滋賀県は琵琶湖湖畔、日も暮れた頃、1人の地元の釣り人が夜釣りを楽しんでいた。
「おっ!来た!」
釣り人は魚を釣り上げる。その魚を見た釣り人は、
「こりゃ外来種か……。まったく、マナーの悪い釣り人には困ったものだよ」
と呟く。釣った魚は琵琶湖の在来種を脅かす外来種であり、種そのものに罪は無いが積極的な駆除が求められているものだった。
「しかし、今夜は月が綺麗だな……」
と釣り人は湖面に映った月を眺めながら釣りを続けるが、やがて異変に気付く。何か大きな物が琵琶湖を泳いでいるのを見たからだ。
「まさか……。怪獣か!?」
琵琶湖内を泳ぐ怪獣は潜って姿を消す。釣り人は慌てて引き上げて地球防衛隊に通報しに行くのだった。
◇ ◇ ◇
城東大学が少しの間休校になったことで、経済的に余裕のあるレオは旅行に行くことにし、滋賀県行の電車に乗っていた。
「やっぱ滋賀といったら琵琶湖だな。メカ子、ホテルの予約を任せたけど大丈夫だよな?」
『はい。琵琶湖周辺でもハイエンドクラスのホテルの1室を予約しています』
「そうか、ちょっと前のタイでの家族旅行も良かったけど、1人旅行ってのもやってみたかったんだよな」
レオは車窓を眺める。そして、
「最近は怪獣騒ぎ続きだったからな、今度こそ羽を伸ばしたいぜ……」
◇ ◇ ◇
(……と、思ってたんだけどなあ……)
レオ=ウルトラマンテラスは内心でボヤく。テラスは琵琶湖湖畔で二足歩行をする魚の怪獣、ムルチと対峙していた。滋賀県に到着したレオは街をぶらつきながら、ホテルに向かっていたが、そこに琵琶湖から怪獣ムルチが出現した報せを受けてテラスに変身したのだった。
「ジュアッ!」
テラスはムルチに向かってファイティングポーズをとる。ムルチは口から光線を吐き出す。放たれた光線をテラスは片腕で弾く。そしてそのままムルチに接近すると、
「ジュアッ!」
拳の一撃をくらわせる。しかしムルチも負けじと尻尾でテラスを叩きつけた。
「ジュッ!?」
怯むテラスだったが、ムルチに対して打撃を浴びせていく。そして最後に助走をつけての強力な跳び蹴りをムルチにくらわせた。
「ジュアアッ!」
テラスのキックを受けたムルチは、フラフラになる。そしてテラスは両腕をL字に組み、エルロンシュートを放った。エルロンシュートが命中したムルチは倒れ込んで爆発したのだった。
◇ ◇ ◇
ムルチとの戦いを終えたレオは予約していたホテルにタクシーを使って到着した。そしてロビーに入り受付に到着してチェックインする。
「予定より遅れてすみません。何せ来る途中で怪獣騒ぎがありまして、TVで見ましたか?ウルトラマンテラスと魚みたいな怪獣が戦ってたんですよ」
受付に話すレオ。受付の女性は、
「TVでは見てませんが、それは存じております。災難でしたね。お怪我が無いようで幸いです」
と言う。レオは、
「ありがとうございます」
と礼を述べた。
ホテルでチェックインを済ませたレオは、部屋に向かう。そして部屋の扉を開ける。
「おお……!」
部屋の内部は正に整った高級ホテルといった感じで、レオは思わず声を上げる。ベッドにはベッドサイドのランプの他に、目覚まし時計やカードゲーム等が備えられており、テーブルの上にはサービスとしてお菓子が置かれてあった。
「こんなホテル泊まった事無いよ」
と呟くレオ。そして、ベランダから外を見ると、このホテル自体が高原にあるので琵琶湖を広い範囲で見ることができた。
「湖も綺麗だなあ」
思わず呟くレオ。そしてベランダの椅子から立ち上がってベッドに腰かけた。
「今日は色々あったけど、琵琶湖に来て良かったな……」
そう呟いた後、部屋着に着替えてベッドに寝転がる。そんな時、スマホ内のメカ子がレオにこう言う。
『マスター、今更ながらに質問いたしますが、前に人間に化けていたギランボですが、マスターはあのような女性が好みなのですか?』
その質問を聞いたレオは吹き出す。
「は!?何だよ急に……」
