミー教授は助手達と共に調査を進めていた。そんな時、研究室にトオル達が入ってくる。プラミー教授は
「やあ、怪獣研究会の諸君。調子はどうだい?」
と尋ねる。ワトは、
「教授!ガストロポッドが研究室に運び込まれたのは本当なんですね?」
とプラミー教授に尋ねた。プラミー教授は少し驚いた後、笑いながら、
「ああ、本当だよ。しかし君達も物好きだねえ」
と言った。トオルは、
「まあね。で、そのガストロポッドについて何か分かった事はありますか?例えばどんな生物なのかとか」
そう尋ねた。
「そうだね。発見時にはこいつは高熱を発していたそうだが、今はそうじゃない。何かこの貝が高熱を発する条件がある筈だが……」
プラミー教授はケースの中に居る捕獲されたガストロポッドを見ながらそう言う。ガストロポッドは微動だにしない。どうやら性質自体はおとなしいようだ。
「この巻貝は、海中から上陸してきたみたいだが、君達はこの生物をどう思う?」
とプラミー教授はトオル達に尋ねる。ワトは、
「そうですねえ……。この貝って足も金属みたいですけど……?」
「良い所に気がついたね。ガストロポッドの足は硫化鉄に覆われているようだ。地球には他にも自分の身を鉄で覆う貝がいるそうだが、このお陰でガストロポッドは強い耐熱性を持っているみたいだ」
プラミー教授はガストロポッドの足を触りながらそう言う。レオが
「聞いたことがあります。スケーリーフッドでしたっけ……?しかし何のために……」
と言った時、研究室にプラミー教授の助手の1人が入ってくる。
「プラミー教授!堀田教授がこれからテレビ出演するそうです」
「何?」
堀田教授と言えば異星人を邪険視しており、度々プラミー教授に突っかかる同じ城東大の教授だ。プラミー教授は、
「そうか。じゃあテレビを見よう」
と助手に言う。そして研究室のテレビが点いた。そこには堀田教授が映っていた。
「皆さんこんにちは。私は城東大で物理学を教えています堀田です」
と言って堀田はカメラに向かって話す。
「さて今回は日本に新たな怪獣が現れたという情報を得た為、その調査を行いました」
そう言って堀田はいくつかの資料を取り出す。
「今現在日本の地下には大きな負担がかかっているようです。そしてそれは先日発見された鉄貝獣ガストロポッドと関連しているようなのです」
堀田教授の隣に座るアナウンサーが、
「ガストロポッドとはあの巨大な貝の事ですね?」
と質問する。
「はい。現在日本全国の山岳地帯に現れたガストロポッドは、異常な熱を発する事が報告されています。更にガストロポッドはどうも火山に集まっているようなのです」
「どういうことなんでしょう?」
「ガストロポッドの放つ熱が火山を目覚めさせ、日本に巨大地震が起きるかもしれません!!」
そう言い放つ堀田教授。テレビを観ていたトオルが
「ガストロポッドが原因で地震が起きるって事なのか?」
と、研究室内のガストロポッドに視線を移す。しかしプラミー教授は
「堀田教授は結論を急ぎ過ぎているようだ」
そう言い切る。
「でも堀田教授の意見にも妥当性はありますよね?」
「まだ調査は途中。彼のガストロポッドが地殻に影響を与えているというのは少々乱暴な結論だね。この件にはまだ明らかになっていない事が多すぎる」
とプラミー教授はワトの意見を否定した。助手の1人が
「プラミー教授。我々はどうしますか?」
聞いてくる。
「調査を続けよう。研究者がやるべきことは先ずそれだ」
とプラミー教授は言い、
「怪獣研究会の諸君、今日はここまでだ。しばらく調査で忙しくなるからね、講義の方も調査がひと段落するまではお休みだ」
とトオル達に言った。
◇ ◇ ◇
それから連日堀田教授はメディアでガストロポッドの危険性を主張した。そして学会の場で堀田教授は、
「ガストロポッドに対抗する為に駆除兵器を開発しました!」
とガストロポッドの駆除兵器の第一号を発表した。この兵器は液体ヘリウムを噴射し、ガストロポッドを凍死させることが出来ると説明される。
「ガストロポッドを生かしておく訳には行きません!必ずや国民の皆様の平和をお約束します!」
堀田教授はそう言って、ガストロポッド駆除のCMを放映した。
◇ ◇ ◇
その頃、レオとワトとトオルはプラミー教授の研究室で調査をしていた。するとトオルが、
「なあプラミー教授?どうして堀田教授はそんなにもガストロポッドの事を危険視しているんです?」
そうプラミー教授に聞く。プラミー教授は、
