ウルトラマンテラスに変身する青年、殿奈レオは今日も大学の講義を受けていた。先日の琵琶湖旅行の半分くらいが怪獣退治になってしまい、正直休校中のリフレッシュになった気はあまりしなかった。
「あー、疲れた……」
講義を終えたレオはそう呟く。そして、大学を出て星雲荘に帰宅するのだった……。
◇ ◇ ◇
あるオフィスのような場所で、2人の人物が会話していた。
「……しかし、そんな計画本当に上手くいくのか?」
「まあ、見ていてくれ。これが成功した暁には我々は大金持ちになれる」
「大金持ちか……。それは良いが、俺にはよく分からないなミギよ」
ミギと呼ばれた人物は、
「つまるところ、この星の人間を利用するだけだよダリ」
ダリと呼ばれた人物にそう返事する。そして、ミギはモニターに視線を移すのだった……。
◇ ◇ ◇
城東大学、怪獣研究会部室。そこでトオルがパソコンを使ってゲームをやっているようだった。
「会長!学校の備品でゲームはやめて下さいよ!」
トオルはワトにそう言われる。トオルは、
「すまん福島。無性にこの『大怪獣コロシアム』をやりたくなってしまってな」
と言う。レオは、
「会長、『大怪獣コロシアム』ってなんですか?」
と尋ねる。トオルは、
「大怪獣コロシアムはな、今流行っているオンラインゲームだ。過去に現れた怪獣をカスタムしたものやオリジナルの怪獣を作って育成し、戦わせる内容なんだ」
とゲーム画面を見せる。そこには、過去に出現したクレッセントという怪獣をカスタマイズしたキャラが映っていた。
「へえ、面白そうですね。俺もやってみようかな……」
レオがそう言う。するとワトが、
「それは良いですけどここのパソコンは一応学校の備品なんだからゲームに使っちゃ駄目だよ!」
とトオルを叱る。
「悪いな、福島」
と謝るトオル。
「分かってくれればいいんです!」
と言うワトだった……。
◇ ◇ ◇
一方、月夜市内のとある一般家庭。そこで自室でタイチという名の少年が大怪獣コロシアムをプレイしていた。タイチは自分が育成している古代怪獣ゴモラをカスタマイズした怪獣、サイバーゴモラに餌をやっていた。ゲーム内のサイバーゴモラは、美味しそうな肉を食べており、調子に磨きが掛かっているようだった。
「よーし、今日も沢山食べて大きくなれよ」
タイチはサイバーゴモラにそう語りかけるのだった……。そしてしばらくするとゲーム内にこんなメッセージが出た。
『サイバーゴモラのレベルがカンストしました。それにより世界トーナメントの出場権を得ました』
「やったぞ!次は世界トーナメントに向けて特訓だ!」
タイチは大怪獣コロシアムの世界トーナメントに出場する気のようだ。
◇ ◇ ◇
一週間後、講義が終わり講義室を出たレオとワトの所にトオルが来る。
「福島!殿奈!これから大怪獣コロシアムの世界トーナメントの決勝戦がオンライン中継されるみたいだぞ!一緒に見ないか?」
とタブレットを見せる。そこには、
『大怪獣コロシアム世界トーナメント決勝戦まもなく配信開始』
と表示されていた。
「確かに面白そうですね。見ましょうか」
ワトがそう返事する。そして、3人は視聴可能な場所に移動したのだった……。
大怪獣コロシアムの世界トーナメント決勝戦がいよいよ始まる。電脳空間の荒野に声が響く。
「レディースアンドジェントルメン!お待たせいたしました!これより大怪獣コロシアム、世界トーナメントの決勝戦を行います!選手入場!」
すると、荒野に2体の怪獣が現れる。実況が話を続ける。
「先ずは東、極東エリア出身!古代怪獣ゴモラをベースにした、サイバーゴモラだあ!!」
サイバーゴモラはクローを打ち鳴らす。
「次に西、南ヨーロッパエリア出身!宇宙怪獣ベムラーと凶暴怪獣アーストロンを融合させた、バーニング・ベムストラ!!」
バーニング・ベムストラは軽く火を吹く。
「2大怪獣が所定位置に付きます!さあ、この戦いを制し!大怪獣コロシアム初代世界王者になるのは一体どちらなのか!?」