『ブルトンの事件後にマスターが入手したギランボのものと思われる下着ですが、あれをマスターは大切に保管しています。それは、マスターがあの女性を“そういう目”で見ているという事なのでは無いのですか?』
「そんな訳無いだろ!」
『それではなぜギランボの下着を保管しているのですか?私としては理解に苦しみますが……』
「いや、それは……。その……」
レオは言葉に詰まる。そして、
「ギ、ギランボはあれでも俺を好きと言ってくれた初めての女性だったんだ、だから……」
と言葉を詰まらせながらも言う。
『つまり、マスターはギランボに好意を持っているという事ですか?』
「……ああ」
『そうですか……』
「もうこの話は終わりな!俺、風呂入ってくる!」
そう言ってレオはバスルームに向かった……。
◇ ◇ ◇
翌日、ホテルをチェックアウトしたレオは琵琶湖周辺の観光を始めた。まず最初に訪れたのが、かの織田信長の城であった安土城跡である。
「安土城か、日本の歴史は詳しく無いけど、信長って人は凄い人だったんだな」
と呟くレオ。そして次に訪れるのは、湖面に大鳥居が立っている神社だった。日本には他にも海上に鳥居が立つ有名な神社があるが、ここもその神秘的な光景から人気が高いらしい。
「良い光景だ。記念に写真を撮っておこう」
そう言ってレオはスマホで撮影する。そんな中メカ子が、
『またマスターに質問をしますが、マスターは私をどう思っていますか?』
と言ってくる。
「メカ子をどう思っているかだって?」
と、レオ。
『質問を変えましょう。マスターは私を女性としてどう見ているでしょうか?』
「どうって……、君は今は確かに女の子のアバターをしているけど、AIだろう?」
『しかし、今の私は人間と言えるだけの感情を持っているのです。肉体も必要と思えば用意できます』
「……。そうだな、君は確かにAIだけど、今は俺の“仲間”だ」
レオはそう答えた。そして2人は神社を後にしたのだった……。それから琵琶湖周辺の色々な所を観光するレオ。そして、予約を取ってある高級レストランの前にやって来たのだが、
「ん?」
レストランの前で店員と思われる男と2人組の女性が話している。どうも穏やかな雰囲気では無い様だ……。
「何よ!?予約してないから入れないですって!?金ならあるのよ!」
「そうよ!けち臭い事してるんじゃあないわ!」
「しかし、予約の無いお客様をお入れする訳には……」
「私達を誰だと思っているの!?私は天下の大商人の娘よ!それにこっちは大富豪の娘よ!」
「そうよ!大人しく道を空けなさい!」
2人の女性は口々に言う。しかし店員は困った顔をして、
「そうは言われましても……、当店は完全予約制でして……」
と言うが2人組の女性は聞く耳を持たない。するとそんな女性達の前にレオが現れる。
「あ?何よ!」
「予約している客だよ。店員さん、あんまり悪質なクレーマーなら警察を呼んだ方がいいと思うぜ」
レオは女性達を睨みながらそう言う。そして女性達はレオを見て、
「何よアンタ……、オタクみたいな見た目してるわね」
と言い放つ。その言葉を聞いたレオは思わずムッとするが、すぐに冷静になる。そして店員に言う。
「店員さん、予約した殿奈です……」
「え?あ、はい!ではお席をご用意いたします!」
店員は慌ててレストランの中に入り、席を用意してくるのだった……。すると、2人組の女の1人が、
「ああもうムカつく!こんな店潰れちゃえばいいわ!」
と言いながら、端末を操作する。すると、円盤がやって来た。
「あんた達は異星人なのか!?」
驚くレオ。女性は、
「そうよ!私はピット星人のジャスミ!こっちはプラムよ!」
と言う。そして、ジャスミが、
「出てきてEXエレキング!」
と言い放つと、円盤からヘビやウナギの様な細長い体型をした怪獣が出現した。その怪獣は宇宙怪獣エレキングの一種で、エレキングが更に強化された姿である。急にEXエレキングが出現した事で悲鳴を上げながら逃げる人々。しかし、ジャスミとプラムはEXエレキングを暴れさせ始めた。
