地球防衛隊日本支部司令部の一室。ここで先日バド星人の襲撃の際に消失したテラノイドの件について会議が行われていた。
モニターにリモートで参加している者も居たが、その中の何人かは明らかに地球人のシルエットをしていなかった。彼らは地球が同盟を結ぶ異星の外交官達だった。メフィラス星の外交官が、
『それで、テラノイドが消失したのは間違いない事だね?』
と防衛隊の重役に確認をとる。質問された重役は
「はい……。おっしゃる通り、テラノイドはバド星人の襲撃事件後姿を消し……。恐らくあのウルトラマンテラスの出現に関係があると思われますが、その辺りは未だに調査中で……」
とバド星人の襲撃の際に起きた事を説明する。するとメトロン星の外交官が、
『そのウルトラマンテラスとやらは何者なのかね?あの『ウルトラマン』の同族なのか?』
と防衛隊に問う。それに対しテラノイドの消失を報告されてから沈黙していた長官が答える。
「あのウルトラマンテラスはまだこちら側の予想の域を出てないのですが、恐らくその肉体はテラノイドを元にしたものと言う意見が科学者達から出ております」
長官の答えに今度はファントン星の外交官が、
『それは何故?』
と聞く。
「防衛隊本部はそのウルトラマンテラスのエネルギー反応を元にテラノイドのデータと比較した結果……、あの巨人はテラノイドとほぼ同一の存在だと言う結論に至りました」
その答えを聞いたメフィラス星の外交官は
『それで、テラノイドは実質失われた事になるが……、君達はこの埋め合わせをどうするつもりかね?あれの開発に我々も多くの支援を行ったのだが』
と防衛隊に問う。
「それは……」
と長官が言い淀むと、ファントン星の外交官が、
『まあ良いでしょう……。あの巨人は我々にとっても興味深い存在です。支援の埋め合わせの話は後で良いでしょう』
と答える。メトロン星の外交官も、
『それもそうだね。では今日の会議はここまでにしよう』
と言い防衛隊の首脳陣の会議は終わった。
「まずい事になったな……」
重役の1人がそう呟く。
「ああ、テラノイドが消えたお陰で人造ウルトラマンを量産し、太陽系だけではなく友好関係にある星々を怪獣から防衛する計画もおじゃんになった……」
ともう1人の重役がそれに続く。
「もしあのウルトラマンテラスが地球を侵略する存在だったら……」
と、別の重役が言う。
「その時はその時だ……。防衛隊の総力を挙げて戦うしかあるまい」
と長官は答えるのだった……。
◇ ◇ ◇
「……」
レオはテーブルに置いたサンフラッシャーを見ながら、サンフラッシャーを父から貰った時の事を回想していた。
『父さん、これは何?』
『これはサンフラッシャーといって、昔父さんがウルトラマンから貰った物なんだ』
『ウルトラマンから?』
『ああ、レオが生まれる前に居たウルトラマンさ。レオが一人暮らしする餞別にお守りとしてこれをあげるよ』
貰った時はウルトラマンから貰ったなんて噓くさいと思っていたが、まさか本当にウルトラマンから貰ったものなのか?何しろ先日の件は尋常では無かった。夢かと思ったが、あの後にテレビでやっていた巨人――ウルトラマンテラスと名付けられたそれは白昼夢ではなく確かに存在している。
レオは信じたくは無かったが、ウルトラマンテラスは存在する。そしてレオは自分がウルトラマンになった事を認めざるを得なくなっていた。
「父さん……、俺どうすりゃ良いの?」
レオはそう呟いた。
◇ ◇ ◇
翌日、レオが学校に行くとワトが話しかけてきた。
「殿奈君、昨日大丈夫だった?怪我してない?」
と彼女はレオを心配している様子だった。
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」