サイバーゴモラとバーニング・ベムストラが睨み合う。
「さあ、いよいよ戦いの火ぶたが切って落とされる!カウント開始ぃ!3!2!1!ファイト!!」
実況の試合開始の合図と共に2体の怪獣が動き出す。サイバーゴモラは角を振りかざして突進する。しかしバーニング・ベムストラはそれを軽く躱す。そして、バーニング・ベムストラは口から火球を吐き出すが、サイバーゴモラは尻尾でそれを弾き飛ばした!そして2体の怪獣は角をぶつけ合う。サイバーゴモラの青い角とバーニング・ベムストラの赤い角が火花を散らしながら鍔迫り合うのだった。
「序盤のぶつかり合いは互角かっー!?しかし、この勝負の結末は最初から決まっている!サイバーゴモラが勝つのか?バーニング・ベムストラが勝つのか!?これからその結末が始まる!」
実況の声と共に戦いはさらに激しさを増す。2体の怪獣は角をぶつけ合ったり、取っ組み合いをしたりと激しくぶつかり合うのだった……。
◇ ◇ ◇
「わあ、すごい試合だね……」
「ああ、これは目が離せないな」
観戦していたワトとトオルが言う。するとレオも、
「そうですね……、まるで本当の怪獣が戦っているかのような気迫が伝わってくる」
と言う。全世界のプレイヤーが見守る中、決勝戦は佳境へと突入していた。サイバーゴモラを操作するタイチは必死にコントローラーを操作する。激闘を続けるサイバーゴモラとバーニング・ベムストラ。その最中、バーニング・ベムストラが体当たりをしかけ、サイバーゴモラを後退させる。そして、バーニング・ベムストラが咆哮を上げてエネルギーをチャージする。
「これはバーニング・ベムストラ、勝負を決める気だああ!!必殺のペイルサイクロンのチャージ!」
その実況の声を聞くタイチは、
「させるか!」
と、コントローラーを操作した。サイバーゴモラは前方の地面を攻撃し、土煙を巻き上げる。土煙によって狙いを定めることが出来ないバーニング・ベムストラ。
「今だ!サイバー超振動波!」
タイチはサイバーゴモラの必殺技を発動させる。サイバーゴモラはエネルギーを両腕のクローと角に集め、バーニング・ベムストラに高速で接近し、至近距離から振動波を浴びせた。サイバー超振動波をくらったバーニング・ベムストラはたまらず爆散する。
「決まったああああ!!勝者!サイバーゴモラぁ!!ここに、大怪獣コロシアムの初代世界チャンピオンが誕生しました!!ご視聴の皆さま盛大な喝采を!!」
実況がそう叫ぶ。すると、観戦していたワトとレオ、トオルは拍手をした。タイチは、
「やった!やったぞ!」
と大はしゃぎする。そして、サイバーゴモラは勝利の咆哮を上げたのだった……。
◇ ◇ ◇
「決まったか」
「これで計画を次の段階に進められるね」
大怪獣コロシアム世界トーナメントの決勝戦を観ていたのはミギとダリもだった。というか、大怪獣コロシアムの運営トップは彼らである。
「次はこのサイバーゴモラのデータを元に、『最強のサイバーウイルス』を作ろうか」
とミギ。ダリは、
「それをこの星で試し、後は俺達チェーン星人が他の星にサイバーウイルスのソフトを売りさばいて大儲けだ」
と言う。そう、この2人の正体はチェーン星人だった。ミギは、
「地球人は自らが創造した存在によって大損害を受ける。皮肉なものだね」
そう地球人を嘲笑う。そして、
「さて、ここから忙しくなるぞ!」
とコンピューターを操作するのだった。
◇ ◇ ◇
数日後、月夜市市内で下校途中の学生達が、大怪獣コロシアム世界トーナメントの決勝戦の感想を話す。
「いやー、もしかしたら俺のギール改が決勝戦に行ってたかもしれないのになー」
「1回戦目で敗退した癖にバカ言うんじゃないわよ」
「サイバーゴモラかっこよかったなあ……」
「ほんと、決勝戦のサイバーゴモラ対バーニング・ベムストラの試合はすごかったよね」
と学生達は話す。それを偶々通りすがって聞いていたタイチは、
「ああ、サイバーゴモラを育てて良かったなあ……!」
