月夜市の病院の一室、そこには1人の子供がベッドに寝かされていた。ベッドの側にはその子供の親と医師が居た。
「残念ながら、こうなった原因も不明で……、現状手の施しようがありません……」
「そんな……」
医師の言葉に、子供の両親は絶望する。そして、
「先生!何とかこの子を救ってください!」
「お願いします!お金はいくらでも払いますから!」
と必死に頼み込む。しかし、医師は首を横に振る。
「残念ですが……」
ベッドに寝かされている子供の顔はまるで白粉を塗りたくったかのように白くなっていた。それだけではない、とにかく無気力になり食事やトイレに行ったりはするが、他の事は指示しない限り何もしようとはしないのだ。
そしてこの症状でこの病院に運び込まれた子供は1人では無かった。皆、顔が白くなっており、まるで魂が抜けたような有様であった。病室から出た後医師は、
「一体この街で何が起こっているんだ……」
と呟いた。
◇ ◇ ◇
「磁場の異常?」
レオの言葉にスマホ内のメカ子は、
『はい。ここ最近この月夜市の辺りで通常は発生しえない磁場が確認されています』
そう言う。それに対しレオは、
「まあ、俺は一応大学生な訳だし、そういうのを調べるのは地球防衛隊とかの仕事になるだろうな」
と答える。
『静観なさるおつもりですか?』
「今すぐ怪獣が出現したとかじゃないし、身分が一般人の俺は様子見するよ」
レオはそう決めて、メカ子と共に家路につこうとする。すると、ロリポップキャンディーを持っている少年に出くわす。そのキャンディーはなんとも食欲をそそられる甘い香りを放っていた。思わず、
「ねえ、君。そのキャンディーは何処で?」
とその少年に聞く。少年はキャンディーを舐めながら、
「あっちの公園でコスプレしたねーちゃんが配ってたよ」
と答える。レオは、
「ありがとう」
と言って、公園に向かうのだった……。
「いらっしゃいいらっしゃい!子供にはタダでキャンディーをサービスするわよ!夢のある子供は大歓迎!」
公園ではオレンジ色を基調としたゴスロリのような服を来た美少女が、屋台を引いて子供達にキャンディーを配っていた。それを見たレオは、
「まるでハロウィンだな。次のハロウィンは大分先だけど……」
と呟く。すると、トオルがキャンディーの屋台を近づくのが見えた。
「あれ?会長だ」
トオルはキャンディーを配っているゴスロリ少女に、
「俺にもキャンディーをくれ!」
と頼む。ゴスロリ少女は、
「私は子供に配ってるの!あんたいい大人じゃない」
と断るが、トオルは
「俺は大学生だ!だからギリギリ子供でセーフの筈!」
そう言って来た。
「全然ギリギリじゃないし、普通にアウトだから!」
ゴスロリ少女はトオルを追い払う。それを見ていたレオは、
「会長は何をやっているんだ……」
と呆れていた。その時、
「ん?」
ゴスロリ少女の近くに立つ公園内のオブジェが視界に入った。そのオブジェはキラキラに磨かれており鏡の様に辺りのものを映すのだが、キャンディーを子供達に配っているゴスロリ少女の姿が映っていなかったのだ。彼女のすぐ近くにいる子供の姿は映っているというのに……。
「どういう事だ?」
レオは、そのオブジェに近づいた。しかしオブジェには何の変化も無かった。再び辺りを見渡すが、やはりゴスロリ少女の姿は写っていない。
「……どういうことなんだ?」
首を傾げるレオであった……。
◇ ◇ ◇
ゴスロリ少女になにか怪しいものを感じたレオは彼女を尾行する事にした。キャンディーが無くなり、空になった屋台を引いてゴスロリ少女は街中を進む。
「あのゴスロリ少女、何処に行く気だ?」
レオは尾行しながら呟く。すると、ゴスロリ少女は人気のない路地に入った。そして、
「ねえ、貴方」
突然後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはゴスロリ少女がいた。彼女はいつの間にかレオの真後ろに立っていたのだ。
「うわっ!?」
驚くレオにゴスロリ少女は、
「私をつけてるでしょ?何か用かしら?」
と聞いてくる。その目は笑っていなかった……。レオは警戒しつつ答える。
「君みたいな子がなんでキャンディーを配っているのか気になってね」
「そう……。じゃあ、私の家に来る?」
ゴスロリ少女はレオに言う。
「いいのかい?ホイホイ誘ってきて……。君をキャンディーと一緒にペロリとしちゃうかも……」