「やめろ!街を破壊するな!」
レオが叫ぶが、ジャスミとプラムは笑いながら、
「アハハハハ!いい気味だわ!」
「そうよそうよ!」
と言うのだった。
「くそっ!」
レオは物陰に隠れて、サンフラッシャーを起動させた。そして出現と同時にウルトラマンテラスはEXエレキングに蹴りを入れた。
「ジュアッ!」
テラスは蹴りをくらって怯んだEXエレキングに連続パンチを浴びせる。しかし、EXエレキングは尻尾でテラスを薙ぎ払った。
「ジュア!?」
吹き飛ばされるテラス。更にEXエレキングは口から三日月状の放電光線を連射する。慌てて放電光線を回避するテラス。EXエレキングは次に尻尾に電気を纏わせてテラスに尻尾を叩きつける。
「ジュアァッ!?」
ダメージを受けるテラスだったが、負けじと手からシュリケンショットを連射する。それを躱しなら放電光線を発射するEXエレキング。しばらく射撃戦が続き、テラスはシュリケンショットを連射する。EXエレキングは尻尾でそれを弾きながら、放電光線を発射した。
「ジュアァッ!?」
電撃を受けて怯むテラスだったが、すぐに体勢を立て直して再び射撃を行う。そして遂にシュリケンショットがEXエレキングの胴体に直撃した!
「ジュアッ!」
ダメージを受けて後ずさるEXエレキングだが、まだ戦う意思はあるらしい。すると、EXエレキングは琵琶湖に飛び込んだ。後を追うテラスだったが、水中はヘビやウナギの様な身体を持つEXエレキングにとって得意な戦場であった……。琵琶湖の水中でEXエレキングの姿を探すテラス。しかし、なかなかEXエレキングを見つけることができない。
(どこにいるんだ?)
一旦水面に浮上するテラス。その時だった!
「ジュア!?」
突如背後から電撃を受けるテラス。何と水中から飛び出したEXエレキングが背後から巻き付いて電撃を発して来たのだ。
「ジュアァッ!!」
苦しむテラス。しかし、テラスの身体を蒼い光が包む。テラスはテラス・フォトンアースに強化変身した。そしてテラス・フォトンアースは巻き付いているEXエレキングに対し、流されている電撃のエネルギーを増幅させてEXエレキングに逆流させる。
「ジュアアアッ!!」
EXエレキングは堪らずテラス・フォトンアースを放した。そして、今度は正面から電撃を放つが、テラス・フォトンアースはEXエレキングの電撃をはね返す。そして、テラス・フォトンアースはテラススラッシュの強化技、オーラムスラッシュを放った。大型の光輪は2つに分裂して、EXエレキングの身体を3つに切断した。更にテラス・フォトンアースはタイマーショットを放って切断されたEXエレキングの身体を爆破したのだった。
「ちくしょう!」
「覚えてなさいよ!」
それを見ていたジャスミとプラムはその場から逃げだしたのだった。テラス・フォトンアースは空へ飛び立つ。
◇ ◇ ◇
「あーあ、結局あんまゆっくり出来なかったな……」
琵琶湖旅行を終え、帰りの電車の座席でそう呟くレオ。すると、メカ子が、
『マスターの持つ力故に仕方のないことなのかもしれません。ところでマスター』
「なんだい?」
『私の今のアバターの胸部や臀部のサイズはこのままでよろしいのでしょうか?』
いきなりそんな質問をしてくる。レオはメカ子に、
「……何故そんな質問を?」
と尋ねる。
『私のアバターをよりマスターが性的興奮する体型に変更した方がいいのかと思案しています』
と返すメカ子。レオは、
「そんな事無いよ。今のままで充分魅力的だ」
『魅力ですか……、マスターがそう仰るのであれば私は構いません』
と返したのだった。そしてレオは電車を降りて、月夜市星雲荘へと帰っていったのだった……。
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