数日分の休暇を取ったレオはその日、空港近くの駅で両親と待ち合わせしていた。タイへ3泊4日の海外旅行に行くためである。事の始まりは実家の両親から連絡が来て、何でも町内の福引でタイ旅行のチケットが当たったとのことだった。それでレオにもお呼びがかかった。レオは待ち合わせの駅で父、殿奈ヨシトと母、殿奈ミサゴの姿を見つける。
「父さん、母さん」
そう声をかけるレオ。2人共、久しぶりだなと返すのだった。そして3人はタイ行きの飛行機に乗るため空港に向かう。空港へ向かう途中、スマホ内のメカ子が、
『あなた方がマスターの御両親ですね。はじめまして』
と挨拶をすると、ヨシトとミサゴは驚いた。
「おや、何だい誰かと電話しているのかな?」
レオは、
「あっ、ああ……。こいつはメカ子っていって、AIって言えば分かるかな?今都会で流行ってるんだ」
とメカ子の事を嘘を交えながら紹介する。
「へえ、凄いねえ。都会にはそんな技術があるのか」
と感心するヨシト。ミサゴも
「まあ、最近のは進んでるのね……」
と言う。そして3人は空港で飛行機に乗り、タイへ旅立って行った……。機内でレオは、ヨシトにサンフラッシャーの事を聞くことにした。最近は気にしていなかったが、サンフラッシャーの正体が気になったからである。
「父さん、父さんは前にウルトラマンからサンフラッシャーを貰ったって言ってたけど、どうやって貰ったんだ?」
レオがそう尋ねるとヨシトは、
「そうだな……。あれは20年以上も前、レオがまだ生まれていない頃だ……」
と、当時の事を語りだした。
◇ ◇ ◇
20数年前の日本の某所の山中。若い頃のヨシトは怪獣ゴメスに追われていた。このゴメスは身長10m程と怪獣としては小型だったが、肉食で一般人にとっては十分脅威だった。ヨシトは旅行先でゴメスに出くわし、自分が注意を引いて他の観光客を逃がしたまでは良かったが、ゴメスはヨシトに狙いを定めて追いかけて来た。
「くそっ!こんな所で!」
とヨシトが愚痴をこぼしたその時、空から光の柱が降り注ぎ、1人の巨人が姿を現した。その巨人は赤と銀の姿で、胸に発光体が付いていた。そして巨人はゴメスに向けて腕を十字に組み、光線を放った。光線を受けたゴメスは爆散した……。巨人はヨシトの方を向く、
「ウルトラマンアヴァン……」
ヨシトは当時怪獣の暴れる現場に現れて怪獣と戦う光の巨人の呼称を呟く。ヨシトの前に現れたウルトラマンアヴァンは人間大に縮み、ヨシトの前に降りてくる。そして、
『勇気ある者よ……』
とヨシトに語り掛けて来た。
「勇気ある者……?」
ヨシトは聞き返す。するとウルトラマンアヴァンは、
『そうだ。君はあの怪獣の注意を引きつけて他の人間を助けた。それは勇気ある行動だ。君にこれをあげよう』
と言うと、サンフラッシャーを取り出してヨシトに手渡した。
「これは……?」
ヨシトは尋ねる。ウルトラマンアヴァンは、
『これはサンフラッシャー。何時かこれが役に立つ日が来るだろう』
と説明する。
「これを俺にくれるのか?」
『ああ、君に持っていて欲しいんだ』
そう言うと、ウルトラマンアヴァンは再び巨大化し、空へ飛んで行った……。その後ヨシトが合流した観光客に事情を説明し、ヨシト達は無事下山したのだった……。
◇ ◇ ◇
「という訳で、私はサンフラッシャーを手に入れたんだ。そして、お前が1人暮らしする時に渡したという訳だな」
と、ヨシトはサンフラッシャーの経緯をレオに話した。
「なるほど……。そういえば、ウルトラマンアヴァンが現れなくなった理由って父さんは知らないの?」
「いや、気がつけばアヴァンは現れなくなり、そのまま20年くらい経ったな」
「うーん、何でだろう……?」
レオは考えるが答えは出なかった。そうこうしている内に飛行機はタイに着陸するのだった……。
3人は空港からバスに乗りホテルへと向かい、チェックインを済ませる。そして鉄道を使って、タイの観光名所であるアユタヤ遺跡に向かった。
「ウルトラマン程ではないけど、大きいわねえ」
3人はアユタヤ遺跡にある、巨大な寝仏像の前に来ていた。