とレオは普段言わないようなクサイ台詞を返す。
「貴方にそんな度胸があるのかしらね……」
ゴスロリ少女はそう言うと、ポケットから鍵を取り出した。
「はい」
そう言ってレオに鍵を渡す。そして彼女はレオの手を引いて自分の家へと案内するのだった……。
◇ ◇ ◇
月夜市郊外の閑静な住宅街に、その洋館はあった。ゴスロリ少女に連れられてきたレオは彼女の家の鍵を開ける。
「さあ、入って」
ゴスロリ少女に招かれて洋館の中に入るレオ。中は綺麗に整頓されており、まるで映画に出てくるような家であった。
「綺麗な家だな……」
レオが呟くと、ゴスロリ少女は、
「ありがとう……。私の自慢の館よ」
と答える。そして2人は玄関からリビングへと向かうのだった……。
2人はリビングへと入った。大きなシャンデリアがある広い部屋だった。辺りを見渡すレオに、ゴスロリ少女は言う。
「もうすぐお茶の時間ね……」
すると突然、車輪付きのワゴンが独りでに動いてきた。そのワゴンにはティーセットが乗っている。
(やっぱり普通じゃないな……)
レオは内心そう思いながら、
「そういえば、君の名前を聞いていなかったけど、なんていうの?」
そう尋ねる。
「私の名前は……、ギランボよ」
ゴスロリ少女、いやギランボは答える。その名前を聞いたレオは、
「ギランボ……?」
と呟く。
(もしかして異星人なのか?)
するとギランボは紅茶を飲みながら、
「貴方の名前は?」
そう尋ねる。レオも紅茶を一口飲んでから名乗る。
「殿奈レオって言います」
レオがそう答えるとギランボは、
「良い名ね」
と言う。そして彼女は紅茶のカップを置いて言う。
「ねえレオ君、貴方も私と同じ人外でしょ?しかもかなり強い力を感じるわ」
「えっ?」
ギランボの言葉に驚くレオ。しかしギランボは続けて、
「貴方は何が目的でこの世界に居るのか知らないけれど、私は邪魔はされたくないわ」
その言葉を聞くレオだが、既に身体が痺れ始めていた。何か薬を盛られたようだ。
「君……、は……」
フラフラしはじめるレオにギランボは、
「私はこの世界とは別の次元からやって来た異次元人なの」
と言う。そしてギランボは、レオに顔を近づけて言う。
「貴方を私の物にするのも面白そうね」
そう言うとギランボはレオに口づけをした……。
◇ ◇ ◇
「う……」
目を覚ますと、レオは大きなカプセルの様な物に閉じ込められていた。レオの格好はパンツ一丁で、サンフラッシャー等の所持品や衣服はカプセルの近くのテーブルに置かれていた。
「ここは一体……?」
レオはカプセルから出ようとするが、中からは開けられなかった。その時、足音が聞こえた。その足音の主はギランボだった。彼女は、レオに向かって言う。
「おはよう、よく眠れた?」
「お前……、俺をこんな格好にしてどういうつもりだ!」
レオはそう尋ねる。するとギランボは微笑みながら答える。
「勿論貴方を私の物にするのよ」
「俺をだと……!」
困惑するレオだが、ギランボは、
「私の次元に帰る時に貴方も一緒に持っていくの」
と言う。レオはギランボに言う。
「帰る時……?」
「ええ、そろそろ潮時だと思ってね、もうちょっと夢を吸ったら帰る事にしたのよ」
「夢を吸う?」
その言葉にギランボは、
「私は子供の夢が大好物でね……。ああ、来たわ」
その言葉ともに夢遊病の様な状態の子供が1人部屋に入ってくる。レオはその子供が昼間ギランボからキャンディーを受け取った子供の内の1人だと気づいた。ギランボは子供に近づき、
「いただきます」
と言って、子供の頭からでてきた虹色の靄の様なものを吸い取る。すると、その子供の顔は白くなり無表情になってその場に座り込んでしまった。
「これは……」
驚くレオ。ギランボは、
「うーん、やっぱり人間の子供の夢は美味しいわ!最近は味気ない夢の子供も増えているけど、今回は当たりね」
と口を拭く。レオは、
「子供の夢はその子供の物だろう!返すんだ!」
と言うが、ギランボは、
「私の物は私の物よ。それに子供の夢なんて大体大人になる過程で捨てられちゃうでしょ?」
と返す。レオは、
「そんな……」
と絶句する。そしてギランボは、
「じゃあそろそろ他の子供達を迎えに行くわ。また会いましょうね」
と言って部屋を出て行った……。
ギランボが居なくなった後、カプセルの中でレオは考えていた。
(このままじゃまずい……)