「彼は出世欲が強いからね。今回の件を治めて英雄になる気なんだろう。しかし彼の仮説は間違っていることが分かったよ」
「そうなんですか?」
とワト。プラミー教授は、
「ああ、ガストロポッドが火山を目覚めさせるなんて事は有り得ない」
と言う。そして続けて、
「ガストロポッドはね、熱を発するのでは無く、熱エネルギーを体内に取り込むんだ。つまり熱を餌にしている訳だね」
そう言いながら熱した鉄の棒をガストロポッドに近づける。すると、ガストロポッドの直前に出された鉄棒は急激に熱を失い、そのまま黒ずんでしまう。
「だから火山を活性化させるなんて事は有り得ないんだ」
プラミー教授はそう言ってガストロポッドから鉄の棒を回収する。レオが、
「じゃあ堀田教授の言ってた日本の地殻云々って……」
「恐らく、逆なんだ。先ず大規模な地殻変動が起こった。熱エネルギーを食べる為にガストロポッドが上陸してきた。つまり、彼らがいるから地震が起こらずに済んでいる」
「じゃあ、一連の地殻変動は単なる自然現象って事ですか?」
とワト。
「ああ、そう考えて良いだろう」
プラミー教授はそう言ってガストロポッドの殻を撫でる。その時である。研究室に地球防衛隊の隊員達が押し入って来た。プラミー教授の助手が、
「ちょっと!?何の用です!?我々は政府に許可を得てガストロポッドを調査してるのですよ!?」
と隊員達を止めようとするが、
「その政府からガストロポッドを一匹残らず駆除せよとの命令だ」
隊員の1人が令状を提示する。するとトオルが、
「ねえアンタら?どうしてそこまでしてガストロポッドを駆除しようとするんです?何か理由でもあるんですか?」
と隊員達に質問する。隊員達は、
「……我々はこの生物の危険性を判断し、排除する事を決定したのだ。これは政府の命令だ。君達も従ってくれ」
と言ってトオル達の意見に耳を貸そうとしない。ワトは、
「ねえ教授!何とかならないの!?」
とプラミー教授に詰め寄るが、プラミー教授は
「……残念だけどこの場は無理だね」
と答えるのだった……。そして隊員達はガストロポッドの捕獲に向かうのだった……。
◇ ◇ ◇
大学から出たプラミー教授と助手にレオ達。プラミー教授の助手が、
「堀田教授にもこちらの調査結果を伝えたんですけどね、返事が来ませんでした」
不満げに言う。更に
「堀田教授はこれから地球防衛隊と共にガストロポッドの駆除作戦を行うようです」
どうやら世論は完全に堀田教授の推論を信じているようだ……。
「こうなったら堀田教授に直談判するしかないようだね」
そう言いながらプラミー教授が端末を操作すると、円盤がプラミー教授たちの元に飛んできた。プラミー教授はレオ、ワト、トオルに、
「私はこれから堀田教授の所に向かうが君達はどうする?」
と尋ねる。レオは、
「俺は……、俺も堀田教授の所に行きたいです。これは日本の今後に関わる事ですから」
と言った。ワトも、
「私も行きます!」
と言う。トオルも、
「俺も俺も!」
と言って同行したのだった……。そして一行は堀田教授の元へ向かうのだった……。
◇ ◇ ◇
城東大学にほど近い山の山中。ガストロポッドの駆除を行う為、防衛隊が準備を進めていた。その中には堀田教授と彼の研究チームの姿もあった。
「急げ!一気にあの貝共を駆除するぞ!」
堀田教授が隊員達にそう檄を飛ばす。すると、そこに円盤からプラミー教授とレオ達3人が降りてきた。
「やあ、堀田教授」
「おお!これはプラミー教授!」
プラミー教授の姿を見て驚く堀田。そして、
「どうしてここに?もしやガストロポッド駆除にご協力頂けるのですか?」
と皮肉気味に言う。しかしプラミー教授は、
「いや、私はその逆だよ」
と言った。ワトは
「ガストロポッドの殺戮をやめて!」
と言いトオルも
「そうだそうだ!」
と合わせる。
「君も気づいているのだろう?ガストロポッドは地殻変動の原因ではない、その逆だと。今ならまだ間に合う」
そう言うプラミー教授だが、
「何を馬鹿なことを……。お前達に付き合っている暇はない!駆除開始だ!」
堀田教授のその言葉と共に配置された地球防衛隊の隊員達が駆除兵器を起動させる。液体ヘリウムが噴射され、それを浴びたガストロポッド達は弱っていく。プラミー教授が、
「このまま作戦を進めれば、この日本列島に大地震が起きるぞ。それでも良いのかね!?」
と堀田教授に言う。しかし堀田教授は、
「宇宙人風情がでたらめを言うな!私はこの国を救った英雄になる!その邪魔はさせんぞ!おい!こいつらを追い出せ!」