「これは、何なんだ?」
とレオが尋ねる。
「これはワット・ローカヤスッターといってな、タイの有名な遺跡だ」
「ふーん……」
そして3人はアユタヤ遺跡を見て回るのだった……。観光途中、レオ達はお土産など観光客向けの物品を売っている商人に捕まった。
「へいオニーサン!マニ車買わない?これを回すだけで厄除けになるよ!」
「え、マニ車?」
レオは商人に聞き返す。するとミサゴが、
「そうね……。せっかく来たんだし何か買っといたら?」
と言う。ヨシトも、
「そうだな。折角来た訳だからな」
と賛成した為、レオは売り物のマニ車を1つ購入したのだった……。すると、他にも商人が集まって来た。
「日本の人、安くするよ!タイシルクのスカーフね!」
「気分落ち着くお香あるよ!」
「マッサージ店紹介するよ!可愛い子いるね!」
「英雄ハヌマーンのポストカードどう?魔除けになるよ!」
次々と物売り攻撃を仕掛けてくる商人たち。レオ達は何とか振り切ってその場を脱出した……。
そして、アユタヤ遺跡の観光を終えた3人は、ホテルで1泊しタイ旅行2日目を迎えるのだった……。
翌日、3人は首都バンコクをぶらつく事にした。道路を多くのバイクが走るという光景を見てレオは、
(ああ、外国に来たんだな……)
と自分がタイにいることを実感する。そして、3人は屋台でタイ風ラーメンのクイッティアオを食べ、
「うーん、美味しい!」
と舌鼓を打つのだった……。その後、3人はバンコクにあるとある寺院を訪れた。見学させてもらうと、そこでは僧侶達が祈りを捧げていた。
「こういう所に来ると、厳かな気分になるな」
そうヨシトは言う。レオは寺院の僧侶の1人に、
「この寺って何か面白い話とかないですか?」
と聞いてみる。すると、僧侶は
「昔、この寺院に仏像泥棒が現れたのですが、ハヌマーンが現れて仏像泥棒を地獄に送ったという伝説が残っています」
と言う。
「へえ、そんな伝説が……」
レオは感心する。そして3人は寺院を後にしたのだった……。
タイ旅行3日目、3人が有名な庭園を観光していると、にわかに地面が揺れる。
「なんだ?地震か!?」
狼狽えるヨシトとミサゴ。すると、
『マスター、巨大な生命反応が近辺の地表に向かっています』
「なんだって!?」
メカ子の言葉に驚くレオ。そして地面から、
「グオオオ!」
と咆哮が聞こえ、巨大な怪獣が姿を現した!その怪獣は三日月型の巨大な角、太く長大な尻尾を持っていた。
「あれは、ゴモラ!」
地中から現れたのは、ゴモラザウルスという恐竜が進化したとされる怪獣、ゴモラだった。ゴモラは咆哮を上げながら暴れまわり、破壊活動をする。
「まずい、逃げるぞ!」
ヨシトはミサゴ、レオと共に避難しようとする。観光地はいきなり怪獣が現れたことにより、パニックに陥っていた。
「あ、大変!」
ミサゴは逃げ遅れた子供を見つける。その子供の親らしき人物も狼狽えている様子だった。
「まずいな……」
ヨシトが呟く。すると、レオは鞄からサンフラッシャーを取り出し、
「父さん達は逃げて!俺はあの人達を避難させる!」
と言う。ヨシトは、
「分かった……。だが気をつけるんだぞ」
とレオを見送る。レオは逃げ遅れた親子を避難させると、物陰に隠れてサンフラッシャーを起動した。一方、出動したタイ国軍の攻撃をものともせずに暴れまわるゴモラ。避難所のある方角に進撃しようとしたゴモラの前に、ウルトラマンテラスが現れた。
「ジュアッ!」
テラスはゴモラに向かって構える。
「ウルトラマンテラスだ!」
「頑張れー!」
避難所からテラスを応援する人々。そしてゴモラは、突進してきたテラスに角で反撃した!しかし、テラスは角を掴んで受け止めると、そのままゴモラに膝蹴りを入れる。それにダメージを受けて怒ったゴモラは、その長く太い尻尾でテラスを殴打して攻撃する。
「ジュワアッ!?」
尻尾の攻撃を受け、倒れるテラス。ゴモラは更に角で攻撃しようとするが、テラスは何とかそれを受け止める。しかし、今度は長い尻尾を鞭の様にしならせてテラスを攻撃する!