レオがそう答えるとワトは安心した様子だった。しかし、内心レオは穏やかな心中では無かった。ウルトラマンになったのはあれが最初で最後なのか、もし自分がウルトラマンに変身した事が他者にバレたらどうなってしまうのか、そんな不安が頭をよぎった。
そんなこんなでレオは本日の講義をしのぎ、怪獣研究会が使っている大学の一室に入った。室内では研究会メンバーが慌ただしく動いていた。
「おっ!殿奈、来たな」
と挨拶するトオル。レオは
「随分ごたごたしてますね」
と室内を見渡して言う。ワトが
「先週のウルトラマンテラスの事で色々あったのよ」
と説明する。
「ああ……」
とレオが納得していると、トオルが
「20数年前に姿を消したウルトラマンがまた現れたってんで、各所が騒いでるのさ。中にはとんでもない事が起きるんじゃないかって予想してる奴もいるよ。まあ俺達もこの大学の怪獣研究会として過去の怪獣やウルトラマン関連のデータを調べ直してる最中なんだ。殿奈にも手伝ってもらうぜ」
とパソコンを操作しながら言う。
「分かりました、俺も手伝います」
とレオはトオルの手伝いをする事にするのだった。
「しかしまあ、あのウルトラマンテラスって一体何者なんだろうな?」
「さあ?でも20数年前に消えたウルトラマンとはちょっと違うみたいよ」
と、ワトは過去に地球に現れたウルトラマンの画像と、先日のバド星人の襲撃時に姿を現したウルトラマンテラスの画像を並べる。レオが覗いてみると、確かに両者の姿には共通点はあるが、前者は銀色に赤い模様のみなのに対しテラスは緑のカラーが入っていた。更に頭部も形状が微妙に異なっている。
「こっちのウルトラマンは『ウルトラマンアヴァン』って呼ばれてたみたいね」
とワトはウルトラマンアヴァンの画像を見る。
「『アヴァン』か……、ウルトラマンは様々な怪獣や侵略者から地球を守ったって聞いたことがあるけど、このアヴァンがそうなのか?」
レオはそう言った。
「おい!福島、殿奈。話をするのは良いけど作業も忘れずにな」
パソコンとにらめっこしながらトオルはワトとレオに注意する。
「あ、はい。それにしてもこの『太平風土記』ってかなり分厚い資料ですね。ちょっとあと1時間くらいじゃ目を通し終わらなそうですよ」
レオが今、目を通している太平風土記は怪獣の事が記されている古文書でまだまだ謎が多いとされている。この大学にも電子化したデータが存在するが、レオの言う通り膨大な情報量があった。
「……ん?」
そんな時レオは太平風土記のある記述に注目する。それは人に造られし巨人が本当の光の巨人になるといった意味合いの箇所だった。それは、奇しくも先日の件を連想させた。
「まさかな」
一瞬レオは自分がウルトラマンテラスになった事を思い浮かべたが、すぐにその考えを振り払う。
「殿奈君?どうしたの?」
ワトがそう聞くが、レオは
「いや、なんでもないよ」
と答えた。1時間後、資料の整理はまた明日という事になり怪獣研究会の今日の活動は終わりとなりかけた所だった。スマホを見ていた研究会メンバーの1人が急に立ち上がる。
「部長!怪獣が現れたみたいです!」
「本当か!?」
とトオルはスマホで怪獣の出現地点を割り出す。
「場所は……、国内だがここからは遠いな」
怪獣は、日本領海の沖合に出現し現在防衛隊の海戦力が対処に当たっているとの事だった。
「あっ、出現した怪獣の呼称はフライグラーに決定だって」
ワトもスマホで確認をする。トオルは
「フライグラーか……。ああ、写真に収めたいなあ……。どんな怪獣なんだろう?」
と言う。研究会メンバーの1人が、
「部長、アマチュアが怪獣を撮りに行くのは自殺行為だと思いますよ」
と冷静にツッコむ。
「分かってるよ!でも、見てみたいじゃないか!」
とトオル。
「まあ、確かに……」
と他の部員も同意する。
(このサークルの人って変わったのが多いよなあ……)
レオが内心こう思っていると、懐から熱を感じる。
(ま、まさか……!)