と隊員達に命令する。そして、
「さあ!早く出て行ってもらおうか!」
と言ってレオ達を追い出そうとするのだった……。現場から追い出されてしまった一行。
「どうしよう……」
とワト。トオルは
「このままじゃ大地震が起きるのか……?」
そう不安そうに発言する。
「何も起きない。と、いう可能性もあるがね。私の見立てではそれは低そうだが」
プラミー教授はそう答える。そして、
「くそっ!そんな事させるか!!」
レオがその場から走り出す。
「ちょ、殿奈君何処に行くの!?」
そう声を掛けるワトを尻目にレオは誰も見ていない場所に行き、サンフラッシャーを起動させた。
◇ ◇ ◇
ガストロポッド駆除作戦の現場にウルトラマンテラスが現れた。
「あっ!ウルトラマンテラスだ!」
「ガストロポッドを倒しに来たのか?」
地球防衛隊の隊員達はそう言う。そして、
「ジュアッ!」
テラスは掌から、波動の様なものを駆除兵器に向けて放った。すると、波動が当たった駆除兵器は機能を停止した。
「!?」
テラスが自分達の妨害をした事を驚く防衛隊。堀田教授は
「奴も私の邪魔をする気か!?ええいっ!駆除を邪魔するウルトラマンは敵だ!攻撃しろ!」
と怒りながら防衛隊に指示する。状況を見ていた防衛隊の指揮官は部下から、
「どうしますか?」
と言われるが、
「テラスは捕獲対象でもある。待機させている戦力を向かわせろ」
と、攻撃指示を出すのだった。防衛隊の戦闘機が出撃し、駆除兵器に波動を浴びせているテラスに攻撃を行う。
「ジュッ!?」
テラス=レオとしては防衛隊に反撃する訳には行かなかった。相手が暴れる怪獣や宇宙人ならまだしも、地球人のレオが仕事を全うしているだけの防衛隊を殺したくは無かった。
「ジュッ!」
テラスは戦闘機の攻撃を避ける。さらに戦闘機はミサイルを発射するがテラスはバリアを張ってこれを防ぐ。
「今のうちにやれ!」
堀田教授の指示により残った駆除兵器が駆動しガストロポッドに液体ヘリウムを噴射していく。次々と息絶えていくガストロポッド達。
「ジュアッ!?」
それを止めようとするテラスだが、その隙に戦闘機隊の攻撃を受けてしまう。
(このままじゃ……。こうなったら……!)
テラスはある事を思いついた。テラスは回転して地面に潜っていった。
「なんだ?」
テラスが空へでは無く地中に行った事を不思議がる防衛隊の隊員達。
「何でもいい!邪魔者は去った!ガストロポッドの駆除を続行しろ!」
そう言う堀田教授。しかし、地面が揺れ始めた。遠くでテラスの行動を見ていたプラミー教授達は、
「まさかもう地震!?」
と地殻変動を危惧する。だが、それはただの地震では無かった。
「!?」
テラスが地中へ潜った辺りから巨大な光の柱が立ち上ったのだった。
「なんだあ!?」
トオルは光の柱を見て驚愕する。しばらくすると光の柱は次第に細くなってゆき、やがて消えてしまった。そして、光の柱が消えた辺りからテラスが飛び出し、空の彼方に飛び去っていった……。
「な、何が起こったと言うんだ……?」
目の前で起こった事態に理解が追い付かない堀田教授。そこにプラミー教授達が再びやってくる。
「我々はウルトラマンテラスに救われたのだよ」
そう言うプラミー教授に堀田教授は、
「ど、どういうことだ!?」
と聞く。プラミー教授は、
「恐らくだが、テラスは地殻変動の原因となっていた地下深くの過剰エネルギーを放出したのだ。先ほどの光の柱はそのエネルギーの輝きだったのだろう」
と答える。
「何い!?」
「これは殆ど神の所業だね。日本の火山地帯の熱エネルギーが散っていった事でガストロポッド達もじきに本来の生活圏である深海に戻って行くだろう」
「そ、そんな……」
堀田教授はがくりと膝から崩れ落ちた。プラミー教授の予測は当たっており、後に日本全国のガストロポッド達は海へ戻って行ったのが確認された。
「すげえな……」
ただただ感心するトオル。トオルだけでは無く、その場に居た者達は途方もない事をしたウルトラマンの力に畏怖を覚えていた。そんな中、
「そういえば、殿奈君は?」
この場に居ないレオの事を気にするワト。その時レオは、
「はあ……、はあ……」
山道をフラフラしながら歩いていた。その足跡はまるで高熱で焼かれたように焼け焦げて煙をあげている。
「ゴハッ!」
さらにレオは片膝をつき、吐血するのだった……。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等お待ちしております。