「ジュアッ!?」
尻尾の攻撃を受けて吹き飛ぶテラス。そして倒れたままのテラスに向かって突進し、踏み潰そうとするゴモラ。だがその時、タイ支部から出動した地球防衛隊の戦闘機隊がゴモラを攻撃する。その攻撃で少し怯むゴモラ。テラスは起き上がり、ゴモラに構える。
「ジュア!」
テラスはゴモラに向かって走り出し、飛び蹴りを放つ!飛び蹴りを受けて後退するゴモラ。更にテラスはテラススラッシュをゴモラの尻尾に向けて放つ。ゴモラの大きな武器である尻尾を破壊する気だ。
「!?」
回転するテラススラッシュはそのままゴモラの尻尾を切り裂き切断した。尻尾を切られた痛みに苦しむゴモラ。テラスは更にゴモラに追撃しようとするが、
「ジュアッ!?」
なんと切断されたゴモラの尻尾が跳ね飛び、テラスにぶつかって来た!何という生命力であろう!
「ジュア……」
苦しむテラス。ゴモラ本体を攻撃したいが、暴れるゴモラの尻尾に邪魔されて攻撃できない。だが、地球防衛隊とタイ国軍がゴモラの尻尾に集中砲火を浴びせる。なおも暴れるゴモラの尻尾だったが、やがて沈黙した。テラスはゴモラに向かってファイティングポーズをとる。すると、怒れるゴモラは角を震えさせ、超振動波を放ってくる。
「ジュアッ!」
超振動波を避けるテラス。しかし、ゴモラの猛攻は止まらない。再び角を振動させる。
「ジュアアッ……!」
すると、テラスは自らを蒼い光に包みテラス・フォトンアースに強化変身した。テラス・フォトンアースはドラゴン・イリュージョンで、ミズノエノリュウの頭部と8つの尻尾の幻影を出現させる。ゴモラは超振動波を放つが、合計9つの龍の首から電撃が放たれて超振動波を相殺する。そして、そのままテラス・フォトンアースが接近しエネルギーを纏わせたチョップをゴモラの角に叩き込んだ。すると、ゴモラの三日月状の角は破壊された。
これでゴモラは超振動波も出せなくなった。悲鳴を上げて、地中に潜って逃げようとするゴモラだったが、そこにテラス・フォトンアースはオーラムサンジェントを発射する。
「ジュアッ!!」
オーラムサンジェントを受けたゴモラは爆発四散したのだった。
「やったぞ!」
「よくやったウルトラマン!」
地球防衛隊やタイの人々が歓声をあげる。テラスは頷いて、空に飛んで行った……。
◇ ◇ ◇
「いやー、怪獣が出現した時はどうなるかと思ったよ」
そう言うヨシト。レオは両親と共に帰る為にタイの国際空港へ来ていた。
「でも、ウルトラマンが助けてくれたから助かって良かった」
とミサゴは言い、
「本当に無事でよかった……」
とヨシトは呟く。レオも頷きながら、
「そうだね……。2人共怪我無くてよかったよ」
と言うのだった。そして飛行機で日本へと帰る3人。
「全く、タイに行っても怪獣騒ぎとか……、呪われてるのか?」
レオは機内でそう呟きながら、お土産の仏教の厄除け道具であるマニ車を回すのだった。
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