そう考えるレオ。しかし、サンフラッシャーが手元に無くテラスに変身できない為、端的に言うと大ピンチだった。
◇ ◇ ◇
その頃外では、異変を察知した地球防衛隊がギランボの屋敷の場所に出動していた。それを見たギランボは、
「あいつらはいらないわね……」
と言って、怪獣の様な異形の姿になり巨大化した。巨大化したギランボに対して攻撃する地球防衛隊の戦闘機達。それに対しギランボは手から光弾を発射する。その光弾は戦闘機に次々と命中し、爆発していく。
「くそっ!」
地球防衛隊の隊長は歯ぎしりをするが、ギランボの次の標的となったのが自分だと気づくと慌てて回避行動をとるのだった……。
「待っててねレオ!これが終わったら結婚式をあげましょう!」
そう言いながらギランボは地球防衛隊に攻撃する。その最中、地球防衛隊の攻撃の流れ弾がギランボの屋敷に命中する。揺れるギランボの屋敷。すると、内部のレオを閉じ込めていたカプセルが倒れて壊れた。
「助かった!」
カプセルから脱出したレオは、テーブルに置いてあったサンフラッシャーを起動する。地球防衛隊に対し優勢なギランボの前にウルトラマンテラスが現れた。
「ジュアッ!」
テラスはギランボに向かって駈ける。そして飛び蹴りをかました。ギランボはその攻撃を避ける。さらにテラスは手からシュリケンショットを放つが、ギランボはその攻撃を片手で防ぐ。その後も戦い続ける2人。しかし、一向に勝負がつかない状況だった……。
「うふふふふ……」
ギランボは分身してテラスを取り囲む。
「ジュッ!?」
テラスはどれが本物か分からず、キョロキョロと辺りを見回す。そして1人のギランボがテラスの背後から手刀を繰り出す。
「ジュアッ!」
その攻撃に反応し、攻撃をかわしたテラスはカウンターでパンチを放つ。しかしそれは避けられた。
(くそ……)
再び戦闘になるテラスとギランボ。するとギランボは何かに気づいたようで、
「あら?貴方……、もしかしてレオ?」
と言う。テラスはギランボの言葉に一瞬動揺するが、すぐに否定する。
(違う!俺はウルトラマンテラスだ!)
しかしギランボは、
「ふーん……。まあ今はどっちでもいいわ」
とテラスに向かって構えたのだった。そして2人の戦闘が再開する。攻撃を次々と繰り出すも、全てかわされるテラスだが、その攻撃の一瞬の隙をついてギランボにキックを放つ。その蹴りがギランボに命中した。
「うあっ!」
倒れるギランボ。さらにチョップで追い討ちをかけるテラス。
「ジュアッ!」
「痛っ!」
ギランボはテレポートでその場から消える。そしてテラスから少し離れた場所に姿を現した。そして、
「こうなったら……、カモン!マイペット!」
とギランボは叫んだ。しかし、何も起こらない。
「ジュア?」
「……あれ?」
ギランボはその辺の林を掻き分けたり、岩をひっくり返したりして呼んだ筈のペットを探す。
「キングゴルドラスちゃ~ん?どこ行っちゃったの~?」
それを最初呆然と見ていたテラスだったが、直ぐに気を取り直して麻痺攻撃、スタン光線をギランボに放つ。
「きゃあっ!?」
スタン光線が命中したギランボの動きが止まる。更にテラスはシュリケンショットを連射した。
「あああああっ!?」
シュリケンショットが全弾命中したギランボはそのまま小さくなっていく。
◇ ◇ ◇
人間の姿に戻り、体から紫色の血を流して倒れているギランボの所にテラスから戻ったレオがやって来た。ちなみにレオは既に服を着直している。そして倒れているギランボを抱きかかえる。
「う……、レオ……?」
弱々しく目を開けて反応するギランボ。そんな彼女にレオは優しく語りかけた。
「君は地球人と相容れないと思うけど、それでもせめて君の最期を看取りたい」
ギランボはレオの言葉を聞いた後、レオに抱きついて泣きながら言う。
「ありがとう……、優しいレオ……」
2人はしばし抱き合った。そして、ギランボの身体は粒子になって消え去り、上空にオーロラが出現する。それと共に夢を吸い取られて廃人になっていた子供達は元に戻ったのだった……。
気がつけば朝になり、ギランボの屋敷もまるで最初から無かったかのように消え失せていた。後に残されたレオは、
「全ては一夜の夢か……」
と呟くのだった……。
ギランボの人間態の姿はウルトラ怪獣擬人化計画のギランボと同じです。
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