その日、レオが通う城東大学では構内全体がある話題でもちきりだった。大学の近所の山中で発見された遺跡から推定にして7000年前の物とされる人型のミイラが見つかったのだ。そしてミイラは調査の為に大学の研究室に運び込まれた。
怪獣研究会内でもその事は話題になっていた。レオ、ワト、トオルの3人は研究室に運び込まれる際に撮影されたミイラの写真を見ていた。レオが
「しかし、不気味な人相だな。人間なのか?」
と所感を口にする。写真に写るミイラの顔は、ミイラである事を差し引いてもとても今の人類と同じ種族とは思えなかった。
「ああ、なんでも学者さん曰く、俺達の祖先じゃなくて宇宙人のミイラだって可能性もあるって言ってたな」
とトオルが返す。
「宇宙人のミイラ……?」
とワトが聞くと、
「ああ、異星人の中には古代から地球に訪れていた種族も居たって聞いたことがある」
とトオルが言う。
「異星人か……、そう考えると納得だな……」
とレオは呟いた。ワトは
「それにしても、7000年前のミイラなんてよく残ってたね」
と言った。トオルは
「そうだな……、日本はジメジメしてるからミイラが残りにくいって言うが、宇宙人のミイラだから原型を留めているのかな」
と言う。
「まあ何にせよ、興味深い話ですね」
とレオが言うのだった。
翌日、大学に登校したレオはトオルとワトと共に講義を受けていた。教鞭をとっているのは地球人では無い。ザム星人という異星人だった。地球が正式に外宇宙の星々と国交を結んで以来、社会にも異星人がまだまだ少数とは言え混ざる様になった。
国交を結んでおらず地球の侵略を狙う星もあれば、地球に降り立ち地球人と交流する異星人も居た。ザム星人のプラミー教授はそんな奇特な異星人の1人でこの城東大学で故郷発祥の理論を教えている。ワトは
「ねぇ、レオ君」
と話しかけるが、レオは考え事をしていてそれに気づかなかった。
「あ……、ごめん何でしたっけ?」
「もう、ちゃんと聞いててよ!」
とワトが怒る。するとプラミー教授は
「そこ、私語は慎みなさい」
と言ったのでワトは慌てて口を塞いだのだった……
講義の時間が残り少なくなった頃、
「今日は理論だけじゃなく、面白い物を見せよう」
プラミー教授は教室に置いてあるカバーが掛けられた物体からカバーを外す。すると、カバーの下から人型の二足歩行ロボットが現れた。
「私が故郷の技術を用いて制作した警備用ロボット、ユートムだ。この大学に不審者が現れても、このロボットが撃退してくれるぞ」
とプラミー教授は言った。するとワトが
「へぇー、凄いですね!」
と言ったのでレオは
「確かに、これなら不審者も簡単に入って来れないな」
と言う。プラミー教授は自らのハサミ状の爪を鳴らしながら、
「そうだろう!そうだろう!……では、ユートムを起動させるぞ!」
と言って端末を操作するとロボットの目に光が宿り、動き始めた。そして教室内を歩き回るのだった。「おおー」と生徒たちが驚く。そんな中講義時間終了のチャイムが鳴り、プラミー教授は
「おっと、今日の講義はここまでだ。各々復習は忘れないように」
と言い、ユートムをロボット用の充電ポッドに入れて教室を出た……。
◇ ◇ ◇
数日後、レオが次の講義に出席するべく構内を歩いていると、構内がやけに騒がしいのに気づく。なんだろうとレオが思っていると悲鳴が聞こえた。
「何があったんだ?」
レオは野次馬根性を出して悲鳴のした方向へ行ってみる。すると構内をなんとこのあいだ研究室に運び込まれた筈のミイラが歩いているではないか!ミイラの怪人……ミイラ人間は何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡している。
その場にいる城東大学の大学生や職員たちはミイラが歩き出した事に驚き、恐れおののいていた。その時だ、城東大学に所属している教員の1人が警備員を引き連れてやってきた。
「あいつだ!あのミイラを捕まえてくれ!」
警備員達はミイラ人間を捕えるべくさすまたでその動きを封じようとするがミイラ人間は怪力で、そのさすまたをへし折る。
「なんて力だ!」
警備員達は驚きながらもミイラ人間を取り押さえようと奮闘する。しかしミイラ人間はそんな警備員達をものともせず、逆に殴り飛ばしたり蹴り倒したりして暴れまわるのだった……
その様子を見ていたレオは近くに居合わせたトオルに
「何があったんですか!?」
と聞く。
「見ての通りミイラが蘇生して研究室から脱走したらしい!あのミイラは死んでなかったんだ!」
「なんですって!?」
レオは驚く。ミイラが死んでいない……、確かにあの怪力は宇宙人のものだと言われれば納得出来るかもしれないが……。そんな時、プラミー教授とユートムが生徒に連れられてやってきた。
「教授!こんな時の為の警備ロボットでしょう!?あのミイラを止めてください!」
とプラミー教授を連れて来た生徒の1人がミイラ人間を指さして言う。プラミー教授は
「分かった……。やってみよう」
と端末を操作してユートムに指示を送る。するとユートムはミイラ人間に向かって行った。
「ユートム、あのミイラを止めろ!」
プラミー教授が端末を操作して指示を出すと、ユートムはミイラ人間を抑えつけようとする。しかしミイラ人間はユートムの怪力にさえ耐え、逆にユートムを殴り飛ばした!