レオが確認してみると、案の定熱を持っていたのはサンフラッシャーだった。しかもサンフラッシャーから押される感覚がする。
「あ、お、俺、お先に失礼します!」
レオはとりあえず自分の荷物を纏めて部室を出る事にする。
「おい殿奈、どうした?何か用事か?」
とトオルが聞く。
「いやちょっと親に呼ばれてたんで急いで帰らないと!」
とレオは言ってその場を後にした……
◇ ◇ ◇
大学から出て少し移動し、レオはサンフラッシャーを懐から取り出すとこう呟いた。
「おいおい……。まさかまたスイッチを押さなきゃならないのか……?」
その呟きに呼応するかのようにサンフラッシャーは熱を帯びていく。
「お、おい待て!熱いって!落ち着いてくれ!」
レオはサンフラッシャーを落ち着かせようとするが、それとは裏腹にサンフラッシャーは光と熱を増大させていく。
「ああもう!どうにでもなれ!」
レオがそう叫ぶと、サンフラッシャーのスイッチを押した。すると、再び光が辺りを包み込み、やがてその光は収束していく。そして光は球状となり、フライグラーが出現した方向へと飛び立っていった。
◇ ◇ ◇
トビウオが突然変異を起こして誕生した怪獣、フライグラーは地球防衛隊日本支部の攻撃を掻い潜って沿岸部の工業地帯へ上陸した。
フライグラーを追って来た防衛隊の戦闘機が攻撃を行うが、その攻撃に怒ったフライグラーは口から水流波を放つ。水流波を受けた防衛隊の戦闘機は墜落し、その衝撃で工業地帯のビルが倒壊する。
「こちら『ジャガー1』目標は現在工業地帯を進行中!奴の進行方向には人が大勢居る!このままだと被害が出てしまう!」
と通信が入る。それを聞いた日本支部司令官は、
「何としても食い止めろ!これ以上被害を出すな!!」
と指示を送る。そして2機の戦闘機が街からフライグラーを引き離すべく攻撃を続けるが、その攻撃をフライグラーは躱し、水流波を受け戦闘機は墜落する。
「応援が到着するまで10分はかかります!」
とオペレーターが報告する。司令官は
「何だと……!」
と呟く。その間にもフライグラーは工業地帯を進んでいく。だがその時光球が飛来し、フライグラーに激突した。押し戻されるフライグラー。
「何だ!?」
避難誘導に当たっていた防衛隊の隊員が驚くと、光球は人の形へと変化していった。そして光の中から現れたのは、
「ウルトラマンテラス……!?」
と隊員は呟く。
(来ちゃったよ……)
心の中でテラス=レオは呟く。光に包まれたと思ったら自分の姿はまたもウルトラマンになっており、しかも目の前には怪獣がいた。フライグラーは現れたテラスに対し敵意を向ける。テラスは
「ジュ、ジュアッ!(待て、穏便に解決しよう!)」
とフライグラーに対して説得を試みるが、フライグラーに言葉は通じない。テラスが構えると同時にフライグラーも水流波を発射する。
「ジュアッ!」
しかし、テラスはその攻撃を躱し、飛び蹴りをフライグラーの頭部へ食らわせる。完全にテラスを敵と認識したフライグラーはテラスに殴り掛かった。
「ジュアッ!」
テラスはフライグラーの攻撃を躱す。そして隙を見てカウンターのパンチをフライグラーの頭部に当てる。続けてタックルでフライグラーを押し倒すと、起き上がろうとしたフライグラーの足を掴んで投げ飛ばす。更に倒れた所を追撃しようとするが、フライグラーは背中の翼を広げて空に飛び立つ。
「ジュア!?」
空に飛び上がったフライグラーはそのまま空から突進攻撃をしかける。突進攻撃を受けたテラスは吹っ飛ばされ、地面に落下する。
「ジュア……!」
何とか起き上がるが、フライグラーは既に上空からテラスに狙いを定めていた。そしてそのまま水流波を発射しようとしたその時、突如飛来した光弾がフライグラーに命中した。直撃を受けたフライグラーは体勢を崩して地面へ落下する。
「ジュアッ!」
テラスもこれにチャンスとばかりに飛び上がり、着地と同時にドロップキックをフライグラーの頭部に食らわせる。
「ジュアッ!」
フライグラーは海上へ後退し再び飛び立とうとするが、テラスは腕を振るい光のカッター、光輪と言うべきものを放ち、放たれた光輪はフライグラーの翼の片方を切断した。
「ジュアッ!」
翼を失ったフライグラーは海へと落下した。すぐさま浮上するフライグラーだったが、すかさずテラスは両腕をL字状に組みそこから光線を発射した。光線が命中したフライグラーは、そのまま爆散したのだった。
それを確認したテラスは飛び立とうとするが、その時何処からか光弾が飛来し、テラスに命中した。
「ジュアッ!?(な、なんだ!?)」
光弾が放たれた方向を見ると、そこにはセミの口吻や複眼に似た器官のある顔を持ち、両手の先は大ぶりな金属的質感のあるハサミ状の手をした宇宙人が立っていた。
(い、異星人か……?)
とりあえず構えるテラス。そして、その宇宙人はこう言い放った。
「私はバルタン星人!宿敵ウルトラマンよ、覚悟してもらう!」
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