と呟く。サイバーゴモラは大怪獣コロシアムを知る者にとって一躍ヒーローになっていたのだ。しかしその頃、月夜市市内のあちこちのネットに接続しているコンピューターが謎のシステムトラブルを起こしていた。
「ああっ!何だこれは!?」
月夜市のある企業の公式サイト。その画面にサイバーゴモラが現れてデータを破壊していた。
「どうした!?」
と近くにいた社員が叫ぶ。サイバーゴモラはその画面から姿を消す。後にはデータが滅茶苦茶になった公式サイトが残されていた……。他の場所でも同様だった。サイバーゴモラが現れてコンピューター内のシステムを滅茶苦茶に破壊して別の場所に去っていく……。
その一連の現象はサイバーセキュリティシステムを作動させても止められない。そして、『最強のサイバーウイルス』サイバーゴモラは城東大学のシステムにも侵入するのだった。城東大学では、対火災システムが誤作動を起こし、消火剤が撒かれたり防火シャッターが下がったりしていた。
「何なんだ!?」
と驚くトオル達。すると、その場に居合わせた教員が、
「これは対火災システムが作動しているんだ!早く止めないと城東大学全体が水浸しになるぞ!」
と言う。それを聞いたワトは、
「そんな……、どうすれば止められるんですか?」
と尋ねる。しかし教員は、
「それは分からない……」
と答えるのだった……。
◇ ◇ ◇
レオはというと、この異変の原因をメカ子に聞いていた。機械関係なら特にAIのメカ子は強いと思ったからだ。
「今この街で何が起こっているか分かるか?」
『分析結果でました。怪獣を模したサイバーウイルスが猛威を振るっているようです』
「サイバーウイルス?」
『はい。そのデザインは大怪獣コロシアムのサイバーゴモラそっくりです。何者かがサイバーゴモラのデータを悪用したものかと』
「それはまずいな……」
『はい。このまま放っておくと、防衛隊のサイバーセキュリティシステムも破壊されて日本の防衛は丸裸になるでしょう』
するとレオは、
「くそっ、サイバーウイルスなんてウルトラマンの力でどうにか出来ないのか……?」
と歯噛みする。するとメカ子が、
『それですが、マスターがウルトラマンテラスに変身した状態で身体を数値化、つまりデジタルデータに変化させて電脳空間に入ることが出来る筈です』
と提案する。それを聞いたレオは、
「そうか!よし、やってみるぞ!」
と言ってサンフラッシャーを起動させて人間大のウルトラマンテラスに変身した。するとメカ子は、
『マスター、もし電脳空間で敗北すればデータがバラバラになり、二度と現実世界に帰還出来なくなる恐れがあります。それでも行きますか?』
と警告した。テラスは頷き、身体を数値化させていく。それを見たメカ子は、
『このスマホをサイバーゴモラの居る電脳空間に繋ぎます。マスター、ご武運を……』
と言う。そして、テラスは電脳空間に入っていくのだった……。
◇ ◇ ◇
電脳空間に入ったテラスは周囲を見渡す。そこは現実世界とは明らかに違う不思議な所だった。
(サイバーゴモラは何処だ……?)
サイバーゴモラを捜索してると、遠くから咆哮が聞こえてくる。テラスはそちらへ向かった。そして、テラスが辿り着いたのは城東大学のメインシステムの電脳空間だった。
(これは……!)
『どうやらこの空間でサイバーウイルスと戦わなければならないようですね』
と呟くメカ子。するとそこにサイバーゴモラが現れる。
「ジュアッ!」
テラスは構える。サイバーゴモラはテラスを破壊すべきデータと認識し、両腕のクローを構えた。
「シュアッ!」
テラスは構えてサイバーゴモラに向かっていく。サイバーゴモラは尻尾を振り回し、攻撃を仕掛けてきた。しかしテラスはそれを回避して間合いを詰める。そしてパンチやキックの連続攻撃を繰り出し、サイバーゴモラを攻撃していくが、サイバーゴモラはそれに耐えながら右手のクローで反撃するのだった……。
「ジュアッ!?」
『マスター!このままではサイバーゴモラにやられますよ!』
(分かってる!)