「何!?」
プラミー教授は驚く。そしてミイラ人間は目から怪光線をユートムに発射した。人間が当たればどうにかなってしまったかもしれないが、ユートムは機械だからか、特に影響は無かった。
そしてユートムは頭部から電子音を発すると、右手のショックガンを発砲した。それが命中しミイラ人間は倒れ込む。野次馬は歓声を上げるが、ミイラ人間を追って来た教員がプラミー教授に
「貴重なサンプルだったのに殺してしまったのか!?」
と非難する。するとプラミー教授は
「あくまで非殺傷武器だから死んでいないと思うが……」
と答える。よく見るとミイラ人間は少し動いている。倒れて動けなくなったが、一応死んでいないようだ。一連の騒動を見ていたレオは
(今回はウルトラマンにならなくて済んだな)
と思っていたが、そんな時スマホに通知が入る。確認してみると、ミイラ人間が発見された遺跡があった山中から怪獣が出現したようだ。ドドンゴと名付けられた怪獣はこの大学の方へ向かっているそうだ。
「あのミイラと関係があるのか?」
レオがそう呟くと、懐のサンフラッシャーが熱を発するのを感じる。
(結局こうなるのか……)
レオは物陰に隠れてから、サンフラッシャーのスイッチを押した。
◇ ◇ ◇
城東大学を目指して四足歩行でまるで麒麟の様な姿をした怪獣ドドンゴは進撃する。そんな時、ドドンゴの目の前にウルトラマンテラスが現れた。
「ジュアッ!」
とテラスは叫び、ドドンゴに向かって構える。するとドドンゴはその巨体を生かして体当たり攻撃を仕掛けてきた。
「ジュアッ!?」
テラスはそれを回避して反撃する。テラスの打撃に怯むドドンゴだったが、テラスがもう1発パンチを入れようとした時に口から黒煙を吐き出す。
「ジュア!?」
テラスは黒煙に飲み込まれてしまう。するとドドンゴはミイラ人間の様に目から怪光線を放って来た。怪光線が命中しダメージを受けるテラス。ドドンゴは続けて目から光線を放とうとするが、テラスは素早く回避して反撃する。
「ジュアッ!」
テラスのキックが命中して倒れるドドンゴ。そしてドドンゴは再び口から黒煙を吐き出して攻撃しようとする。しかし、今度はそれを予測していたテラスがウルトラ念力で黒煙をかき消した。
「ジュア……」
と呟くテラス。そしてテラスはドドンゴの背に乗り、後ろから打撃を加える。
「ジュア!」
そしてドドンゴの首筋をチョップで攻撃する。ドドンゴは悲鳴を上げ、反撃にと暴れてテラスを振り落とした!
「ジュアッ!?」
そのまま倒れるテラス。ドドンゴはテラスに向かって突進してくる。
「ジュア!」
と咄嗟に立ち上がって防御するテラスだが、ドドンゴの巨体の勢いに負けて吹っ飛ぶ。そしてそのまま地面に倒れ込む。そこに再びドドンゴが体当たりを仕掛けようと迫る!
「ジュアッ!」
しかしテラスは素早く起き上がり、ドドンゴの顎にアッパーカットを喰らわせた!