テラスは、サイバーゴモラの尻尾を掴んで投げ飛ばす。そして再び間合いを詰めて連続攻撃を浴びせる。サイバーゴモラはクローで攻撃してくるが、それに対しテラスは腕にエネルギーを纏わせてクロー攻撃を迎撃する。
「ジュアッ!」
そして、テラスはサイバーゴモラの腹部に正拳突きを繰り出し、後退させる。サイバーゴモラは両腕のクローから振動波を放つが、テラスは腕を十字に組み、サンジェント光線を発射して振動波と相殺させた。
「ジュアッ!」
そして、サイバーゴモラに続けてシュリケンショットを放つ。シュリケンショットによりダメージを受けるサイバーゴモラ。すると、怒ったサイバーゴモラの動きが素早くなる。テラスは引き続きシュリケンショットを放つが今度は躱されてしまった。
「ジュア!?」
『どうやら一定のダメージを受けた際に処理速度がアップする仕様のようですね』
とメカ子は言う。サイバーゴモラは高速で動きながらテラスにダメージを与えていく。そして、右手クローでテラスを殴りつけた。
「ジュアッ!」
テラスは吹き飛ばされるが、すぐに体勢を整えて構え直す。しかし、その隙にサイバーゴモラはまた高速移動してテラスの視界から消えてしまった……。
(くそっ!速いな……!)
今度は背後に回られ尻尾の一撃を受けてしまうテラス。
「ジュアアッ!?」
更に角を突き刺そうとするサイバーゴモラであったが、
『マスター、援護します』
メカ子は攻撃プログラムを使って複数のミサイルを出現させてサイバーゴモラに殺到させる。サイバーゴモラはミサイルの直撃を受け、テラスから距離を取った。
「ジュア!」
テラスは立ち上がり構える。サイバーゴモラはサイバー超振動波をくらわせようと突進してくる。それに対しテラスは右手を突き出して、全身を高速で回転させて光の矢の様となって突っ込んでいった。ぶつかり合うテラスとサイバーゴモラ。そして、サイバーゴモラは大爆発を起こすのだった……。
『マスター!大丈夫ですか?』
(ああ、何とかな……)
と頷くテラス。メカ子は、
『急いで現実世界に帰還しましょう』
と言い電脳空間から現実へ帰還したのだった……。
城東大学に戻ったテラスは変身を解く。するとシステムが復旧したのか、下がっていたシャッターが上がったり、消火剤の散布が止まったりしていた。それを見たレオは、
「どうにかなったみたいだな……」
と呟いた。
◇ ◇ ◇
その頃サイバーゴモラの行動を観ていたミギとダリは、
「おい、これじゃあ宣伝にならねえじゃないか!」
「くっ……、だが今回を踏まえて改めて新たなサイバーウイルスを作れば……」
そういうミギだったが、その時、
「動くな!地球防衛隊だ!!」
地球防衛隊の部隊が部屋に突入してきた。
「「何!?」」
地球防衛隊は対怪獣・異星人調査機関SARADAの協力もあり、サイバーウイルスを放ったチェーン星人のアジトを突き止めていたのだ。
「妙な動きはするな!抵抗した場合は射殺も許可されている!」
「ぐう……!」
「おのれ……!」
ミギとダリは捕縛され、地球防衛隊に連行された。
◇ ◇ ◇
数日後、タイチはとぼとぼと下校をしていた。サイバーゴモラがサイバーテロに利用されたことによりその名声は下落していた。タイチも自分がサイバーゴモラを育てたと、とてもクラスの皆に自慢できなくなってしまったのだ。
「あーあ……、俺の春は短かったなあ……」
と呟くタイチ。大怪獣コロシアムも、運営のトップが犯罪者だったことによりサービス終了してしまった。少年は誇れることを1つ失ったのだった……。
「ちぇっ、つまんねえの……」
そうこぼしながらタイチは帰宅するのだった。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等お待ちしております。