「ジュアッ!」
するとドドンゴはそのまま後ろに倒れ込んで気絶した……。
テラスがドドンゴにとどめを刺すべく腕をL字に組んだその時である。
「おーい!ウルトラマンテラス!聞こえるか!?」
とテラスに呼びかける者がいた。テラスが振り返ると、
(あれはプラミー教授!)
そこに居たのは拡声器を持ったプラミー教授と、ミイラ人間だった。
◇ ◇ ◇
時間は少し遡り、レオが変身した直後。
「さて、こいつをどうしたものか」
怪獣出現を受けて学生たちが避難に動く中、倒れ伏すミイラ人間を見ながらプラミー教授はそう呟く。すると、
『頼む……助けてくれ……』
そんな声が聞こえた。プラミー教授が辺りを見回すと、
『私をあの洞窟へ戻してくれ……』
「まさか、このミイラがテレパシーで語りかけているのか……?」
なんとミイラ人間がテレパシーで命乞いをしてきたのだ。
『私ならドドンゴを元の場所に戻せる……。だから……』
「なるほど……、ミイラと怪獣は一心同体か。なら話は早い」
プラミー教授はそう言うと、ミイラ人間を連れてドドンゴの居る場所へ向かったのだ。
◇ ◇ ◇
「彼ならドドンゴを元の場所へ戻せる!こいつらを見逃してやってくれないか!?」
とプラミー教授は拡声器でテラスにそう呼びかける。
「ジュア……(そうなのか?)」
とテラスが首を傾げる。プラミー教授の隣に立つミイラ人間も
『頼む、私達を静かに眠らせてくれ……!』
とテラスにテレパシーで呼びかける。
「ジュア!(分かった)」
テラスは頷くと、腕をおろした。するとミイラ人間はドドンゴに指示を出した。
『よし……洞窟へ帰れ!』
ミイラ人間の指示でドドンゴは元来た方向へと歩き出した。
『恩に着るぞ……ウルトラマン……』
ドドンゴが去っていったのでレオも変身を解くのだった……。
その後、ドドンゴとミイラ人間は遺跡の地下へと姿を消しその行方は知れなかった。プラミー教授はと言うと、城東大学に帰って来た後に同じく城東大学の教授で異星人嫌いで有名である堀田教授に嫌味を言われていた。堀田教授のチームがミイラ人間の研究に当たっていたからだ。
「君が勝手にミイラを逃したお陰で、私はあのミイラが7000年もの間生きていた理由を調査出来なくなった。いくら教授だからと言って、この様な真似は慎んでもらいたいものだが」
と堀田教授は嫌味を言う。プラミー教授も負けじと言い返す。
「ふむ、あのミイラは生きていたし、ちゃんとした知性もあった。私は彼の頼みを聞いて事態を穏便に済ませただけだが?」
「ふん!構内で暴れた奴をよく信用できますな。まあいい、今後また君が私の邪魔をするなら私にも考えがありますからな!」
そう言って堀田教授はその場を後にする。プラミー教授も呆れた様に溜息をつくのだった……。
◇ ◇ ◇
「……なんて、事があったんですよ」
とレオは星雲荘の前でバッタリ出会ったサヨメに大学でミイラが蘇った事や怪獣ドドンゴと共にそのミイラが地下へ去っていった事等を話した。サヨメは
「なるほどな。そのミイラも怪獣も、安眠を邪魔されて怒っていたという訳か」
「はい。でも、あのミイラが7000年もの間生きていたのは驚きました」
とレオが言う。するとサヨメは
「お前はウルトラマンを見たか?今回は怪獣を倒さなかったようだが」
と不意に尋ねる。
「そりゃあ……、ウルトラマンも別に血を求めている訳じゃないだろうし、倒さない時もあるんじゃないですかね」
とレオが言う。サヨメは
「ウルトラマンが血を求めていないか……。果たしてそうだろうか?」
と言った。そして
「まあ良い。私はもう行くからな」
と言ってその場を去ってしまった……。残されたレオは
「うーん。サヨメさんって悪い人じゃないと思うけどなんか引っかかるな……」
と初めて会った時から彼女と何度か会話するようになってサヨメがどんな人物がおぼろげに分かりつつあったが、そのサヨメに対する印象がレオには今一分からなかった。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等お待ちしております。